「ペルソナ分析」という名前は聞いたことがあるものの、具体的な手順や何ができるのか理解している方は意外と少ないのではないでしょうか。今回はそのような方向けに、ペルソナ分析の概要や実践事例を交えながら、メリット/デメリットを解説します。

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1. ペルソナマーケティングとは?

マーケティングにおける「ペルソナ」とはサービスや商品を利用する典型的なユーザー像を表すために作成された仮想的な人物像のことです。ペルソナマーケティングとは、ペルソナを利用して消費者や市場をペルソナごとに分析し、施策に反映させる手法になります。

1-1. ペルソナマーケティングとはマーケティング手法の1つ

ペルソナマーケティングは、具体的なユーザー像を描き、その思考や行動傾向を分析してマーケティング戦略を最適化するマーケティング手法の1つです。ペルソナは架空のユーザー像であり、氏名、年齢、性別などの基本情報から家族構成、居住地、経済力、興味、将来の目標まで詳細に設定されます。ペルソナは個別性が強く、特定のユーザーグループに対して精緻なマーケティング戦略を展開するための重要なツールです。

1-2. ペルソナとターゲットの違い

上記のように、ペルソナは自社の製品/サービスを利用する典型的なユーザー像で、氏名や年齢などを詳細に設定されるマーケティング手法です。一方でターゲットは、「20代」「会社員」「独身」のように属性やセグメンテーションのみで分類する手法になります。このように主な違いは人物像にまで落とし込んでいるか、定性的な情報が含まれているかという点だと言えます。

1-3. ペルソナマーケティングのシチュエーション別の用途

ペルソナマーケティングは、シチュエーションによって用途が変わります。ここでは、2つのシチュエーションを例に、ペルソナマーケティングの使い道を解説していきます、

 ① CV、CVRを改善する場合

CV、CVRを改善する方法には、コンバージョンポイントごとの分析とユーザー属性ごとの分析の2つがあります。

前者のコンバージョンポイントごとの分析では、配信媒体や流入経路で効果を比較し、「メルマガは流入数は多いが、購入率が低い」など配信媒体/経路の対応施策を考えることができます。後者のユーザー属性ごとの分析では、年代、性別などのユーザーの特徴で効果を比較し、「30代女性には効果があったが、30代男性にはあまり効果がなかった」など、配信対象の改善策を考える事ができます。

ペルソナマーケティングは、後者のユーザー属性ごとの分析で活用することができ、ペルソナごとにCV、CVRの分析を行えば、ターゲットごとに改善策を考えるよりもより具体的で効果のある改善策を打ち出す事が可能です

② F2転換率 (F3転換率) を改善する施策を打ちたい場合

新規顧客を獲得するコストは、既存の顧客を維持するコストの5倍かかるといわれており、また広告費の回収の観点から見ると、初回購入した顧客が2回目購入に至る割合「F2転換率」は収益性を上げる重要な指標です。F2転換率は、実施した施策がどれだけF2転換に繋がったかを施策単位で分析し、PDCAを回していくことで向上させることができます。

他方で、すでにF2転換している顧客のデータを抽出しペルソナを設計・分析を行うことで、実施するべき施策が見えてくるため、施策考案の面からF2転換率を向上させることが可能となります。

ここまで2つのシチュエーションを例に、ペルソナマーケティングの使い道を解説してきましたが、データの分析を行う際に押さえておくべきポイントについて下記資料でより詳しくご紹介しておりますので、こちらも是非合わせてご一読ください。

2. ペルソナマーケティングのメリット

ここでは、ペルソナマーケティングのメリットについて解説していきます。

2-1. ① 認識を共通化しやすい

ペルソナマーケティングはターゲット分析よりも詳細に人物像を設計するため、分析する対象を決定する議論や、分析結果の議論において認識の齟齬が出にくいという利点があります。

例えば、「30代 / 女性 / 専業主婦」というターゲットを設定した場合、ひとことで「30代 / 女性 / 専業主婦」といっても「夫婦のみの世帯」を思い浮かべる方もいれば「2人の子供をもつ世帯」を思い浮かべる方もいますし、「都心住み」を想像する方もいれば「地方住み」を想像する方もいます。このような大まかなレイヤーでコミュニケーションを取ると、誤った対象を分析してしまったり、分析結果を議論する場で分析対象が誤りであることが判明し「分析が正しくなかった」と大きな手戻りになるケースがあります。

対して、詳細に設計した人物像であるペルソナマーケティングは、「30代 / 女性 / 専業主婦 / 2人の子供をもつ世帯 / 都心住み etc.」という前提をもとに分析を行うため、誰が聞いても分析対象や分析結果に大きな認識の齟齬が生じることがなく、コミュニケーションコストや手戻りの工数を削減することができます。

2-2. ② 消費者ニーズを理解しやすい

ペルソナマーケティングで設計する詳細な人物像は、実際に商品やサービスを利用するユーザーをイメージできるため、消費者のニーズを具体的に理解することができます。消費者ニーズの理解は、商品・サービスの開発や企業戦略の意思決定の重要な指標であるものの、ターゲット分析などのレイヤーの大きい分析ではニーズがぼやけてしまうことが多くあります。ニーズがぼやけると、商品のストーリー性が伝わりづらいものになったり、ブランドイメージを損なう原因となり、長期的にはリピート率の高い既存顧客を逃し、売り上げ低下に繋がります。具体的に「誰」に向けて商品・サービスを売りたいのか、そしてその顧客に対して刺さる商品・サービスであるかを分析するには、ペルソナマーケティングが一番有効的なマーケティング手法です。

2-3. ③ マーケティングの方向性を定めやすい

設定したペルソナが商品・サービスに求めるものは何か、何を期待しているのかなど、ニーズを具体的に描き出すことができるため、マーケティングの方向性が定まりやすくなります。 ペルソナが商品・サービスを使いたいと考える場面や理由、また既存の類似製品に感じている負を想像し、何を解消すればより使ってもらえるのか、さらにその商品・サービスを見つけてから使うまでの感情も想像することで、より具体的にイメージができます。 このとき、ペルソナが商品を選ぶ理由を想定し、それをどんな言葉で周りの人に伝えるか、具体的に言葉にしてみると、他社の商品・サービスとの差別化のポイントがクリアになります。これをもとに、ペルソナと同じニーズを持つ顧客層へアプローチするためのマーケティングの方向性を決めることができます。

2-4. ④ プロジェクトの効率化・予算削減につながる

ペルソナを設定することでユーザー像が明確になるため、プロジェクトの方向性の意思決定を早く行うことができたり、施策の成果が上がりやすくなったりします。そのため、結果的にプロジェクトを効率よく進めることができ、さらにはプロジェクトの予算を削減することに繋がります。例えば、プロジェクト運営の1つの要素であるマーケティング・広告にフォーカスして考えると、具体的な利点としては、ターゲット層の興味・関心を設定できるため、訴求したいユーザーを効率的に絞ることができ、広告費を削減できる可能性があります

3. ペルソナの設定方法

ペルソナマーケティングは、具体的にどのように設定するのでしょうか。ここからは、ペルソナマーケティングの手順を確認していきます。

3-1. ステップ①:自社分析/既存データ分析を行う

ペルソナ設定では、顧客視点で自社の強みや魅力を再確認するために、まずは自社分析から始めます。ペルソナを設定していない場合、「いいものなら売れる」と自社視点で商品・サービスを開発しがちですが、ペルソナ設定にあたって、自社の商品/サービスがどんな顧客に価値があるのかを考える必要があります。同時に、顧客と競合他社についてもリサーチすることでより正確なペルソナ作成につながっていきます。

3-2. ステップ②:ペルソナの情報収集を行う

ペルソナを設定するために必要な情報収集を行います。既にターゲットがわかりやすい人物像であったり、設定が詳細に決まっている場合は、インターネット上のSNSやブログから適宜情報をピックアップしていきます。ステップ①だけではまだ大枠の人物像しか決まっていない場合は、ターゲットに対してアンケートやインタビューを行い、さらに深ぼった情報を追加していく必要があります。

3-3. ステップ③:既存顧客の調査

自社の顧客データをまとめた後、想定する事業のターゲットとなる顧客データを集めて分析します。直近半年以内のアクティブユーザーの属性や購買データ、アクセス履歴に加えて、SNSのコメントやイベント参加者のアンケートをもとに分析を行います。また、商品カテゴリー別にグループ分けすると、ユーザー属性の違いを把握するのに役立ちます。

3-4. ステップ④:インタビュー/アンケートの実施

自社の商品/サービスの購入者および問い合わせ者を対象にしたアンケートやグループインタビューを行うことで、ユーザーの生の声を集めることができます。アンケートの目的はリアルなペルソナ像を探るためなので、基本的な属性情報に加えて、自由筆記欄を多く設け、購入のきっかけや理由、満足・不満足の点などを記載してもらうとよりリアルなペルソナの作成に繋がります。

3-5. ステップ⑤:自社サイトのアクセス解析

もし、自社で運営するwebメディアがあれば、アクセスしたユーザーの行動を調査することも重要です。流入経路、アクセスデータ、購買履歴、離脱履歴まで詳しい情報を把握できます
また、SNSを活用することで、コメントやユーザー間の会話から生の声を聞くことができます。特に、インスタグラムのインサイト分析は、より具体的なユーザー像を知るのに役立ちます。

3-6. ステップ⑥:ペルソナを分類する

次に、収集した情報を、趣味趣向、悩み、習慣など、一見自社に関係ない項目までグルーピングし、ターゲットを分類分けしていきます。グルーピングは細かすぎるとペルソナを設定する際に意思決定が難しくなり、大雑把であるとペルソナのメリットが小さくなってしまうため、データ量と設定したい粒度に合わせて適切な分類分けを行う必要があります。

3-7. ステップ⑦:ペルソナを設定する

最後に、自社分析と情報収集で得た顧客の傾向からペルソナを設定します。ペルソナは商品やサービスに出会って購入に至るまでの経緯を表現するようにストーリー調で詳細に設定します。ペルソナの設定では、必ず取集したデータから得られた情報から設定しなければならず、一部でも想像で担保してしまうとペルソナマーケティングの効果を発揮することができません。

【設定するペルソナの項目】
 ・顔写真
 ・名前・性別・年齢
 ・家族構成
 ・職業・仕事内容・役職
 ・趣味嗜好
 ・年収・貯蓄状況・ポートフォリオ
 ・人生や仕事の目標
 ・情報の集め方
 ・悩み・欲求
 ・人生における物事の優先度
 ・休日の過ごし方
 ・ペルソナに盛り込む情報

 

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4. ペルソナ作成・設定時の注意点

4-1. 大人数で多くの意見を元に考える

ペルソナを設定する際には、プロジェクトのメンバー全員で一緒に作り上げていく作業が大切です
チームにはデザイナー、セールス担当、マーケティング担当など様々なメンバーがいるため、普段の業務が異なるとどうしても求めるユーザー像に違いが生じることがあります。そのため、チームメンバー全員が納得できるよう、データをもとに論議をし、最終的なユーザー像がどういうものであるかという認識を共有化することが非常に重要です
この工程を疎かにしてプロジェクトを始めた場合、認識にズレが生じ、スケジュールの遅れやコストが増加する恐れが出てくる可能性があるため、入念に行うようにしましょう。

4-2. 合理的な根拠を持ってユーザーを定義する

ペルソナを設定する際は、非常に細かくユーザー像の絞り込みを行うため、高い精度での設定が必要です。最終的に、実在しそうな人物を設定する必要があるため、推論や仮定を合理的な根拠なしで重ねると、精度が落ち、現実とかけ離れたペルソナを設定してしまう恐れがあります。
高い精度でペルソナ設定をするためには、思い込みや先入観で決めてしまうのではなく、ある程度予算をかけてリサーチ、アンケート、インタビューなどを行い、可能な限り正確かつ現実的なペルソナを定義することが重要です

4-3. 新規顧客の目線に立つ

自社商品をこのような人に使ってほしいという欲を強く出さず、フラットなスタンスでユーザー像を決定していくことは、ペルソナ設定において非常に大切です。
既存顧客の消費者行動や価値判断を元に設定することで、データに基づいたペルソナを設定できるため、現実との乖離は少なくなる一方で、自社のサービスの優位性を前提にした逆算で作ってしまうと、実在する消費者像の実態とかけ離れてしまう懸念があります。
また、既存顧客と理想のユーザーを重ねてしまうと、既存ユーザーの囲い込み効果はありますが、新規ユーザーの開拓には有効に機能しない場合があります。新規取り込みができなければ、ビジネス拡大に支障となってしまうでしょう

4-4. 一度決めたペルソナでも再考する

ある商品に対する理想的なペルソナを設定したとしても、現実の人間の価値観や社会環境は日々変化します。ペルソナの検証や修正を怠ると、現実と乖離したユーザー像になってしまう恐れもあるため、決定後も再考する必要があります
また、マーケティング戦略のレベルで製品やサービスのターゲットに変化が生じた場合も、それにあわせてペルソナも見直しを行いましょう。
ある時点ではベストのユーザー像であっても、このままでよいのかという疑いを持ち続け、ギャップが生じていれば、根本的にペルソナを見直す決断が求められます。

4-5. 必要な情報のみを定義する

ペルソナを考える際に、ユーザーをより具体的にするためにも、この要素も入れたい、と複数の要素を入れたくなってしまうことがありますが、具体的にしようとするあまり不要な情報まで付加する必要はありません。不要な情報を付加しすぎてしまった結果、ユーザー像が定まらないケースがあるためです。たとえば、建設用重機の顧客を表すペルソナに「好きな食べ物」の情報は必要ありません。
自社が取り扱う製品・サービスのユーザー像を把握するのに必要十分な情報のみを定義するよう心がけましょう

5. ペルソナマーケティングの成功事例

最後にペルソナマーケティングの成功事例を紹介していきます。

5-1. カルビー

カルビーは、お菓子は特定の層を狙わず万人受けする商品企画でヒットするといわれていた中で、自社の顧客データからお菓子を買わない顧客層とされた「10代から20〜30代の独身女性」を狙って開発しました。その中で、ペルソナマーケティングに成功したのがカルビーの「ジャガビー」です。

「ジャガビー」では、ペルソナを「27歳独身女性、文京区在住、ヨガと水泳に凝っている…」と設定し、都会でひとり暮らしをする女性だけをターゲットとしました。その結果としてパッケージデザイン、広告展開、コンビニ限定の販売をし、想定する女性客の獲得に成功しました。

5-2. Soup Stock Tokyo

次に成功事例として取り上げるのは、食べるスープの専門店「Soup Stock Tokyo(スープストック東京)」です。スープストック東京は、創業者が作った「スープのある一日」というストーリー仕立ての企画書から始まりました。ペルソナとしては、女性がスープを飲んでホッとしているシーンのイメージをもとに「秋野つゆ、37歳都心で働くキャリアウーマン、シンプルでセンスの良いものを求め、装飾性よりも機能性を重視し、プールではいきなりクロールで泳ぐ」というペルソナを設定しました。

このペルソナである彼女が満足するかどうかを判断基準に、商品開発、店舗デザイン、出店地域などの意思決定をしていった結果、同じような価値観を持つ女性たちの心をつかみ、創業10年間で店舗数52店舗と大成功を収めました。

弊社が提供している マーケティングツール『b→dash』 は、マーケティングプロセス上に 存在する全てのビジネスデータを、ノーコードで、一元的に取得・統合・活用・分析することが可能なSaaS型データマーケティングプラットフォームであり、BtoC業界を中心に、様々な業種・業態のお客様にご導入頂いております。

Editor Profile

  • 福井 和典

    株式会社データX マーケティング管掌執行役員

    日本IBMにてシステムエンジニア、GREEにてCRM領域のオペレーション企画、PwCでの業務コンサルタントとしての経験を経て、2016年よりデータXに入社。データX入社後は、カスタマーサクセス部門に在籍し、小売/金融/アパレル/ECなど幅広い業種に対するb→dash導入支援を統括。
    その後は、主にb→dashのマーケティング/広報/PR活動や事業企画に従事。

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