業界を問わず、コロナ禍以降はそれまでの接客方法を見直さざるを得なくなったという声がよく聞かれます。対面での接客が難しくなった今、webサイト等のオンライン上での接客の重要性が以前にも増して高まっています。そこで注目されるようになったのが、web接客やオンライン接客です。この記事では、web接客/オンライン接客の成功事例と、失敗しない導入のコツ、おすすめのツールについて解説します。

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1. web接客/オンライン接客とは

web接客、オンライン接客は、いずれもインターネットやIT技術を活用したオンライン上での接客/コミュニケーション方法のことを指します。web接客とオンライン接客は共通点が多いためあまり区別されず、オンライン上で行う接客をまとめてオンライン接客という場合もあります。しかし、区別して用いられている場合もあるので、両者の違いについても解説します。

web接客は、webサイトやアプリに訪問してきた顧客に対してチャット機能やポップアップ機能を用いて接客することを指します。顧客の利便性を満たしつつ、これまでの対面接客に近い対応を可能にした接客方法です。AI技術等を用いて、一定条件を満たした顧客に必要な情報を自動的に提供する方法を選べば、営業時間外にサイトを訪問した顧客に対しても接客をすることが可能です。

一方で、オンライン接客はweb接客の上位概念として扱われることが多く、web接客のチャット機能やポップアップ機能に追加して、顧客とリアルタイムに双方向でやり取りできるビデオ通話や、web会議システムを活用して行うような、オンライン上での接客/コミュニケーションを指します。

2. web接客ツール/オンライン接客ツールのメリット

web接客ツール/オンライン接客ツールを導入した際の3つのメリットを解説していきます。

メリット①:ユーザーの満足度向上

web接客ツールはwebサイト上でいつでも実店舗のような接客を行うことが可能であるため、web接客ツールの導入は顧客満足度の向上につながります。また、常連のお客様に対してポップアップ式でクーポンを提供することで、ECサイトへのロイヤリティは高まっていきます。ECサイト上でお客様1人1人に違ったサービスを提供することで、顧客満足度のアップを図れます。

メリット②:サイトの離脱率低下

webサイトにおいて、離脱率は非常に重要な指標となっています。売り上げに直結するコンバージョンに繋げていくために、大前提として離脱率を下げていかなければなりません。webサイトに訪れた顧客が自ら商品やサービスを探し出すのではなく、web接客によって商品やサービスを提案していくことで、離脱するリスクを低下させ、コンバージョンを促すことが可能になります。

メリット③:購入率向上

web接客ツールでは、webサイトに訪問した顧客に同一のアプローチをするのではなく、過去行動履歴や購買履歴に基いて一人一人の顧客に沿ったアプローチを行うことが出来ます。一人一人に沿った商品の訴求や、クーポンやキャンペーンの提示などによって、購入率を向上させていくことが可能です。

3. web接客ツール/オンライン接客ツールの種類

web接客ツール/オンライン接客ツールは、大きく分けて3つの種類に分けられます。それぞれの種類について、解説します。

3-1. ポップアップ型

1つ目は、ポップアップ型です。ポップアップとは「飛び出す」を意味する言葉ですが、転じてパソコンやスマートフォンの画面上に、おすすめの商品やサービスを飛び出す形で表示させる方法を指します。例えば、購入履歴のあるユーザーに対しては「いつもお買い上げありがとうございます」というメッセージと併せ、割引クーポンのポップアップを表示させることが考えられます。これにより、顧客の再購入を促すことができます。

[ポップアップ型] メリット

ポップアップ型のweb接客ツールは、画面上にポップアップを表示させることで、キャンペーンやクーポン情報など、ユーザーに知らせたい情報を確実に訴求することができます。ユーザー1人ひとりに合わせてポップアップの配信を最適化することによって、離脱防止やコンバージョンへの誘導を行えるのがメリットです。

[ポップアップ型] デメリット

ポップアップ型のweb接客ツールは、例えばページを熟読している時など、ポップアップを配信するタイミングを誤ると、ストレスの原因になってしまうことがあります。また、ユーザー1人ひとりに合わせた配信内容になっていなかったり、配信タイミングなどの最適化がされていなかったりする場合は、効果を発揮できないことがデメリットです。

3-2. チャット型

2つ目は、チャット型です。一般的に、webサイトの右下などに埋め込まれたチャットを使って、接客を行います。例えば「ご質問したいカテゴリがあれば選択してください。ない場合はご質問を入力してください」などと質問を促し、顧客がその場で疑問や質問を解決することができます。チャット型の中にも、社内のスタッフが都度対応する「有人チャット型」と、予め決めておいたシナリオに応じて対応する「ボット型」が存在します。

[チャット型] メリット

一番のメリットとして、顧客が手に入れたい情報を的確に案内できることが挙げられます。「ボット型」であれば、24時間365日スピーディかつ的確な回答をするため、ユーザーを待たせることなく質の高い接客が実現できるというメリットがあります。

[チャット型] デメリット

ボット型のチャット型のweb接客ツールは、事前にシナリオを設計する必要があり、シナリオから外れた質問には対応できないことがあります。また、ある程度の精度が担保できるようになるまでにデータが必要なため、最適化が完了するまでに長い時間がかかることがデメリットです。また、「有人チャット型」の場合は、リアルタイムに対応できるオペレーションを構築する必要があるため、一定の工数が必要になります。

3-3. ビデオ型(オンライン接客ツールのみ)

一方で、オンライン接客ツールは先述したポップアップ型とチャット型に加え、ビデオ型が存在します。オンライン上でリアルタイムに接客を行うツールです。顧客の顔を見て声を聞き、反応や疑問点を確認しながら、商品/サービスの魅力や利点を説明することができます。営業、商談、アフターフォロー、個別相談など多彩なシーンに活用されています。

扱う品物やサービス、求める目的や効果、運営体制などを考慮したうえで、どちらの仕組みにするか選ぶとよいでしょう。

[ビデオ型] メリット

リアルタイムのやり取りが可能なうえに双方向性があるため、店舗での対面接客と同様に、きめ細かいやり取りができます。webサイト上の情報だけでは解決できないパーソナルな疑問やニーズを専門スタッフに直接聞くことができ、商品のサイズや色味、質感などを確認できるため、お客様を購入に導く最後のひと押しが可能です。

[ビデオ型] デメリット

ビデオチャットのように実際に目で確かめることが必要な接客の場合、通信環境を整えるための準備や費用が掛かることがデメリットになります。ツールを導入した場合はオンライン接客の導入による費用対効果を検討したうえで、慎重に進める必要があります。よって、運用の効率化や手間・費用の削減がオンライン接客における課題といえます。

4. web接客ツール/オンライン接客ツールの例

web接客やオンライン接客の専用ツールにはポップアップ型とチャット型があることは先に説明した通りです。ポップアップ型のツールは、あらかじめ設定した条件を満たす顧客が現れたときに、自動的に設定したポップアップが表示されるように作られています。条件を満たした人に対して適切なタイミングで割引クーポンや広告を表示することができるので、購買率やCVRを上げたいときに最適です。

それに対して、チャット型のツールには、先述したとおりあらかじめ設定した内容で質問に対する回答を行うボットタイプと、スタッフが顧客と直接やり取りする有人チャットタイプがあります。簡単な問い合わせはボットで対応し、複雑な質問のみ有人で対応するなど使い分けをすると効率的です。チャット形式をとることによって、顧客が気軽に質問できるので、日常的な問い合わせの対応や、CSの向上を目的とする場合に向いています。

最後に、ビデオ型のツールは、ZOOMやSkype、Google Meet、Microsoft Teamsといったweb会議システムが挙げられます。お互いの顔が見え、双方向性があるので、従来の接客に近い形で接客が可能です。全ての顧客に対してビデオで対応するとキリがないので、ロイヤル顧客のみビデオで対応する、というような使い方が有効です。

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5. web接客ツール/オンライン接客ツール導入におけるよくある課題・注意点

web接客ツールやオンライン接客ツールは、非接触でも顧客のニーズに合った提案ができるという点が魅力ですが、いくつか課題もあります。導入を決めた際にまず直面するのが環境整備に関する課題です。web接客ツールやオンライン接客ツールは、単にツールを選定して導入すればすぐに機能するというものではありません。有人チャットであれば、担当者を確保し、ツールの操作を覚えてもらう必要があります。ボット利用で自動化するなら、質問に応じた回答を用意するなど、シナリオを組む必要があります。また、ポップアップ表示に関しても、誰に表示させるかを決めたり、表示するポップアップのデザインを作成する必要があります。導入時の初期費用だけでなく、運用の手間やコストがかかることも意識しておくべきです。

web接客ツール導入におけるメリットやそのほか詳しい機能については、下記資料にてご紹介しておりますので、こちらも是非合わせてご一読ください。

 

6. web接客ツール/オンライン接客ツールの成功事例

ここまで、web接客やオンライン接客ツールにはどのようなものがあり、どのようなメリットや課題があるのかを見てきました。ここからは、実際にそれらのツールを導入してどのような成果が上がっているのか、成功事例を紹介していきます。

6-1. 三越伊勢丹(百貨店)

三越伊勢丹が導入したのは、三越伊勢丹リモートショッピングアプリを通じた接客です。ユーザーはアプリをダウンロードし、web会員に登録、ログインするだけで使用できます。ショップリストの中から、チャットで相談したいショップを選べる仕組みです。一部ショップでは、ZOOM機能を利用して、ビデオ通話による接客も受けられます。

特に成功したのは、コロナ禍におけるランドセル販売です。事前予約することで、1回40分のオンライン接客を受けられるという仕組みになっています。事前にLINEチャットでニーズを確認し、ZOOMでオンライン接客を行い、最後に来店予約を取るという3段階で接客を行うという方法をとりました。この機能は、当初ランドセルなど子供用品に限られていましたが、ギフトや婦人/紳士靴、リビング用品などにも随時拡大中です。リモートショッピングアプリの対象店舗は、2022年1月現在で伊勢丹新宿店、日本橋三越本店、銀座三越、伊勢丹立川店です。

6-2. ルミネ新宿(ファッションビル)

ルミネ新宿では、メールリンク機能を利用することにより、オンライン接客での買い物にも「ルミネカードweb決済サービス」を利用できるようにしました。ルミネ新宿の各ショップスタッフがSNSやビデオ通話の機能を活用した接客をしたのち、顧客が商品の購入を希望する場合は、決済URLを送付します。利用までの準備も簡単です。管理画面で初期設定を行ったら、それ以降はルミネ側からの案内に従って進めていけばスムーズに利用を開始できます。ルミネ新宿内の90店舗で利用が可能という点も魅力です。

6-3. 三菱地所レジデンス(不動産)

三菱地所レジデンスでは、コロナ禍で対面による商談やモデルルームの内覧が困難になったのを機に、オンライン接客を導入しています。オンライン相談窓口を設け、ビデオ通話の機能を利用することによって、リモートでの顧客対応を可能にしました。最初は都心の物件のみが対象でしたが、2021年5月の時点で全事業物件がオンライン相談の対象になっています。さらに、VRを利用し、モデルルームの内覧も行えるようにしました。現地で物件を見ながら購入の相談をするのとほぼ同じような感覚で説明を受けられる点が好評です。なかなか現地まで足を運べないということで相談や購入をためらっていた層を取り込むことにつながっています。

6-4. アパマンショップ(賃貸住宅)

顧客側がカメラのついた端末を所持していることが条件となりますが、アパマンショップでは、独自開発したシステム「AOS(アパマンショップ・オペレーション・システム)」を用いて、オンライン上で部屋選びに必要な情報を提供できるようにしました。画面越しに外観や内装の写真を見ながら、店舗スタッフから説明を受けることができます。また、店舗スタッフがタブレットやスマホなどの端末を持って物件まで足を運び、ビデオ通話することにより、オンラインで内覧できるようにもしました。契約前の重要事項説明もオンラインで受けることが可能です。その場合は、事前に宅地建物取引士証の提示を行うことになっています。店舗での接客とほぼ同じサービスを受けられることにより、顧客満足度を高めることにつながりました。

6-5. 23区(アパレル)

オンワードのファッションブランド「23区」では、ビデオ通話の機能を利用して、店頭と同様にオンラインでもスタッフのスタイリングサービスを受けながら買い物ができるようにしました。スタイリストを選び、予約した日時に1対1の接客を受けられます。#StayStylish STOREと名付けられたこのシステムでは、23区だけでなく、オンワードが展開する他のブランドの商品も購入可能です。事前のアンケートを取ることによって、似合うかどうかだけでなく、好みに合うかどうかも考慮してスタイリングすることになります。横のつながりも利用できるというオンワードの強みを活かすことにより、高い顧客満足度を実現しました。

6-6. ベイクルーズストア(アパレル)

ベイクルーズストアでは、店舗に足を運ばなくてもショップスタッフのアドバイスを受けながら買い物をできる「Online Styling Service」を導入しました。ZOOMアプリを利用したサービスです。都合の良い日時を事前予約したら、自動配信されてくるメールに添付されているZOOMミーティング用のURLにアクセスするだけでサービスを受けられます。気になる商品を見つけたら、ベイクルーズストアのファッションアドバイザーに相談しましょう。素材やサイズ感についての説明はもちろん、コーディネートのコツなどもアドバイスしてもらえます。幅広い端末から利用でき、予約手順も予約後の利用方法も簡単なので、顧客満足度を高めることに成功しました。

6-7. オルビス(化粧品)

オルビスでは、ZOOMの機能を利用して、オンラインでカウンセリングを行っています。「正しい使用方法を知りたい」「専門のスタッフにスキンケアやメイクについて相談したいが、店頭では周りの目があって相談しにくい」といった声を受け導入しました。事前に応募受付フォームからカウンセリングを受ける日時を予約することで、オンライン上で顔を合わせた状態でカウンセリングを受けられるようになります。また、チャット形式での相談は、事前予約なしで受けることも可能です。平日の10時から17時の間だけですが、「チャットで質問」バナーから希望するメニューを選ぶだけで利用できます。オンラインカウンセリングもカウンセリングチャットも無料で利用できるようにしたことで、カウンセリングから購入に結びつく割合が増えました。

6-8. 資生堂ワタシプラス(化粧品)

資生堂ワタシプラスは、資生堂が運営する総合美容サイトです。資生堂では、これまでもLINEやメールなどを活用して、顧客とのコミュニケーションをとってきました。ばらばらに運用していたコミュニケーションツールを資生堂ワタシプラスに統合することで、顧客の行動から何を求めているかをつかみやすくなり、より良いタイミングで情報を提供できるようになったといえます。その結果、商品の購入率が導入以前の2.5倍になりました。これまで蓄積されたデータと、リアルタイムで得られた情報を解析することにより、顧客の好みに合わせたアドバイスがしやすくなったのが勝因といえるでしょう。

6-9. 近畿日本ツーリスト(旅行)

近畿日本ツーリストでは、2021年11月から「旅のアバターコンシェルジュ」というサービスを開始しました。これまで、旅行会社が店頭で行っていた旅の相談や予約などのサービスをオンライン上で完結させるものです。ZOOM等を利用して店舗スタッフと対面でコミュニケーションをとるのではなく、アバターを介して説明や相談を行うという点が、これまでにないパターンといってよいでしょう。稼働しているアバターは11人で、それぞれ専門知識を持っている設定です。目的地や旅の目的に応じて、専門家に相談しながら旅を組み立てることができます。

6-10. ニトリ(リフォーム相談)

ニトリでは、リフォーム部門で2種類のオンライン接客を行っています。ショールームのリモート接客と、webを活用したリフォーム相談です。ショールームのリモート接客は、実際にショールームに足を運んでいる顧客に対するサービスという点がweb接客としては珍しいパターンといえます。ショールームで相談したくても、スタッフが見当たらないときに利用できるサービスです。店舗内に設置されているタブレットから希望のショールームにアクセスして、ほかのショールームにいる専門のスタッフにビデオ通話で相談します。来店した顧客を待たせないサービスとして導入されました。

もう1つは、「おうちでショールーム体験」というサービスです。家にいながら、ショールームにいる専門スタッフに相談できます。ビデオ通話を利用するため、リフォームが必要な場所をスタッフに見せながらアドバイスをもらうことも可能です。オンラインでの相談を何度か繰り返しておけば、ショールームに足を運ぶのは1回で済みます。ニトリのショールームが近くにない場合などに利便性が高いサービスといってよいでしょう。

さらにweb接客ツールを活用し、CVRを改善した事例について、下記資料にてご紹介しておりますので、こちらも是非合わせてご一読ください。

6-11. ビックカメラ(家電)

ビックカメラでは、2種類のweb接客を導入しています。1つは店舗での遠隔接客です。コロナ禍以降、店舗に足を運んでも、長時間店員と会話をして家電を購入することには抵抗があるという人が見られるようになりました。そこで、店舗内に大型のモニターを設置し、店舗内の別の場所にいるスタッフが商品を紹介したり、質問に答えたりできるようにしています。そのうえで、脈ありとみられる顧客に対しては、近くにいる別のスタッフが声をかけ、詳しく説明をするという形にしたことで、売り上げを伸ばしました。

もう1つは、ビックカメラ.comのサイト内からスタッフに相談できるサービスです。例えば、Microsoft Surfaceのページなら、右下に「Microsoft Surface選びに迷ったら、オンラインでご相談いただけます」という表示があります。スタッフのアイコンがグレーなら接客中ですが、緑ならクリックするだけで接客を受けられるというシステムです。午前11時から午後10時まで相談を受け付けています。1対1で対話する形ですが、スタッフは同時に4人まで接客できるようにしたことで、効率よい接客を可能にしました。

6-12. Panasonic レッツノート(パソコン)

Panasonicでは、カスタマイズレッツノートの販売サイトでオンライン接客を導入しました。もともとあったノートパソコンの直販サイトをてこ入れした形です。取り扱う商材がカスタマイズ版のレッツノートなので、顧客それぞれが、自分好みのノートパソコンを探しに来ます。それぞれ求めるところが違うため、しっかり好みや求める機能などを聞き取り、それに合うものを提供することが必要です。

カスタマイズレッツノートプレミアムサロンのweb接客は、ビデオ電話で店舗と同様の相談ができ、実機や資料を確認しながら説明を受けられるというものなので、異なるニーズを持った顧客にも柔軟に対応できます。説明は聞きたいが、コンシェルジュと直接話すのは苦手という人には、チャット機能で対応することも可能です。顧客目線に立った使い勝手の良さが、購入率を50%、客単価を10%増やすことにつながりました。利用客のアンケート回答から満足度の高さがうかがえます。

6-13.ガリバー(中古車買取販売)

ガリバーには、もともと充実したwebサイトがあったものの、「ガリバー、中古車」という検索ワードでサイトを訪れた顧客の離脱率が高いという点が課題でした。中古車市場には、「買いたい」というニーズを持った顧客と「売りたい」というニーズを持った顧客が混在しています。どちらのニーズを持った顧客なのかを見極めずに誘導していたことが離脱の原因となっていました。そこで、接客ツールを導入し、トップページで車を「買いたい」のか、「売りたい」のか、顧客のニーズを確認するモーダルを表示するようにしたのです。その結果、適切なページに顧客を誘導できるようになり、査定申し込みのCVRが124%もアップすることとなりました。

6-14. LIXILオンラインショップ(住宅設備)

LIXILでは、オンラインショールームでweb接客を行っています。事前予約すれば、専任コーディネーターを10時から19時30分までの間で約1時間つけることが可能です。ZOOM機能を利用したサービスなので、スマホやタブレット、パソコンなどでどこからでも気になる商品の説明を受けたり、リフォームの相談をしたりできます。ショールームまで足を運ばなくても、さまざまな角度から商品を確認できるのが魅力です。動画やwebカタログで商品説明を受けた後、見積もりや完成予想イメージの作成もweb上で受けられます。

インターネットに接続できる環境であれば、場所や時間の制約なく利用でき、便利です。自宅にいながらショールーム体験ができるので、小さい子供がいても気兼ねなく相談できます。また、移動時間が不要なので、忙しくてなかなかショールームまで行けないという人でも、リフォームの相談がしやすくなりました。web会議システムを利用しているので、遠方にある実家のリフォーム相談に同席することもできます。

6-15. スワロフスキー(ジュエリー)

スワロフスキーでは、コロナ禍によって店舗に足を運んでくれる顧客が減ったのを機に、オンライン接客を始めました。当初、完全予約制のオンライン接客を導入したのは、2020年6月にリニューアルオープンした旗艦店と銀座店の2店舗です。スワロフスキーの場合、コア客層が40~ 50代ということを意識してツールを選びました。スタッフがツールをストレスなく操作できることも考慮し、直感的に簡単な操作ができるツールを導入しています。1対1で接客を受けられる、銀座店でしか購入できないものもオンラインでは購入できるという特別感も相まって、顧客満足度が80%以上、購入率も約80%と高まりました。特に平均購入単価が約5倍になり、20~30代の新規顧客が増加した点は注目に値します。

6-16. セイコーウオッチ(時計)

セイコーには「セイコーブティック」「グランドセイコーブティック」「セイコードリームスクエア」という3種類の店舗があります。大都市の一等地に高級感あふれる店舗を構えて接客を行っている各店ですが、2020年10月以降、「オンラインコンシェルジュ」と銘打って完全予約制のオンライン接客を導入しています。希望の日時を事前予約することで、1人当たり約40分の接客を受けられるサービスです。PCとAndroidの場合はGoogle Chrome、iOSの場合はSafariの利用で接続できます。

コロナ禍で実店舗への来店が減ったことをきっかけに、オンラインチャネルを利用し、新規顧客の開拓、販路の拡大を図りました。実際に、オンライン接客を利用するのは、これまで実店舗に足を運んだことのない層がほとんどです。銀座に店舗を構えるセイコードリームスクエアでは北海道や新潟、富山からオンライン接客の予約がありました。事前アンケートで顧客のニーズを把握したうえで、限られた時間の接客に入っているのが成功のポイントです。利用客の満足度を高めることに成功しました。

6-17. ロフテー枕工房(枕)

エアウィーブグループのロフテー枕工房では、全国50店舗にそれぞれ専門知識を持つピローフィッターを配置しています。顧客ごとに異なる頭や首の形、好みなどにぴったり合う枕の選定、提案するのがピローフィッターの役割です。コロナ禍によって来店客が減った一方で、自宅で過ごす時間が増えたことで、こだわりの寝具のニーズが増えました。しかし、価格が高めのこだわりの枕をオンラインショップで購入するのは少し不安だという声は少なくありません。そのような見込み客層をうまく取り込んだのが「リモートコンシェルジュサービス」です。

2020年7月から始まった同サービスの利用は1日当たり10~20件で、それぞれが睡眠の悩みを打ち明けていきます。カメラ越しでも頭の形や首のカーブを見れば、悩みの解決につながる枕を提案できたことで、売り上げを増やすことに成功しました。通常の店舗接客では見ることができない、自宅で使っている枕を見たうえで提案できる点も、オンライン接客が成功した理由の1つです。

7. web接客ツール/オンライン接客ツールの導入を検討する観点

web接客ツール/オンライン接客ツールの導入を決める際に、どのような観点で考えれば良いのでしょうか。ここでは、web接客ツール/オンライン接客ツールの導入を検討する際に、考えるべき観点を解説します。

7-1. 観点①:web接客ツール/オンライン接客ツールが解決しやすい課題の有無

観点の1つ目として、web接客ツール/オンライン接客ツールの導入で解決できる課題があるかどうかが挙げられます。2章で紹介した「ユーザーの満足度向上」や「サイトの離脱率低下」「購入率向上」などweb接客ツール/オンライン接客ツールの導入で解決できる課題は限定されているため、自社が持つ現状の課題が何を特定してから、導入を検討する必要があります。

7-2. 観点②:web接客ツール/オンライン接客ツールの導入インパクトが見込めるか

観点の2つ目として、web接客ツール/オンライン接客ツールの導入インパクトが見込めるかが挙げられます。web接客ツール/オンライン接客ツールの導入/運用には、当然ですがコストが発生します。web接客ツール/オンライン接客ツールの導入後を想定した際に、どれくらい改善でき、結果として売上の向上につながるのかを考慮しなければなりません。導入/運用のコストよりも、回収できる金額が少なければ、導入を見合わせるべきです。

7-3. 観点③:どのようなユーザー体験を提供したいか

観点の3つ目として、どのようなユーザー体験を提供したいかが挙げられます。web接客ツール/オンライン接客ツールの導入でwebサイトに訪れるユーザー体験が向上しますが、そもそも自社が提供したいユーザー体験に沿っているかは考えなければなりません。ユーザー体験を向上させることができるツールはweb接客ツール/オンライン接客ツールだけではありません。どのようなユーザー体験を提供したいのかを細かく思案し、web接客ツール/オンライン接客ツールの導入で提供できるのか検討しましょう。

8. web接客ツール/オンライン接客ツールの選び方・比較のポイント

web接客ツール/オンライン接客ツールを選ぶ際に押さるべきポイントを3つ紹介します。

ポイント①:費用対効果

1つ目は、費用対効果が合うかどうかです。初期費用以外にも、運用料金やスタッフの教育費用なども必要になります。選ぶ方法によってはネット回線の整備も必要になるかもしれません。かけたコストに見合う集客数や売り上げの増加が見込めるかという点をしっかり考える必要があるでしょう。

ポイント②:自社に合うツールの選択

2つ目は、業態や商品/サービスに合うかどうかです。チャットやビデオ通話のみであれば、専用ツールを使わずとも、web会議システムやSNSも利用できます。選択肢の幅が広い分、選び方を間違えると失敗につながりかねません。顧客層や求められている接客の質などを考慮したうえで、自社の商品やサービスに合うツールを選ぶ必要があります。web接客/オンライン接客ツールを導入する目的をはっきりさせ、課題を解決できるツールを選ぶようにしましょう。

ポイント②:必要な機能

3つ目は、ツールに求める機能です。web接客ツール/オンライン接客ツールは、様々な機能を有していますが、機能が多ければ多いほど良いツールというわけではありません。不要な機能が多いと無駄なコストがかかるうえに、使い勝手も悪くなります。必要な機能を洗い出し、必要最低限の機能を搭載したものを選んだ方が運用しやすいということも覚えておきましょう。

9. web接客ツール5選

ここではおすすめの5つのweb接客ツールを紹介します。

おすすめツール①:Flipdesk

Flipdeskはサイトに埋め込んだタグにより、訪問者の行動を解析、来店状況に応じてダイレクトメッセージやクーポンなどを自動的に配信してくれるツールです。東急ハンズや109などをはじめ、240社以上で導入実績があります。

顧客の訪問経路や行動履歴などの情報を収集し、購入可能性の高いグループ、サイト内で迷子になっているグループなどをまとめた上で、クーポンやバナー表示など、接客施策を行えます。また、チャットサービスも利用可能となっています。

おすすめツール②:SELF for EC

SELF for ECはECサイト向けのweb接客ツールです。EC上のすべての商品をAIが自動理解します。そして顧客のサイト内行動、AIとの会話で得られる目的やニーズ、他の顧客の商品閲覧や購買行動を総合的に分析することで、一人ひとりに適した「商品提案」を行うことができます。

このような一人ひとりに適した「商品提案」は、顧客の購買意欲の向上につながりコンバージョンへと導くことができます。シナリオ設計や商品解析を全て自動化しているため、導入企業側も運用リソースを心配する必要がありません。ECサイトを運用している企業におすすめのweb接客ツールです。

おすすめツール③:KARTE

KARTEはハイブリット型のweb接客ツールです。アプリやサイト訪問者が訪問したその瞬間の行動データと過去の膨大な行動ログを訪問者ごとに統合し、訪問者の行動や感情をリアルタイムに解析することを得意としています。訪問者を自由にセグメントすることができ、また多彩なテンプレートを活用することで、時間や場所、行動、感情などに合わせた、最適なタイミングでのアクションの設定ができます。アプリやサイト上での心地よい体験の影響が大きい商品・サービスにおすすめのweb接客ツールです。

おすすめツール④:b→dash

b→dashは簡単操作で誰でも使えるのが魅力です。複数の機能が1つのツールにまとまっていて、この中にweb接客ツールも搭載されています

web接客ツールも簡単な画面操作で誰でも利用しやすい点が特長です。操作性がいいので簡単にアプリやサイト訪問者の、デモグラフィックデータや行動情報をもとに、適切なタイミングでバナーを表示しクーポン配布や告知などのアプローチの設定ができます。アプリでは動線誘導や目を引くアニメーションを利用することが可能です。マーケティングに必要なすべての機能を提供しているため、web接客だけではなくマーケティング全体のツールを探している企業におすすめです。

おすすめツール⑤:Lステップ

LステップはLINEの公式アカウントの機能を拡張したweb接客ツールですLINEの月間アクティブユーザーは8,600万人以上(2018年12月時点)、10~60代まで世代・性別・職業に関係なく利用されているSNSです。

Lステップの機能としては、企業と友だちになった人に、あらかじめ登録しておいた複数のメッセージを決められたタイミングで順番に自動配信するシナリオ配信、配信リストから対象となる顧客を条件で絞り込んで配信するセグメント配信、セミナーや説明会の予約のリマインドを自動で行うリマインダ配信、あらかじめキーワードを設定することによって友だちがキーワードを送信した際に自動で返答す自動応答などがあります。そのため、LINEの友だちがたくさんいる企業におすすめのweb接客ツールです。

10. まとめ

コロナウイルスの感染拡大や、顧客ニーズの多様化に伴って、オンライン上でも顧客一人ひとりに最適な接客をする重要性が高まっています。このような背景のもと、web接客ツール/オンライン接客ツールに注目が集まっていますが、費用対効果が高く、だれでも操作しやすいツールであること、扱う商品やサービスに合うツールであることなど、ポイントを押さえて導入することが成功につながります。

[参考記事]
web接客は「ポップアップ型」と「チャット型」どちらがおすすめ?
【2022年注目】web接客ツールおすすめ 20選!

[おすすめサイト]
b→dashのweb接客ここがすごい!3つのポイントで徹底解説

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Editor Profile

  • 福井 和典

    株式会社データX マーケティング管掌執行役員

    日本IBMにてシステムエンジニア、GREEにてCRM領域のオペレーション企画、PwCでの業務コンサルタントとしての経験を経て、2016年よりデータXに入社。データX入社後は、カスタマーサクセス部門に在籍し、小売/金融/アパレル/ECなど幅広い業種に対するb→dash導入支援を統括。
    その後は、主にb→dashのマーケティング/広報/PR活動や事業企画に従事。

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