今やMA(マーケティングオートメーション)ツールは、マーケティング領域において多くの企業で活用されています。MAツールを使って成果を十分に得るためには、「シナリオ設計」が非常に重要になります。ポイントを押さえてシナリオ設計を行えば、MAツールの効果が高まり、売上の向上に寄与することが可能です。そこで、本稿ではMAのシナリオ設計の手順やコツ、注意点について解説します。

弊社が提供している マーケティングツール『b→dash』 は、施策を行うためのデータの連携から抽出までをノーコードで実現し、メール/LINE/SMSなど、複数のチャネルを組み合わせた顧客アプローチが可能なMAツールとなっています。

 

1.MAにおけるシナリオとは

MAにおけるシナリオとは、簡単にいうと「顧客が購入にいたるまでの筋書き」のことです。見込み顧客が自社の商品・サービスを購入するまでの行動を想定し、それを実現するまでの計画を指します。一般的に、「シナリオ」という単語を聞くと、ドラマ・映画・舞台などで使われる脚本や台本をイメージする人も多いのではないでしょうか。マーケティングにおけるシナリオは、そこから転じて、顧客を購入や受注というゴールへ導くことを目的に作成されます。具体的には、「特定のアクションを起こした見込み顧客に前もって設定した行動を返す」というものです。

例えばEC業界では、ECサイトで商品を初回購入したユーザーに対して、2回目購入を促すために、1回目の購入商品に基づくおすすめの商品の情報やお得な情報の配信を行うことが挙げられます。

このように、購入や受注までの道筋を細かく考え、そこに到達する顧客を増やすことが主な目的です。

[参考]
MA(マーケティングオートメーション)とは? 

2. シナリオ設計で得られる効果・メリット

MAのシナリオ設計を行うことで、得られる効果は大きく3つあります。

まずは、「CVRの向上」です。シナリオ設計により、顧客ひとりひとりに最適なコミュニケーションを取ることが出来るようになるため、その結果、マーケティング施策の反応率が高まり、購入や受注に至る確率の向上を期待できます。

次に「コスト効率の改善」です。シナリオ設計により、それまで主導で行っていたマーケティング業務の多くが従業員の手を離れることになります。それに伴い、マーケティングに費やしていた時間を他の業務に充てられるようになります。多くの企業の課題となる人手不足の課題を解消し、限られたリソースをコア業務に集中させることができます。

さらに、「幅広い顧客に対応可能」なことも得られる効果の一つです。顧客セグメントに合わせたシナリオを考えることで、対応の幅が広がります。子役の属性別や行動別にシナリオを設計することで、あらゆる顧客に対応できます。

実際に、MAを利用したことでKPIを大幅改善した事例について、下記資料にて詳しくご紹介しておりますので、是非合わせてご一読ください。

 

3. MAにシナリオ設計が必要な理由

MAを運用するためにシナリオ設計が不可欠な理由は、見込み顧客に対する適切なアプローチのタイミングを逃さないためです。例えば、シナリオ設計がないままMAを運用したとします。その状態で、顧客が自社の商品を紹介するWebページを訪問しました。この商品に興味がある可能性が高いため、すぐに詳しい資料をメールなどで送付すると効果的です。しかし、送るタイミングやコンテンツを誤ってしまうと、やがて顧客の興味は薄れ、結局商材の購入につなげることが難しくなります。

このように、MAのシナリオ設計がないと、顧客にアプローチすべきベストタイミングを逃す大きな原因となりえます。インターネットが普及した現代では、簡単にさまざまな情報を得られるため、顧客の関心が移り変わるスピードも速まっています。顧客が商材に関心を寄せたとしても、その関心が薄れぬうちに追い打ちでアプローチをかけなければ、すぐに存在を忘れられてしまう可能性が高いでしょう。

「誰に・いつ・何を・どのようにアプローチすべきか」について決定しておけば、その業務はMAに任せることができます。

 

4. MAシナリオ設計例 4選

実際に、MAシナリオを設計する場合、「どうすればいいのか悩んでしまう」という方も多いのではないでしょうか。参考までに、MAシナリオの設計例を4つ紹介します。

4-1. 会員登録をした顧客に対するシナリオ設計

顧客がWebサイト上の会員登録フォームを送信し、それをきっかけにサンクスメールを自動配信するシナリオ設計の例です。この場合、見込み顧客がサンクスメールに記載されたURLをクリックし、会員登録を完了することが目標となります。メールからWebサイトへと誘導できれば、その顧客の行動履歴とメールアドレスを紐づけできます。サンクスメールは、「何時間以内に操作をしてください」というように、時間制限が設けられることが一般的です。

もし、時間内に会員登録が行われなかった場合、再度会員登録を促すメールを送信したり、今後メールが配信されないようにシナリオを設計しておくことも効果的です。

一方、サンクスメールを開封してサイトに訪れたものの、商品購入に至らなかった場合には、初回利用を促すためのコンテンツ(初回限定クーポンなど)を翌日に配信することも効果的です。

4-2. メルマガ登録顧客に新商品をお知らせするシナリオ設計

メルマガを登録しているユーザーに向けて、新商品のお知らせメールを配信するシナリオ設計の例です。新商品の情報と、新商品の購入画面につながるURLを記載したメールを送信しましょう。

配信後、48時間経過時点でメールを開封していない顧客に対しては、同じメールを再送します。また、メール開封後にURLを踏んだものの、購入には至らなかった顧客に対しては、新商品の詳細情報(ポジティブな口コミや効能など)を記載したメールを送信し、再度購入を呼びかけます。メール経由で購入を済ませたユーザーには、買い合わせ商品などの情報を記載したサンクスメールを送信します。

このように、開封/クリック/購入といった、顧客の反応に応じて事前に対応を決めておきます。

今回のケースはメールのみでのコミュニケーションですが、メール未開封ユーザーにはLINEを送る、というようなクロスチャネルでのコミュニケーションを効果的です。

4-3. かご落ち商品リマインドシナリオ設計

商品を買い物かごに投入したものの購入に至っていないユーザーに対して、かご落ち商品を訴求し、購入を促すためのシナリオ設計の例です。

好みの商品を見つけて買い物かごに入れたものの、すぐに購入せず、他の商品を見ている間に、商品を買い物かごに入れていることを忘れてしまい、サイトから離脱してしまった、という経験は皆さんもあるのではないでしょうか。本シナリオはそのような「かご落ち」の商品をリマインドするシナリオです。

商品を買い物かごに入れたまま離脱したユーザーは、他のユーザーに比べて購入意欲が高い可能性が十分にあります。こうしたユーザーを逃さないためには、サイトを離脱したあとすぐにリマインドを行うことが大切です。そこで、商品をかごに入れたままサイトを離脱した翌日に、かご落ち商品をお知らせするメール配信シナリオの設計を行います。内容はかご落ち商品のお知らせだけでなく、おすすめの人気商品などの情報も記載すると、他の商品も合わせて購入する可能性が増すため、購入単価UPに効果的です。

4-4. 休眠顧客の引き上げシナリオ設計

かつてECサイトを頻繁に訪れていたり、商品を購入してくれたりするユーザーは、自社に対して少なからず興味がある状態と捉えられるでしょう。しかし、何らかのきっかけでこのようなユーザーの反応/行動がなくなるケースがあります。過去に商品を購入していたものの、一定期間活動がないユーザーに対しては、再購入を促すためのシナリオを設計すると効果的です。

過去の購買履歴に応じたおすすめ商品や、期間限定のクーポン、会員ランクが下がってしまうことの通知、など、休眠顧客となってしまった原因の仮説を立てて、行動に繋がりそうなコンテンツを考えて配信します。逆に、何度もメールを送っても反応がない場合は、見込みが薄いと判断できるため、異なるセグメントへと移動することも方法の一つです。 

弊社が提供している マーケティングツール『b→dash』 は、マーケティングプロセス上に存在する全てのビジネスデータを、ノーコードで、一元的に取得・統合・活用・分析することが可能であり、データドリブンマーケティングの実現に最適なツールとなっています。

5. 効果的なシナリオ設計において押さえておくべきポイント

効果的なシナリオを設計するためには、いくつかポイントがあります。特に押さえておきたい重要なポイントを4つ紹介します。

5-1. 十分な顧客データを蓄積する

効果的なシナリオを設計するは、いかに顧客データを充実させるかが肝となります。具体的には、名前やメールアドレス、性別などの顧客情報や、メールの開封/クリックログ、サイトのアクセスログ、購買データ等が挙げられます。他にも、顧客に会員登録させる際には、メールアドレスだけでなくLINE IDなども登録するようにすれば、メールだけでなくLINEでもアプローチできるようになります。そのほかにも、会員登録後にアンケートを実施するようにすれば、顧客の趣味や興味関心などの情報を得られ、より効果的な施策を実施できます。

5-2. キラーコンテンツを探す

顧客の購入意欲に大きな影響を与える、キラーコンテンツを見つけることが重要です。キラーコンテンツの具体例としては、過去の購買データを活用した「おすすめ商品の紹介」「買い合わせ商品の紹介」、他にも「かご落ち商品のお知らせ」「限定クーポン」などが挙げられます。顧客の行動を分析し、効果的なキラーコンテンツを探して積極的にシナリオに盛り込みましょう。

5-3. コンテンツの目標を1つに絞り込む

顧客にコンテンツを配信する際は、目的が明確に伝わるようにすることが大切です。例えば、新商品の紹介を目的として、顧客にメールを配信するときは、メールの内容が一目でわかる件名や本文にすることが必要です。余分な情報が多すぎると、最も重要な情報が相手に伝わらない可能性が高まります。配信物1件に対し、目標や伝えたいことは1つまでに絞り込むようにしましょう。

5-4. シナリオの停止条件を決めておく

MAは、シナリオをもとに自動でマーケティングを行うため、停止条件が設定されていないと延々と稼働してしまいます。そのため、シナリオ設計時は必ず停止条件も加えておきます。例えば、「顧客から配信停止の希望があった」「クレームが届いた」「商品を購入した」「●回以上メールが未開封だった」といったケースです。慎重に停止条件を考え、意図しない情報配信を防ぎましょう。

また、より細かいシナリオ設計のポイントについて、実際の事例を元に下記資料にて詳しくご紹介しておりますので、是非合わせてご一読ください。

 


 

6. MAシナリオ設計の手順と注意点

MAシナリオは、具体的にどのように設定するのでしょうか。ここからは、MAシナリオの設計の手順や設計時の注意点を確認していきます。

6-1. MAシナリオ設計の手順

MAシナリオは、前述した「誰に」「いつ」「何を」「どのように」という4つの要素を決定し、設計することが基本です。以下で具体的な手順を確認していきましょう。

STEP【1】ターゲットを定める

それぞれの顧客に合わせたマーケティングを行うためには、まずターゲットを決定する必要があります。誰に対してアプローチを行うのか、その対象を特定しなければ、そのほかの要素を決められません。目的や商材に合わせて、どのような人に対してマーケティングを行うのか、その対象を明確に決めていきましょう。

ターゲットの具体例としては、「メルマガ登録後に何の行動もない人」「過去に商品を購入したことが無いが、自社のECサイトに訪れている人」などがあります。ほかにも、ターゲットの設定は、さまざまなものが考えられるため、どんな属性や行動をした人に向けてシナリオを展開するのかをしっかりと考えておきましょう

STEP【2】アプローチのタイミングを決める

いつアプローチを行うか、そのタイミングも決めておきましょう。ターゲット像が明確になったとしても、アプローチのタイミングを間違えれば顧客の関心が薄れてしまう可能性があります。マーケティングでは、顧客の行動に対して、適切なタイミングを計ってアプローチすることが重要です。タイミングの具体例としては、「顧客に送付したメールを開封したとき」「Webサイトを訪問したとき」「商品を購入したとき」などが挙げられます。

なお、アプローチのタイミングは時間帯、顧客の起点となるアクション、頻度などの要素を踏まえて考えることが基本です。連続して配信する場合は、頻度も考えておきましょう。顧客にとって適していない時間帯やタイミング、頻度でアプローチを行った場合、関心が薄れたり、印象が悪くなったりする危険性があります。そのため、アプローチのタイミングは慎重に検討することが重要です。

STEP【3】配信コンテンツを選定する

ターゲットとタイミングが定まったら、対象顧客に向けてどのような情報を発信すべきか、配信するコンテンツを決めましょう。配信コンテンツの具体例としては、「おすすめ商品や買い合わせ商品の紹介」「セールの日程や商品に関する案内」、「店舗限定クーポン」などが挙げられます。コンテンツは、顧客が関心を寄せやすく、なおかつ次の行動に誘導できるような内容を心がけましょう。また、顧客との継続した関係を構築するためには、コンテンツの配信を通じて信頼を得ることが必要となります。顧客目線に立って内容を考えていきましょう。

STEP【4】適切な配信チャネルを選ぶ

顧客にコンテンツを提供するための最適なチャネル(アプローチ手段)を決めます。チャネルの代表例としては、「メール」「DM(ダイレクトメール)」「LINE」「web接客」「アプリPush」などです。ほかにも、さまざまなアプローチ手段があり、それぞれ特徴やメリットが異なるため、用途に合わせて適切なものを選択しましょう

6-2. MAシナリオ設計の注意点

シナリオ設計では、いくつか気を付けたいことがあります。主な注意点について見ていきましょう。

6-2-1. 初めから高度なシナリオを設計しない

初めてシナリオ設計をする場合、分岐が多すぎたり、セグメントが細かすぎたりするものは避けたほうが無難です。分岐が多すぎるシナリオを設計すると、結局最後まで到達するリードがいなくなる可能性があります。特に、MAツールを導入して間もないころは、自社のホットリードが明らかになっていないケースも少なくありません。まずは、シンプルなシナリオ設計からスタートし、徐々にホットリードの行動を把握してから内容を作り込むことがおすすめです。

6-2-2. シナリオは定期的に更新する

シナリオは、一度設計して終わり、というものではありません。なぜなら、顧客のニーズは日々変化していくからです。顧客がどのようなことに関心を持ち、どのようなニーズがあるのか、その分析した内容や変化をシナリオに反映させる必要があります。例えば、定期的に既存顧客へヒアリングを実施するのも良いでしょう。設計したシナリオに固執し過ぎず、柔軟に内容を変化させることで、顧客との良好な関係が維持できます。

7. まとめ

MAを用いたマーケティングでは、シナリオ設計が不可欠です。収集した顧客データを分析・活用して、ターゲットタイミング配信コンテンツチャネルを明確に決めることが重要となります。まずは、無理のないようにシンプルな設計からスタートすることがおすすめです。改善を繰り返し、効果的なシナリオを設定していきましょう。

弊社が提供している マーケティングツール『b→dash』 は、マーケティングプロセス上に 存在する全てのビジネスデータを、ノーコードで、一元的に取得・統合・活用・分析することが可能なSaaS型データマーケティングプラットフォームであり、BtoC業界を中心に、様々な業種・業態のお客様にご導入頂いております。

Editor Profile

  • 福井 和典

    株式会社データX マーケティング管掌執行役員

    日本IBMにてシステムエンジニア、GREEにてCRM領域のオペレーション企画、PwCでの業務コンサルタントとしての経験を経て、2016年よりデータXに入社。データX入社後は、カスタマーサクセス部門に在籍し、小売/金融/アパレル/ECなど幅広い業種に対するb→dash導入支援を統括。
    その後は、主にb→dashのマーケティング/広報/PR活動や事業企画に従事。

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