はじめに
10月の1本目にオススメする本は、資生堂でCMOを務め、現在はクー・マーケティング・カンパニー代表取締役をされている音部氏による本です。音部氏は、P&Gで数々の著名ブランドのマネージャーやマーケティングディレクターを務め、その後外資・国内問わず、様々なブランドのマーケティングを推進されてきました。
本書では、あらゆるブランドのマーケティングを成功に導いてきた音部氏の経験をもとに、マーケティングを行う上で抑えておくべき視点と思考方法についてわかりやすく紹介しています。実践で使えることに主眼を置いて書かれているため、マーケティング初心者から実務経験の長い玄人の方まで、参考になること間違いないでしょう。
本の概要
ネクタイは万年筆の競合になる
「競合先は必ずしも同じ業界の同じ形態のものとは限らない」
「競争関係は、ベネフィット、財布、胃袋、時間といった複数の軸で説明が可能」
これは、本書で書かれている文章の一部です。本書では競合とは何か、市場とは何かを紐解いていく中で、マーケティングとブランドのあるべき姿を第1章で解説しています。
競合の認識を改めるだけで、本質的な市場は広がり、打つべき戦略も変わっていきます。単に同価格帯の製品やサービスと比べているだけでは、本質的な競合を見つけ、市場を創造していくことは不可能です。自社の製品に対し、競合はどこなのか、インサイトはどこにあり、それに対しどのようなマーケティング戦略を実施し、どのようにブランディングしていくのがよいのか…。
本書の第1章ではマーケティングやブランディングの一般的な概念を実践に落とせるようわかりやすいフレームワークに昇華し、マーケティングファネルの整理から、ターゲットの選定方法について紹介しています。
組織の力が知性の力を吹き飛ばす
第2章では、ブランドをマネジメントしていくうえで、大切にしなければならない考え方や組織力を高める具体的な方法について解説しています。属人的な成功を再現するためには、どのような組織であるかが重要であり、組織として合理的な判断をしていくことが求められます。人間は合理的に判断できているようで、実際は感情で動く生き物であるため、いかに組織として合理的に判断できるのかが成功を再現するためのカギです。
そのためには、「目的を見失わないこと」、「資源を正しく把握していること」が大切であると本書では解説しています。実際にメンバー全員に目的を意識させ続けるための質問やコミュニケーション方法、保有している資源の考え方について詳しく知りたい方は第2章を読むことをお勧めします。
そのほか、第3章では、ブランドマネジャーの心構えやブランドマネジメント制を導入するうえでおさえておきたいポイントについて、第4章ではデジタル化を取り入れる際のポイントや消費者の認識変化を示したマーケティング活動の全体図であるパーセプションフローモデルについてそれぞれ解説しています。
3.目次のご紹介
第1章:市場創造とブランドマネジメント
01 あなたのブランドの「競合は何か」
02 あなたの参入している市場で、「いい〇〇(製品カテゴリー名)とは何か」
03 「マーケティングとは何か」、そして「ブランドとは何か」
04 ブランドを持つことの意義は何か
05 あなたのブランドの「競合先、ターゲット消費者、そしてベネフィットは何か」
06 あなたのブランドの「顧客は誰か」、そして「誰に語りかけるべきか」
第2章:戦略の実践
07 目的と資源は、正しく明示できているか
08 目的を見失わないために、何に気をつければいいか
09 強い、とはどういうことか
10 現場の観察力を引き出すために、何を聞くべきか
11 属人的な成功を再現するために、何をすべきか
12 組織全体が論理的に思考するために、何をすればいいか
第3章:ブランドマネジメント
13 ブランドマネジメント制を導入する際、気をつけるべき点は何か
14 ブランドマネジャーが持つべき心構えとは何か
15 CMOが固有になすべきことは何か
16 どうすれば各分野の専門家とうまく協働できるか
17 組織が持続的に成長するために必要なことは何か
18 なぜ組織が人材を育てることができるのか
第4章:マーケティングのこれから
19 マーケティングのデジタル化とは何か
20 なぜ「20代女性」がターゲット消費者なのか
21 ブランドを定義しているか。ブランドホロタイプ・モデル
22 マーケティング活動の設計図を描いているか。パーセプションフロー・モデル
23 ベネフィットで感情を喚起するために、何を考えればいいか
おわりに「変わるものと、変わらないもの」
本の見どころ
本書は、一般的なマーケティングの概念を実践で使えるよう、フレームワークや法則に落とし込み具体例を交えて解説しています。そのため、マーケティング初心者から実務経験者まで参考にしやすい仕様となっています。また、マーケティングをする上でよく耳にする「ブランド」の定義や意義、ブランドマネジャーが担う役割についても触れているので、ブランディングに携わる方にもおすすめです。
どの章も独立して書かれているため、自身の業務に関連する章や課題に感じている章から読み進めることができ、本書でインプットしたことを業務にアウトプットし、自身の血肉にしていくことをおすすめします。
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