企業活動において、いかに他社との差別化を図るか、顧客離れを起こさないかは、非常に重要なポイントです。そこで、顧客に自社の魅力を訴求するために、注目されているのが「CX(カスタマーエクスペリエンス)」という概念です。本記事では、CXの概要や他の用語との違い、重要視されている背景について網羅的に解説します。

 

1. CX(カスタマーエクスペリエンス)とは?

そもそもCX(カスタマーエクスペリエンス)とはどのようなものなのか、意味や他の用語との違いなど、詳しく見ていきましょう。

1-1. CX(カスタマーエクスペリエンス)の意味

CXとは、「Customer Experience(カスタマーエクスペリエンス)」の略称で、日本語に訳すと「顧客体験」「顧客体験価値」といった意味です。顧客体験とは、企業の商品やサービスの購入を検討する前から購入にいたるまで、そのすべての体験や価値を指します。商品やサービス自体の価値だけではなく、購入前後に顧客が体験するすべてを価値として捉えることが大きな特徴です。例えば、アパレル店舗の場合、自社の商品だけではなく接客をするスタッフの態度や店内の雰囲気、購入後のフォローといった体験も価値とみなされます。

また、カスタマーエクスペリエンスを意識して業績を上げる取り組みのことを「カスタマーエクスペリエンス管理といいます。顧客目線で自社の課題を抽出して、より顧客に満足してもらえるような体制を整えていきます。顧客データを取り扱うため、ITシステムと連携して実施することがポイントです。

1-2. CXを構成する要素

CXによって設計する顧客が感じる「心理的な価値」は大きく5つに分類されます。自社が提供できる価値を見極めて、顧客の求める価値を提供していきましょう。

<Sense(感覚的価値)>
視覚・聴覚・味覚・嗅覚・触覚の五感によって経験する心理的価値です。美しい景色、心地よい音楽、美味しい料理、気持ちの良い手触りなどの感覚から得られる経験があたります。

<Feel(情緒的価値)>
感情に働きかける経験から得られる心理的価値です。一流ホテルの接客や、ライブの演出など心を動かすような経験があたります。

<Think(創造的・知的価値)>
知的好奇心に働きかける経験から得られる心理的価値です。知恵の輪やパズルなど自身の創造性や知的欲求を引き立てる経験があたります。

<Act(行動、生活にかかわる価値)>
未体験の経験や自身の生活を変化させるような経験から得られる心理的価値です。海外旅行で触れる新しい文化や業界初の新技術などに触れる経験があたります。

<Relate(社会的経験価値)>
特定の集団に属することで得られる心理的価値です。特別な集団に属していることから得られる経験、ファンクラブへの入会や限定イベントへの参加などがあたります。

1-3. CX(カスタマーエクスペリエンス)と他の用語との違い

CXは、ビジネスシーンで多く使われる言葉ですが、似た言葉に「CS」「UX」「DX」などがあります。それぞれの意味や違いをきちんと理解し、言葉を適切に使い分けることが大切です。ここでは、「CS」「UX」「DX」の意味やCXとの違いについて確認していきましょう。

1-4. CX とCS との違い

CSとは、「Customer Satisfaction(カスタマーサティスファクション)」の略称で、和訳すると「顧客満足度」となります。自社の商品・サービスや店舗スタッフの態度などに顧客がどの程度満足できているか、その度合いを細分化して測るための指標の一つです。満足度の数値化によって、評価に用いることができます。CSでは、商品やサービスの売上に限定せず、顧客の気持ちを重視して自社の状態を把握します。手法の例としては、顧客に対してアンケートやインタービューなどを実施することが多いでしょう。

CSとCXの違いは、「評価の対象や範囲」です。CSが商品・サービスのみを細分化して評価するのに対し、CXは体験価値を含めて商品・サービスなどを総合的に評価するために用いられます。

1-5. CX とUX との違い

UXとは、「User Experience(ユーザーエクスペリエンス)」の略称で、和訳すると「ユーザー体験」という意味があります。ユーザー体験とは、顧客が商品・サービスを使う際の体験のことです。ここでいう体験とは、性能や使い勝手をはじめ、その商品・サービスの印象や使用感など幅広いものが該当します。UXとCXの主な違いは、「誰を対象とするか」という点です。UXの場合は、実際に商品・サービスを「使った」ユーザーを対象とします。また、対象ユーザーが商品・サービスを使用した際、どのような気持ちになったのかを評価するために用いられることが一般的です。

一方、CXは商品・サービスを購入するまでの顧客の気持ちや、購入したあと実際に使用するまでの体験が対象となります。つまり、CXは潜在顧客まで対象とすることが大きな違いです。

1-6. CX とDX との違い

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、主にデジタル化にともなう変革を指すビジネス用語です。英語圏では「trans」を「X」と略することから、略した際にDXと表記されます。経済産業省が公表した資料によれば、DXは「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義されています。表記が似ていることから混同されやすいものの、「顧客体験」を意味するCXとは全く異なる概念です。ただし、顧客体験はDXによるデジタル技術の活用で向上させやすいという側面もあり、CXを向上させていくうえで押さえておきたい用語です。

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2. なぜCX(カスタマーエクスペリエンス)が注目されているのか

CXの向上や改善は、事業活動を進めるうえで非常に重要な要素といわれています。なぜなら、CXは顧客一人ひとりに適切なアプローチを行うことで、差別化や業績の安定化につながるからです。

現代は、ライフスタイルや価値観が多様化しつつあり、成熟した市場では商品の機能や価格などの差異が少なく、他社との差別化が難しくなっています。このような変動が激しい多様化した市場を生き抜くためには、体験価値による差別化が必要です。また、商品・サービスは、一度購入すればそれで終わりというものではありません。リピーターの数は、業績の安定につながります。一度購入してくれた顧客には継続して購入してもらい続ける必要もあります。

そこで近年注目されるようになったのが、CXです。スマートフォンの普及に伴い、SNSをはじめとするインターネット上の多彩なサービスが登場し、生活スタイルや価値観が多様化しています。それに伴い、従来のように商品・サービスの提供者から画一化された価値を一方的に押し付けるだけでは、顧客はその商品やサービスを購入してくれなくなりました。

CXを向上させるには、実店舗、オンラインにかかわらず、顧客が商品やサービスの購入・利用にあたってどのような体験をしていたか。そしてその体験に対して顧客がどのような価値を感じているかについて洗い出すことが求められます。これにより、一人ひとりに合わせたアプローチを行えるようになり、顧客離れの防止やリピーターの獲得につなげることが期待できるのです。

3. CX(カスタマーエクスペリエンス)のメリット

カスタマーエクスペリエンスを向上させるメリットを5つ紹介します。

メリット①:ロイヤルカスタマー/リピーターの獲得

顧客にとって満足のいく価値を提供することで、ロイヤルカスタマーやリピーターの獲得につながります。「またこの企業の商品を使いたい」と感じてもらうことが重要です。一度リピーターになってもらうと売上の安定化にもつながります。

メリット②:クチコミ効果

顧客に価値を提供し、信頼関係を構築することができれば、口コミをSNSなどで書いてくれる可能性も高くなります。口コミによって良い評判が広がることで、多くの人に自社の商品やサービスを認知してもらえ、新規の顧客獲得に繋がります

メリット③:顧客離れの抑制

商品やサービスの質が低下すると、ブランド離れやユーザー離れに直結します。カスタマーエクスペリエンスの向上を図ることで、顧客の商品やサービスの満足感が高まり、顧客離れの抑制、さらには長期で安定した売上を保つことに繋がります

メリット④:競合との差別化

カスタマーエクスペリエンスの向上は、自社商品やサービスのブランディングにもつながり、他社商品やサービスと差別化を図ることができます。インターネットの普及により、顧客自身が情報収集し、商品やサービスを比較できるようになった現在では、競合他社との差別化も意識することが大切です。

メリット⑤:顧客ロイヤルティの向上

カスタマーエクスペリエンスの向上を意識することで、顧客ロイヤルティの向上も見込めます。顧客ロイヤルティとは、当該企業の商品・サービス・ブランドに対する顧客の信頼や愛着を指す言葉です。顧客の商品やサービスに対する信頼度や愛着度が向上すると、継続的に利用してくれるでしょう。 

4. CX/カスタマーエクスペリエンスの基本的な進め方

カスタマーエクスペリエンスを向上させる3つのステップを詳しく解説します。

ステップ1:顧客プロファイルを作成する

顧客に対する理解を深めるためには、まず顧客プロファイルを作成して管理する必要があります。顧客プロファイルとは、年齢や性別だけでなく、ソーシャルメディアや位置情報といった各顧客の特徴や意志などを整理した情報ファイルです。顧客プロファイルを作成することで、顧客ニーズの把握や適切なチャネルの選定に役立てることができます

ステップ2:顧客へ個別対応を実施しCXを高める

次に、顧客に合わせた情報発信をすることで、CXを高めていきます。顧客プロファイルを活用し、顧客ひとりひとりの状況を把握して適切なタイミングで情報発信することで、情報を受け取ってくれる可能性が高まり、ひいては顧客満足度が向上する可能性も高まります。メッセージの内容は、顧客にとって魅力的で価値のあるものを発信するようにしましょう。

ステップ3:CXの状況を分析し改善を行う

顧客の行動は段階ごとに大きく変わるため、CXを分析するにあたっては、段階ごとにわけて行う必要があります。たとえば、「購入前に顧客が体験する段階」を顧客プロファイルを用いて分析し、現状の課題点を洗い出します。課題が明確になったら、自社の商品やサービスを利用してもらうために何が必要なのか見直し、改善を図りましょう。

5. CX(カスタマーエクスペリエンス)におけるよくある課題

CX向上の施策は、一貫して顧客視点で取り組む必要があります。企業視点での取り組みとならないよう留意しましょう。顧客ニーズを考慮しない施策は、実施しても十分な成果につながらないことも。よくあるNG事例として挙げられるのは、顧客ニーズのない新機能を取り入れてしまうケースです。

新機能を導入する際は、顧客が本当にその機能を求めているのか、機能によって顧客の利便性が損なわれないかなど、顧客視点で検討すると良いでしょう。

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6. CX(カスタマーエクスペリエンス)の課題に対する対策

企業がCX向上の施策を実行するうえで重要な、考え方や推進のポイントを解説します。収集した顧客データを活用し、感覚的に受け入れられやすいアプローチができると理想的です。

ポイント①:顧客情報を徹底的に分析する

自社のCX向上のヒントは、主に顧客データから読み取ることができます。事前に顧客情報を収集し、十分な分析を行ったうえでCX向上の施策を検討しましょう。

顧客データを取得する方法はさまざまです。既存顧客に顧客満足度調査としてインタビューを行い、購入後の満足度をリサーチする方法もあります。こうした手法で顧客の生の声を入手すると、商品・サービスに対して顧客視点での率直な意見を得られます。回答が効果的な施策策定の参考になるでしょう。

ポイント②:顧客の感情にアプローチする

CXを向上させるには、顧客への感情的なアプローチが有効とされています。たとえば、スタッフの親切心を感じられるカスタマーサポートや、SNSの公式アカウントでの円滑なコミュニケーションなどが挙げられます。

効果的に訴えかけるには、顧客の感情を理解することが大切です。現状の自社の顧客対応でどのような感情が生じ得るのか、顧客目線で見直してみると良いでしょう。具体的には、コールセンターの問い合わせ対応、購入後のアフターフォロー、SNSでの情報発信などが対象となる例です。

ポイント③:デジタルマーケティングを活用する

最先端のデジタル技術を導入したり、データ活用を推進したりするデジタルマーケティングの施策は、CX向上にもつながります。CXとデジタルマーケティングの手法を組み合わせることで、新たな顧客体験を提供できる可能性があるため、両立を目指しましょう。近年では、オムニチャネルでECサイトと店舗の連携を強化したり、AI(人工知能)チャットボットでオンライン接客を行ったりする企業も多くなっています。マーケティングでもテクノロジーを活用してはいかがでしょうか。

7. CX(カスタマーエクスペリエンス)の成功事例

CXの重要性を認識している企業は増えているのが実情です。実現したことで、安定した顧客の確保や自社製品のブランド化に成功した企業も存在します。ここでは、企業の成功事例を紹介します。

成功事例①:スターバックス

スターバックスでは、店舗を「サードプレイス(第三の場所)」というコンセプトで位置付けています。また、スタッフの接客、コーヒーの香り、BGMなど、来店することで得られるすべての体験を「スターバックス体験」としています。コーヒーという商品を提供するだけでなく、スターバックスで得られる体験そのものを提供し、顧客獲得につなげているのです。

成功事例②:ソニー損保

ソニー損保では、自社に都合の悪い顧客の声もホームページ上で開示し、その上で、どのように「お客様からの声」を反映・改善したかを公開しています。ありのままのソニー損保を知ってもらった上で、判断は顧客にしてもらうという信頼関係の構築方法が、優れたカスタマーエクスペリエンスの提供へとつながっています。このように顧客の利益を優先させることが、ダイレクト自動車保険市場14年1位という結果につながっています。

成功事例③:東京ガス

東京ガスでは、ポータルサイトをリニューアルすることによって、オンライン会員サービス「myTOKYOGAS」の会員数を6倍増加させました。会員の属性に応じてコンテンツの提供やキャンペーンの実施など、顧客に寄り添った戦略を実施しています。このような取り組みにより、カスタマーエクスペリエンスの向上を実現しています。

成功事例④:無印良品

株式会社良品計画が運営する無印良品では、顧客が商品を検討する段階から購入にいたるまでの流れを重視し、ニーズに合わせた商品づくりを行われています。具体的には、顧客の意見を参考に商品をつくり、モニターに使用後の感想をもらう取り組みを行っています。また、ネットショップやSNSを通じて顧客から意見を募るなど、活発にコミュニケーションをとっていることが特徴です。交流を通じて情報収集を行い、顧客視点を重視したビジネスを展開しています。商品づくり以外にも、ECや店舗での接客や、アプリの活用など、顧客との接点全てをデザインしている企業です。

8. まとめ

CXとは、冒頭で述べた通り、商品やサービスを購入する前から、購入後のサポートにいたるまでのすべてのプロセスにおける顧客体験を意味します。CXを向上させることで、企業は競合他社との差別化を図ったり、顧客離れを防止できたりするなどのメリットがあります。リピーターやファンの獲得のためにも、CX向上の取り組みを進めましょう。

また、CXを向上させるためには、顧客ニーズを正確に把握し、適切なアプローチを行う必要があります。そのため、顧客に対しては常にパーソナライズされた対応が必要であり、CDP/プライベートDMPが不可欠になっています。

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  • Marketics 編集部

    ユーザーデータ・広告データ・購買データなど、マーケティングプロセス上に存在する全てのビジネスデータを、 ノーコードで、一元的に取得・統合・活用・分析することが可能なSaaS型データマーケティングプラットフォーム「b→dash」が運営する マーケティングメディア「Marketics」の編集部。インタビュー記事やノウハウ記事を定期的に発信しています。

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