インターネットおよびモバイルデバイスの普及や、顧客の購買プロセスの変化などにより、企業活動において、マーケティングオートメーション(MA)ツールが果たす役割はますます大きくなっています。この記事では、MAツールの効果やメリットを解説したうえで、具体的なMAツール導入における成功/失敗事例を紹介し、その成否の分岐点となったポイントも考察していきます。

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・マーケティングオートメーション(MA) とは?機能やできること、導入メリットを解説!

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1. マーケティングオートメーション(MA)導入 のゴールと効果は?

まず、MAツールの導入目的や導入企業にもたらされる効果を整理していきます。

1-1. MA(マーケティングオートメーション)とは?

MA(マーケティングオートメーション)とは、ITツールを活用することで、顧客情報の収集や蓄積、見込み顧客の育成、販売促進活動やその結果の分析、といった企業におけるマーケティング活動を「自動化させる仕組み」のことです。

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1-2. MA(マーケティングオートメーション)の導入メリット

MAの仕組みを社内に構築することによって、これまで人的工数を要していたマーケティング業務の自動化が可能になり、マーケティング活動の効率化や業務の生産性向上を期待することができます。顧客データをもとに、適切なセグメントに適切なタイミングとコンテンツでメールを自動送信するシナリオ機能あがあるので、業務の生産性を改善することが可能です。

また、KPIの改善や売上の向上に寄与することもメリットの一つです。先述した、適切なセグメントに適切なタイミングとコンテンツでメールを自動送信することで、顧客の満足度や、商品理解度、購入意向度を引き上げることができるため、商品の購入確率や問い合わせの確率を高める事ができます。

1-3. マーケティングオートメーション(MA) 導入の効果やKPIは?

MAツールがもたらす効果のKPIとして挙げられるのは、メールの開封率(数)、リンククリック率(数)、CV率(数)、返信率(数)、メール経由売上、獲得クッキー(Cookie)数などです。最終的には、受注数の増加による売上の向上がゴールになるため、どれだけの費用対効果があるかは導入時に検討しておくべきです。

また、下記の資料にてMAツールについてより詳しく説明をしておりますので、是非合わせてご一読ください。

2. マーケティングオートメーション(MA)ツール導入の進め方

1. 企画

MAツールの導入において、最初にやるべきことは、何を目的に、どのような施策や分析を実施するのかを策定するこです。

まずは、マーケティングや販売促進活動を行うことで具体的に向上させたいKPIを設定します。BtoB事業でいうと「商談数」や「受注数」、BtoC事業でいうと「2回以上購入経験がある会員数」「ECサイトの総売上」といった改善したいKPIを設定できたら、次はそのKPIを改善するために具体的にどのような施策や分析を行うかを定義する、といった流れで企画を進めることが一般的です。

その他に、この段階で重要なことは「シナリオ設計」です。シナリオ設計とは、顧客の購入までの行動を想定し、それを実現するための道筋を設計することです。これを定めることにより、人の手で行っていた業務を自動化することができ、工数の削減やヒューマンエラーの防止へと繋げることができます。
また、シナリオ設計により、「適切なタイミングで」「適切な顧客に」「適切なコンテンツ」を訴求することができるため、顧客満足度の向上を図ることもできます。

[参考記事]
・MAのシナリオ設計のコツ!マーケティングで成果を生むには?
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2. 導入

やるべき施策や分析が決まったら、次に導入作業に入ります。導入作業とは、施策や分析を実施するために必要な準備を行うということですが、具体的には、施策に必要なデータの準備や、MAツール上の設定作業が該当します。

必要なデータの準備とは、例えば、「2回以上購入経験がある会員数」を増やすために、F2転換シナリオ配信や分析を行いたい、という場合には、1回だけ商品を購入したことがある会員の一覧のセグメントデータを準備し、その会員に対して配信するメールやLINEのコンテンツを作成し、さらには、それを配信するための設定を行う、といった内容が導入作業にあたります。

この導入作業には、一定のリテラシーや工数を要しますので、利用するMAツールのベンダーが、設定方法等をしっかりと支援してくれるかどうかも意識しておきましょう。

3. 運用

導入作業を行うことで、施策や分析を実施できる環境が整えばあとは実施する(運用する)のみです。注意するべき点としては、実施して終了、というわけではなく、実施した結果を確認し、改善点を抽出し、施策や分析をブラッシュアップして再度実施する、といったようにPDCAを回す点にあります。

例えば、F2転換シナリオ配信を実施した場合ですと、配信した結果、メールの開封率が他のシナリオよりも低い、という分析結果が出た場合、次回のF2転換シナリオ配信においては、開封率を向上するためにメールのタイトルを変更して配信する、といった内容がPDCAに該当します。

3. マーケティングオートメーション(MA) の導入で失敗するケース

これまでMAツール導入のポジティブな面ばかり紹介しましたが、もちろんMAツールを導入したものの失敗してしまうケースもあります。では、実際に企業がMAツールから期待通りの成果を得られない場合に生じる問題とその原因を整理していきましょう。

3-1. マーケティングオートメーション(MA) の導入で “失敗” するとは?

MA導入における”失敗”とは、導入企業が上述したようなKPIの改善が見られないケースや、生産性が改善していない状況を指します。また、ツールコストが発生しているので、導入前からKPIや工数が改善したとしても、その変化の幅が小さければROIがあっている状況ではありません。

導入に失敗してしまう原因としては、ツールの選択の仕方や、導入企業内の体制など、複数の場合があります。

3-2. 失敗するパターン

パターン①:導入企業の業態とMAツールの機能が合っていない

MAツール導入を失敗してしまうパターンの1つ目は、そもそも導入企業の業態にMAツールの機能が合わないという状態です。

例えば、建売住宅のハウスメーカーを例にして考えていきましょう。一般的に私たちが建売住宅を購入するのは人生において1回、多くて2回程度です。そのため、一度購入してから2回目購入までのサイクルが非常に長い(もしくは2回目購入に至らない)ので、定期的にメールなどでコミュニケーションをとってもあまり意味がありません。もし、リフォームのサービスや、家具などの商品販売など、複数事業を展開していればクロスセルを促す事ができるため、導入するメリットはありますが、購入サイクルが非常に長い建売住宅の単一事業のみ展開している場合などはMAツールを導入しても効果が得られないでしょう。

パターン②:不要な機能を付けすぎている

自社に不要な機能を付けすぎているがゆえに、本当に必要な機能を有効に使いこなせないケースもあります。多くの機能を備えたMAツールが増えている傾向にありますが、過剰な機能の導入はツール全体の運用効率を下げてしまったり、全部の機能を使おうとして、結局なんの機能も使いこなせないという可能性がある点に留意してください。また、導入する機能数が多ければ多いほど、当たり前ですがコストも跳ね上がるので、ROIもシビアになっていきます。ツール選定の際は、そもそも自社にとって必要なマーケティングのあり方とそれに必要な機能を整理しておく必要があります。

パターン③:保有リードの絶対数が少なすぎる

3つ目の失敗パターンは、保有リードの絶対数が少なすぎるというケースです。MAツールの大きな強みは、顧客に関する様々なデータを元に、ニーズを細分化して1 to 1のコミュニケーションを実現することで受注までのプロセスを引き上げることができる点にあります。もちろんリード数が少なくても、MAの機能を使ってメール配信をすることは可能ですが、件数が少なければ、BtoB企業であれば営業担当とマーケ担当が1件ずつ電話やメールで対応可能ですし、BtoC企業でも、1人1人にカスタマイズしたメールを作って手動で配信しきれてしまいます。

一般的に、約10,000リード以上あれば導入の効果が期待できるため、社内にMAを導入するに足る一定のリード数あるかどうか確認をしてからツールの導入を検討しましょう。

パターン④:コンテンツ数や質が不十分である

4つ目の失敗のパターンは、MAで配信するコンテンツの数や質が不十分というケースです。MAを活用することで、顧客ニーズを細分化して1 to 1の施策を打つことができると言っても、セグメント毎に送り分けるためのコンテンツ量が担保できていなければ、そもそもメールを送ることはできません。また、コンテンツの質が低ければ、いくら出し分けをしたとしてもクリックやCVに至りません。そのため、社内のコンテンツ制作の専任をつけるか、外部のコンテンツ制作会社に依頼するなどして、クオリティの高いコンテンツを安定的に生産できる状況を整えておくことが重要です。

パターン⑤:運用体制が整っていない

5つ目の導入失敗のパターンは、MAツールの運用体制が整っていないというケースです。当たり前ですが、ツールを導入して終わりではないので、配信セグメントの定義や、上述したコンテンツの準備、シナリオの作成、実施した施策のPDCAなど、やるべきことは多岐に渡ります。ツールを導入したものの、他業務が忙しくて手が回らないケースや、担当が不明確になっておりポテンになってしまうケースなど、体制面で運用に乗らないケースも非常に多いので、予め体制や役割は明確にしておくことをおすすめします。

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4. マーケティングオートメーション(MA)の導入で “成功” するポイントは?

MAツール導入において失敗するパターンに続き、MAツール導入を成功させるポイントを解説していきます。

ポイント①:ツールの導入目的を明確にする

成功のためのポイントの1つ目は、ツールの導入目的を明確にするということです。KPIの改善や工数の削減など、各企業でツールによって解決したい課題や目的はそれぞれ異なっています。どの企業でも快適に使える万能のMAツールがあるわけではなく、各企業にとって最適なツールを選定するという認識が重要です。また、導入後はKGIやKPIといった目標を設定し、選択したMAツールの効果を確かめながら運用していくのがおすすめです。

ポイント②:ツールを活用できる人的リソースを充実させておく

成功のためのポイントの2つ目のポイントは、ツールを活用できる人的リソースを充実させておくことです。MAがマーケティング活動を自動化するツールであるとはいえ、導入しただけで魔法のように問題を解決してくれるわけではありません。一定の知識を備えた担当者が運用に携わることでMAツール本来の機能を引き出すことができます。逆に、十分なリソース確保が難しい場合は、初心者でも操作しやすいシンプルな設計のツールや、サポート体制が充実しているツールを選ぶ方が好ましいでしょう。

ポイント③:運用開始時にツールの設計を入念に行う

成功のためのポイントの3つ目は、運用開始時にツールの設計を入念に行うことです。どのようなセグメントを切って、どのようなコンテンツを配信し、どのようにコンバージョンまで結び付けていくのか、スコアリングの設定やシナリオの設計など、検討するべきことは多岐に渡ります。この設計の完成度次第で、商品やサービスの購入促進効果が見込めるかどうかの分岐点となるでしょう。また、こうした設計は市場や自社の状況の変化に応じて見直しを図ることも大切です。

その他にも、ツールの導入において押さえておくべきポイントを下記にて詳しくご紹介しておりますので、是非合わせてご一読ください。

5. マーケティングオートメーション(MA)導入の失敗事例4選

実際にMAを導入した企業の失敗事例を、業界ごとに分けて、紹介していきます。

人材業界

はじめに人材業界の失敗事例を紹介します。

企業Aのケース

企業Aは、製造業への人材派遣に特化した人材派遣サービス企業です。助成金が適用され低コストで導入できることから、特に明確な解決課題を洗い出すこともないまま、MAツールの採用を決定しました。業務全体を自動化してくれる最新ツールというイメージ先行の判断でしたが、意外に企業側が設定/設計すべき項目が多く、メインの担当もつけていなかったので、ほとんどの機能が十分に使われないままその存在意義を発揮できない状況が続いています。

スクール(ジム/エステ/学校)業界

続いて、スクール(ジム/エステ/学校)業界の失敗事例を紹介します。

企業Bのケース

資格試験のオンライン特化型講義を提供する企業Bは、契約数が伸び悩む状況を問題視し、「資料請求や無料体験講義の申し込みに至ったが契約に至っていない見込み顧客」を高確率で契約に結び付けるべく、MAツールの導入を決めました。半年以上ツールの運用を続けましたが、一向に成果につながる兆しが見られません。相談を受けたカスタマーサポートが設定を確認したところ、あまりマーケティングに精通していない企業Bの担当者は、シナリオを正しく設定できておらず、セグメントの作成方法や分岐のさせ方が不十分なまま運用を続けていました。

メーカー業界

最後に、メーカー業界の失敗事例を2つ紹介します。

企業Cのケース

企業Cは、イベント用の音響機器を製造するメーカーです。人の活発な移動が難しい社会状況でも、自社の新製品を積極的にPRする目的でMAツールの導入を決めました。MAの機能を最大限に活かすため、100を超えるコンテンツを用意。スコアリング設定を済ませ、リードを可視化したうえでその動向を細かく追っていました。しかし、そもそも保有しているリード数が数千件程度だったので、営業担当が直接コミュニケーションを取ることができており、MAの投資対効果はほとんどない状況となっています。

企業Dのケース

企業Dは、企業向けにSaaSのプロダクトを開発/販売する企業です。競合サービスが急増してきた背景もあり、より高精度でリードを新規契約に促せるMAツール導入を決断します。しかし、想定以上に初期設定などの工程が複雑で、ツールを運用開始できる状況にたどり着くまで長い期間が経過してしまいました。サポート側から一通り説明を受けると、設定に苦心していた機能の大半は自社には不要な用途であることが判明。費用対効果の観点からも望ましくない状況にあります。

6. マーケティングオートメーション(MA)の導入の成功事例5選

続いて、実際にMAを導入した企業の成功事例を、業界別に分けて5つ紹介していきます。

食品業界

1つ目は、食品業界の成功事例です。

江崎グリコ

江崎グリコ株式会社は、「ポッキー」などの大ヒット商品や、「アーモンド効果」などの健康価値を高めるブランドを展開している食品業界の企業です。江崎グリコはCDPというデータ基盤とMAを連携し、顧客の購買履歴やサイトの閲覧履歴から、セグメント分けを行い、閲覧商品や購入商品のレコメンドや、人気商品ランキングなどを最適なタイミングでメール配信しました。最終的にMAツールを導入したことで、ユーザーのファン化を促進させることができました。

スクール(ジム/エステ/学校)業界

2つ目は、スクール(ジム/エステ/学校)業界の成功事例です。

鹿島学園

鹿島学園高等学校は22の都府県に合計300校以上の提携校を備えている学校法人です。MAツール導入前は、各提携校に資料送付する学生リストやメールを手作業で作成していたことで工数が多くかかっていました。しかし、MAツールを導入したことでリスト作成や学生の選定、メールの作成まで自動で実施したことによって、工数を3分の1削減することに成功しました。結果的に、工数だけでなく人員/コスト削減を実現しました。

金融業界

3つ目は、金融業界の成功事例です。

クレディセゾン

株式会社クレディセゾンはクレジットカードやファイナンスビジネス、資産運用ビジネスなどの事業を展開する金融業界の会社です。クレディセゾンはMAツール導入前、細かいセグメントを行わずにメールを一斉配信する施策を実施していました。そのため、各顧客が求めている情報を届けることができていませんでした。そこでMAツールを導入し、リストの選定を自動化できたことで、最適なコンテンツの提供が可能になりました。その結果として、開封率/クリック率が200%アップを実現しました。

小売業界

4つ目は、小売業界の成功事例です。

阪急阪神百貨店

株式会社阪急阪神百貨店は、関西を中心に15店舗を展開する小売業界の企業です。阪急阪神百貨店はMAツールを導入したことで、顧客を年代に応じたセグメント実施や、ECサイトの閲覧履歴に基づいたコンテンツ作成、最適なシナリオ設定が可能になりました。顧客の状態や興味に合ったアプローチができたことで、結果的にCV数を約4倍と店舗からECへの送客率を約3.5倍という成果に繋がりました。

人材業界

5つ目は、人材業界の成功事例です。

学情

株式会社学情は、就職情報サイトの運営や就職に関するイベントの開催などを行う、人材採用に関する事業を展開する企業です。学情はMAツールとCDPを連携したことで、会員データやサイトアクセスデータを活用した施策を実施することができました。例えば会員登録後7日以上経過した場合に、求人応募数が大幅に下がるため、会員登録からの経過日数に合わせてメールを配信することや、シナリオ設定などを実施しました。その結果、メール経由の求人応募率を前年度比較で140%、メール経由でのサイトアクセス数はPVベースで377%向上させることに成功しました。

その他にも、様々な業種業態におけるマーケティングオートメーション(MA)導入の成功事例を下記にてご紹介しておりますので、是非合わせてご一読ください。

7. まとめ

マーケティングオートメーション(MA)は工数の削減やKPIの改善を見込める画期的なツールですが、目的に合わないものを選ぶとかえって工数が逼迫したり、ROIが悪化する原因にもなりかねません。また、ツールの設定や運用体制次第で、その効果が大きく左右されるというのもMAツールの特徴です。導入で成功したパターンと失敗したパターンの双方を把握し、MAの機能を最大限に引き出して目標達成できるよう工夫しましょう。

[参考記事]
・マーケティングオートメーション(MA) とは?
・【2024年最新】MAツールとは?機能やできること、おすすめ10選を紹介
・無料MA(マーケティングオートメーション)ツールおすすめ10選!
・MAのシナリオ設計のコツ!マーケティングで成果を生むには?

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Editor Profile

  • 福井 和典

    株式会社データX マーケティング管掌執行役員

    日本IBMにてシステムエンジニア、GREEにてCRM領域のオペレーション企画、PwCでの業務コンサルタントとしての経験を経て、2016年よりデータXに入社。データX入社後は、カスタマーサクセス部門に在籍し、小売/金融/アパレル/ECなど幅広い業種に対するb→dash導入支援を統括。
    その後は、主にb→dashのマーケティング/広報/PR活動や事業企画に従事。

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