ビットコインの台頭により、多方面から注目を集めている”ブロックチェーン”。そんなブロックチェーンの技術をデジタルマーケティングへ応用する動きが加速しています。そこで本書では、ブロックチェーンがマーケティングにどのような変化をもたらすのかを考察していきます。

ブロックチェーンとは

サトシ・ナカモト氏の論文をもとに作られた”ビットコイン”はいまや聞いたことのない人はいないでしょう。そしてビットコインとともに話題になったブロックチェーンとは、ビットコインから生まれた技術であり、「中央管理者不在で取引が行われる」というビットコインのシステムを実現するための技術です。

ブロックチェーンを一言で表すと、「分散型取引台帳」です。ブロックチェーンの仕組みについてはネット上でたくさん謳われているため、詳しい説明はそちらに譲りますが、簡単にその技術の特徴をまとめると、「改竄が非常に困難」「取引の記録を消すことができない」「管理者が不在」というところに落ち着きます。

分散管理という点ではクラウド型データベースと似ている部分もありますが、クラウド型データベースは中央集権的であり、管理者がデータベースの中身を操作できるというところにブロックチェーン技術との大きな差があります。管理者が存在せず、参加者が自身の取引履歴を消去できない点が信用性を担保し、現在これだけ世界中に広まっている原因だと言えるでしょう。

現在のデジタルマーケティング

続いて、現代におけるデジタルマーケティングの状況を簡単におさらいします。そもそも、マーケティングの役割は、「商品やサービスが売れる仕組み」を作ることだと言われています。そして、デジタルマーケティングとは、Webサイトやスマホアプリ、今ではIoT製品といったデジタルチャネルを通して得られる消費者のデジタルなデータを活用してマーケティングを行う手法です。

これまでのマーケティング手法と異なるのは、「今まで知ることのできなかった消費者のデータを取得・活用するようになった」という点です。テクノロジーの発展により、オンライン・オフライン問わずクロスチャネルでのデータ活用が進み、消費者の潜在ニーズやトレンドを分析した施策が次々と取り入れられています。

モバイルの普及によって、いつでもどこでも誰でも簡単に、欲しい情報にアクセスできる世界になりました。消費者は日々膨大な量の情報に囲まれ、その中で常に自分の欲しい情報を選択しながら消費行動をしています。そのため、個々の消費者のニーズに合わせて、一人ひとりに最適なアプローチを行う「One to Oneマーケティング」の重要性も広く認知されるようになってきています。このOne to Oneマーケティングに欠かせないものがデータであり、デジタルの活用であることも周知の事実でしょう。

ブロックチェーンでマーケティングの何が変わるのか

データを活用したマーケティングが進む今日、特に広告領域において問題視されていることがあります。それは投資した広告費用がどのように使われたのか判断することが難しく、マーケティング施策の費用対効果が正しく測定できていないということです。これにより各企業は次の戦略を立てるのに苦労したり、正しくリソースを配分できていなかったり、といった悩みを抱えています。効果検証ができないというだけでなく、違法サイトへの広告掲載が行われていたり、不正サイトにおける広告詐欺が横行していたりと、現在の広告業界はまだ透明性が十分と言える状態ではなく、信頼性に欠ける状態です。

そんな中、台頭してきたのが冒頭で触れたブロックチェーンです。ブロックチェーンというと金融系のテクノロジーというイメージが強いかもしれませんが、いまや様々な企業が競い合って多種多様な業界へのブロックチェーン参入を図っています。ブロックチェーン上に記録されたデータは、P2Pネットワークで公開されているため、全ての取引において透明性が担保されています。この技術がデジタルーケティングにも少なからず影響を与える可能性を秘めているのです。

ブロックチェーンの活用によって、自社が出した広告がどのように表示されているのか、どのように成果を生んでいるのか見えるようになることで、効果的な戦略が今よりもずっと立てやすくなります。さらにブロックチェーン導入によるメリットはこれだけに留まりません。情報をどのように使うのか企業が明示するようになれば、情報の取り扱いに対する消費者の懸念を和らげることができますし、消費者が同意した上でより多くの情報を提示することで、より最適化した広告を出せるようになるのです。消費者としても興味のない広告が表示されることは不快であり、より興味のある広告にだけ絞られた方が満足度は高くなります。

消費者が今まで以上に積極的にデータの提供に関わっていくようになれば、これまで以上に深く、広く顧客へアプローチ可能となりOne to Oneマーケティングの質は上がっていきます。また、質が変わるだけでなく、例えば広告出稿というケースにおいては、信頼性が担保されることで個人と企業の間の仲介業者が必要なくなるといった、商流の変化まで起こり得るでしょう。

こうした世界をいち早く実現した企業は競合企業に圧倒的な差をつけられるでしょうし、何より顧客が本当に望むものを提供できるということは、マーケターだけでなく、多くの人々が望んでいることではないでしょうか。

活用事例

マーケティングへのブロックチェーン活用に挑戦する企業は既に存在しています。例えばKind Adsはイーサリアムブロックチェーンを活用した広告プラットフォームです。電子メールマーケティングやプッシュ通知などのチャネルを介して関連性の高い広告を表示するため、顧客へ興味の無い広告を表示することを軽減します。さらに、顧客は広告最適化のために使われるプッシュ通知を受け取ることに同意すれば、報酬を受け取ることができるという仕組みになっています。

他にも、広告主・アフィリエイター・顧客全員が稼げる、EARNETという成果報酬型広告システムを創造するプロジェクトが、アジア最大級のトークンエコノミー/ブロックチェーン業界向けイベント「TokenSky Tokyo 2018」で発表されています。ブロックチェーンとAIを用いた自律的なアフィリエイトプログラムで、トークンエコノミーによる素早く確実な成果報酬を実現するという事例です。

まとめ

ブロックチェーンによるマーケティングの変革に成功している、と言える企業はまだ出てきていません。しかしこれから急速に開拓が進んでいくと考えられます。この流れの中でどのような行動を選択していくべきか、一度考えてみても良いのではないでしょうか。

弊社が提供している マーケティングツール『b→dash』 は、マーケティングプロセス上に 存在する全てのビジネスデータを、ノーコードで、一元的に取得・統合・活用・分析することが可能なSaaS型データマーケティングプラットフォームであり、BtoC業界を中心に、様々な業種・業態のお客様にご導入頂いております。

Editor Profile

  • 福井 和典

    株式会社データX マーケティング管掌執行役員

    日本IBMにてシステムエンジニア、GREEにてCRM領域のオペレーション企画、PwCでの業務コンサルタントとしての経験を経て、2016年よりデータXに入社。データX入社後は、カスタマーサクセス部門に在籍し、小売/金融/アパレル/ECなど幅広い業種に対するb→dash導入支援を統括。
    その後は、主にb→dashのマーケティング/広報/PR活動や事業企画に従事。

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