”Smart Data(スマートデータ)”-まだ聞きなれない言葉かもしれませんが、近い未来にはバズワードになっているかもしれません。消費者行動はここ数年で大きく変化しており、企業は大量のデータを取得・活用できる時代になりました。その流れを受けて、ビッグデータというワードが各所で叫ばれ始め、多くの企業はこぞってビッグデータを取得しはじめました。

しかし、そのデータをマーケティングに活用できている会社は多くありません。闇雲にデータを集め、ただ保有しているだけでは意味がないのです。マーケティングに活用するために、使えないビッグデータを「使えるデータ」に変える。それがスマートデータの概念です。これからの時代、スマートデータの扱い方が企業の明暗を左右するといっても過言ではありません。

では、スマートデータの本質的な意味とは何か。企業はどうやって使えないビッグデータをスマートデータに変えるべきか。そして、スマートデータの力でどのようにマーケティングを成功に導くか。今世の中で起きていることと、近い将来の企業と消費者像を明確にしておけば、道筋は見えてくるはずです。

さあ、スマートデータの世界への扉を一緒に開きましょう。

1.ビッグデータの成り立ち

IT化により、急激に増えた情報量、という意味での「ビッグデータ」は2010年終盤にメディアに取り上げられ始めました。タイミングとしては、米国のEMC社が同業のアイシロン・システムズ社の買収を発表した時です。当時は「クラウド・コンピューティング」が注目を集めていた時期で、クラウド上に集約された情報をどのように扱うか、ということで「ビッグデータ」が登場しました。

また、「最もセクシーな職業と言われているデータサイエンティスト」というフレーズも、ビッグデータをテーマにしたセミナーで多く取り上げられました。このフレーズの元になったのは、2009年にGoogleのハル・ヴァリアン博士が言った「今後10年で最もセクシーな職業は統計家だ」というフレーズです。昨今では「統計家」という言葉は「データサイエンティスト」という肩書に置き換わっています。

「セクシー」という、ITとはギャップのあるワードや、ファジーな職業名も掛け合わさって、「ビッグデータ」とともに「データサイエンティスト」という名前も広まったようです。

2.データを取り巻く環境変化

一方で、データを取り巻く環境はどのように変化しているのでしょうか。ここ数年で、生活者を取り巻く環境自体が大きく変化しています。街中ではスマートフォンを片手に歩く人が増え、ECサイトでの購買行動が常識になり、体験をSNSでシェアすることが一般的になっています。インターネットの進化やモバイルの普及によるこれらの行動変化により、データが取得しやすい時代になっています。また、ビジネスの側面ではオンプレミスからクラウドへの移行が進んでおり、企業も大量のデータを扱いやすい状態になってきています。まさに今、大量のデータを活用して企業経営を推進していくことが、すべての企業に求められています。

3.スマートデータとは

しかし、その一方で、多くの企業が大量のビッグデータを保有しているものの、それらをうまく活用して成功している企業はごくわずかです。データが使える状態にない、”Dirty Data(ダーティデータ)”になってしまっていることが一番の原因です。つまりこのダーティデータを、いつでも誰でも使えるデータにしたものこそがスマートデータなのです。スマートデータは、さまざまなビジネス活動において発生する大量のデータを、リアルタイムで利用可能な、実用的なデータに変換したデータです。

Dun&BradstreetのチーフデータサイエンティストであるScriffignano氏も2016年のCXOTalk※1にて、ビッグデータとスマートデータの違いについて説明しています。「ビッグデータはVolume(データ量)、Velocity(速度)、Veracity(正確さ)、Variety(種類)、Value(価値)という5つのVの観点で語られる。そしてこれらのうち、どれか一つでも統制が取れなくなると、問題に直面してしまう。一方で、スマートデータは自社の問題に対して、実際に活用できるビッグデータの部分集合であり、ソリューションの実現に向けてインテリジェントな形で使えるものだ」と述べています。

※1 CXOtalk
https://www.cxotalk.com/episode/enterprise-decision-making-anthony-scriffignano-chief-data-scientist-dun-bradstreet?cat=2016

これらの5つのVのうち、スマートデータはValue(価値)をとても重要視しています。スマートデータを活用することで、データに価値を見出すことが可能になり、顧客の理解やビジネスにおける意思決定をデータドリブンに行う事が可能になります。

このように、データ活用経営が求められる時代にも関わらず、うまくデータを活用できていない企業が多いことを背景に”スマートデータ”という概念が生まれました。ダーティデータのままではデータを活用して成果を出すことは不可能です。なかでも、最もスマートデータが求められるのがマーケティング領域です。テクノロジーの進化により、消費者に関する大量のデータが取得できるようになったので、そのデータを活用することで収益を拡大させることが可能です。

4.マーケティングにおけるデータ活用

企業が保有する大量のデータの中にはサイトのアクセスログ、ソーシャルメディアでの発言、コールセンターへの問合せ・要望、そしてモバイル端末での位置情報などの、自社の顧客に関するデータも含まれており、それらは日々蓄積されています。これらのデータはマーケティング活動に活用することが可能であるため、マーケティング担当者は、これらのビッグデータを利活用して、顧客サービスやプロモーションの効果・効率を高めていくことが、企業にとって重要なテーマとなっています。

このような背景をうけて、多くの企業は、「マーケティングオートメーション(MA)をやりたい」「One to One マーケティングをやりたい」「オムニチャネルをやりたい」などと、漠然と感じるようになってきました。これらを実現するには、すべてデータを取得~活用することが必要不可欠です。そのため、これらはすべて「データマーケティングをやりたい」と言い換えることができます。つまり、データマーケティングとは、消費者行動から取得できるさまざまなデータを活用して、消費者に対してより精緻かつ最適化された施策を実施することを指します。消費者行動も多様化してきていることから、これからの時代必須となる考え方です。しかし、本当の意味でデータマーケティングが実現できている企業はごくわずかです。

5.データマーケティングにおける課題

MAを導入したり、PUSH通知、レコメンドを実施しようとしても、 「社内でデータがバラバラに管理されている」「ツールを導入したものの、スキル不足により使いこなせていない」「KPIの設定やメイン担当者が曖昧など、社内の運用体制が不明確である」など、多くの企業がさまざまな問題を抱えています。 実際に、総務省が発行している情報通信白書によると、平成26年の調査では「データが散在していて分析できない・しにくい」が課題と感じることの項目で最も多い数値となっており、平成29年度の調査でも、「具体的な利用イメージが明確でない」の回答が最も多くなっています。

この調査からも、多くの企業が、「データ・ツールの持つ力を最大限に活用できていない」と感じていることがわかります。このように、課題が表層化している場合もあれば、うちの会社は問題ないと思っている企業も、実は本来のパフォーマンスの半分しか実現できていないケースも多く見られます。

(出典) 総務省「データの高度な利活用による業務・サービス革新が我が国経済および社会に与える波及効果に係る調査研究」(平成 26 年)
(出典)総務省「地域におけるICT 利活用の現状に関する調査研究」(平成 29 年)

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Editor Profile

  • 福井 和典

    株式会社データX マーケティング管掌執行役員

    日本IBMにてシステムエンジニア、GREEにてCRM領域のオペレーション企画、PwCでの業務コンサルタントとしての経験を経て、2016年よりデータXに入社。データX入社後は、カスタマーサクセス部門に在籍し、小売/金融/アパレル/ECなど幅広い業種に対するb→dash導入支援を統括。
    その後は、主にb→dashのマーケティング/広報/PR活動や事業企画に従事。

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