データの時代とも言える21世紀。目まぐるしいスピードで世の中は動いています。「ビッグデータ」というワードは今では知らない人はいない常識となっています。実際に多くのメディアでも、この言葉を目にする機会はとても増えています。
このような背景も踏まえ、あらゆる企業が保有する自社データを駆使して、収益の最大化に乗り出しており、もはやデータ活用は企業が成功するための必須条件ともなりつつあります。さらにテクノロジーが進化する中で、ついに企業は自社のデータだけでなく、自社の顧客が他社において得た顧客体験に付随するデータも取得・活用できるようになりました。これをデータシェアリングと言います。
そこで今回は、データマーケティング界で話題となっている「データシェアリング」についてお伝えしていきます。
<目次>
■現代の顧客行動
■オムニチャネルとは?
■顧客体験はシームレス
■ある女の子の例
■顧客も恩恵を受ける
■現代の顧客行動
2018年現在、スマートフォンの普及やECサイトの発展に伴い、顧客の行動は大きく変化しました。また、ソーシャルメディアの誕生によって、顧客は様々な方法で商品やサービスを知ることができるようになっています。Facebookのシェアやいいね!によって、「友達から」流行りのグッズや人気のイベントを知ることができるようになったのは大きな変化の一例と言えるでしょう。
既に現代のマーケティングは、あらゆるチャネルからの顧客流入が複雑に絡み合い、オンライン・オフライン問わず相互に作用しています。スマートフォンでSNS広告を見た後に、PCでサービスについて検索し、実店舗へ来店する、といったカスタマージャーニーは、もはや当たり前のものと言っても過言ではありません。
そして、顧客体験を最大化するには、これらの体験が断続的に繋がっており、違和感をもたらしてはいけません。そこで登場したのがオムニチャネルという考え方です。では実際のところオムニチャネルとはいったい何なのでしょうか?
■オムニチャネルとは?
オムニチャネルの「オムニ(Omni)」とは「すべての、あらゆる」を意味し、オムニチャネルを端的に言うと、オンラインであるインターネットと、オフラインである店舗やイベントなどのチャネルを問わず、あらゆる場所で顧客と接点を持とうとする考え方のことです。
[参考]
・オムニチャネルとは?メリット・デメリットや戦略を成功事例付きで解説
■顧客体験はシームレス
私たちの人生は様々な出来事で構成されていますが、顧客体験というのはあくまでその中の一部に過ぎません。その中で無意識のうちに、嫌な事を避けたり、好きなことに没頭したりします。個人が、無意識のうちに偏る一定のパターンこそ、「好み」ということになります。その「好み」を把握できたら、ブランドにとっていかにアドバンテージとなることでしょうか。
こういった個々人の「好み」に基づいて、私たちは商品やサービスを判断します。「購入」という最終決定がなされる際には、価格、関係、継続性のすべてが考慮されます。逆に言えば、商品の選択肢や販売方法も様々であるがゆえに、消費者がそのうちのどれか1つでも不便だと感じた場合には、なかなか購入に至らないような時代になってしまったと言うこともできます。顧客体験はシームレスだ、とただ言われても、イメージがつかない人も多いと思うので、具体的な例を見ていきましょう。
■ある女の子の例
例えば、山登りに行くために、アウトドアグッズを探している女の子がいるとします。その子は、まず山登り用のリュックサックを探し、リュック専門店Aのウェブサイトを訪れ、山登り用のリュックのページを閲覧しました。その後、通りがかった家の近くの靴専門店Bの店舗に行き、山登りに使えそうな好みのデザインのトレッキングシューズを見つけたとしましょう。
オムニチャネルが完全に成り立っている世界においては、女の子がAのウェブサイトを訪れたという情報と、Bの店頭に行ったという情報は等価であり、情報としての価値は等しいのです。
しかし、自社の顧客データのみでは限界があり、ブランドを超えた行動を追うことができず、それぞれの情報がバラバラになってしまいます。もし、「この女の子は山登りに行きたいらしいぞ」というAのウェブサイトの情報をBへと活用できたら、Bとしては嬉しいですよね。ここで、AとBの間でデータシェアリングが必要になるのです。その女の子はもしかしたら、Aのウェブサイトでリュックをお気に入りにしてから、Bに来ているかもしれません。その子に対して、「あなたはこのリュックをお気に入りにしてますよね。山登りに行きたいならBのトレッキングシューズはどうですか?」といった具合に広告を配信して、Bの店舗に誘導する、なんてことも出来るわけです。
逆にその子が先にBの店舗に行ったとしましょう。その場合、スマホのWi-Fi機能を用いて、ウインドウコンバージョン(歩いている人が店に入った割合)や店での滞在時間、さらにはどの棚の前で立ち止まったかなどの情報が追跡できます。もし女の子がBのトレッキングシューズのエリアで長居していたことが分かったら、その子がスマホでインターネットを開いた際に、山登り用のリュックの広告を出してAのウェブサイトに誘導する、ということも可能なのです。
いやいや、Aがデータを提供してBに協力するなんて競争社会の原理に反している、と思う方もいるかもしれません。ブランドが自社のデータを他社と共有するという考えは違和感があると思いますが、決して競合他社との間でデータをやり取りするわけではありません。両者が競合することなく、同じユーザーを求めている場合のみデータシェアリングが可能なのです。
他の例で言えば、AとBは「女性用の脱毛サロン」と「ハワイ旅行」に置き換えられます。一見関係のなさそうなこの2つも「ハワイの海で水着を着て遊びたい、そのために脱毛をしたい」というブランドを超えた顧客行動を考えることで、お互いにメリットがあるのです。この場合もハワイ旅行を予約した人に脱毛サロンの広告を配信することも出来ますし、もちろんその逆も可能になります。他社とデータを共有することで、より精緻なマーケティングが実現できるのです。
■顧客も恩恵を受ける
企業だけではなく、実は顧客にもメリットがあります。個人の好みやショッピングのデータを提供すれば、より個々人に特化した商品・サービスに出会いやすくなります。AppleMusicやSpotifyなどの別々の音楽サービスでの音楽視聴データをもとに、一人ひとりの好きな音楽を分析して、自動的にプレイリストを作ってくれるようなことをイメージするとわかりやすいかもしれません。顧客がデータを提供することで、ブランドもさらに優れたサービス・商品を生み出し、また顧客に還元するという、サイクルが生まれます。オフラインとオンラインを合わせたすべてのデータによって個人が識別され、自分の求めたものが提供される、そんな社会がオムニチャネルとデータシェアリングによって実現できるかもしれません。
オムニチャネルという概念はすばらしいのですが、自社のデータのみではどうしても限界があります。データシェアリングによって他社のデータも活用することで、洗練されたOne to Oneマーケティングが可能になるのです。現在のオムニチャネルでは自社ブランドとの接点の始まりから終わりまでしか追うことが出来ませんが、データシェアリングが進んでいけば、顧客一人ひとりの全ての行動まで追うことが出来るかもしれません。「そんなに細かく自分の情報を知られていて、他社に自分のデータを共有されているなんて気持ち悪い」と思う方もいると思います。
もちろんこれは未来の話で、現状ではCookieデータのみしかシェアできず、インターネット上でユーザーとしては識別されますが、個人のプライバシーは守られています。スマホの普及でプライバシーを公開する頻度が増えている今、顧客一人ひとりの行動データの分析は重要ですが、一線を超えて個人のプライバシーを侵害してしまう恐れがあるとなると、顧客が離れていってしまうので注意が必要です。
このようなセキュリティやプライバシーの問題をクリアしつつ、オムニチャネルとデータシェアリングを用いて最も「顧客」というものを理解できたブランドが勝者となるでしょう。顧客行動が複雑化した現代においては、シームレスな顧客体験に対応できるかどうかがカギとなるのです。
【参考】データドリブンマーケティングに必要なBIツールとは
【参考記事】
1:http://omnichannel.me/data-sharing-imperative-future-retail/
2:http://omnichannel.me/what-is-omnichannel/
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