前編では、GDOのデータマーケティングの強みや、それを実現している裏側について志賀さん、福永さんにお話いただきました。中編では、既存のデータを活かした今後のマーケティング展望や、メディアとしての展望についてお話を伺いました。

GDOの場合、昔から意識してデータを取得していたのでしょうか?

福永私は中途入社なので詳細まではわかりませんが、意識して取得していたと思います。ECなどネットの企業でデータベースを中核に置かないというのはありえないですから。

私も入社当初はデータマイニングの担当だったので、データを見る機会が非常に多かったのですが、分析していて本当にきれいなデータだと思った記憶があります。やはり社長の意向が強かったのではないでしょうか。当時からデータを活用することは自分たちの強みになると認識していたのだと思います。

志賀システム刷新のプロジェクトの際も、10年間増改築を繰り返していたシステムの刷新だったので、11年目からきれいなデータがたまっていると思ったのですが、それ以前のデータもとてもきれいでした。購買のトランザクションデータはとてもきれいですし、分析する際にどのような購入サイクルになのかを分析できるのはかなり珍しいですね。

データの取得・統合・活用において何か意識されていたことはあるのでしょうか?先ほどDWHの重要性についてもおっしゃっていましたが。

志賀結局データの取得・活用においてはやはり活用が一番大事で、どうしても取得ばかりに集中してしまい見るところで止まってしまいますが、その出口をしっかりと意識しながら進めることが非常に重要です。

最近では、マーケティングに活用できるシステムや土台が整ってきたので出口の幅はとても広がりました。データをためる、集計して見える化する、マーケティングへ活用する、の三段階をやっと最後まで到達できるようになった感じです。

我々の場合も最初はBIがテーマだったのですが、BIって結局見ているだけで、その後どうするのかという部分がなかなか進んでいませんでした。でも、BIを使って顧客リストを抽出しよう、商品リストを抽出しよう、というようなところまで踏み込んでいけるとマーケティングにも活用できるようになっていくと思います。 

データマーケティングの基盤がすでにある状態かと思いますが、今後どのようなことをしていこうとお考えなのでしょうか?

志賀色々ありますが、大きくわけて4つあります。1つ目はクロスチャネルの実現です。メールやチャットを組み合わせて、大規模なシナリオでキャンペーンをやることです。2つ目は会員のロイヤリティ制度をリリースしたので、それをうまく活用してお客さんを育成していくことを重点的にやりたいですね。3つ目はフリークエンシーの改善ですね。

どの企業も同じだと思いますが、初回を稼働して、2回目、3回目とかなり落ちてしまうので、離脱率をいかに改善できるかがすごく重要だと思います。4つ目は最近流行りのチャットボットやAIなどにも注力していきたいですね。

福永あとは、GDOはまだまだブランディングが弱いので、もっと能動的に新規顧客をとっていきたいと思っています。ニーズが顕在化した人たちを迎え入れおもてなしすることはできていますが、企業体力の問題もありGDOを想起していない人たちを取り込んでいくことはまだできていません。

この部分は今後、他部署でも力を入れていきます。やはりブランディングが鍵になってきますね。これに関しては、自社のブランディングだけではなく、ゴルフ業界自体が縮小化しているので、誰かに任せるのではなく当事者としてゴルフ業界全体を盛り上げていく必要があると思っています。

志賀趣味の範囲でいうとゴルフ好きな方は1千万人を超えていますが、ゴルフ人口を増やすのはそんなに簡単ではありません。ブランディングを通してゴルファーを増やすという活動と「ゴルフといえばGDO」という第一想起を取っていく活動を両軸でやっていく必要があります。

現在のGDOのコアターゲットはゴルフダイジェストのおかげでゴルフといえばGDOを第一想起してくれますが、20代、30代の人たちはほとんどGDOを第一想起しないですからね。

福永20、30代の人たちからすれば、「普段楽天を使っているから、ゴルフだったら楽天GORAに行けばいい」と思うのは自然な流れです。いくらゴルフに関心を持たせても、GDOを第一想起してもらうためにタッチポイントを作っておかないと、楽天に青田買いされてしまいます。

最近では、大学生や社会人1年目の方々へのアプローチも積極的に実施しています。例えば新しい試みとして、アンバサダーマーケティングという形で、発信力のある方にゴルフアンバサダーとなってプロモーションをしてもらうというようなことも始めています。

ゴルフ市場は収縮してきていることもあり、最初からゴルフを前面に押し出してしまうと、とっつきにくくなってしまうので、私の担当であるメディア領域でお話をすると、一見するとファッションや車のメディアに見えるテイストでメディアを作っています。

車で言えば、こんなかっこいい車があったらモテそうという訴求から、「車も買ったし、ゴルフも良いかも」と思ってもらえる環境を整えることが必要だと思うので、車業界も活性化していく必要があると思っています。

また、ファッションに関してはゴルフアパレルを軸に「ゴルフの服装っておしゃれだし、ゴルフを始めてもいいかも」という繋がりを期待して取り組んでいます。広告を出稿してくださるお客様を増やすという観点だと、出稿する意味がある、ゴルフ以外のコンテンツを作る必要性があると思っています。

福永あとはデータの観点でお話しすると、GDOの顧客には富裕層の方が多いので、DMPにたまっているデータをメディアと繋げる高度な取り組みも行っています。ただタイアップや広告を出すだけではない新しい取り組みにトライしている最中です。

いくつか例を挙げると、タイアップコンテンツを出す際に読者に何かしら応募してもらって、リードを渡すのは旧態依然ですがやり方の一つです。他にも、そのログデータからルックアライクして、潜在的な顧客に対してFacebook広告を併せて出すというものや、アプリで顧客の位置情報を取得し、顧客の周辺情報を提供するやり方もあります。

例えば、ユーザーが新宿駅にいる情報をGDOが受け取ったら、小田急ハルクでのゴルフフェアの開催情報を提供することで来店してもらえるかもしれません。特に富裕層の方々にロケーションマーケティングができるのはGDOの強みですね。

あとは、ひとえにゴルファーといっても半年に1回プレーするかしないかの人もいれば、毎週のようにプレーする人もいるので、そのような人たちそれぞれに分けたセグメントマーケティングなども実施していきたいですね。

最近、メーカー企業からナーチャリングをしたいという話も増えてきていて、例えば今までであれば「メルセデスのAクラス、買ってください」という闇雲な訴求がほとんどでしたが、“こういうコンテンツを見ている人たちに対してはこんな車をおススメしましょう”という提案もできるようになります。お客さんの興味関心をあらかじめわかったうえで、選択肢の中に入り込むためのナーチャリングのコミュニケーションは取り組んでいきたいと思っています。

志賀単純にメディアにバナーを貼るのではなく、リーチさせた後にリマーケティングを行うイメージですね。単純にゴルフに関する属性だけでお客さんをセグメントするのではなく、サイト内でどんな車のコンテンツを見たのか等、様々な種類の属性を付けておくと当然ターゲティングの質も上がってきます。

こういうナーチャリング的なアプローチはとても面白いと思いますね。このようなアプローチも接点が多いことが非常に重要なので、結局はコンテンツが一番大事だということです。OutbrainとCriteoを足して2で割ったようなサービスができればと思っています。

確かに、御社ならではの強みですね!

福永最近は単純にモノが売れる時代ではなくなっているので、どうやってモノを売ったらいいのか困っている人がとても多いと思います。BtoBの世界だけでなく、BtoCの世界でもナーチャリングやリードの考え方を取り入れていく必要に迫られてきています。

冬物セールで何パーセントオフ!という感じでマスに価格訴求をすれば売り上げが立っていた時代ではなくなってきています。まずは商品を選ぶ際に、選択候補に入ることがとても重要になってきていて、購入するブランドが決まれば、価格がいくらであろうと買ってくれると思っています。商品を買う人が減ってきているので、客単価や商品単価をあげるためにも、値引きしない理由づけをしていかなければなりません。

そのような部分をサポートするために、他のお客さまを送客できるメディア広告を作っていく必要があると思っています。ぱっとしない広告がたくさん並んでいるよりも、広告が読み物になるくらい面白いコンテンツが必要になってくると思います。広告枠だけ売って収益を上げることができる時代ではありませんし、サイトのデザインに関しても、明らかにこれは広告だという認識をされて読み飛ばされてしまっては広告を出す意味がないですから。

スマホの比率が高くなってきていることもあって、広告が邪魔にならないような広告枠の設計とクリエイティブ管理をしていく必要があると思っています。たとえゴルフ情報目的で訪れたわけではなくても、サイトを見たときに面白いサイトだと思ってもらえたら素敵だと思っています。

[参考記事]
リードナーチャリングで見込み顧客を増やす!

弊社が提供している マーケティングツール『b→dash』 は、マーケティングプロセス上に 存在する全てのビジネスデータを、ノーコードで、一元的に取得・統合・活用・分析することが可能なSaaS型データマーケティングプラットフォームであり、BtoC業界を中心に、様々な業種・業態のお客様にご導入頂いております。

Editor Profile

  • 福井 和典

    株式会社データX マーケティング管掌執行役員

    日本IBMにてシステムエンジニア、GREEにてCRM領域のオペレーション企画、PwCでの業務コンサルタントとしての経験を経て、2016年よりデータXに入社。データX入社後は、カスタマーサクセス部門に在籍し、小売/金融/アパレル/ECなど幅広い業種に対するb→dash導入支援を統括。
    その後は、主にb→dashのマーケティング/広報/PR活動や事業企画に従事。

Speaker Profile

  • 志賀 智之

    ゴルフダイジェスト・オンライン

    お客様体験デザイン本部 部長

    2008年に(株)ゴルフダイジェスト・オンライン入社。IT戦略室長、情報活用推進部 部長を歴任し、データベースマーケティングやメディア部門でのSalesForce活用など、データを活用したマーケティングを推進。現職のお客様体験デザイン本部の副本部長に着任後、UXDの推進、マーケティングプラットフォーム構想、各種マーケティングシステムの導入とデータを活用したマーケティングを推進中。

  • 福永 和洋

    ゴルフダイジェスト・オンライン

    メディアビジネスユニット 副ユニット長

    2010年に(株)ゴルフダイジェスト・オンライン入社。 コンサル側、事業会社者側のマーケティングの経験を活かして、データマイニングや デジタルマーケティングなどのマーケティング領域を担当。近年はメディアビジネスユニットにおいて、自社のコンテンツ企画やGDOに集まっているトラフィックを価値化するためにメディアマネタイズに従事している。ゴルフメーカーのプロモーション支援をはじめ、ゴルフ以外の業界/業種に対してGDOのメディアを活用したプロモーションプランを提案している。

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