ROIとは、資本を投じた結果得られる収益を評価する指標です。企業が戦略を策定し、プロジェクトを評価し、意思決定を行う上での重要な指標となっており、DXが進む中、より効果的な資本投資を行うために、ビジネスにおいてますます注目されるようになっています。そこで本記事では、ROIの概要からメリット・デメリット、ビジネスにおける活用方法についてご紹介します。

弊社が提供している マーケティングツール『b→dash』 は、マーケティングプロセス上に存在する全てのビジネスデータを、ノーコードで一元的に管理できる他、BIの機能も充実しており、b→dash上のデータを活用したRFM分析,ROI分析,ROAS分析といったレポートの作成や、メール等の施策の効果検証に最適なツールとなっています。

 

1. ROIとは何か

ROIは「Return on Investment」を略したもので、投資した資本に対して得られる利益の割合を示す指標です。日本語では、「投資収益率」や「投資利益率」と呼ばれています。ROIが高ければ高いほど投資対効果が高いと判断ができます。ROIを正しく把握することで、ビジネスの戦略やプロジェクトの成功を評価することができ、事業投資に向けてより効果的な意思決定が可能となります。

1-1. ROIが注目されている理由

ROIを用いることで、資本投資の効果を数値ベースで可視化することができます。そのため、正確にROIを把握することは、限られた費用の投資先を最適化することにつながり、持続的な企業成長を実現するためには不可欠となります。一方、ROIの計測が正しくできていないと、効果の薄い施策に投資し続けることになるため、経営状況の悪化にもつながりかねません。

また、近年はDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進や、インターネットの普及に伴うマーケティングチャネルの複雑化などにより、さらにROIは重要視されるようになってきています。BIツールの普及も相まって、各企業がROIを可視化できるようになってきているため、より一層、数値をベースとした経営判断が必要となってくるのです。

2. ROIの計算方法と例

ROIは下記の計算式で算出できます。

ROI(%) = 利益 ÷ 投資額 × 100

例えば、ある投資で100,000円の利益が得られ、投資額が50,000円だった場合、ROIは「(100,000 – 50,000) ÷ 50,000 × 100 = 100%」となります。ROIが0%以上であれば、その投資が利益を生んでいることを示し、0%未満であれば損失を表します。

2-1. ROIとROASの違いは何か

ROIと近しい指標として、ROASがあります。ROASは「Return on Advertising Spend」を略したもので、投じた広告費に対してどれだけの売上が生まれたかを示す指標です。ROASの分子は「売上」ですが、ROIの分子は「利益」である点が異なっています。ROASの計算式は、以下の通りです。

ROAS(%) = 広告からの売上 ÷ 広告費 × 100

例えば、売上が1,000万円で広告費用が500万円の場合、ROASは「1,000万円 ÷ 500万円 × 100 = 200%)となります。ROASは広告同士の比較を行うには便利な指標ですが、ROASだけではその広告が利益を生んでいるかまではわからないため、広告全体の効果を計測する指標としてはROIが用いられる傾向があります。そのため、ROASを活用する場合は、ROASの損益分岐点となる値を把握しておくことが重要です。

損益分岐点ROAS(%) = 単価 ÷(単価 – 原価)× 100

例えば、単価が100万円、原価が30万円だとすると、損益分岐点となるROASは「100万円 ÷ (100万円 – 30万円) × 100 = 142.9%」となります。この場合、ROASが100%以上なら、広告費以上の売上があるということになりますが、損益分岐点となるROAS(142.9%)を下回っている場合、赤字ということになります。

広告投資に対する利益を向上させるための詳しい方法については、下記資料にて実際の事例を元にご紹介しておりますので、是非合わせてご一読ください。

2-2. 重要指標を解説

ここでは、ROI/ROASとあわせて理解しておきたい重要指標を説明します。

【ROE】

● 概要:
Return On Equityの略で、自己資本利益率と訳される指標。株主資本に対する収益性を示す指標で、ROEが高いほど企業は株主に対して収益を生み出していると言えます。

● 計算式:
ROE(%)=当期純利益 ÷ 自己資本 × 100

【CPA】

● 概要:
Cost per Acquisition(またはAction)の略で、顧客獲得単価を意味する指標。コンバージョン1件あたりの費用を把握できるため、コンバージョンベースでの広告分析や見直しを進める際に有効。

● 計算式:
CPA(%) = 広告コスト ÷ コンバージョン件数

【CVR】

● 概要:
Conversion Rateの略で、コンバージョンに至った割合を表す指標。CVRが高いほどウェブサイトやLPの導線やコンテンツが、訪問者をコンバージョンに導いていることを示します。

● 計算式:
CVR(%) = CV数 ÷ アクセス数(クリック数)×100

【LTV】

● 概要:
Life Time Valueの略で、顧客生涯価値を示す指標。顧客が企業と取引を開始してから終了するまでの期間でもたらす予想利益の合計を表す。顧客獲得や維持のための戦略を策定する際に役立つ。

● 計算式:
LTV = 平均購入単価 × 粗利率 × 平均購入頻度(回/年)× 平均継続期間(年)

3. ROIのメリットとは

ROIを活用するメリットには、以下の2点があります。

①異なる事業の費用対効果を評価できる
②事業改善に役立つ

ROIのメリットの一つは、規模の異なる事業間でも投資の効果を比較できる点にあります。 ROIは投資に対する収益性を数値化するため、異なる事業やプロジェクトの効果を直接比較することが可能です。収益性の高い事業にリソースを注力したい場合、ROIが客観的な判断材料として機能します。

またROIは、施策単位での細かい比較が可能であり、これが事業改善に役立つというメリットもあります。事業単位ではなくとも、利益と投資額の定義を変えれば、施策レベルでも評価・比較が可能となります。より細かい粒度での評価ができることで収益性の高い施策を見つけることができ、事業の成長に向けた戦略を立てることができます。

4. ROIのデメリットとは

ROIを活用するメリットには、以下の2点があります。

①長期的な視点での評価には向いていない
②数値化できない施策の評価には向いていない

ROIのデメリットの1つは、長期的な視点での評価には向いていないことです。ROIは通常、計測時点での投資と収益を計算するため、長期的なビジネス目標や成果を評価する場合には、ROIだけでは不十分です。投資の初期段階ではROIが低い場合でも、将来的に大きな成果をもたらす可能性があるため、ROIだけに頼るのではなく、長期的な視点でのビジネス戦略や投資の評価には、他の指標や要因も考慮する必要があります。

もうひとつのデメリットは、数値化できない施策の評価には向いていないことです。ROIは主に数値化された投資と利益をベースに評価するため、金額での計測が困難な取り組みに対する効果を適切に評価するのには不向きです。例えば、ブランド認知度の向上や顧客満足度の向上などの施策は、直接的な収益としては計測することは難しいため、ROIを利用する場合は数値化可能な取り組みを対象とする必要があります。

5. ROIのビジネスにおける活用シーン

ここでは、ROIのビジネスにおける活用シーンを解説します。

5-1. 投資に向けた経営戦略的な評価

企業が新たな店舗を展開する際や、新商品を展開する際などの投資に向けた収益性を判断することができます。展開にかかるコストや、商品の開発にかかるコストと予想される収益とを比較すれば一定基準での判断ができ、投資実行や予算配分などの判断に役立てることができます。

5-2. 広告マーケティングでの評価

ROIを通じてインターネット広告での収益性を定量的に評価し、どの広告が最も効果的であるかを判断できます。これにより、広告予算を最適化し、効果的なマーケティング戦略を展開できます。例えば、特定の広告チャネルでの広告費とそのチャネルから生まれる収益を比較することで、最も収益性の高いチャネルを特定することができ、予算の最適化につなげることができます。

弊社が提供している マーケティングツール『b→dash』 は、マーケティングプロセス上に存在する全てのビジネスデータを、ノーコードで一元的に管理できる他、BIの機能も充実しており、b→dash上のデータを活用したRFM分析,ROI分析,ROAS分析といったレポートの作成や、メール等の施策の効果検証に最適なツールとなっています。

6. ROIを向上させる2つの方法

ROIを向上させるためには、計算式(ROI(%) = 利益 ÷ 投資額 × 100)のうち利益を伸ばすか、投資額を抑える必要があります。そこで、この2つの観点でROIを向上させる方法を解説します。

6-1. 利益を高める

利益を高めるためには、コストを抑えつつ、「販売数を上げる」「単価を上げる」「原価を抑える」といった観点が有効です。「販売数を上げる」ためには、効果的なマーケティング戦略や販売促進活動を展開し、新規顧客の獲得と既存顧客のリピート購買を促進することが有効です。また、販売チャネルの拡充やオムニチャネル戦略の導入なども販売数の増加に寄与します。「単価を上げる」という観点では、付加価値の高い製品やサービスの提供や、プレミアムプランへのアップセルが有効です。「原価を抑える」という観点では、デジタル化と効率化が不可欠で、MAツールの導入による工数削減やツールの統一による費用削減、データ分析を通じたサプライチェーンの最適化等によるコスト削減を行います。

6-2. 投資額を下げる

投資額を下げる観点では、コストの効果的な管理が鍵となります。無駄な経費や効果の低い広告チャネルを見直すことで、コスト削減につながります。そして、定期的なモニタリングを行い、データに基づいた最適化を進めることが重要です。また、ターゲットの絞り込みを行い、特定の顧客層や需要が高い層に絞り込むことで、広告の精度を向上させることができます。同時に、リスティング広告の場合は、出稿キーワードを調整する、メディアへの広告出稿の場合は、絞りこんだターゲットにあったメディアの選定が重要となります。

7. ITの最新技術とROIの向上

最新技術の導入が進み、IoTやAIなどを活用したIT技術の活用がビジネスにおいて増加傾向にあります。これらの技術は業務の効率化や省人化に寄与し、その結果としてROIの向上が期待されます。具体的には、以下のようなITソリューションがROIの向上に貢献しています。

・SFAやMAの連携による営業プロセスの効率化とムダ削減
・IoTを活用したモニタリングとメンテナンス機能の強化
・ビッグデータのAI分析による高精度なターゲティング

DX推進が叫ばれる現在では、IoTやAIなどのIT投資が活発化しています。特筆すべきは、コスト削減や業務効率化を目指した守りのIT投資を超えて、ビジネスモデル変革などを志す攻めのIT投資が重要視されている点です。 現在、DXが推進される中で、攻めのIT投資が重要視されています。これは、コスト削減や業務効率化に留まらず、ビジネスモデルの変革を目指すものです。

7-1. TCOとは何か

また、IT投資を進めるうえではTCOというキーワードが重要になります。TCOとは「Total Cost of Ownership」の略で、総保有コストと訳されており、購入時の初期投資から、保守/運用/管理にかかるランニングコストなど様々なコストが含まれます

TCOは、IT投資のコスト算出の精度に大きな影響を与えるため、ROIを管理する上で不可欠となっており、収益性の退会運用を目指すうえでは、TCOの把握と削減が重要です。TCOの把握には、イニシャルコストの把握と、ランニングコストの把握の2つの観点があります。イニシャルコストの把握では、導入時にかかる初期投資や購入費用の把握が必要となります。ランニングコストの把握では、IT設備の維持費用や故障時の対応や予防コスト等、予測が難しい観点があることには注意が必要です。TCOの削減では、効率的な運用方法を見つけ、運用コストを最小限に抑えることが重要です。また、オールインワンで様々な機能が使えるツールや、業務効率化ツールの活用なども効果的です。

8. まとめ

ROIは事業投資の費用対効果を利益ベースで可視化できる重要な指標です。この指標を活用することで、異なる事業や施策を客観的に評価・比較することが可能になります。

ROIの把握には定量データが必要であり、正確な数値を得るためにはIT環境の整備が不可欠です。近年では、MA(Marketing Automation)ツールの導入がROI向上につながる成功事例も増えています。MAツールを活用することで、マーケティングプロセスの効率化や顧客エンゲージメントの向上が期待できます。

IT環境の整備を通じて、MAツールの導入も検討しROIを向上させることで、効果的なマーケティング活動が可能となります。プロセスの効率化によりコストを抑えつつ、顧客との関係を強化し、収益性を高める戦略を展開するために、MAツールの導入もその選択肢として検討してみるのはいかがでしょうか。

弊社が提供している マーケティングツール『b→dash』 は、マーケティングプロセス上に 存在する全てのビジネスデータを、ノーコードで、一元的に取得・統合・活用・分析することが可能なSaaS型データマーケティングプラットフォームであり、BtoC業界を中心に、様々な業種・業態のお客様にご導入頂いております。

Editor Profile

  • 福井 和典

    株式会社データX マーケティング管掌執行役員

    日本IBMにてシステムエンジニア、GREEにてCRM領域のオペレーション企画、PwCでの業務コンサルタントとしての経験を経て、2016年よりデータXに入社。データX入社後は、カスタマーサクセス部門に在籍し、小売/金融/アパレル/ECなど幅広い業種に対するb→dash導入支援を統括。
    その後は、主にb→dashのマーケティング/広報/PR活動や事業企画に従事。

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