顧客分析のための手法は多岐にわたりますが、その中の一つに”デシル分析”という手法があります。
対売上高貢献度の高い優良顧客層を知るための本分析は多くの企業でも実践されていますが、実はよく分かっていない、という方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、そもそもデシル分析とは何なのか、また顧客分析に役立てる方法や活用法を中心に解説を行っていきます。

弊社が提供している マーケティングツール『b→dash』 は、施策を行うためのデータの連携から抽出までをノーコードで実現し、メール/LINE/SMSなど、複数のチャネルを組み合わせた顧客アプローチが可能なツールで、デシル分析のみならず様々な分析を実施することができるツールとなっています。

1.デシル分析とは何か?

それでは早速、デシル分析とは何か解説していきます。デシル分析を行うためには、顧客の購買データを取得していることが前提となります。

購買履歴データをもとに、全顧客の購入金額を高い順に10等分してランク付けを行うのがデシル分析の基本です。10等分したデータは、各ランクの購入比率や売上高構成比を算出する分析手法として利用されています。その概要や目的について確認していきましょう。

1-1 デシル分析の概要

デシル分析のデシルとはもともと「デシリットル」に近い言葉として認識されており、ラテン語で「10等分」を意味する言葉として使われています。デシリットルであれば、10分の1リットルを表す言葉であり、それが転じてマーケティングの世界でも「10等分」や「10分の1」といったニュアンスで使用されるようになりました。

顧客のうち、上位から10等分して各ランクの購買動向をデータ化することで、ランクごとの動向を知ることができます。購買動向を知ることで、費用対効果の高い販売戦略やマーケティング施策を打ち出すことが可能となります。

80:20の法則で有名なパレートの法則もありますが、「売上の80%は20%の顧客が占めている」といった売上構造を把握する上でも、デシル分析は役立ちます。

1-2 デシル分析を行う目的

デシル分析を行う目的は、いかに効率的にマーケティング施策を実施するかという点に集約されます。例えば、自社の商品やサービスを利用してくれる100人の顧客がいた場合、100人全員に対して同じような施策を打っていても効果的ではありません。それよりも、購買金額の高い人には集中的にマーケティングを行い、購買金額の低い人には分散的にマーケティングを行うといった形で、顧客ごとに区別することが重要です。

そこで役立つのがデシル分析です。顧客をグループ化することで、どの顧客グループにどういったマーケティング施策を実施すれば良いのか判断しやすくなります。優良顧客層を見つけて、そこに集中して効率的にマーケティング施策を実施することがデシル分析を行う最大の目的です。

2.デシル分析のやり方と活用法

続いて、デシル分析のやり方と活用法について解説していきます。デシル分析はEXCELでも簡単に行うことができます。まずは、デシル分析のやり方に慣れて、顧客の購買データを上手く活用していけるようにすることがポイントです。

2-1 デシル分析のやり方

デシル分析は以下の手順で行います。ここでは、500人の顧客がいると仮定して解説していきます。

1.購入金額順に上からグループを10等分する(上から50人ずつのグループに分ける)
2.グループごとの購入金額合計や購入金額比率、1人あたり購入金額を算出する

デシル分析のやり方は上記の通り、とてもシンプルなものです。このシンプルさがデシル分析の特徴であり、顧客分析の取り掛かりとしてもおすすめです。

以下は簡単にデータをまとめた表です。このような表を作ることをイメージすると、デシル分析を行いやすくなります。

上記の表を見てもわかるように、3グループ目ですでに売上の80%(累積購入金額比率)を占めていることが確認できます。それぐらい上位グループに注目してマーケティング施策を打つことが重要であり、売上拡大につなげるための大きなヒントになります。

2-2 デシル分析の活用法

グルーピングが完了したら、グループごとに応じたマーケティング施策に取り組んでいきましょう。例えば、デシル1~3の顧客に対して割引クーポンやDMを送付するといった施策が有効です。全ての顧客に対して一律にクーポンやDMを送っても、コストの無駄になる可能性があります。

反対にデシル6~10の下位グループには低単価の商品や福袋の訴求など、お得さを前面にアピールすることで、購買行動につなげられる可能性があります。顧客がどのグループに属しているかによって、アプローチ手法を変えることがポイントです。

3.デシル分析のメリットとデメリット

ここからは、デシル分析のメリットとデメリットについて解説していきます。顧客分析の手法として定着しつつあるデシル分析ですが、メリットとデメリットを正しく把握した上で、自社の施策に活用していきましょう。

3-1 デシル分析のメリット

まず、デシル分析のメリットについてですが、何よりも手軽で簡単に分析できる点が挙げられます。顧客分析の手法はRFM分析なども含めて複数の方法がありますが、その中でも格段にシンプルなのがデシル分析の特徴です。

マーケティング分野に精通していない方でもシンプルに行える分析手法として、おすすめすることができます。これまで、顧客の購買行動について何も分析していなかったという企業や組織であれば、まずデシル分析から取り掛かることがおすすめです。

デシル分析はシンプルで手軽であり、複雑な分析や計算をする必要がありません。何か新たな販促活動やキャンペーンを打ち出したいと思っている方々にもおすすめです。

3-2 デシル分析のデメリット

反対に、デシル分析のデメリットとしては、「単純すぎる」点が挙げられます。デシル分析の特徴は、購買金額ごとに顧客をグループ化することですが、とある顧客が過去に高い買い物をしたからと言って、再び同じような金額の商品を買うとは限りません。

デシル分析の際の指標となる購買金額については、いつまでさかのぼって設定するのかも重要なポイントです。例えば、過去3年間を指標にした場合、3年前に一度だけ高額商品を購入した顧客についても上位グループに入ることが想定されます。そうなると、同じ人が再び購買行動を起こすかという点においては疑問が残ります。したがって、過去の期間にも注意を払う必要があります。

総じてシンプルなところがメリットでもあり、デメリットでもあるのがデシル分析の特徴です。

4.ツールの活用もおすすめ

顧客分析手法としておすすめのデシル分析ですが、ツールを活用して行うこともできます。Excelを使って簡単に行うこともできますし、その他のデータも保存して他の分析に利用したい場合はBIツールを活用することもおすすめです。

4-1 Excelでも簡単に行える

デシル分析だけを行いたい場合は、Excelでも十分に対応することができます。Excelを使ってデータを集計する場合は、最低限以下の4項目が必要となります。

・商品の注文を識別できる項目:例)注文番号
・顧客を識別できる項目:例)顧客ID
・購買日
・購買金額

上記の項目をExcelにまとめ、ピボットテーブルを利用して集計を行えば、簡単に顧客ごとの購買金額や累積購買金額ごとにデータをまとめることができます。

指定した期間内にどれだけの購買金額になっているか顧客ごとに順位付けを行い、グループ分けすれば、デシル分析を行うための必要な材料が揃います。

4-2 BIツールを活用したデータの一元管理

Excelを利用しても行うことができるデシル分析ですが、分析した結果をもとにさらにマーケティング施策につなげていきたい場合は、BIツールの活用も有効です。

デシル分析だけであればExcelで十分ですが、その後、顧客に対してDMを発送したりクーポンを送ったり、メルマガを送ったりする場合、Excelだけでは不十分です。せっかく顧客分析を行ったのであれば、そのデータを活用したいと思うのが自然なところです。BIツールを活用すれば、自由にデータを整理、加工、活用することができます。

4-3 マーケターの育成も忘れずに

最後に意識しておきたいポイントとして、マーケターの育成も忘れずに行うことが挙げられます。デシル分析は比較的簡単な分析手法として人気がありますが、本気でマーケティングや販促に取り組もうと考えるのであれば、片手間の知識やスキルだけでは不十分です。

消費者や顧客、社会全体にとって価値あるものを創造して流通させるためには、マーケティングのスペシャリストと呼ばれるような存在が欠かせません。

市場洞察力も含めて、マーケターに求められる役割は年々高まってきています。デシル分析を含めたさまざまな分析手法を習得し、それらを活かせるような人材育成にも力を入れていきましょう。

5.まとめ

デシル分析とは何かを理解し、実際に取り組んでみることで、また新たな視点を手に入れることができます。

本記事でもご紹介しましたが、デシル分析は比較的簡単にできる分析手法であり、専門的な知識がなくても行うことができます。そこからインスピレーションを働かせて、アイデアの創出につなげていくことも有効です。

改めてデシル分析とは何かについて理解を深めて、蓄積してきた顧客データを有効活用していきましょう。

[参考記事]
顧客分析の目的は?
デシル分析とは?活用におけるメリット・デメリットや他の分析方法との違いをご紹介

弊社が提供している マーケティングツール『b→dash』 は、マーケティングプロセス上に 存在する全てのビジネスデータを、ノーコードで、一元的に取得・統合・活用・分析することが可能なSaaS型データマーケティングプラットフォームであり、BtoC業界を中心に、様々な業種・業態のお客様にご導入頂いております。

Editor Profile

  • 福井 和典

    株式会社データX マーケティング管掌執行役員

    日本IBMにてシステムエンジニア、GREEにてCRM領域のオペレーション企画、PwCでの業務コンサルタントとしての経験を経て、2016年よりデータXに入社。データX入社後は、カスタマーサクセス部門に在籍し、小売/金融/アパレル/ECなど幅広い業種に対するb→dash導入支援を統括。
    その後は、主にb→dashのマーケティング/広報/PR活動や事業企画に従事。

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