インサイトマーケティングとは、一人ひとりの消費者のニーズや購買履歴からわかるインサイトに応じて、個別に展開されるマーケティング活動です。近年、広く知られるようになったインサイトマーケティングですが、まだインサイトマーケティングが何か分からない、何から着手すればいいのかわからない、という方も多いのではないでしょうか。そこで、本書では、顧客一人ひとりに合わせた最適なアプローチを実現することができる「インサイトマーケティング」について、成功例や具体的な手法をご紹介致します。

 

1. インサイトマーケティングとは?

インサイトマーケティングとは、「顧客一人ひとりのインサイトに応じたマーケティング」のことを指します。誰に対しても画一的なマーケティングを行うのではなく、顧客の購入履歴や行動履歴などを分析し、顧客一人ひとりのニーズに合わせて行うマーケティング活動です。例えば、顧客ごとに異なるクーポンを配信する、異なったwebページを表示するといったようなものが挙げられます。

ここからは、インサイトマーケティングでよく用いられる、実践的な手法をいくつかご紹介致します。

レコメンデーション

レコメンデーション(recommendation)とは、英語で「おすすめ」や「推薦」を意味する言葉です。マーケティングにおいては、ショッピングサイトなどでよく見かける「あなたへのおすすめ商品」「この商品を買った方は、こちらもよく購入されています」と表示される情報のことを指します。具体的には、特定の顧客の過去の購入商品や閲覧した商品ページをもとに、「おすすめ商品」を案内します。また、顧客Aの興味関心や属性を判定し、その特徴と似ている顧客Bが購入した商品を、顧客Aに対して「おすすめ商品」として案内することもできます。サイト上で表示させたり、メールで配信したりと、コミュニケーションツールは多岐に渡ります。このように、一人ひとりの顧客に対して、関心がある可能性が高い商品やサービスをおすすめすることができるので、購買に繋がる可能性の高い、効率の良い手法といえます。

リターゲティング広告

リターゲティング広告とは、一度自社サイトを訪れた消費者を追跡して、他のWebサイト上で自社製品の広告を表示させる手法です。ニュース記事のWebサイトを閲覧した時に、サイトの右下や両脇などの広告スペースに、自分が過去に閲覧したことのある商品やサービスを表示させることで、自社サイトへの再訪問や購入の再検討を促します。購入するかどうかわからない顧客に対して、一斉に広告を表示するよりも、一度自社の商品やサービスに興味を持ったが購入に至らなかった顧客に絞って広告を表示することができるため、効果的なマーケティングが可能になります。レコメンデーションと同様に、購買の可能性が高い層へのアプローチとなるため、特に効果的なマーケティング手法です。

メール配信/DM送付

メール配信/DM送付とは、メールアドレスや住所のデータを保有している顧客に対して、興味や関心が高そうな情報をメールやDMで直接届ける手法です。例えば、閲覧履歴のある商品やサービスのお得なキャンペーン情報をメールで送ったり、累計購入金額が10万円以上の優良顧客のみにシークレットセールの情報をDMで送る、というようなものが挙げられます。

LPO(ランディングページ最適化)

LPO(ランディングページ最適化)とは、ランディングページを訪問者ごとに最適化することで訪問者のCVRを高める方法です。ランディングページは自社サイト内の一番初めにたどり着くページを意味しており、消費者と企業の最初の接点となります。そのため、どんなメッセージを盛り込むか、どのような構成/デザインにするかは、会員登録や購買といった行動に大きな影響を与えます。最近では、サイトを訪問するユーザー一人ひとりに合わせたページを設定することも可能です。具体的には、ユーザーが訪れる時期や時間ごとにサイトに表示するメッセージを変えたり、ユーザーの属性に合わせた個別のランディングページを設定することができます。また、地域に合わせたページの設定も可能です。多数の地域に店舗がある企業の場合は、ユーザーがいる場所に合わせて店舗ごとの情報が表示されるため、顧客の来店率が上がります。

2. なぜインサイトマーケティングが注目されているのか

近年、インターネットが普及するにつれ、個人が触れる情報量は膨大なものになりました。消費者の嗜好は多様化し、ニーズも様々です。だからこそ、顧客1人ひとりに合わせたインサイトマーケティングを行う企業が増えています。

インターネット普及以前は、個人が触れる情報源はTVCMや新聞などに限られており、そこから大きなトレンドが作り出されていました。そのため、多くの人が同じトレンドを追い求めるという行動が見られました。しかし現在では、インターネットから様々な情報を入手でき、また誰でも流行の発信源となれることから、多様なトレンドが作り出されています。そのため、個々の顧客を引き付けるようなインサイトマーケティングが求められるようになってきました。

また、IT技術の進歩もインサイトマーケティングが注目されるようになった背景の一つです。インターネット上では、閲覧者が必要な情報を入手するだけではなく、閲覧者自身もアクセスしているWebサイト等に情報を提供しています。その提供している情報のうちのひとつが、Cookie(クッキー)と呼ばれるものです。Cookieは、インターネットを閲覧するときに使用するブラウザを介してWebサイトに送られています。Cookieを利用することによって、例えば、特定のWebサイトにアクセスしたとき、それが初回の訪問なのか、2回目以降の訪問なのかといった情報をWebサイト側は把握することが可能になります。この情報を利用することで、サイト上の行動履歴をもとにした顧客ごとに最適なマーケティングを行う事が可能になります。

このように、インターネットを介して膨大な情報を企業側が収集できるようになったこともインサイトマーケティングが注目されている理由の一つです。

3. インサイトマーケティングの効果・メリット

では、インサイトマーケティングを行うと、どのような効果やメリットがあるのでしょうか。様々ある中の一部をご紹介します。

ユーザーが求めている情報を配信するため、広告でもユーザーにしつこいと思われない

・顧客が「自分のためだけの情報」が届いていると感じるため、ロイヤリティの向上に繋がる

・顧客一人ひとりのニーズに最適化された情報を提供できるため、売上の向上に繋がりやすい

購買意欲の高いユーザー適切なタイミングでアプローチができるため、購買につながる確率が高く、費用対効果が高い

4. インサイトマーケティングにおけるよくある課題

インサイトマーケティングは、効果的なマーケティング手法である一方、次のような問題点もあるので注意しましょう。

データの管理に伴う工数

顧客一人ひとりのインサイトを把握するためには顧客に関するデータを準備することが必要不可欠です。しかし、顧客に関する属性や行動/購買履歴などのデータは、店舗、EC、アプリなど、顧客との接点が増えることで膨大になりがちです。手作業でデータを管理するのは難しく、オペミスや膨大な工数が発生してしまいます。

施策実施に伴う工数やスキル

データは揃ったものの、そのデータから「顧客が何を求めているのか」を把握し、効果的な施策に繋げることができなければ意味がありません。仮説を立てて、施策を立案するには、マーケティングに関する最低限の知識が必要です。また、蓄積されたデータをもとにメールやDM、LINE、アプリPushなどを使ってコンテンツを配信する作業にもスキルや工数が必要になります。一斉配信であれば比較的、少ない工数で作業が完了しますが、セグメントを細かく切って、顧客一人ひとりにコンテンツを出し分けるとなると膨大な工数が発生してしまいます。

5. インサイトマーケティングを実現するためのツール

インサイトマーケティングは、「MAツール」や「BIツール」、「CDPツール」などを利用することで実現することが可能です。

MA(マーケティングオートメーション)

MAとは、収益向上を目的としてマーケティングの作業や実行フローを自動で行うツールです。主に、購入見込みのある顧客情報を管理して、購入や受注につなげるために使用されます。たとえば、顧客の名前やメールアドレスをMAに取り込むと、あらかじめ作成したメール文面に顧客毎に応じたメールを自動的に送信することができ、顧客の獲得に役立ちます。このツールにより、マーケティング業務の一部を自動化することが可能です。

BI(ビジネスインテリジェンス)

BIは、企業に蓄積されたさまざまなデータを分析・可視化するツールです。BIを利用することで、経営管理やマーケティング業務、売上のシミュレーションなどビジネスの意思決定に役立てることができます。どれだけマーケティング施策を行ったとしても、その効果が正確に分からなければ、効果的なマーケティング施策を実行することが出来ないので、データドリブンマーケティングの重要さが増している中、BIツールの注目度も高まっています。

CDP(カスタマー・データ・プラットフォーム)

CDPは、カスタマー・データ・プラットフォームの略で、顧客データを収集・集約・蓄積する役割を担っています。CDPで収集できるデータは、Webサイト上などで企業と顧客との直接的に関わった顧客データです。これを1st Party(ファーストパーティー)データと呼びます。ここでいう顧客データとは、住所、氏名、電話番号などの個人情報に加え、行動データや属性といったデータも含まれます。これらのデータは、別々のシステムやデータベースでバラバラに管理されているケースも少なくありません。CDPはこれらを集約し、より詳細な分析を可能にします。

6. インサイトマーケティングの成功事例

すかいらーく:広告費を10%以上削減しながら売上を向上

すかいらーくは、ファミリーレストラン「ガスト」を全国に約1,300店舗展開しています。同社は2014年上半期の広告宣伝費を前年同期比で10%以上削減しながら、売上高39億円2.9%の成長がありました。これはPOSデータからブランド別にキャンペーンの成果を集計、分析、改善した結果です。

POSデータとはレジで入力したデータをサーバに貯めることで、何が・いくつ・いくら・どのように売れたのか分かるシステムです。すかいらーくはこのPOSデータをもとに、実施する各種キャンペーンやクーポン施策のさらなる精度の向上と効率化のために膨大なデータを分析しました。
 
その大きな成果が2014年に自社開発した「ガスト」のスマートフォンアプリです。リリースから半年で約300万件のユーザーにダウンロードされ、収益に繋がりました。このアプリの大きな特徴は、配信する内容が一人一人異なることです。年齢や性別、子供の有無などユーザーがアプリの登録時に設定した内容に合わせてクーポンを配信しています。例えば、未成年のユーザーに酒類に関するクーポンを配信しても意味がありませんし、来店した次の日にクーポンが届いても効果的ではありません。

アプリでのクーポン配信による来店率はメルマガの約10倍に、コストは新聞広告の100分の1ほど成果を創出することができました。

リンナイ:メルマガの最適化により、購買率が約12.6倍に

リンナイはガスコンロを取り扱う会社です。メーカーのインサイトマーケティング成功例として知られています。メーカーとしては珍しく「リンナイのある暮らし」というコンテンツサイトを開設しており、商品だけではなくガスコンロに関連するレシピやコラム、暮らしに対する情報などを提供しています。また「リンナイスタイル」というECサイトも運営し自社商品など販売しています。

こうした背景には、メーカーでありながらも消費者と直接の接点を持ちたいという思いがありました。2016年1月時点でも、ECでの売上はリンナイ株式会社全体の部品売上の20%を超え、会員数も35万人を超えています。

以前は同じ内容のメールを顧客全員に一斉配信していたようですが、顧客は求めている情報ではないメールが何度も届くことによって、押し付けがましいと感じてしまい、退会してしまう顧客も少なくありませんでした。

そこで、自社サイトの登録ユーザー情報を分析し、行動履歴に基づいたメール配信する方向に切り替えました。行動履歴を分析することによって、例えばある商品に反応しそうな顧客を抽出し、その顧客だけにメールを配信することができます。無作為に抽出をしてメールを配信した場合と比較すると、開封率が約3.7倍、クリック率が約2.4倍、購買率が約12.6倍も向上しています。

7. まとめ

インサイトマーケティングを行うことで、顧客は自分に最適な情報が届き、不要な情報が何度も届くという煩わしさが解消されます。一方で、企業は広告費を削減しながら売上の向上を実現することができます。ぜひ当記事を参考に、自社のデータを活用してインサイトマーケティングを行ってみてください。

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  • Marketics 編集部

    ユーザーデータ・広告データ・購買データなど、マーケティングプロセス上に存在する全てのビジネスデータを、 ノーコードで、一元的に取得・統合・活用・分析することが可能なSaaS型データマーケティングプラットフォーム「b→dash」が運営する マーケティングメディア「Marketics」の編集部。インタビュー記事やノウハウ記事を定期的に発信しています。

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