ビジネスにおいて商品展開を考える上で「プロダクトアウトではダメだ、マーケットインで考えなければ」「革新的商品があって初めてニーズが生まれる」などと言われることが多いようですが、果たしてどちらが本当なのでしょうか。そこで、今回は「プロダクトアウト」「マーケットイン」と呼ばれる2つの考え方についてご紹介していきます。

目次
〇プロダクトアウト、マーケットインとは?
〇プロダクトアウト、マーケットインの主なサービス
〇今後の展望

プロダクトアウト、マーケットインとは?

これら2つの言葉は、商品開発や生産、販促活動における相対する考え方です。

プロダクトアウト(Product out)とは企業本位で商品の企画・開発・提供を行う考え方であり、「良いものであれば売れる」的な発想で、自社の強みや技術を生かした商品展開を行うことをいいます。
つまり、作り手優先の考え方であり、例えば高度経済成長期の終わりを迎えようとしていた従来の日本における大量生産がこの考え方にあてはまるでしょう。
しかし、この考え方によって顧客自身も気付いていない潜在ニーズを掘り起こすという意味では、一概に企業本位の考え方とは言えないかもしれません。

対して、マーケットイン(Market in)とは顧客のニーズ本位で商品の企画・開発・提供を行う考え方であり、市場が望むモノを提供していくことをいいます。
つまり「顧客が望む売れるモノだけを売る」的な考え方であり、1990年代後半~2000年代初頭の日本で急速に広まりました。
先述のプロダクトアウトが顧客の潜在的なニーズに対応するならば、マーケットインは顧客の顕在化しているニーズに対応するものだと言えるでしょう。

従来の日本では、高度経済成長期にはプロダクトアウトの考え方で大量生産を行って商品を販売してきました。しかし、過剰供給になると「良い商品が売れない」事態となって顧客ありきの発想へと転換し、マーケットインの考え方が徐々に使われ始めました。

それぞれの考え方のメリット・デメリット

プロダクトアウトのメリットは自社の技術戦略がうまく商品開発と結びき、画期的な製品(サービス)によって独占的な市場を意図的に作り出すことができる点で、非常に大きな利益を得られる可能性があります。
一方で、デメリットとして自社の新しい価値をうまくPRし、顧客に対して新しい価値(製品の魅力)をうまく伝えて購買まで結びつける必要がある点が挙げられます。

マーケットインのメリットはニーズへの適合を優先する為に一定の需要を確保することが期待できます。
つまり「失敗しない」商品展開が望める可能性があるのです。
一方でデメリットとして顧客が望むものだけを作るので画期的なものが生まれにくい点が挙げられます。
したがって、多くの企業がこの考え方にとらわれると製品やサービスが真似されやすいことによって市場がコモディティ化し、価格競争に陥りやすく利益を確保しづらい可能性が出てくるのです。

プロダクトアウト・マーケットインの主なサービス

では、それぞれ2つの考え方の下で生まれた代表的なサービスにはどのようなものがあるでしょうか。

プロダクトアウトの主なサービス

 

iPhone

世界的に有名なスマートフォンであり、プロダクトアウトで生まれた製品の代表例です。そのデザイン性と直感的な操作性を訴えることで、非常に大きなインパクトを残しました。ボタンではなくタッチスクリーンにする、という発想はそれまで市場には存在しませんでした。正に作り手のアイディアが先行して作られた製品と言えるでしょう。新製品のリリースが行われる度に一大イベントとなり、現在でも話題となります。

Google

言わずと知れた、検索エンジンです。世界で最も人気のある検索エンジンであると言われています。「人類が使う全ての情報を集め、整理する」という目的の下、アメリカのラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンによって作られました。ページランクと呼ばれるリンク評価によって今までにない高い検索精度で一気に広まりました。

SONYウォークマン

従来の生活を一変させることとなった製品です。それまで音楽は家で聴くものだと考えられていました。しかし、この製品を持ち歩くことで音楽を様々なシーンで携帯できるようになり、それが幅広い層の顧客にヒットすることとなりました。当時は著名人にウォークマンの製品を配り、その露出させることで知名度を上げることに成功しました。

プロダクトアウトの発想で生まれた製品はその他にも、電子レンジやMacコンピューターなど、様々な製品・サービスが存在します。

マーケットインの主なサービス

 

iPhone登場後のスマートフォン

iPhoneの登場後、日本企業もこぞってスマートフォンの提供を行っていますが、これはマーケットインの発想で生まれた製品であると考えられます。
iPhoneの登場で直感的な操作性(タッチスクリーンを使った操作)やデザイン性など、それまでにない新しい携帯電話の形を提示したことで、そういった製品に対して顧客のニーズが生まれました。
以降、各企業はこぞって後発商品を生み出し、類似した商品の企画・開発・提供を行っています。これは顧客のニーズを優先して生み出された商品だと言えるでしょう。

缶コーヒー

アサヒ飲料は、市場調査からビジネスマンが朝型の生活を望んでいる事実を明らかにしました。
そして、缶コーヒーやネット、メールを朝の必須アイテムとして意識していることを突き止め、忙しいサラリーマンのために朝専用の缶コーヒー開発に着手しました。
朝に大々的なサンプリングを行ったりと、適切なマーケティングを行った結果、爆発的なヒットを果たしました。
市場調査から顧客のニーズを発掘し、それを基に商品開発を行っている点は正にマーケットイン的な発想で生み出された商品だと言えるでしょう。

マーケットインの発想で生まれた製品は他にもあります。しかし、プロダクトアウトで出された製品が大ヒットを記録し、それが世の中に定着した段階では顧客ニーズを一定数確保できると考えられます。すると、類似した製品が世の中に出続けてシリーズ化するといった流れが生まれることが予測されます。このようにして出てきた製品がマーケットインの発想で生まれた製品だと言えるのではないでしょうか。

今後の展望

では「プロダクトアウト」「マーケットイン」の2つの考え方のうち、どちらに依拠して商品の企画・開発・提供を行っていけばよいのでしょうか。
結論としては、「プロダクトアウト」「マーケットイン」のどちらか一方に偏るのではなく両方を意識した戦略が重要となるでしょう。

プロダクトアウト的な発想だけで自分の作りたい、売りたいモノだけを展開していくことは外した時のリスクが大きすぎます。
一方で、市場調査をして顧客のニーズを把握するだけでは、画期的な製品は生まれないしそれでは新たな価値を創出することはできません。
したがって、市場のコモディティ化が進み自社の製品に個性がなくなり、顧客に買う理由がなくなってしまいます。

そこで、それぞれの発想を共存させて「顧客が欲しいと気付けるような新しい価値を生み出す」ことが重要です。
自社が顧客に選択されるように「どのような顧客のどのようなニーズにどのような強みで展開していくのか」を追及することによって、買ってもらえる製品やサービスを提供することができると考えられます。
マーケットインで顕在化しているニーズを追いつつ、プロダクトアウトで潜在化しているニーズを発掘することがバランスの取れた考え方ではないでしょうか。

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Editor Profile

  • 福井 和典

    株式会社データX マーケティング管掌執行役員

    日本IBMにてシステムエンジニア、GREEにてCRM領域のオペレーション企画、PwCでの業務コンサルタントとしての経験を経て、2016年よりデータXに入社。データX入社後は、カスタマーサクセス部門に在籍し、小売/金融/アパレル/ECなど幅広い業種に対するb→dash導入支援を統括。
    その後は、主にb→dashのマーケティング/広報/PR活動や事業企画に従事。

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