顧客とのタッチポイントを最適化し、マーケティング施策の成果を上げるために重要となるのが「カスタマージャーニー」です。しかし、カスタマージャーニーの概念や必要性がいまいち理解できていないという人も多いのではないでしょうか。そこで、この記事ではカスタマージャーニーの概要や必要性、メリットなどについて紹介します。

 

1. カスタマージャーニーとはなにか?

まず最初にカスタマージャーニーの概要を整理していきます。

1-1. カスタマージャーニーとは

カスタマージャーニーとは、ペルソナの行動・思考・感情などを時系列で可視化したものです。直訳すると「顧客の旅」となり、顧客が商品・サービスの存在を知って購入や利用に至る、および複数利用に至るまでの一連の体験を「旅」に見立てています。

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1-2. カスタマージャーニーを取り入れるメリット

カスタマージャーニーの考え方を取り入れることによって、どのようなメリットがあるか解説します。

1-2-1. チーム内での認識統一による施策展開のスムーズ化

カスタマージャーニーは、チーム内のメンバーが「顧客理解」という共通目的を持って作成することになります。これにより、メンバー同士のコミュニケーションが活性化し、情報共有や素早い対応が可能になります。ただ、こうしたメリットがある反面、カスタマージャーニーは作成に時間や手間やかかるデメリットがあります。作成の時間が不足すると、カスタマージャーニーの施策が中途半端になる可能性があるため注意しましょう。

1-2-2. マーケティング施策のKPI設定によるPDCAの深化

カスタマージャーニーを設定するには、顧客ファネルのどの段階のペルソナであり、どのような課題に対して情報を与えて解決し、どのような体験をさせるのかを明確化する必要があります。その際、明確なKPIを設けて施策を検討することになるでしょう。カスタマージャーニーに基づく施策を考えることは、KPIの設定にもつながります。顧客視点ではっきりとKPIが定まることは業務運営上有効といえるでしょう。また、KPIに対するマーケティング上のPDCAについても深化させることにつながります。

1-2-3. 顧客起点でのサービス・プロダクトの再解釈

カスタマージャーニーはペルソナの行動・思考・感情を時系列で可視化し、一連の体験をストーリーとして表現します。これにより、企業側は顧客の行動をより深く理解できるようになります。顧客視点からの改善点など、さまざまなことに気付くきっかけを得られます。

1-2-4. ブランド価値の向上

カスタマージャーニーによって顧客視点に立ち、自社の商品やサービスを再度チェックすることができます。これにより、顧客とのタッチポイントの最適化を図ることができ、顧客体験の質を高められます。このような取り組みはブランド価値の向上にもつながっていきます。

1-3. カスタマージャーニーの作成の目的・必要性

カスタマージャーニーは消費者の価値観の多様化に伴って、必要性が増してきました。このような時代においては、顧客が商品やサービスの購入・利用に至るまでにどのようなプロセスをたどるのか、思考や感情を整理して適切にマネジメントする必要があります。そのため、カスタマージャーニーを作成し、顧客の行動を可視化することが重要視されるようになりました。

1-4. カスタマージャーニーに含まれる要素

カスタマージャーニーを構成する要素は、対象とする商品・サービス、またターゲットによって異なります。一般的な構成要素としては、「ペルソナ」「シナリオ」「顧客のフェーズ」「ペルソナの思考や感情」「課題に対する対応方法」などが挙げられます。自社の目的に合わせて内容をカスタマイズしましょう。

1-5. カスタマージャーニーの作成を検討したほうがよい例

カスタマージャー二ーを検討したほうが良い例としては、「新しい企画やサービスを実施したい時」が挙げられます。新しいイベントやキャンペーンを実施する際や企画を考える際は、カスタマージャーニーを作成する良い機会といえます。カスタマージャーニーの利用は、顧客へのアプローチ方法を考えるために役立てられます。

 

2. カスタマージャーニーの種類

カスタマージャーニーを作成する際は、顧客の行動を可視化することが重要となります。顧客の行動は「購買行動モデル」とも表現され、さまざまなフレームワークが存在しています。ここでは、カスタマージャーニーの購買行動モデルを紹介していきます。

2-1. AIDMA

AIDMAは「Attention(認知)」「Interest(興味・関心)」「Desire(欲求)」、「Memory(記憶)」「Action(行動)」の頭文字をとったモデルです。顧客は欲しいと思っても、すぐに購入するとは限りません。購入することを忘れてしまうこともあります。そのため、それを思い出させるための工夫が必要です。「Memory(記憶)」は「Motivate(動機)」に置き換わるケースもあります。

2-2. AICSEAS

AICSEASは「Attention(認知)」「Interest(興味・関心)」「Desire(欲求)」、「Conviction(確信)」「Action(行動)」「Satisfaction(満足)」の頭文字をとったモデルとなります。購入後のリピーターを獲得するためにAIDMAよりも視点を広げたモデルです。購買後の体験によって、消費者は再びその商品を購入するか決めます。こうしたいわゆるリピーターの獲得は企業にとって非常に重要なものといえるでしょう。

2-3. SIPS

SIPSは「Sympathize(共感)」「Identify(確認)」、「Participate(参加)」「Share&Spread(共有と拡散)」の頭文字をとったモデルです。現代はSNSが流行しており、身近な存在からの情報伝達が行われるようになりました。購入だけにこだわらず、投稿のシェアなどでハードルの低い参加を促し、共感の量を増やすことを狙いとしています。

2-4. DECAX

DECAXは「Discovery(発見)」「Engage(関係)」「Check(確認)」「Action(購買)」「eXperience(体験と共有)」の文字をとったモデルです。消費者はSNSの投稿やブラウザの検索などによって、自分に有益な情報と巡り会います。企業側は営業職の強い広告ではなく、消費者にとって有益なコンテンツを認知させることが重要です。やがてその消費者は有益なコンテンツを発信する企業のファンとなり、商品の存在を確認・購入する流れになります。そして快適な体験をしたのち、SNSなどで情報をシェアするというサイクルになります。

2-5. 5A理論

5A理論は「Aware(認知)」「Appeal(訴求)」「Ask(調査)」、「Act(行動)」「Advocate(推奨)」の頭文字をとったモデルです。現代はSNSなどを通じ、消費者は誰とでもつながれる時代が到来しています。こうしたつながりを求める消費者をファンにできれば、周りに商品やサービスを宣伝してくれるようになります。最終的には自社の営業担当者のような存在となってくれるでしょう。

3.カスタマージャーニーの作り方

カスタマージャーニーを作る際には大きく5つのステップがあります。

ステップ➀:ゴールを設定する

カスタマージャーニーにおけるゴールとは、たどり着くべきCVや成果のことを指します。
例えば「新規顧客の商品購入」というゴールを設置した場合は、新規顧客が商品を認知し、購入するまでのカスタマージャーニーを作成します。別の例として、「会員登録」をゴールに設置した場合は、カスタマーがWebサイトを認知/発見し、会員登録を行うまでのカスタマージャーニーを作成します。

ステップ②:ペルソナを設定する

次に、ペルソナを定義します。ペルソナとは、サービスや商品を利用する典型的なユーザー像を表す人物像のことを指しています。ステップ①で設定したゴールにたどり着く人物が、その商品やサービスに対してどのような思いを持っているか、期待しているか、といった点を具体化します。ペルソナを設定する際は、自社の商品やサービスを販売するにあたりターゲットとしている人物像であったり、既存の顧客属性であったりを踏まえて作成することが一般的です。

ステップ③:プロセスを定義し、各プロセスにおける行動を想定する

次に、設定したペルソナがゴールにたどり着くまでにどのようなプロセス(過程)があるかを定義します。2. カスタマージャーニーの種類にあるフレームワークを用いて定義することが多いですが、webサイトにおける『購入』をゴール設定している例を用いると、プロセスの定義と各プロセスにおける行動は以下の通りになります。
・認知(商品/サービスをCM等で知る)
・興味・関心(webサイトへ訪問する)
・欲求(webサイト上で商品やサービスを閲覧する)
・記憶(メール等で案内される商品情報を確認する)
・行動(会員登録をする)

ステップ④:対策を策定する

最後に、定義した各プロセスごとの行動を、実際カスタマーに取ってもらうために、どのような対策を実施するかを定義します。
例えば、「認知」のフェーズにおいて、ペルソナの想定される行動が「SNSでの情報収集」と定義している場合は、「公式アカウントの発信数を増やす」といった対策を定義することが出来ます。

4.カスタマージャーニーの活用事例

この章では、カスタマージャーニーの作成例として、あるアパレルブランドにおけるカスタマージャーニー例を1つ紹介します。

▼▼▼ アパレルブランドでのカスタマージャーニー例▼▼▼

 

このカスタマージャーニーは、「商品購入」をゴールとし、「冬服を新調したい20代女性」というペルソナをたて、「AIDMA」のフレームワークをもとにプロセスや行動を定義しています。
このようなカスタマージャーニーの運用における注意点として、1度作成して終了するのではなく、施策を実施した結果に応じて修正をしていくことが挙げられます。例えば、お気に入り保存してから購入までのCVRが低いことが判明した場合、「行動」フェーズにおける施策を追加する、といった改善をしていく必要があります。

5.カスタマージャーニーを用意するうえでのポイント

カスタマージャーニーを用意する際は「最初から作り込みすぎない」ことが重要です。カスタマージャーニーの作成は容易ではありません。最初から複雑なものを想定すると、完成することが難しくなったり、実現性が低くなったりするおそれがあります。最初はシンプルな内容を心がけましょう。

6. まとめ

消費者の行動が時代とともに変化する現代では、カスタマージャーニーについて考えることは、企業にとって非常に多くのメリットがあります。カスタマージャーニーを用意するなかで消費者の心理をより深く理解することができ、今後のマーケティング施策の役に立てることができるでしょう。ただ、最初はシンプルなカスタマージャーニーを用意することをおすすめします。

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  • Marketics 編集部

    ユーザーデータ・広告データ・購買データなど、マーケティングプロセス上に存在する全てのビジネスデータを、 ノーコードで、一元的に取得・統合・活用・分析することが可能なSaaS型データマーケティングプラットフォーム「b→dash」が運営する マーケティングメディア「Marketics」の編集部。インタビュー記事やノウハウ記事を定期的に発信しています。

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