本記事では、企業の成長においてもっとも重要な指標の一つである「継続率」を把握するための「コホート(リテンション)分析」について、その重要性と利用方法をご紹介します。
弊社が提供している マーケティングツール『b→dash』 は、マーケティングプロセス上に存在する全てのビジネスデータを、ノーコードで一元的に管理できる他、b→dash上のデータを活用した分析レポートや、メールやLINE配信等の施策成果レポートの作成に最適なツールとなっています。
1. コホート分析とは?
コホートは英語で「仲間」という意味を持ち、コホート分析とは自社のwebサイトやアプリに訪れたユーザーを、行動の傾向ごとに分ける分析方法を指します。もともと心理学の分野で使われる「コホート研究」をマーケティングに応用したのがコホート分析です。
コホート分析では、webサイトやアプリのユーザーの定着率を見ることができます。従って、コホート分析を使えば、サイトを訪れた人がネット上でどんな行動をとっているのかを把握することができ、マーケティングの改善点などを知る手がかりになります。
2. コホート分析の重要性
マーケティングにおいては新規顧客獲得よりも、リピーター獲得の方が重要だといわれています。アプリやサービスであれば再利用率、webサイトであれば再訪率、販売サイトであれば再購入率を高めなければなりません。コホート分析では、定着率の可視化を通じて、リピーターの割合や行動の傾向を知ることができます。
また、リピーターにならない人たちが「どの時点で興味がなくなったのか」など共通の行動パターンも明らかにできます。それらの分析結果を生かして商品/コンテンツ/サービス内容の改善点を見つけ、リピーター獲得に繋げることができます。
3. コホート分析でわかること
3-1. ユーザー減少のタイミング
見込み客がサイトを離れて再訪問しなくなった(ユーザー減少)タイミングを知ることができます。例えば、コホート分析により、ユーザーの多くが最初にサイトを訪問した日から3日後に離脱していることが判明したとしましょう。コンテンツの更新頻度を3日以内に上げたり、ユーザーが離脱する前のタイミングでポップアップにてお得な情報を投入するなどの施策が打てます。
3-2. サイト滞在時間と離脱のタイミング
コホート分析で判明したユーザーのサイト滞在時間から、サイト自体の問題点を見つけ出すこともできます。ユーザーのサイト滞在時間が短ければ、本当に見てもらいたい情報にユーザーが辿り着いていない可能性があります。滞在時間や離脱タイミングが可視化されることで、なぜユーザーがそのタイミングで離脱しているのか原因を探ることができます。
そして、ユーザーの滞在時間を増やすためには以下のような施策を打つことができます。
・1ページあたりのコンテンツのボリュームを増やす
・ページ数を増やして内部リンクを貼る
・内部リンクを最適化してサイト内回遊率を上げる
3-3. ページビュー数の減少タイミング
コホート分析ではページビューの減少タイミングを知ることもできます。ページビューもサイトへのアクセス数を増やすためには大切な指標になります。たとえば、初回のサイト訪問から2日後にページビューが減少しているとしましょう。この場合、2日ごとに複数ページを閲覧してもらえるような導線を作る必要があり、内部リンクの多い記事を2日おきに更新して複数ページの閲覧を促す流れを作るなどの対策を打つことができます。
4. コホート分析のメリット・デメリット
コホート分析におけるメリット・デメリットは何でしょうか。ここでは、コホート分析のメリット・デメリットについて解説します。
4-1. メリット①:1ユーザー当たりのサイトの売上(LTV)を把握することができる
webサイト売上は「1ユーザーあたりの平均単価」と「アクティブユーザー数」で構成されます。webサイトの平均継続利用期間をかけたものがLTV(顧客生涯価値)であり、1ユーザーあたりの総売上です。コホート分析により、定着率がわかるので、LTVを予測しながらサイト改善ができます。
4-2. メリット②:ROASを考慮したユーザー獲得コストの最適化ができる
コホート分析でわかる定着率により、よりROIを最適にすることができます。新規ユーザーの獲得コスト(CPA、CPI)は新規ユーザ施策にかけたコストをDL数で割ることで比較することができます。 しかし、どれだけ長い期間利用しているのかを考慮せずに、CPAのパフォーマンスだけで施策を評価してしまうと、純損失になるものを良い施策として評価してしまったり、収益に貢献しているものを悪い施策と判断してしまったりする場合があります。
一例として、ある企業のFacebookとTwitterの施策実績を見てみましょう。
Facebook:100,000円(投資額)÷120人(獲得ユーザー数)=833円(CPA)
Twitter:100,000円(投資額)÷150人(獲得ユーザー数)=667円(CPA)
一見するとFacebookはTwitterよりもユーザー獲得コストが安いので、「Facebook広告により多くの予算を配分しよう」と判断してしまいそうですが、もし両者のROASが下記のような場合はどうでしょうか。
Facebook:120人(獲得ユーザー数)×2.5カ月(平均利用期間)×400円(月次ARPU)÷100,000(投資額)=120%(ROAS)
Twitter:150人(獲得ユーザー数)×1.25カ月(平均利用期間)×400円(月次ARPU)÷100,000(投資額)=75%(ROAS)
FacebookはCPAこそTwitterよりも安いですが、平均利用期間が短くLTVが少なくなっています。一方で、Twitterは平均利用期間が長く、LTVが高くなっているので、アプリの収益につながる獲得チャネルであると判断できます。 このように、定着率を把握することでROASを考慮した獲得施策の意思決定ができるのです。
[参考記事]
ROAS分析とは?
4-3. メリット③:webサイトやアプリの成長につながる改修ができているか効果検証することができる
webサイトやアプリのUX変更や機能追加などがアクティブユーザーの増加に貢献しているか確かめたい場合、アクティブユーザー数は改修による効果を検証するためのKPIとしてふさわしくありません。なぜならアクティブユーザー数は曜日や季節、プロモーションなど様々な外部要因によって変動してしまうからです。
アクティブユーザー数からそうしたノイズを除去するために、初回起動後の継続率を加味したアクティブユーザー数を指標にしている企業も見られます。例えばソーシャルメディアの『Pinterest』は新規サインアップ後1週間以内に1回以上『Pinterest』を使っているユーザーの割合を「1d7s」という指標で定義しているそうです。
4-4. デメリット
コホート分析におけるデメリットはほとんどありません。強いてあげるのであれば、細かい分析を実施しようとすると、より指標を多く取得して細かいセグメントを作成する必要がある点でしょう。
例えば、以下のような壁にぶつかるかもしれません。
・施策別に見るためには、それぞれセグメントを作成し、別のレポートを作成しなければならない
・流入元やトラッキングコードごとに複数の指標を確認したいときにそれぞれレポートを作成しなければならない
上記の課題を解消するためには、取得しているデータ量から、いかに簡単にレポートを作成できる状態を実現できるかが重要です。
レポートの作成を簡単に行うためには、利用するツールの選定が重要となります。自社に適したツールを選ぶためのポイントについては下記資料にてご紹介しておりますので、是非合わせてご一読ください。
5. コホート分析の活用事例
実際にコホート分析はどのように活用できるのか、事例を紹介します。
5-1. ECサイトの活用事例
コホート分析は「ECサイトのリピーター作り」と相性が非常に良いです。ECサイト運営では売上を上げるためにキャンペーンを打つことがよくありますが、キャンペーンの売上は一時的なものに過ぎず、キャンペーンで購入してくれたユーザーをいかにリピーターにするかが大事になってきます。
コホート分析を使えばキャンペーン経由で訪れたユーザーのその後の行動も追うことができます。例えば、リピーターになる人たちの多くが「キャンペーンの何日後にサイトを再訪しているか」などの傾向を知ることもできます。キャンペーン経由のユーザーが再訪する日に合わせて再度キャンペーンをしたり、リピーター獲得に向けた情報発信をしたりすることで、定着率をあげる施策を行うことができます。
5-2. webサイト運営の活用事例
webサイトの効果的な更新のタイミングを探るのにもコホート分析を使うことかできます。例えば、サイト内のブログを更新してからどの期間に問い合わせが増えて、どの期間を過ぎればユーザーが興味を失うのか分析します。その結果を見て、ユーザーが興味を持ち続けてくれるために最適なブログ更新頻度やタイミング、記事内容を検討することができるでしょう。
弊社が提供している マーケティングツール『b→dash』 は、マーケティングプロセス上に存在する全てのビジネスデータを、ノーコードで一元的に管理できる他、b→dash上のデータを活用した分析レポートや、メールやLINE配信等の施策成果レポートの作成に最適なツールとなっています。
6.コホート分析の実施方法
誰もが始めやすい方法として、Googleアナリティクスでの実施方法と、エクセルでの実施方法をご紹介します。
6-1. Googleアナリティクスでのコホート分析の実施方法
「コホート分析」はマーケティング業界では以前から活用されていた手法ですが、Googleアナリティクスで2013年9月にコホート分析ができる機能が実装されてから、「コホート分析」がより身近な手法となりました。「ユーザー」から「コホート分析」をクリックして、「コホートの種類」「指標」「コホートのサイズ」そして「期間」の4つを設定します。
〇コホートの種類
ユーザーを獲得した日付、つまりユーザーが初めてセッションを開始した日のことです。
〇指標
何を分析の対象にするのかを設定します。ユーザーあたりの収益やセッション継続時間などのユーザーごとの指標やセッションやユーザー数などの合計、またはユーザー維持率である定着率から選べます。
〇コホートのサイズ期間
毎日コホート分析をしたいのであれば「日別」、週ごとの「週別」などコホートサイズを選択します。
〇期間
コホートサイズに応じて、どれだけの間、コホート分析をするのかを決めます。「日別」なら過去30日間、週別なら過去12週間、月別なら過去3ヶ月から選べます。
6-2. Googleアナリティクスでの設定画面例
実際にGoogleアナリティクスでコホート分析を設定する方法を説明していきます。ここでは「コンバージョンに至らなかったユーザー」のセグメントで、ユーザーの維持率のコホート分析を行う例を用いて説明していきます。
① Googleアナリティクスのホーム画面で「ユーザー」→「コホート分析」の順でクリックする
Googleアナリティクスの管理画面から、左端にあるサイドバーの「オーディエンス」内にある「ユーザー」をクリックした後に、「コホート分析」をクリックします。
② 「セグメントを追加」をクリックする
今回、すべてのユーザーではなく、「コンバージョンに至らなかったユーザー」のセグメントでコホート分析を行います。セグメントを追加するため、「セグメントを追加」をクリックします。
③ 「コンバージョンに至らなかったユーザー」にチェックを入れ、「適応」をクリックする
表示させたいセグメントとなる「コンバージョンに至らなかったユーザー」にチェックを入れます。
④ 結果を確認する
適応をクリックするとコホート分析の結果が表示されますので、結果を確認します。
※ユーザーの維持率はデフォルトで設定されています。
〇その他の詳細設定
Googleアナリティクスのコホート分析では、指標や期間など自由に設定することができます。
[設定方法]
指標や期間を設定するには、下記の箇所を任意のものに設定します。
[設定可能な項目]
①コホート分析の種類
2022年09月現在、コホート分析の種類は「集客の日付」のみ選択できます。集客の日付とは、ユーザーが最初にセッションを開始した日(ユーザー獲得日)を表しています。
②指標
コホート分析をどんな指標で分析したいのかを設定できます。
「ユーザーあたりのセッション」「トランザクション数」など12種類の指標が設定できます。
③期間
「コホートのサイズ」や「期間」で表示させる時間の幅や細かさを設定できます。「コホートのサイズ」には「日別」「週別」「月別」があり、それぞれに応じて「期間」を設定できます。
6-3. エクセルでのコホート分析の実施方法
ピボットテーブルを使ってコホート分析をすることも可能です。ユーザーのデータを月ごとなどに区分けしてある一定期間の使用状況などをインプットして、コホート分析を行います。
例えば「あるウェブサイトの一年分のユーザーの定着率」のコホート分析をするならば、各ユーザーごとのセッションの開始日のエクセルテーブルを準備して、ピボットテーブルを組みます。一年間のセグメントを月ごとに設定して、データを入力していきます。月別で一年分のユーザーの定着率をコホート図により表現できて、横軸では月ごとの平均定着率がわかります。
7. コホート分析のためのBIツール6選
GA4やエクセルで手軽に行えるコホート分析ですが、その他のツールを利用するとより素早く細かい分析や効果的な施策ができます。ここでは、代表的なデータ解析ツールやユーザー維持率向上の施策に活用できるツールを6つをご紹介します。
7-1. おすすめツール①:Looker(ルッカー)
LookerはGoogleが提供するBIツールで、大量のデータを収集/分析できます。収集したデータは「LookML」というモデリング言語で一元管理しているため、すべての操作をweb上で完結でき、分析結果を各部署で共有しやすいほか、どこにいてもリアルタイムでの素早いデータ解析が可能になります。
7-2. おすすめツール②:Tableau(タブロー)
Tableauとは、セールスフォースドットコムの提供するBIツールです。主な特徴としては、BIツールの中でもビジュアルが分かりやすく操作性に優れている点や、1ユーザーから契約できるためスモールスタートできる点が挙げられます。また、ユーザー同士が交流できる「Tableauコミュニティ」があり、メンバー同士で疑問を解決し合うことも可能です。
7-3. おすすめツール③:Power BI
Power BIは、マイクロソフト社が提供するBIツールです。セルフBIサービスなので、プログラミングの知識がなくても手軽に始められる点が特徴です。また、Microsoft Office製品との汎用性が高いことも導入のメリットです。例えば、エクセルのデータを読み込み、細かな分析を行うことが可能です。
7-4. おすすめツール④:Domo
Domoとは、自社が保有する様々なマーケティングデータをリアルタイムで一箇所に集約することで、迅速な意思決定が可能になるビジネス管理プラットフォームです。多岐に渡るデータを取り扱いつつも、優れたビジュアルやインターフェースにより、抜群の使いやすさを誇ります。高機能なモバイルアプリにより実現するモバイルファースト仕様であるため、外出中でも十分なデータチェックが可能です。
7-5. おすすめツール⑤:KARTE
web接客ツールとして有名なKARTEですが、KARTE for Appの「リテンションレポート(β機能)」にてコホート分析を行うことが可能です。リテンションレポートではユーザーのログインやコンバージョンなど、特定のイベントが発生したユーザーに分けて、リテンションレートを把握できます。
7-6. おすすめツール⑥:b→dash
データの収集や加工/統合のみならずBIやMA、web接客などマーケティングに必要な機能がAll in Oneで搭載されています。また、コホート分析をはじめとする多くの分析をテンプレートで用意しているため、ノーコードでより簡単に実現することが可能です。
6つのBIツールをご紹介しましたが、自社に適したツールを選ぶために押さえておくべきポイントを下記にてご紹介しておりますので、是非合わせてご一読ください。
8. まとめ
webサイトやアプリを使ってマーケティングをされている場合、コホート分析を使うとよりROIが高くPDCAを回していくことが可能です。コホート分析のメリットや実施方法をしっかりと把握したうえで、ご紹介したさまざまなツールも含めて、自分に合ったツールを選び、最大限に活用していきましょう。
[参考記事]
・LTVとは?
弊社が提供している マーケティングツール『b→dash』 は、マーケティングプロセス上に 存在する全てのビジネスデータを、ノーコードで、一元的に取得・統合・活用・分析することが可能なSaaS型データマーケティングプラットフォームであり、BtoC業界を中心に、様々な業種・業態のお客様にご導入頂いております。
●目次
1.コホート分析とは?
2.コホート分析の重要性
3.コホート分析でわかること
3-1. ユーザー減少のタイミング
3-2. サイト滞在時間と離脱のタイミング
3-3. ページビュー数の減少タイミング
4.コホート分析のメリット・デメリット
4-1. メリット①:1ユーザー当たりのサイトの売上(LTV)を把握することができる
4-2. メリット②:ROASを考慮したユーザー獲得コストの最適化ができる
4-3. メリット③:webサイトやアプリの成長につながる改修ができているか効果検証することができる
4-4. デメリット
5.コホート分析の実践事例
5-1. ECサイトの活用事例
5-2. webサイト運営の活用事例
6.コホート分析のやり方
6-1. Googleアナリティクスでのコホート分析の実施方法
6-2. Googleアナリティクスでの設定画面例
6-3. エクセルでのコホート分析の実施方法
7.コホート分析のためのBIツール5選
7-1. おすすめツール①:Looker(ルッカー)
7-2. おすすめツール②:Tableau(タブロー)
7-3. おすすめツール③:Power BI
7-4. おすすめツール④:Domo
7-5. おすすめツール⑤:KARTE
7-6. おすすめツール⑥:b→dash
8.まとめ