ロイヤルカスタマーとは、商品やサービス、企業、ブランドに対して愛着や信頼を持っている顧客のことです。商品やサービスを差別化することが難しくなった現代において、ロイヤルカスタマーの維持/育成が、企業経営における最重要事項といっても過言ではありません。本稿では、昨今注目を集めるロイヤルカスタマーについて、定義から育成のポイントまでを解説していきます。

弊社が提供している マーケティングツール『b→dash』 は、データ準備に必要なCDPの機能から施策分析の実施に必要なMA、BI、web接客といった機能を搭載しており、ロイヤルカスタマーの育成に最適なツールとなっています。

1. ロイヤルカスタマーとは

ロイヤルカスタマーとは、「売上貢献が高い」顧客や、「企業やブランドを信頼している」顧客のことを指します。ロイヤルカスタマーは、企業やブランドへの信頼が厚く、商品やサービスの”ファン”になっていることが多いため、競合の商品やサービスに乗り換える可能性が低いと言われています。そのため、ロイヤルカスタマーを1人でも多く育成することが、企業にとって最も重要な項目のひとつであるとも言われています。しかし、ロイヤルカスタマーを増やすことは簡単ではなく、顧客に対して適切なアプローチをとり続けないといけない、顧客に気に入ってもらえる商品やサービスを提供しないといけない、などやるべきことは多くあります。

1-1. 優良顧客との違い

ロイヤルカスタマーとよく混在されがちな用語の1つに「優良顧客」があります。この2つの言葉の違いは考え方によって様々ではありますが、ロイヤルカスタマーは企業と顧客の間で信頼関係があることがポイントであるという点に対して、優良顧客は企業と顧客の関係性は問わず、単純に「売上貢献が高い」顧客のことを指すケースが多くあります。そのため、優良顧客には「セールで安かったから」「他を探すのが面倒だから」という理由だけであり、その商品やサービスの”ファン”にはなっていない顧客も含まれてしまいます。このような顧客は、もっと良い商品や他社の良いサービスを見つかった場合、他社に簡単に流れてしまう可能性があります。離反しやすい優良顧客ではなく、離反しにくいロイヤルカスタマーの育成を目指すことを意識して、顧客へのアプローチを行うべきと言うことができます。

2. そもそも「顧客ロイヤルティ」とは

ロイヤルカスタマーの元となった言葉に「顧客ロイヤルティ」があります。顧客ロイヤルティとは、特定の企業やブランドに愛着や信頼、親しみを感じることを指し、ロイヤルティ(Loyalty)は、英語で忠誠心を意味する言葉です。

2-1. 「心理的ロイヤルティ」と「行動的ロイヤルティ」

顧客ロイヤルティには、「心理的ロイヤルティ」と「行動的ロイヤルティ」の2つがあります。

●心理的ロイヤルティ
… 企業やブランド、商品に対する好意的な感情

●行動的ロイヤルティ
… 企業に対する直接的な貢献行動(継続的な購入、単価の高い商品の購入など)

ロイヤルカスタマーを育成するには、「心理的ロイヤルティ」と「行動的ロイヤルティ」の両方を高めていくべきであるため、両方の観点を忘れずに育成施策を実施していきましょう。

3. ロイヤルカスタマーを増やすメリット・重要性とは?

この章では、ロイヤルカスタマーを増やすメリットを4つ紹介していきます。

3-1. LTV(Life Time Value)の向上

メリットの1つ目として「LTVの向上」が挙げられます。
LTVとは、「顧客生涯価値」とも呼ばれ、1人の顧客が取引を始めてから終わるまでの期間にもたらす利益の総額のことを指します。ロイヤルカスタマーは、企業やブランドに対して信頼をしていることから、他社に流れる可能性も低くなり、長期にわたって企業に安定的な売上をもたらしてくれる可能性が高くなります。つまり、ロイヤルカスタマーを増加させることが、企業経営の重要指標の1つである『LTVの向上』に繋がります

下記資料にてLTVの向上のために実企業が実施した施策や分析を詳しくご紹介しておりますので、こちらも是非合わせてご一読ください。

[参考記事]
・LTVとは?

3-2. 商品の推奨・情報発信をしてくれる

メリットの2つ目として、ロイヤルカスタマーによる「商品やサービスの情報発信」が挙げられます。ロイヤルカスタマーは、企業やブランドを信頼しているため、口コミ・SNSなどで商品・サービスを他者に広めてくれる可能性があります。企業側から情報を発信するよりも、顧客自らが発信した内容の方が、他の顧客に受け入れられやすくなるため、ロイヤルカスタマーの人数を増やすことができ、口コミやSNSで商品やサービスの紹介をしてもらう回数も増えれば、高い売上効果や宣伝効果を得られる可能性があります。

3-3. 新規顧客を呼び込んでくれる

メリットの2つ目のロイヤルカスタマーからの商品の推奨・情報発信は、新規顧客の獲得にも一役買ってくれる可能性があります。企業やブランドに信頼を寄せてくれているため、その商品やサービスを知らない家族や知人に紹介を行ってくれる可能性があり、新規顧客の獲得、ひいては売上向上に繋がる可能性があります。

3-4. サービス向上に繋がる良質なフィードバックをしてくれる

メリットの4つ目として、ロイヤルカスタマーから、商品やサービスに関するフィードバックを受けられることが挙げられます。ロイヤルカスタマーは、自社の商品やサービスを多く利用してくれており、かつ「その商品やサービスをもっと良いものにしたい」という思いを持ってくれているケースが多くあります。そのため商品やサービスに関して良質なフィードバックを行ってくれる可能性が高く、そのような声を商品/サービス開発に反映していき、顧客満足度や商品品質を改善していく、というPDCAのサイクルを構築しやすくなります。

4. 顧客をロイヤルカスタマーに育てるポイントは?

ここまでで、ロイヤルカスタマーが企業にとって有益な顧客であることを解説してきましたが、ロイヤルカスタマーを育成することは簡単なことではなく、やみくもに顧客にアプローチを行っても、無駄に終わってしまうことも少なくありません。ロイヤルカスタマーまで育成するには、いくつかポイントが存在しますので、以下にてそのポイントを解説していきます。

 

5. ポイント①:「顧客が求める価値」について考える

ポイントの1つ目は、顧客が求める価値を定義することです。顧客にとっての商品やサービスの価値とは、「商品やサービスから得られるもの」×「顧客が支払う対価」のバランスで決定されますが、ここでいう「商品やサービスから得られるもの」が何か、企業目線でいうと「顧客に提供できる価値は何か」という点を明確にすることです。
ブランドイメージを構築し、商品やサービスを利用しているだけで上質な経験を感じることができる、商品やサービスを利用することで顧客の何かしらの課題を解消できる・顧客が便利だと感じることができる、など『価値』の内容は商品やサービスによって全く異なりますが、この商品またはサービスが顧客に提供する価値は何なのか、ということは言語化しておく必要があります。

6. ポイント②:現在の顧客ロイヤルティの把握

2つ目のポイントは既存顧客のロイヤリティを把握することです。商品やサービスを提供する企業が自分たちで「この商品やサービスのロイヤリティは何か、提供価値は何か」ということを定義するにあたり、既に商品やサービスを利用頂いているお客様に「なぜ継続して利用してくださっているのか」「どの点を気に入っていただいているのか」といった点を調査するという手法です。

ただこの調査を行う対象はロイヤリティが高い顧客に対して行う必要があり、顧客全員に対して調査をしても非効率な調査になってしまいます。そのため、既存顧客の中のどの顧客がロイヤルカスタマーかを特定する必要がありますが、その際に用いられる1つの方法に顧客推奨度調査(NPA)というものがあります。
顧客推奨度調査とは、商品やサービスを家族や友人にどれだけ勧めたいかという度合いを0~10の11段階の数値で評価する調査です。顧客が自社に対してどのくらい愛着を持っているのか、信頼しているのかを定量的に計測することができます。11段階の数字は0~6は「低」、7~8は「中」、9~10は「高」と分類することが多く、「高」に該当する顧客=ロイヤルカスタマーと考えることができます。

弊社が提供している マーケティングツール『b→dash』 は、データ準備に必要なCDPの機能から施策分析の実施に必要なMA、BI、web接客といった機能を搭載しており、ロイヤルカスタマーの育成に最適なツールとなっています。

7. ポイント③:ロイヤルカスタマーを分類する

3つ目のポイントはポイント②で紹介した顧客推奨度と、顧客からの収益性の2つの観点を用いてロイヤルカスタマーを分類することです。
顧客推奨度は「低」「中」「高」を用いて3ランクに振り分けるという説明をしましたが、顧客推奨度が「高」と回答をした顧客の中には、商品やサービスを1度しか利用したことがないお客様、つまり企業の観点で見たときに収益性の面での貢献は低い顧客も含まれてしまいます。
そのため、顧客推奨度と収益性の2つの観点を用いてロイヤルカスタマーを分類し、優先して扱うべきロイヤルカスタマーの中のロイヤルカスタマーを特定します。

以下に顧客推奨度と収益性の2つの観点顧客を分類する例を紹介します。

優先度が高いセグメント順に、どのような顧客層なのかを解説していきます。セグメントの特徴を捉えたうえで、それぞれ顧客体験を向上させる施策を検討していきましょう。

7-1. 最優良顧客層(ロイヤルカスタマー)

「推奨度:高」「収益性:高」は最優良顧客層(ロイヤルカスタマー)と呼びます。企業にとっては最も重要なセグメントです。新規でロイヤルカスタマーを育成していくよりも、既存のロイヤルカスタマーを維持していく方が難易度が低いため、この顧客層が長くロイヤルカスタマーで居続けてくださる施策を打っていきましょう。

7-2. 最優良顧客の候補者層

「推奨度:中」「収益性:高」は最優良顧客の候補者層と呼びます。ロイヤルカスタマー予備軍ともいえる層です。この層に対しては、どのようにロイヤルカスタマーに移行してもらうかの策を考えていく必要があります。

7-3. 離反候補者層(見せかけのロイヤルカスタマー)

「推奨度:低」「収益性:高」は離反候補者層(見せかけのロイヤルカスタマー)と呼びます。離反候補者層は収益性が高いために、企業にとっての重要性は高い一方で、消費やサービスに対する”ファン度”は低いため、簡単に離れられてしまう可能性のある層です。そのため、離反候補者層には商品やサービスの魅力付けができる施策を考えていくことが必要です。

7-4. 広報担当者層

「推奨度:高」「収益性:低」は広報担当者層と呼びます。この顧客層は。「お店が遠方にあって買いに行けない」「高額すぎて買えない」などの理由によって、購入まで至っていない、または購入回数が少ない層です。しかし、他人に商品やサービスを勧めてくれることも多い層であるため、商品やサービスの案内をしっかりと行い、口コミやSNSでの発信してもらえるための情報を提供していくべきとも言えます。

7-5. 無関心・低関与層

「推奨度:中」「収益性:低」は無関心・低関与層と呼びます。自社の商品やサービスにあまり関心がない顧客層です。そのため対策の優先順位はかなり低くなります。

7-6. 非協力者層

「推奨度:低」「収益性:低」は非協力者層と呼びます。非協力者層は、自社の商品やサービスに全く興味がなく、ロイヤルカスタマーになる可能性が最も低い顧客層となっています。非協力者層をロイヤルカスタマーにするにはそもそも難しい上に、かなりの工数を割かなければならないため、優先順位は最も低くなります。

8. ポイント④:顧客視点に立ったロイヤルティの向上策を考え実行する

ポイントの4つ目として、顧客視点に立ったロイヤルティの向上策を考え実行することが挙げられます。顧客視点に立つことは、戦略を考える上で必ず必要になります。ここでは、顧客視点に立って戦略を考える上の観点を紹介していきます。

8-1. – 期待を超える体験の提供 –

ロイヤルカスタマーを育てる上で重要なことは、顧客の期待を超えることです。顧客の期待通りの体験を提供しても満足はしますが、一方で、愛着や信頼を生み出すことはできません。顧客の期待を超える体験を提供することで感動を与え、ロイヤルティが育っていきます。ポイント①で考えた顧客が求める価値に沿って、期待を上回る価値を考えていきましょう。

8-2. – 全社一丸となった継ぎ目のない体験の提供 –

顧客は商品やサービスを購入する瞬間だけでなく、事前に情報を収集している段階や、購入後のアフターサービスを受けるタイミングなど、購入前後における体験も含めて、その商品やサービスの”ファン”になるかを決定します。
そのため最初から最後まで一貫した購入体験を提供する必要があります。入前の情報収集からアフターサポートまで多くの部署が関係する場合でも、部署ごとで統一したルールで顧客対応することで、一貫した顧客体験を提供できれば、顧客のロイヤルティが向上していきます。

8-3. – ロイヤルカスタマーの維持には顧客コミュニケーションを大事に –

ロイヤルカスタマーを維持/育成する上では、コミュニケーションは非常に重要になります。商品やサービスに対して、愛着や理解が深まるように、日頃から顧客とのコミュニケーションを頻繁に行い、接触頻度を増やすようにします。SNSやメールマガジンを活用して、適度に有益な情報を届けるようにしていきましょう。

ロイヤルカスタマー育成の実現に繋がる、メールやLINE、SMSを用いたシナリオについて下記資料にて詳しくご紹介しておりますので、こちらも是非合わせてご一読ください。

9. まとめ

ロイヤルカスタマーは、企業経営において重要な項目の1つです。しかし、ロイヤルカスタマーの育成は簡単ではなく、顧客に対して継続的なアプローチと工夫が必要になります。本記事で紹介したようなロイヤルカスタマーに育てるポイントなどを踏まえて、自社のロイヤルカスタマーを増やしていきましょう。

[関連記事]
顧客エンゲージメントって何?
CX(カスタマーエクスペリエンス)とは?
顧客分析の目的は?
リテンション率とは?

弊社が提供している マーケティングツール『b→dash』 は、マーケティングプロセス上に 存在する全てのビジネスデータを、ノーコードで、一元的に取得・統合・活用・分析することが可能なSaaS型データマーケティングプラットフォームであり、BtoC業界を中心に、様々な業種・業態のお客様にご導入頂いております。

Editor Profile

  • 福井 和典

    株式会社データX マーケティング管掌執行役員

    日本IBMにてシステムエンジニア、GREEにてCRM領域のオペレーション企画、PwCでの業務コンサルタントとしての経験を経て、2016年よりデータXに入社。データX入社後は、カスタマーサクセス部門に在籍し、小売/金融/アパレル/ECなど幅広い業種に対するb→dash導入支援を統括。
    その後は、主にb→dashのマーケティング/広報/PR活動や事業企画に従事。

Category
Tag