6.スマートデータ・マーケティング実現に向けて

では、ダーティデータをスマートデータ化するには、どうすればいいのでしょうか。それには大きく3つのポイントが存在します。それぞれ詳しく見ていきましょう。

① スマートデータ実現のポイント「Integrated」

多くの場合、企業が保有するアクセスログデータ、広告接触データ、ビジネスデータはバラバラに管理されています。例えば、アクセスログデータではAさん、広告接触データではBさんとそれぞれのデータベースで管理されていますが、実は同じ人だったということが往々にして起こっています。

まずは、企業内で1ユーザーに対して共通のマーケティングIDを設けて、それぞれのデータ同士をつなぎ合わせる作業が「統合(Integrated)」の役割になります。その結果、「どの広告からサイトに入ってきて、サイトではどのページを何秒くらい見ていて、どのメールを開いていて、この店舗でこの商品を購入した26歳の男性は田中さんという人間だ」というカスタマージャーニーが分かるような状態を作ることができます。これを活用することで、顧客ごとに最適な広告配信などの施策を実施できるようになります。

考え方は、検索エンジンと似ています。例えば、インターネットで物件を探す際、「西新宿 賃貸」よりも「西新宿賃貸 新築 オートロック 駅近 コンビニあり」と検索した方が、より自分にあった物件と出会える可能性は高まります。マーケティングでも同様で、多くデータを掛け合わせるほど、より精度の高いマーケティング施策を実施できます。

② スマートデータ実現のポイント「Completeness」

近年データマーケティング領域において、色々なツールが乱立しています。なかでも①データ取得、②施策、③分析、④統合基盤の大きく4つの領域に分けることが可能です。①データ取得は、広告データやアクセスログデータなどのユーザーの行動履歴を可視化することができるツールです。②施策はPUSH通知やメルマガ配信など、①で取得したデータをもとにセグメントしたユーザーに対して個別アプローチを可能にするツールです。③分析はLTV分析やアクセス分析など、①で取得したデータをもとに分析をするツールです。最後の④統合基盤は、①で取得したデータを統合し、1ID化して格納をしておくためのツールです。

各社がマーケティングのデジタル化・データ化を推し進める一方で、現場レベルでは様々な問題が噴出しはじめています。コストを下げるはずのマーケティングツールが、かえって現場担当者の負担を増やしてしまっています。実際に何が起こっているのか。コミュニケーションコストと金銭的コスト、時間的コストの大きく3つに分類することができます。

一つ目のコミュニケーションコストに関しては、より精緻なデータマーケティングを実現しようと複数のツールを導入してしまうと、それぞれのツールベンダーとのやり取りが発生してしまいます。また、ツール毎に担当者が割り振られている場合、社員同士のコミュニケーション量も自然と増えてしまいます。

二つ目の金銭的コストに関しては、複数ツール・複数機能を使うことによる追加費用の増加です。ついつい価格の安さで選んでしまったり、全ての機能を網羅していると勘違いして導入したものの、全く想像していたものと違った、というのはよく聞く話です。また、複数のツールを導入した場合、ツールにかかる費用はもちろんのこと、それぞれのツールを連携させるためにコンサルを雇う必要があります。スキルがある人材が社内にいれば問題ありませんが、それも膨大な時間がかかってしまいます。

三つ目は時間的コストです。複数のツールを同時に使おうとすると、現場担当者の工数は破綻してしまします。また、金銭的コストでも記載しましたが、担当者レベルでそれぞれのツールを連携させるには、Excelでデータを落ちして名寄せを繰り返して、と相当な工数が発生します。一日中Excelでデータの編集をしているようなことも良く耳にします。一方で、全ての機能を網羅しているツールを導入した場合はどうでしょうか。コミュニケーションコストに関しては、ツールベンダー一社と連絡を取るだけなので、煩雑なコミュニケーションラインは解消できます。金銭的コストに関しても、全ての機能を網羅しているツールは他のツール単体と比較すると一見高額に見えますが、複数ツールの導入費用や追加機能で発生する費用、コンサルを雇う費用を加味すると、圧倒的にコストをおさえることができます。最後の時間的コストに関しても、一つのツールの管理画面だけで完結できますし、統合機能を持っていれば、煩雑なデータ統合作業も不要になります。

このように、すべての機能を”網羅(Completeness)”しているツールを導入すれば、今まで皮肉にもマーケティングツールによって増加していたコストを低下させることが可能になります。

③ スマートデータ実現のポイント「Convenience」

これまでは、データマーケティングを実現しようとすると、SQLスキルが必要だったり、データリテラシーのある人しかデータを扱えないという事態が頻繁に起こっていました。そのような人が社内にいれば問題ないのですが、そもそも社内にいない場合や、使える人がいても休職や退職によって不在になってしまった場合、データを扱うことができなくなってしまいます。

一方で、データを扱う上で「利便性(Convenience)」がある場合どうなるでしょうか。SQLスキルやデータリテラシーがないような、マーケティング実務経験1年の担当者や、入社間もない新人でもデータを扱うことが可能になります。 つまり、「Integrated」、「Completeness」、「Convenience」この3つを備えたデータこそが、スマートデータと言えます。

7.スマートデータが実現すること

このように、”ダーティデータ”と”スマートデータ”では大きな違いがあります。では、”スマートデータ”は私たちに何をもたらすのでしょうか。大きく2つのポイントに分けることができます。

WORK:生産性の向上

スマートデータを使ったスマートデータ・マーケティングを実現することで、労働生産性の向上を実現することが可能になります。これまで多大な工数がかかっていたデータの扱いを大幅に短縮することが可能になります。ダーティデータをスマートデータ化することによって、企業はいつでも、一つのツールで、誰でもデータを使える状態になります。そのため、ポイント②でも記載しましたが、時間的なコストが大幅に解消されるので、マーケターは煩雑な作業に追われることなく、より本質的な業務に時間を充てることが可能になります。

LIFE:新しい顧客体験の創造

スマートデータ・マーケティングを実現することで、消費者は新しい顧客体験を享受することが可能になります。アクセスログデータ、広告接触データ、ビジネスデータなど、これまでバラバラだった消費者のデータが一つに統合されるので、より消費者一人ひとりにパーソナライズされたコミュニケーションを実現できるようになります。例えばみなさんも、ある商品をすでにオンラインショップで購入したにも関わらず、Webサイトの広告枠でその商品がレコメンドされている経験が一度はあると思います。購買データと広告のデータがばらばらに管理されてしまっているためこのようなことが起きています。しかし、企業がスマートデータ・マーケティングを実現することで、消費者は本当に欲しいと思ったタイミングで商品をレコメンドされたり、興味のない広告を見ることはなくなるようになります。

このように、スマートデータ・マーケティングを実現することで、WORKとLIFEのクオリティを高めることが可能になります。

スマートデータ・マーケティングを実現するためには?

本記事では、データマーケティングを成功に導くポイントである、Smart Data(スマートデータ)について解説いたしました。ダーティデータをスマートデータに変えることはこれからの時代必ず求められる概念です。とはいえ、スマートデータを活用したスマートデータ・マーケ ティングを実現することはそう簡単ではありません。本記事にも記載されている、3つのポイントを網羅する必要があります。この3つのポイントを抑え、ダーティデータをスマートデータにすることで、収益の向上や労働生産性の向上を実現することができます。

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Editor Profile

  • 福井 和典

    株式会社データX マーケティング管掌執行役員

    日本IBMにてシステムエンジニア、GREEにてCRM領域のオペレーション企画、PwCでの業務コンサルタントとしての経験を経て、2016年よりデータXに入社。データX入社後は、カスタマーサクセス部門に在籍し、小売/金融/アパレル/ECなど幅広い業種に対するb→dash導入支援を統括。
    その後は、主にb→dashのマーケティング/広報/PR活動や事業企画に従事。

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