ページトップへ
2018.10.22

規模や予算は関係ない!
今さら聞けないオムニチャネルの基本と誤解

昨今、小売業界において流行している「オムニチャネル」というキーワード。オムニチャネルに取り組むことで顧客満足度を向上し、より収益を伸ばしていきたい、ということはどの企業でも考えることだと思います。しかし、実際にオムニチャネルという言葉の本質を理解し、具体的な施策を実現し、顧客に感動体験を届け、売り上げを向上できた会社がどれくらいあるでしょうか?そこで本記事では、オムニチャネル導入における考え方の整理や、オムニチャネルに対する誤解の解説、具体的なオムニチャネル施策を説明いたします。また、大企業に限らず、予算や人的資源に制限がある中小・中堅企業においてもオムニチャネルを実践できるような内容を紹介しておりますので、1社でも多くの企業がオムニチャネル施策を展開し、顧客満足の向上と収益向上を実現することを願っております。

オムニチャネルの定義とは?

 オムニチャネルの実現において、多くの方がまず、最初に直面する疑問は“そもそもオムニチャネルとは何か”という点です。この疑問は”オムニチャネル”という言葉がマーケティング市場において抽象度が高いバズワードとして利用されていることに発します。例えば、ある人が言うオムニチャネルとは、店舗とECの会員IDを統合することかもしれませんし、また別の人が言うオムニチャネルとは、顧客情報のみならず、物流・在庫情報のすべてをシームレスに統合することかもしれません。さらには、顧客が商品を購入する場所を店舗かECが自由に選択できる環境を整えることだ、と言う人もいるかもしれません。このように、オムニチャネルという言葉に対する認識は人によって大きく異なります。

 このように、人によって定義が異なりますが、本記事においてあえてオムニチャネルを定義するとすれば、”顧客満足と収益を向上させるために、顧客一人ひとりにあった最適な購買体験を提供すること”と考えています。前半部分の”顧客満足と収益を向上させるために、”という点は、企業活動である以上、最終ゴールは顧客満足の実現、ひいては収益を向上させることですので、それを明言しておいた方がわかりやすいと考えています。そして後半部分の”顧客一人ひとりにあった最適な購買体験を提供すること”という点には、店舗やECなど複数のチャネルでサービスを提供してもそれが顧客にとって喜ばれるものでないと意味がない、そして顧客も多様化している中、顧客一人ひとりが求めている体験を提供しないと意味がない、という意味を込めています。

 本記事ではこのような定義付けをしていますが、極論、オムニチャネルについて明確な定義を定める必要はない、という意見もあってよいと思います。と言いますと、オムニチャネルに対する人々の定義が異なるため、定義の認識をすり合わせることに時間がかかってしまうからです。定義のすり合わせに時間をかけるより、具体的にどのような施策をするのか、その施策をどう実現するか、というすり合わせに時間を割いた方が、オムニチャネルの実現の近道のようにも思えます。

オムニチャネル施策実現に向けた誤解

 オムニチャネル、言い換えると、”顧客満足と収益を向上させるために、顧客一人ひとりにあった最適な購買体験を提供すること”を具体的に実現するためにどのような施策をすればよいか、ということを話す前に、まずオムニチャネルに対する大きな誤解2点を解消したいと思います。

誤解①:オムニチャネル施策実現には大規模なシステム投資が必要

 オムニチャネルの話をすると「うちの規模の会社じゃ無理」「そんな大規模な投資をする予算がない」と言う企業が多くいます。確かにオムニチャネルを実現できている会社と聞いて思い浮かぶのは、オムニ7を提供するセブン&アイ・ホールディングス社、ショールーミング化等様々なオムニチャネル施策を推進するユニクロを運営するファーストリテイリング社など大規模な企業ではないでしょうか。これらの企業は店舗とEC間のシステム統合や、ECで注文・店舗で受取を可能とするためのオペレーション変革など、大規模投資を行うことでオムニチャネルを推進しています。

 しかし、このような大規模投資は出来れば実施した方が良いですが、必ずしもオムニチャネル実現に必要というわけではなく、小規模な投資でも実現できます。

オムニチャネルの定義に立ち返るとオムニチャネルの成功のポイントは、
①顧客一人ひとりにあった最適な購買体験が何かを理解する
②顧客一人ひとりにあった最適な購買体験を提供する

の2点になりますが、これらの実現には大きな投資というのは必要ありません。

 例えば①の方は、顧客に店舗限定クーポンやEC限定クーポンを各々メール(またはLINEなど別のチャネルでも可)で配信し、顧客がどちらのメールに反応したかで顧客が店舗とECどちらを好むかを判定する(EC限定クーポンにばかり反応する顧客はECでの購買を好んでいると判定する)ということをすれば実現は可能です。これは日頃から配信しているメールの運用を少し変えるだけで実施可能です。

 また、②の場合ですと、店舗に来客したもののお気に入りの商品が売り切れてしまっていたお客様に対して、ECサイトのURLを書いたQRコードを渡し、売り切れ商品をECで購買することをおすすめすれば、大きな投資はなく顧客満足度があがる体験を顧客に提供できるようになります。

 このように工夫次第では大規模な投資をせず、既存の運用+αでオムニチャネル施策を実現できるようになりますので、オムニチャネルと聞いて予算がないとあきらめるのは非常にもったいないことだと思います。

誤解②:オムニチャネル施策を実現すると、ECと店舗で顧客の取り合いが起きる

 オムニチャネル実現において、よく起こるもう一つの誤解が、ECと店舗での顧客の取り合い、いわゆる組織の壁が立ちはだかるという点です。確かにこれまで店舗を運営してきた社員からすると、自分たちが獲得した顧客がECに奪われるのではないか、という不安を抱えてしまうのは当然のことだと思います。この点に対する一般的な対策としては、店舗とECを統括するオムニチャネル責任者を配置する、店舗現場社員に対してオムニチャネルの必要性を啓蒙する、などがありますが、なかなかこれだけでは店舗の現場担当者は納得できないのではないでしょうか。

 ではどうすればECと店舗で顧客の取り合いを防ぎ、ECと店舗の両担当者がオムニチャネルの推進を気持ちよく実施できるようになるのでしょうか。これには以下2つのポイントがあると思います。

①ECと店舗で顧客の奪い合っいが起きておらず、むしろ相互効果が働き、EC・店舗ともに売上にプラスの効果があることをデータで示す
②店舗の現場担当者の評価数字(売上数字)の算定方法を変える

 まず①から説明をします。前提として、オムニチャネルの推進やEC化率の向上を進めていった結果、店舗の売上が下がったということをデータで示した例はありません。「EC化を進めると店舗の顧客が取られ、店舗売上が減る」という不安が独り歩きしている場合が多くあります。現に弊社のある顧客において、店舗における顧客数・売上金額の数値をEC開始前と開始後で比較したところ、以下のように、ECで売上が上がっても店舗には特に影響がないという結果が出ました。

※機密情報のため一部サンプル数字を利用

 しかし、この数字はECと店舗で顧客を取り合わないことの立証にはつながりますが、これだけではまだ不十分です。なぜならこれだけでは店舗に来店した顧客をECサイトに送客するという行動を取るモチベーションにはつながらないためです。もちろん店舗に来店した顧客全員をECサイトに送客する必要はないのですが、中には店舗で品切れであったがECサイトには在庫がある商品を購入しに来た顧客もいます。こういう顧客に対してはより良い購買体験を提供するために、店舗からECサイトに送客するべきです。では店舗現場社員が快く顧客をECサイトに送客するようにするにはどうすればよいでしょうか。ここで「②店舗の現場担当者の評価数字(売上数字)の算定方法を変える」を使います。

 ただ、店舗の現場からすると上記のような他社の数値を出されても、まだ不安感は拭えないと思います。そのため、オムニチャネル推進においては、店舗が安心するようなデータを可視化する、例えばECで購入した顧客に対して店舗での購入を促す販促メールを配信した顧客のうち、実際に店舗で購入した顧客数を可視化することや、顧客の店舗とECでの平均購買回数の可視化(店舗での購買回数が下がっていなければECに顧客を取られていないと言える)をすることを推奨します。

 具体的に言いますと、先ほど「誤解①:オムニチャネル施策実現には大規模なシステム投資が必要」という章において、来店したもののお目当ての商品が品切れであった顧客に対して、ECサイトのURLを記載したQRコードを渡す施策をご紹介しましたが、このQRコード経由で商品を購入した場合は店舗の売上数値に合算する、ということをします。すると、店舗の現場販売員からすれば、自分が渡したQRコード経由で購入に至った場合も自分の売上数字となるため、積極的にオムニチャネルを推進する行動をとることになります。この仕組については、QRコード経由でECサイトにアクセスしたことを判断するのはシステム上難しいのではないか?という声も多くありあますが、QRコードに記載するURLに各店舗固有のパラメータをつけておけば、どの店舗で配布したQRコードであるかが用意に判定できるため、小規模の投資で実現も可能です。

 このようにECと店舗間での顧客の取り合いについても、工夫次第で解決することができるのです。

具体的なオムニチャネル施策

 では次に“顧客満足と収益を向上させるために、顧客一人ひとりにあった最適な購買体験を提供すること”を、小規模投資で、かつ、ECと店舗で顧客を取り合わない形で実現できるオムニチャネル施策の一部をご紹介します。

オムニチャネル推進状況のモニタリング

 オムニチャネル施策を実施した後は、成果が出ているかどうか、ECと店舗で顧客と取り合っていないかどうかを検証する必要があります。こちらについても小規模投資でできる効果的なモニタリングレポートの一部をご紹介いたします。

オムニチャネル実現環境の構築

 これまで紹介したオムニチャネルの施策やモニタリングレポートの実現については、大規模な投資は必要ないものの、ECサイトのアクセスデータと店舗やECの売上データの紐づけるなど最低限の投資は必要になります。現在利用しているシステムをリニューアルするという方法でも実現は可能ですが、現在利用しているシステムはそのままでデータだけをクラウド環境に吸い上げ、クラウド上でデータ統合や施策実施などを行えば、投資や初期導入工数は最低限に抑えられますので、データ統合やMAなどを搭載しているクラウドを選択肢のひとつとして検討することをおすすめいたします。

まとめ

 オムニチャネルと言うと、顧客満足度を上げることができるものの、壮大で難易度が高い施策であるという印象をお持ちの方が多くいらっしゃいます。確かにECと店舗のシステムを全面統合する、店舗にビーコンを設置する、サプライチェーンを見直し在庫情報を統一するといった大規模な投資をした方がオムニチャネルとして実施できる施策の幅は拡がりますが、必ずしも大規模投資をしないとオムニチャネルが実現できない、というわけではありません。

 本記事でご紹介したような施策やモニタリング手法であれば、大きな投資をせずとも最小限の投資でオムニチャネルを実現でき、”顧客満足と収益を向上させるために、顧客一人ひとりにあった最適な購買体験を提供すること”を達成できると信じております。これをきっかけに1社でも多くの企業がオムニチャネルを成功裡に導入し、顧客満足を向上いただけることを願っております。

無料のeBook
詳しくはこちら