1.はじめに

今月オススメする2冊目の本は、コミュニケーション・ディレクターのさとなお氏こと、佐藤尚之氏が提唱する”ファンベース”マーケティングに関する本です。

最近、ファンマーケティングやファンビジネスといった”ファン”に軸足を置いたマーケティング施策をよく耳にしますが、なぜ、今”ファン”を取り入れた施策の重要性が高まっているのでしょうか。

本書ではその理由を4つの観点から説明していますが、その一つである、人口減少に伴う新規顧客の減少、そして市場の成熟化に伴う新規顧客獲得の激化を見れば、既存顧客であるファンに対するアプローチの必然性を理解することは容易でしょう。

ファンベースとは何かという基本から、ファンベースマーケティングを築く上でのポイントや運用方法について、本書では事例を踏まえてわかりやすく解説しています。ファンベースと聞くと消費者向けの商品やサービスをイメージしがちですが、本書で語られるファンベースは、BtoB企業にもあてはまりますので、本書で体系化された知識をインプットしながら、自社に合った”ファンベース”を考えていくことをオススメします。

2.本の概要

ファンベースとは

「ファンを大切にし、ファンをベースにして、中長期的に売上や価値を上げていく考え方のこと」と本書では定義されています。ここで注意したいのが、「ファンを大切にする」とは、そのブランドや商品の”現在の価値”を支持してくれる方と一緒に、”現在の価値”を保つことではない、ということです。本当に大切にすべきファンとは、現在の価値の延長線上にある”もっと良い未来の価値”にも強く期待し、それを企業と一緒に夢みたいと思っている方のことだと筆者は述べます。

ファンベースの考え方の根本は、ファンと一緒にブランドや商品の価値をアップデートし、それによってより熱狂的なファンを増やし、そして更にブランド価値を高めていく、このサイクルを創ることだと言えるでしょう。その意味では、ファンを単なる既存顧客のうち、より多くの商品を買ってくれる方、サービスを使ってくれる方と認識し、その方々からさらにお金を稼ごうとする考え方とは一線を画します。

また、ファンベースを考えるにあたって、もう一つ肝に銘じておかなければならないこととして、ファンは全体の2割しかいない、ということを挙げています。全員にファンになってもらうような施策を行うと、中途半端な施策になるだけでなく、むしろブランドや商品の価値を毀損しかねないからです。よく使っていたあのお気に入りのサービス、最近アップデートするというので期待していたものの、実際は改悪としか思えないようなアップデートだった…そんな風に思った経験はないでしょうか。本書で解説するファンベースの考え方では、2割のファンを意識して、2割のファンに向けた施策を行うべきなのです。

ではどうやってファンから支持を得るのか?

さとなお氏は、「共感・愛着・信頼を強くするべき」と述べています。『共感』を強くするとは、その価値自体を高めることを言い、そのためには、

①ファンの言葉を傾聴し、フォーカスする
②ファンであることに自信を持ってもらう
③ファンを喜ばせる、新規顧客より優先する

この3つを実践する必要があると言います。

ファンは既にブランドのファンなので、新規顧客を獲得する施策を行うべきでは?新たな顧客を囲い込むためのプレゼント施策やお買い得施策を行うべきでは?と思われがちですが、それではファンは離れてしまいます。いかにファンから共感してもらい、サービス・商品価値を高められるかが肝なのです。

そして、『愛着』を強くするとは、その価値を他に代えがたいものにすることだと言います。

具体的には、

①商品にストーリーやドラマを纏わせる
②ファンとの接点を大切にし、改善する
③ファンが参加できる場を増やし、活気づける

必要があるといいます。

最後に、『信頼』を強くするとは、サービスや商品の価値の提供元の評価・評判を上げることだと解説します。どんなにその価値が素晴らしくても、企業自体の評判が悪くては支持ができない、ということです。

具体的には、

①それは誠実なやり方かを自分に問いかける
②本業を細部まで見せ、丁寧に紹介する
③社員の信頼を大切にし「最強のファン」にする

ことが大切だと述べています。さらに、この次のステップとして、ファンをコアファンに変えるためのアプローチが紹介されています。

3.目次のご紹介

 1章:キャンペーンや単発施策を、一過性で終わらせないために
 2章:ファンベースが必然な3つの理由
 3章:ファンの支持を強くする3つのアプローチ -共感・愛着・信頼
 4章:ファンの支持をより強くする3つのアップグレード -熱狂・無二・応
 5章:ファンベースを中心とした「全体構築」の3つのパターン
 6章:ファンベースを楽しむ(もしくは実行の際のポイントの整理)

4.本の見どころ

本書では、現代のトレンドワードである”ファン”を基軸にしたマーケティング施策を行うにあたり、押さえておくべき観点をわかりやすく体系的にまとめています。これまで、「ファンを増やした方がよい」、「よりコアファンが増えるような施策を打とう」などと漠然と考えていた方に対し、ファンづくりの基本的な考え方と正しい知識を整理してくれます。また、ファンを増やすにあたり、絶対にやってはいけないことや考え方もまとめてありますので、これからファン施策を行おうとされている方だけでなく、ファン施策の担当ではないマーケティング担当者やサービス・商品開発に従事する方にも読んでもいただきたい1冊です。

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Editor Profile

  • 福井 和典

    株式会社データX マーケティング管掌執行役員

    日本IBMにてシステムエンジニア、GREEにてCRM領域のオペレーション企画、PwCでの業務コンサルタントとしての経験を経て、2016年よりデータXに入社。データX入社後は、カスタマーサクセス部門に在籍し、小売/金融/アパレル/ECなど幅広い業種に対するb→dash導入支援を統括。
    その後は、主にb→dashのマーケティング/広報/PR活動や事業企画に従事。

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