法人の営業活動は、ひたすら電話をかけてアポを取り、顧客のもとに頻繁に足を運んで受注を獲得するスタイルから、自動化できる作業はツールに任せ、精度の高い分析と施策でリードを育成する「マーケティングオートメーション」へと変遷しています。この記事ではBtoB領域におけるマーケティングオートメーションの基礎知識やおすすめツールについて、詳しく解説していきます。

 

1. 法人営業にマーケティングオートメーションを取り入れよう

営業活動では、見込み顧客や既存顧客の情報を分析して適切なアプローチをすることが重要ですが、膨大なデータを手作業で抽出・分析するには時間がかかり、人的ミスを完全に防ぐことは困難です。せっかくのデータも、効率的に生かすことができなければ宝の持ち腐れです。多くの顧客を抱える法人営業においては、自動化できる作業はツールに任せ、コア作業に労働力を注力する「マーケテイングオートメーション」によって、こうした課題を解決できると考えられています。

1-1. 法人営業でのマーケティングオートメーション導入のメリット

法人営業では、顧客が商品・サービスの購入/発注をするまでに多くの人の決裁が必要です。担当者の一存で即決されることは少なく、顧客が情報収集を始めてから、比較検討や上申を行い、購入/発注するまでには長い場合で年単位の期間がかかります。受注件数の増加のためには、フェーズごとに適切なアプローチをする「リードナーチャリング(見込み顧客の育成)」が重要ですが、1対1で対応できる顧客数には限界があります。こうした問題を解決できるのが、マーケティングオートメーションの導入です。リードナーチャリングの工数の多くを自動化することができるため、1人が担当できる顧客数が増え、見込み顧客の育成状況も正確に把握できるようになる点は大きなメリットです。

手動の作業が減り、人的ミスを減らせる点もメリットです。「見込み顧客のうち、自社のWebフォームから資料請求をした人だけにメールを送る」といった作業をする場合、人海戦術で対象者を抽出するには複数の段階を踏む必要があります。この過程で、抜けや間違いが生じてしまう可能性はゼロではありません。どれだけ気を付けていても人的ミスをゼロにすることはできませんが、ツールで自動化すればミスを削減することができるでしょう。

1-2. 法人営業のマーケティングオートメーションが注目されている背景

業務上の課題や改善したい問題、必要な商品が発生したとき、企業の担当者が取る行動はどのようなものでしょうか。以前は「付き合いのある顔なじみの営業マンに電話して問い合わせる」といったケースが多くありましたが、インターネットが普及した昨今では「まずインターネットで情報収集をする」という方法が一般的です。営業マンへの問い合わせは、インターネットでの情報収集や比較検討が終わった後であることも少なくありません。従来の方法では見込み顧客を取りこぼしてしまいます。

早い段階で見込み顧客と接触するためにはオウンドメディアやランディングページの作成が必須です。Webからの問い合わせ、会員登録などを通じて見込み顧客を獲得し、相手が情報収集をしている段階から働きかけていく必要があります。長期間にわたって、顧客がカスタマージャーニーのどのフェーズにいるかを把握し、メールなどで定期的にコミュニケーションを取り続けなければなりません。労働人口の減少を背景に国内市場が縮小しつつあるなかで、どの企業も新商品や新サービスの導入には慎重にならざるを得ないのです。新規顧客獲得が難しい状況を背景に、マーケティングオートメーションを導入して効率を上げようと考える企業が増えています。

1-3. 【補足】BtoBとBtoCのマーケティングオートメーションの違い

BtoBとは「Business to Business」、BtoCとは「Business to Consumer」の略で、前者は企業を対象にしたビジネスモデル、後者は個人の一般消費者を対象にしたビジネスモデルを指します。BtoBは顧客が商品やサービスを購入するまでに長い期間を要しますが、BtoCでは担当者や決裁者の概念が存在しないので短い期間で購入の可否を決断することが多くなります。また、BtoCはBtoBに比べて見込み顧客が多いため、大量のデータを扱う必要があります。BtoCのマーケティングオートメーションが個人のニーズに合わせてアプローチを行うのに対し、BtoBでは見込み顧客を育成したり、プロモーションに対して特定のアクションをした人だけを抽出したりして商談の機会を増やしていきます

2. BtoBのマーケティングオートメーションの成功事例

多くのBtoB企業がマーケティングオートメーションを導入しています。ここでは、蓄積したデータを分析して活用することで、事業を成功に導いた事例を紹介します。

2-1. シンコムシステムズ

シンコムシステムズは世界に1,000社以上の顧客を持つソフトウェアベンダーです。1968年創業と業界内で長い歴史を持ち、世界18カ国(2022年6月現在)を拠点に企業向けビジネスを展開しています。グローバルな企業であるが故に各国の営業チーム間で情報の一元管理ができておらず、見込み顧客がどのフェーズにいるかや、どれぐらいの見込みがあるのかを明確に把握できていませんでした。同社がマーケティングオートメーションを導入して行ったのは、メルマガ登録者の行動記録や興味の分析です。その分析結果を各国の営業チームで共有しました。このようなフィードバックを行った結果、的確な情報配信ができるようになり、メルマガ開封率は約200%も向上したのです。

2-2. 近畿日本ツーリスト

近畿日本ツーリストは個人旅行者のほかに、企業や学校、自治体向けの団体旅行を多く取り扱っている企業です。特にBtoB領域について課題を多く感じていました。同社の営業活動は、法人営業担当者による電話や直接訪問が中心。営業効率が悪く、早急に改善する必要性がありました。また、インターネットの普及に伴ってWebサイトからのアクセスが増えましたが、適切に対応できておらず見込み顧客の取りこぼしが起きていました。営業効率を向上させ、インターネット経由でのアクセスに対応するために2016年にマーケティングオートメーションツールを導入。優先的にアプローチすべき見込み顧客を判別しやすくなり、ニーズに合わせた情報提供が可能になったのです。

2-3. トヨクモ

株式会社トヨクモは、ビジネス向けのクラウドサービス「安否確認サービス」「サイボウズkintoneに連携するサービス」「スケジューラー」を提供する企業です。元々、Webサイトを中心に新規顧客の開拓をしており、見込み顧客からの問い合わせを増やすことや、顧客を継続的にフォローすることが課題でした。マーケティングオートメーションを導入することで、「メール開封」「リンクのクリック」といった見込み顧客の行動を数値化し、優先順位の高い順に電話やメールでフォローするなど営業スタイルを刷新。Webサイトを再訪問したタイミングでアプローチをするなどの施策を行った結果、問い合わせ件数が5倍に増加しました。

3. BtoBのマーケティングオートメーションを導入する場合の一般的な流れ

マーケティングオートメーションを導入する前には、導入によってどのような課題を解決したいのかを明確にします。限られた担当者で考えるのではなく、顧客の声や売り上げの推移から課題を洗い出し、法人営業に関わる多くの部署から意見を吸い上げましょう。マーケティングオートメーションを導入すると、見込み顧客と既存顧客のデータを効率的に生かせるようになります。導入前に顧客に関するどのようなデータがあるのかを知り、整理することも大切です。ここまで行うと、自社に向いているマーケティングオートメーションツールが分かってきます。どのような機能が欠かせないのかをリストアップしていきましょう。

次に、数あるマーケティングオートメーションツールから、条件を元に選定していきます。BtoBとBtoCではツールが異なるため注意が必要です。既存のシステムと連携できるか、自社でカスタマイズが可能かといった点も確認しておきましょう。マーケティングオートメーションツールは、部署を横断して使うことでより効果を発揮します。導入の際には、情報の一元化を図るためにも関連するすべての部署で使い、定期的に運用方法の見直しを行うとよいでしょう。

 

4. BtoBのマーケティングオートメーション導入でよくある失敗

マーケティングオートメーションの導入は、見込み顧客や顧客を多く保有していることが前提になっています。手作業で情報を入力できる程度の数であれば、導入しなくても問題がないからです。また、自社のWebサイトを持っていない場合も十分に使いこなすことが出来ない可能性が高くなりますマーケティングオートメーションが得意とするのはWebサイト内での顧客の行動確認やWebサイトを通じて得た情報の分析なので、そうした機能が使えないのではメリットが半減してしまいます。社内でのニーズを把握できていないまま導入した場合は、必要な機能が備わっていないことが多く、失敗してしまう可能性が高くなります。

5. BtoBのマーケティングオートメーションツールの選び方

改めて記載しますが、マーケティングオートメーションを導入するには、自社のWebサイトを運営していることと見込み顧客や既存顧客のデータを多く保有していることが前提となります。そのうえで、自社が必要な機能の洗い出しとマーケティングオートメーションツールを一致させていく必要があります。また、どれぐらいのコストがかかるのかも確認しておきましょう。長く運用するためには、初期費用(イニシャルコスト)の有無や月額利用料(ランニングコスト)の価格、機能を追加するごとに課金されるタイプかどうかなどを知っておくことが大切です。

6. 【BtoB向け】おすすめマーケティングオートメーションツール5選

さまざまな種類のBtoB向けのマーケティングオートメーションツールが提供されており、どれを選べばよいか判断に迷うという担当者も多いかと思います。ここからは、重視するポイント別に、おすすめのツールについて紹介していきます。

6-1. 複数チャネルへの対応を重視する場合|Marketo Engage

アメリカ発のマーケテイングオートメーションツール「Marketo Engage(マルケトエンゲージ)」は、世界で5,000社以上が導入しています。日本でも多くの大企業に導入されており、知名度と実績は十分です。幅広いチャネルへの対応が可能で日本語のサポートも提供されています。

6-2. メールによるマーケティングを重視する場合|Kairos3

中小企業を中心に1,500アカウント以上の導入実績がある「kairos3」は、顧客情報の集約やセミナーイベントの開催、営業活動の改善などに効果を発揮するマーケティングオートメーションツールです。高機能なメール配信機能が備わっており、特にメールを使ったアプローチが得意。メルマガの作成や配信にかかる作業の効率化、メルマガからの商談や契約獲得が期待できます。初期費用は1万円、翌月からは月額1.5万円からの従量課金制です。

6-3. コストを重視する場合|BowNow

「導入後に活用できるかどうか不安がある」といった企業におすすめなのが完全無料のフリープランを提供している「BowNow」です。低コストで使いやすいことを重視して開発されており、複雑な操作が必要ないシンプルな作りになっています。後から必要な機能を課金して追加することが可能です。導入実績は9,400社を超え、98.4%の高い継続率を誇っています。

6-4. 国産を重視する場合|SATORI

900社以上の導入実績がある「SATORI」は国産のマーケティングオートメーションツールです。マニュアルや資料、サポートが日本語なのでマーケテイングオートメーションの導入が初めての場合にもおすすめです。Kintone、salesforceなどのシステム連携も可能となっています。

6-5. セキュリティを重視する場合|Synergy!

Synergy!」はクライアント証明書をインストールしたパソコンからしかアクセスできないなど、セキュリティ対策に力を入れているマーケテイングオートメーションツールです。二重ログイン禁止や指定したユーザーの強制ログオフ機能など、第三者のなりすましや意図しない操作を行うユーザーの排除を行うことができます。情報漏洩やハッキングに万全の対策を講じたい場合におすすめです。

7. まとめ

法人営業の効率化をはかり、見込み顧客へのアプローチや既存顧客のフォローを行うためには、マーケティングオートメーションツールが有効です。導入で失敗しないためには、関連する部署と担当者に情報収集を入念に行って自社の必要とする機能を洗い出すことが必要。提供されているツールにはさまざまな特徴があるため、条件に合うかどうかを吟味して選ぶようにしましょう。

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  • Marketics 編集部

    ユーザーデータ・広告データ・購買データなど、マーケティングプロセス上に存在する全てのビジネスデータを、 ノーコードで、一元的に取得・統合・活用・分析することが可能なSaaS型データマーケティングプラットフォーム「b→dash」が運営する マーケティングメディア「Marketics」の編集部。インタビュー記事やノウハウ記事を定期的に発信しています。

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