近年、日本でも導入する企業が増えてきたマーケティングオートメーション。企業のマーケティング活動をより強力にする強い味方ですが、一歩間違えると運用にのらず、ただの迷惑メールを配信するだけなんてことになりかねません。

そこで、今回はマーケティングオートメーション導入で注意するポイントについてご説明します。

目次
〇失敗する企業の特徴とは
〇導入で注意すべき5つのポイントとは
〇導入を成功に導くために意識すべきこととは
〇最後に

失敗する企業の特徴とは

マーケティングオートメーション(MA)を導入したものの、思ったような成果がでないといったことも少なくありません。
なぜ、うまくいかないのか、気になる方も多いと思います。

そこで、実際に導入されている会社の方に聞き、調べたところ以下のような特徴が明らかとなりました。それでは、早速ご説明させていただきます。

MAで実現したいことが明確ではない

MAで実現したいことが明確ではないため、適切なKPIも分からず、運用にのらないといったこともあります。また、分析・管理を行える他ツールが必要となり、追加でシステムを導入することになり、結局高くついたケースも少なくありません。

例えば、当初はメールの自動化などのリードナーチャリング機能を持つシステムを導入したが、顧客リストが足りず、コンテンツ作成・SEO対策などが必要となり、結局追加費用がかかってしまったという声もあります。

導入で大量かつ複雑なシナリオを作成してしまう

MAが上手く運用にのるかを決めるキーとなる「どの顧客と、どのタイミングで、どのようにコミュニケーションをとるのか」というシナリオ設計ですが、最初から、大量かつ複雑なシナリオを作成してしまい、上手くPDCAが回らず、結果運用にのらないといったケースが数多くあります。

事実、導入時にシナリオを100本以上作った企業が、PDCAが回らず、再考して数本のシナリオに絞って再スタートしているなんてことも起こっています。

これは、やり始めると、「これも必要、あれも必要」でどんどんシナリオが大量・複雑になり、収益を向上させるために導入したにもかかわらず、シナリオを作成することが目的になってしまったというケースもあります。

そうすると、導入段階で時間とコストがかかってしまいます。更に、シナリオが多ければ多いほどつなぐデータベースも多いので、実際に運用段階に入るとPDCAが回せない状態に陥ってしまいます。

他部署との連携がとれていない

連携が上手くいっていないと、各部門では成果を挙げているはずが、全体で見ると成果に結びついていないなんてことになりかねません。

連携が弱いと、コンテンツの的が外れていたり、見込み客の評価軸を見誤ったりして、いざ、営業の方が訪問いってもまったく手ごたえがないといったことが生じてしまいます。

例えば、マーケターが確度の高い見込み客「ホットリード」を導き出し、それを営業にパスをして、営業が提案、商談をしていく際にも、営業側は「こんな決まらない案件なんて渡してくるな!」と言い、一方マーケティング側は「こっちはいい案件を渡したのに、どうして決めないんだ!」という対立が生じてしまうこともあります。

社内のリソース・リテラシーが不足し、使いこなせない

リードスコアリング機能、ナーチャリング機能、CMS機能、SEO対策機能など、ハイスペックが売りのMAツールですが、各機能を活用するための的確な設計には、手間と時間がかかります。実際にあるツールを導入した企業では、「設定が面倒過ぎて、やる人がいない」という声もあります。

またMAにおいて、ツールと同様に重要なコンテンツ作成にも予想以上に時間がかかります。そのため、優良なコンテンツを作成することができない、定期的な配信ができないといったケースもあります。

日本市場において、MAは2014年が元年とも言われ、まだ日も浅く、会社としても外資中心なこともあり、日本において扱える人があまりいないと言えます。

導入で注意すべき5つのポイントとは

失敗事例は分かったが、じゃあ導入する際にはどこに注意すればいいの?と思う方も多いと思います。

そこで、注意すべき点を5つ挙げて説明していきます。

MAで可能なことを誤解しないこと

MAにより自動化できるのは、営業担当者の「行動」部分のみとなるが一般的です。

例えば、顧客が自社のホームページを見たら、おすすめメールを送るのか、または、商品ページまで見たら、送るのかなどのシナリオの部分は人間が作る必要があり、ここは自動化してくれません。

自動化してくれるのは、予め決められたメールを決められたタイミングで送るといった「行動」の部分になります。

従って、「どの顧客と、どのタイミングで、どのようにコミュニケーションをとるのか」というシナリオについては、人間が決める必要があり、そこを間違えると、MAただの一斉メール配信ツールとなり、最悪のケースでは迷惑メールを作るだけになってしまいます。

MAで実現したいことを明確に

まずは、MAにより、自社のマーケティングプロセスの全てを任せてワンストップで行うのか、プロセスの一部分を任せるのかを明確にする必要があります。それに応じて、選定すべきツールは大きく異なってきます。

例えば、「ここだけMAでできればいい」や「一部分だけMAにより強化したい」などの場合は、割り切っている絵製品を組み込んでいくのが良いでしょう。

ただし、潜在的にはワンストップで行いたかったということが後からわかると、追加ツールが必要となるため、コストも追加でかかり、また、複数のツールを導入することで煩雑さが増すといった事態になりかねません。

社内リテラシー・リソースの確認

MAの運用には、十分なリソース、人材が必要となります。

運用には、シナリオ設計・効果測定・顧客管理・コンテンツ作成などとやらないといけないことは多いです。

米国のMAツールベンダーのMarketoは効果的に測定するためには、およそ6~7人の人員が必要としています。また、外資系のMAでは、マーケティング先進国であるアメリカのリテラシーを基準に作られている、英語の説明書しかないといった場合もあるため、一定以上のリテラシーが求められると言えます。

ベンダーのサポートが充実しているかの確認

ベンダーのサポートがどこまで対応しているのかはしっかりと確認するようにしましょう。後から、運用のサポートをお願いしたら、追加で料金が必要となったといったケースもあります。

サポートはベンダーにより異なることが多く、
・導入のみをサポート
・導入のサポートと運用に関しては、電話のみの対応
・導入のサポートと運用に関しては、有料でサポート可能
・導入から運用までサポート
などといったように分かれています。

マーケティング・営業部門の連携

MA導入においては、マーケティング・営業部門の連携が必須とも言えます。

上述のように、ここに溝が生じてしまっているがために、成果に結びつかないといったケースもあります。特に、日本においては、元々部門ごとで断裂されていることも少なくないため注意が必要となります。

そのため、マーケ、営業部門の両方の担当者を含めた横断プロジェクトを作るなどの施策をすると良いでしょう。

導入を成功に導くために意識すべきこととは

目的から考えて、ツールを選定する

導入する目的を明確にし、ツールを選定しましょう。

ツールに関しては、市場に出回っているMAは、1.コンテンツマーケティング型、2.メールマーケティング型、3.インテグレーション型の3つに分類できます。

それぞれの特徴・メリット・デメリットをとしては、以下のようになります。

■コンテンツマーケティング型
コンテンツマーケティング型
はデジタル上でメディアを作成し、ロングテールでSEOをあげ、見込み度の低い顧客を獲得し、MAで角度をあげ、ホットリード化できます。

メリットは、多くの見込み度の低い顧客を大量に獲得できることです。

デメリットは、メディアの記事を毎回作成しなければいけないため、マーケターの工数がかなりかかるということです。潜在層に対して刺さるようなコンテンツを考え、それを週に2~3回メディアにアップしなければなりません。しかもその記事にはロングテールのキーワードなどを記事に入れなければならないため、忙しいマーケターは記事作成が難しくなり、外注し、コストが莫大にかかってくるようになります。

■メールマーケティング型
メールマーケティング型
は、顧客へのメール配信を自動化することができます。

メリットはターゲットのセグメントなどがかなり細かくでき、適切なメールを適切なターゲットに届けることができます。

デメリットはスコアリングの範囲が狭く、WEBに移った後の行動が追えないため、ホットリードを特定するのが困難であるところです。

■インテグレーション型
インテグレーション型
は他のツールを統合・連携して広範囲にわたってスコアリングやシナリオ設定ができます。

デメリットは他のツールと連携することで工数のコスト、ほかのツールを購入するコストがかかるところです。

それぞれのメリット・デメリットを考えながら、どこの問題を解決したいのかを明確にしてツールを選定する必要があります。

大きなインパクトを持つ部分に着目し、簡単なシナリオから始め、高速でPDCAを回す

MAを入れる目的が考え、MAでどんな効果を期待するのかを明確にすることがまず大切になります。

そして、太い主導線となる小数のシナリオを決めて、ターゲットを絞り、そこから知見が広げていくのが王道となります。そのため、スコアリング・シナリオを短時間で決定し、PDCAを高速で回していくことが重要になります。

流れとしては、

(1)上に対してインパクトのある顧客の像は、どこなのかを明確に
(2)企業側の方向性と顧客との間にあるギャップを明らかにし、顧客セグメントを特定
(3)その顧客セグメントに対して、どんなメッセージを伝えるのかをシナリオを作成
(4)(3)の結果を元に、PDCAを回す

この際に、(3)でシナリオ設計に時間をかけずに、仮説ベースで.運用するぐらいのスピード感を持って行うと良いでしょう。

最後に

いかがでしたでしょうか。

注意すべき点は多いものの、しっかりと導入、運用できれば、企業のマーケティング活動をより強力にできるため、ぜひ活用してもらえたらと思います。

[参考記事]
マーケティングオートメーション(MA)とは何か
【意味のない導入はしない!】MAツール導入の成果や担当者を評価する3つの観点
コンテンツマーケティングの必要性と成功事例!

<おすすめ記事はこちら>
● マーケティングオートメーション(MA) の概念を知りたい方
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Editor Profile

  • 福井 和典

    株式会社データX マーケティング管掌執行役員

    日本IBMにてシステムエンジニア、GREEにてCRM領域のオペレーション企画、PwCでの業務コンサルタントとしての経験を経て、2016年よりデータXに入社。データX入社後は、カスタマーサクセス部門に在籍し、小売/金融/アパレル/ECなど幅広い業種に対するb→dash導入支援を統括。
    その後は、主にb→dashのマーケティング/広報/PR活動や事業企画に従事。

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