企業活動において、いかに他社との差別化を図るか、顧客離れを起こさないかは、非常に重要なポイントです。そこで、顧客に自社の魅力を訴求するために、注目されているのが「CX(カスタマーエクスペリエンス)」という概念です。本記事では、CXの概要や他の用語との違い、重要視されている背景について網羅的に解説します。

 

 

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1. CX(カスタマーエクスペリエンス)とは?

CXとは、「Customer Experience(カスタマーエクスペリエンス)」の略称で、日本語に訳すと「顧客体験」「顧客体験価値」といった意味です。大まかに表現すれば「顧客が商品に触れることで得た体験の価値・評価」となりますが、これは以下のように細分化することが可能です。

• 「感覚的体験価値」:香りや音、触感など五感に働きかけることで得られる体験が生み出す価値
• 「情緒的体験価値」:人の感情に働きかけることで特別な体験をさせ生じさせる価値
• 「創造的体験価値」:人の感情に働きかけることで特別な体験をさせ生じさせる価値
• 「創造的体験価値」:消費者の好奇心を掻き立てるような体験によって生まれる価値
• 「肉体・ライフスタイル的体験価値」:日常生活が便利になったり、課題が改善されたりするなどの体験を提供することで高められる価値
• 「準拠集団・社会的体験価値」:特定のグループに属することなどにより高められる価値

また、カスタマーエクスペリエンスを意識して業績を上げる取り組みのことを「カスタマーエクスペリエンス管理」といいます。顧客目線で自社の課題を抽出して、より顧客に満足してもらえるような体制を整えていきます。顧客データを取り扱うため、ITシステムと連携して実施することがポイントです。

1-1. CXとCSは何が違う?

CXは「顧客体験」や「顧客体験価値」を指し、CSは「顧客満足度」を示すため、CXはCSより広く意味を持っている用語といえます。CXは、企業が顧客に接点が生じてからの一連の顧客体験を指します。それに対して、CSは「顧客の満足度」を示す指標で、Customer Satisfactionの略語です。CSは、コールセンターなどのチャネルを通じて顧客接点のマイナス要因を解消することが目的で行われます。商品やサービス、従業員の接客態度を細分化した評価になります。

1-2. CXとDXは何が違う?

CXとDXは「目的」と「手段」の関係性にあり、CX向上のためにDXを推進します。CXは企業が顧客と接点を持ってからの一連の顧客体験を指しています。このCXにはUXや顧客満足なども含まれています。

一方DXはデジタル技術の活用により新しいビジネスを生み出すことや、業務プロセスを革新することなどを指します。CXの向上を目的に、DXを推進していくことで効率よく顧客と接触し、CXを向上させることができます。

 

2. CX(カスタマーエクスペリエンス)の重要性

CXの向上や改善は、事業活動を進めるうえで非常に重要な要素といわれています。なぜなら、CXは顧客一人ひとりに適切なアプローチを行うことで、差別化や業績の安定化につながるからです。

現代は、ライフスタイルや価値観が多様化しつつあり、成熟した市場では商品の機能や価格などの差異が少なく、他社との差別化が難しくなっています。このような変動が激しい多様化した市場を生き抜くためには、体験価値による差別化が必要です。また、商品・サービスは、一度購入すればそれで終わりというものではありません。リピーターの数は、業績の安定につながります。一度購入してくれた顧客には継続して購入してもらい続ける必要もあります。

そこで近年注目されるようになったのが、CXです。スマートフォンの普及に伴い、SNSをはじめとするインターネット上の多彩なサービスが登場し、生活スタイルや価値観が多様化しています。それに伴い、従来のように商品・サービスの提供者から画一化された価値を一方的に押し付けるだけでは、顧客はその商品やサービスを購入してくれなくなりました。

CXを向上させるには、実店舗、オンラインにかかわらず、顧客が商品やサービスの購入・利用にあたってどのような体験をしていたか。そしてその体験に対して顧客がどのような価値を感じているかについて洗い出すことが求められます。これにより、一人ひとりに合わせたアプローチを行えるようになり、顧客離れの防止やリピーターの獲得につなげることが期待できるのです。

3. CX(カスタマーエクスペリエンス)のメリット

カスタマーエクスペリエンスを向上させるメリットを5つ紹介します。

3-1. メリット①:ロイヤルカスタマー/リピーターの獲得

顧客にとって満足のいく価値を提供することで、ロイヤルカスタマーやリピーターの獲得につながります。「またこの企業の商品を使いたい」と感じてもらうことが重要です。一度リピーターになってもらうと売上の安定化にもつながります。

[参考記事]
・ロイヤルカスタマーとは?

3-2. メリット②:クチコミ効果

顧客に価値を提供し、信頼関係を構築することができれば、口コミをSNSなどで書いてくれる可能性も高くなります。口コミによって良い評判が広がることで、多くの人に自社の商品やサービスを認知してもらえ、新規の顧客獲得に繋がります

3-3. メリット③:顧客離れの抑制

商品やサービスの質が低下すると、ブランド離れやユーザー離れに直結します。カスタマーエクスペリエンスの向上を図ることで、顧客の商品やサービスの満足感が高まり、顧客離れの抑制、さらには長期で安定した売上を保つことに繋がります

3-4. メリット④:競合との差別化

カスタマーエクスペリエンスの向上は、自社商品やサービスのブランディングにもつながり、他社商品やサービスと差別化を図ることができます。インターネットの普及により、顧客自身が情報収集し、商品やサービスを比較できるようになった現在では、競合他社との差別化も意識することが大切です。

3-5. メリット⑤:顧客ロイヤルティの向上

カスタマーエクスペリエンスの向上を意識することで、顧客ロイヤルティの向上も見込めます。顧客ロイヤルティとは、当該企業の商品・サービス・ブランドに対する顧客の信頼や愛着を指す言葉です。顧客の商品やサービスに対する信頼度や愛着度が向上すると、継続的に利用してくれるでしょう。

3-6. メリット⑥:顧客生涯価値(LTV)の向上

カスタマーエクスペリエンスの向上はLTVの向上に繋がります。LTVとはLife Time Valueの略語で、顧客生涯価値を意味し、1顧客が、取引の初めから終わりまでに企業へもたらす全体の利益を指す言葉です。LTVは、「購入単価」「購入頻度」「契約期間」などから求めることができます。CSを向上させることで顧客ロイヤルティが向上し、「購入単価」「購入頻度」「契約期間」の値が改善されます。そのため、CXの向上がLTV向上に繋がると言うことができます。

4. CX/カスタマーエクスペリエンスの基本的な進め方

カスタマーエクスペリエンスを向上させる3つのステップを詳しく解説します。

ステップ1:顧客プロファイルを作成する

顧客に対する理解を深めるためには、まず顧客プロファイルを作成して管理する必要があります。顧客プロファイルとは、年齢や性別だけでなく、ソーシャルメディアや位置情報といった各顧客の特徴や意志などを整理した情報ファイルです。顧客プロファイルを作成することで、顧客ニーズの把握や適切なチャネルの選定に役立てることができます

ステップ2:顧客へ個別対応を実施しCXを高める

次に、顧客に合わせた情報発信をすることで、CXを高めていきます。顧客プロファイルを活用し、顧客ひとりひとりの状況を把握して適切なタイミングで情報発信することで、情報を受け取ってくれる可能性が高まり、ひいては顧客満足度が向上する可能性も高まります。メッセージの内容は、顧客にとって魅力的で価値のあるものを発信するようにしましょう。

ステップ3:CXの状況を分析し改善を行う

顧客の行動は段階ごとに大きく変わるため、CXを分析するにあたっては、段階ごとにわけて行う必要があります。たとえば、「購入前に顧客が体験する段階」を顧客プロファイルを用いて分析し、現状の課題点を洗い出します。課題が明確になったら、自社の商品やサービスを利用してもらうために何が必要なのか見直し、改善を図りましょう。

課題点を洗い出し、改善に向けてCXを分析するために押さえておくべきポイントについては、下記にて詳しく説明をしていますので是非合わせてご一読ください。

5. CX(カスタマーエクスペリエンス)におけるよくある課題

CX向上の施策は、一貫して顧客視点で取り組む必要があります。企業視点での取り組みとならないよう留意しましょう。顧客ニーズを考慮しない施策は、実施しても十分な成果につながらないことも。よくあるNG事例として挙げられるのは、顧客ニーズのない新機能を取り入れてしまうケースです。

新機能を導入する際は、顧客が本当にその機能を求めているのか、機能によって顧客の利便性が損なわれないかなど、顧客視点で検討すると良いでしょう。

6. CX(カスタマーエクスペリエンス)の課題に対する対策

企業がCX向上の施策を実行するうえで重要な、考え方や推進のポイントを解説します。収集した顧客データを活用し、感覚的に受け入れられやすいアプローチができると理想的です。

ポイント①:顧客情報を徹底的に分析する

自社のCX向上のヒントは、主に顧客データから読み取ることができます。事前に顧客情報を収集し、十分な分析を行ったうえでCX向上の施策を検討しましょう。

顧客データを取得する方法はさまざまです。既存顧客に顧客満足度調査としてインタビューを行い、購入後の満足度をリサーチする方法もあります。こうした手法で顧客の生の声を入手すると、商品・サービスに対して顧客視点での率直な意見を得られます。回答が効果的な施策策定の参考になるでしょう。

ポイント②:顧客の感情にアプローチする

CXを向上させるには、顧客への感情的なアプローチが有効とされています。たとえば、スタッフの親切心を感じられるカスタマーサポートや、SNSの公式アカウントでの円滑なコミュニケーションなどが挙げられます。

効果的に訴えかけるには、顧客の感情を理解することが大切です。現状の自社の顧客対応でどのような感情が生じ得るのか、顧客目線で見直してみると良いでしょう。具体的には、コールセンターの問い合わせ対応、購入後のアフターフォロー、SNSでの情報発信などが対象となる例です。

ポイント③:デジタルマーケティングを活用する

最先端のデジタル技術を導入したり、データ活用を推進したりするデジタルマーケティングの施策は、CX向上にもつながります。CXとデジタルマーケティングの手法を組み合わせることで、新たな顧客体験を提供できる可能性があるため、両立を目指しましょう。近年では、オムニチャネルでECサイトと店舗の連携を強化したり、AI(人工知能)チャットボットでオンライン接客を行ったりする企業も多くなっています。マーケティングでもテクノロジーを活用してはいかがでしょうか。

 

 

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7. CX(カスタマーエクスペリエンス)の成功事例

CXの重要性を認識している企業は増えているのが実情です。実現したことで、安定した顧客の確保や自社製品のブランド化に成功した企業も存在します。ここでは、企業の成功事例を紹介します。

成功事例①:スターバックス

スターバックスでは、店舗を「サードプレイス(第三の場所)」というコンセプトで位置付けています。また、スタッフの接客、コーヒーの香り、BGMなど、来店することで得られるすべての体験を「スターバックス体験」としています。コーヒーという商品を提供するだけでなく、スターバックスで得られる体験そのものを提供し、顧客獲得につなげているのです。

成功事例②:ソニー損保

ソニー損保では、自社に都合の悪い顧客の声もホームページ上で開示し、その上で、どのように「お客様からの声」を反映・改善したかを公開しています。ありのままのソニー損保を知ってもらった上で、判断は顧客にしてもらうという信頼関係の構築方法が、優れたカスタマーエクスペリエンスの提供へとつながっています。このように顧客の利益を優先させることが、ダイレクト自動車保険市場14年1位という結果につながっています。

成功事例③:東京ガス

東京ガスでは、ポータルサイトをリニューアルすることによって、オンライン会員サービス「myTOKYOGAS」の会員数を6倍増加させました。会員の属性に応じてコンテンツの提供やキャンペーンの実施など、顧客に寄り添った戦略を実施しています。このような取り組みにより、カスタマーエクスペリエンスの向上を実現しています。

成功事例④:無印良品

株式会社良品計画が運営する無印良品では、顧客が商品を検討する段階から購入にいたるまでの流れを重視し、ニーズに合わせた商品づくりを行われています。具体的には、顧客の意見を参考に商品をつくり、モニターに使用後の感想をもらう取り組みを行っています。また、ネットショップやSNSを通じて顧客から意見を募るなど、活発にコミュニケーションをとっていることが特徴です。交流を通じて情報収集を行い、顧客視点を重視したビジネスを展開しています。商品づくり以外にも、ECや店舗での接客や、アプリの活用など、顧客との接点全てをデザインしている企業です。

その他にも、様々な業種業態における、安定した顧客の確保や自社製品のブランド化に成功した事例を下記にてご紹介しておりますので、是非合わせてご一読ください。

8. まとめ

CXとは、冒頭で述べた通り、商品やサービスを購入する前から、購入後のサポートにいたるまでのすべてのプロセスにおける顧客体験を意味します。CXを向上させることで、企業は競合他社との差別化を図ったり、顧客離れを防止できたりするなどのメリットがあります。リピーターやファンの獲得のためにも、CX向上の取り組みを進めましょう。

また、CXを向上させるためには、顧客ニーズを正確に把握し、適切なアプローチを行う必要があります。そのため、顧客に対しては常にパーソナライズされた対応が必要であり、CDP/プライベートDMPが不可欠になっています。

b→dash」は、CX向上のために必要なデータの収集・蓄積から分析、活用までの機能を取り揃えたCDPです。施策や分析に必要なデータの加工/統合や、基幹システム/アプリケーションとの連携をSQL不要のノーコードで実現するプロダクトです。また、自社の顧客を自動で可視化して分析することも可能です。CXの向上にぜひご活用ください。

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Editor Profile

  • 福井 和典

    株式会社データX マーケティング管掌執行役員

    日本IBMにてシステムエンジニア、GREEにてCRM領域のオペレーション企画、PwCでの業務コンサルタントとしての経験を経て、2016年よりデータXに入社。データX入社後は、カスタマーサクセス部門に在籍し、小売/金融/アパレル/ECなど幅広い業種に対するb→dash導入支援を統括。
    その後は、主にb→dashのマーケティング/広報/PR活動や事業企画に従事。

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