新型コミュニケーションデバイスを開発・販売する株式会社BONX。アクティビティの最中でも、スマートフォンアプリと専用イヤホンを経由して、最大10人同時で通話可能なサービスを展開している。スキーやスノーボード、サイクリング、釣り等、様々なスポーツシーンで利用される新感覚ウェアラブルデバイスであるが、今後、BtoB領域での販売数を拡大するためにデジタルマーケティングを強化するべく、マーケティングプラットフォーム『b→dash』の導入を決めた。本インタビューでは、主にサービスコンセプトや、マーケティングの現状と展望についてお話を伺った。
まずはじめに、BONXの事業内容について教えてください。
ウェアラブルデバイス「BONX」と、それに対応するスマートフォンアプリの開発・販売を行っています。現在はBtoCもBtoBも展開していますが、販売当初はBtoCからスタートしました。スノーボードや自転車、釣りなど、様々なスポーツシーンで利用して頂いています。
これまで同様のシーンでは、無線機を使うことが一般的でしたが、無線機を使うとボタンを押す必要があったり、そもそも無線機本体を持つ必要があったりと、色々な制約がありました。「スポーツをしながら、いちいちアクションを起こさないとコミュニケーションをとれないって不便だな」という思いや、「そもそもスポーツ中に発する生の声を拾えたら臨場感が出てより一層スポーツが楽しくなるよね」という思いから生まれたのが「BONX」というプロダクトです。
その発想は面白いですね。BtoBの事業はどのようにして生まれたのでしょうか?
きっかけは、BONXがある釣り番組の撮影に使用されたことでした。釣り人同士がBONXでコミュニケーションが取れるようになったら面白いという発想から始まったもので、世の中の釣り好きな人たちにプロダクトを普及させることが目的でした。
しかし、撮影が進む中で自然と製作側でも使われるようになっていきました。ウェアラブルデバイスなので、両手が自由なままコミュニケーションがとれるので、撮影効率が大幅に上がるんですよね。当時は「あ、そういう使い方もできるんだな」と目から鱗が落ちる思いでした。
その他にも、リモートワークへの活用の問い合わせも増え始めていたので、一定のニーズがあることを確信し、去年の夏にBtoB事業を立ち上げました。「BONX for Business」という事業です。
まさに、ありそうでなかったサービスですね。競合としてはどんな企業やプロダクトがあるのでしょうか。
完全に製品が一致している競合はいないかもしれません。通話サービスという点では、LINE電話やSkypeといったものもありますし、従来の無線のトランシーバーは競合として捉えています。ただ、我々の製品はハードウェアであるイヤフォンとソフトウェアであるアプリを組み合わせているので、完全に製品が一致している競合は今の所ないかもしれません。やはりソフトウェアであるアプリと、ハードウェアであるイヤホンの両方を揃えるのは技術的に難しいので、参入障壁が高いのだと思います。
イヤホンに関しても、運動中に外れないように耳にフィットする形にしたり、逆にフィットしすぎると周りの音声が聞こえなくなってしまうので、溝を作ってみたり、長時間つけていても痛くならないように硬さにこだわったり、何度もイヤホンを作り直しました。
テストマーケティングなどは実施されたのでしょうか?
スノーボーダーやサイクリストなど、様々な方々に実際に使ってもらいました。サバイバルゲームなどのイベントでの無料貸し出しや、雑誌の企画に登場したこともあって、ユーザーの間でも徐々に話題になっていきました。
プロダクトの認知拡大にむけては、具体的にどのようなことを行っているのでしょうか?
スポーツ業界は日本においては比較的ニッチなマーケットなので、自社のプロダクトを広げるためには、プロ選手やインフルエンサーのような影響力のある人に認めてもらうということが大事になってきます。そのような人たちに使っていただくことで消費者も商品に対する信頼性を感じて頂けます。そして現在は、SNS上でのインフルエンサー施策には一定の手ごたえを感じていて、そういった層にはアプローチできているのかなと。一方で最近感じるのは、口コミの影響力です。
TwitterのようなSNSを通じて情報がすぐに拡散するため、一度消費者に評価されれば一気に広がると思っています。他にも、オンラインの施策ではFacebookとGoogleの広告で自社のECサイトやAmazonに誘致しています。
これから注力する必要があると感じているのは、ECサイトのプラットフォームをアップデートして、精緻なデータを取れるようにすることです。現在は、Google Analytics上で確認できるトラッキングデータは扱えていますが、今後は、お客様のより細かな動線を可視化したいと考えています。
一方で、BtoBにおけるマーケティングはなにか取り組まれているのでしょうか?
サービスの説明動画を作って、こちらもFacebookやGoogleで広告配信しています。PRもうまく成功し、ワールドビジネスサテライトでも紹介していただいたので、ここから更に認知拡大は注力したいと考えています。今後は動画の拡散を継続しながら、アドネットワークを利用することも考えています。
BtoBもBtoCもいかにデータを活用できるかが肝ですね。実際にデータはうまく活用されているのでしょうか?
大量のデータを取得・蓄積できてはいますが、まだ活用し切れていないのが現状です。アプリから得られるデータや、イヤホンから得られるGPSデータなど、顧客データはたくさん溜まっていますが、それらを分析して施策に繋げるところまではまだ出来ていません。
BtoCに関しては、GPS機能で位置情報がデータとして溜まっていくので、位置情報ターゲティングは絶対にハマると考えています。これまでもスキー場をターゲティングして広告配信、イベントを行ったりと、成功パターンはすでにあるので、ジオグラフィックなマーケティングはどんどん行っていきたいですね。
BtoBに関しては問い合わせをいただくパターンが多いので、すでに企業の課題が顕在化していることがほとんどです。“作業効率を上げたい”というニーズの他にも、“今までコミュニケーションに使っていた高額な通信システムから、安く簡単に使えるコミュニケーションツールに乗り換えたい”というニーズもあります。ターゲットが多様化しており、なおかつそれぞれのニーズも明確なので、データを集約してターゲットのニーズに合わせて活用できれば、大きな成果に繋がると思います。
データを活用して目指したい姿、というものはあるんでしょうか?
将来的には、新規顧客獲得のための営業・マーケティングは『b→dash』を使って自動化して、カスタマー対応等の業務に大きく人的リソースを割きたいと思っています。私たちのような少人数のスタートアップ企業が、新規顧客獲得をしながら顧客満足度を高く維持していくためには、そのような体制がベストだと思っています。
具体的にはまず、問い合わせを頂いてからのシナリオメールを『b→dash』を使って自動化したいと思っています。現状、お問い合わせ頂いたお客様に対しては、無料で私たちの商品を2週間体験していただいた後に、ご購入いただくかをお聞きしていますが、そのステップをすべて自動化したいと思っています。
お問い合わせがきたら無料体験についての説明メールを送り、数週間経った後に実際に購入していただけるかどうかのメールを送るというようなイメージですね。無料体験期間の使用状況をー計測して、その使用状況に応じてリマインドメールやお礼メールを配信すれば、新規顧客獲得効率も上がると思っています。
さらに並行して、地域データやアプリの利用データを活用したマーケティングにも注力していきたいなと。SNS上でのインフルエンサーや広告を利用した従来のオンラインマーケティングについては、現在までも注力してきましたが、私たちのサービスは、『継続して利用されているのか』、『どこで利用されているのか』等の情報をトラッキングできるようになっています。
データが大量に溜まってはいるものの、完全に活用しきれてはいないため、『BONX由来のデータ』と『従来のマーケティングデータ』をうまく掛け合わせて、我々にしか出来ないマーケティングを行っていきたいですね。
今後、BtoC領域においても、利用可能性は多いにあると考えておりまして(※今回、BONX様での利用領域は、BtoB領域)、その中でも特にメール配信とプッシュ通知の可能性は大きいと思っております。
例えばスノーボードが好きなお客様に、「スノーボードをする時にBONXを使うとこんな楽しいこともできる」というメッセージを訴求するムービーを配信すれば、普段から商品をご利用いただいているお客様はもちろん、最近ご利用のないお客様にも再び使っていただけるかもしれません。使えるデータは大量にありますが、最大限には活用できていないので、これから『b→dash』を使ってデータを活用していくのが楽しみです。色々な方法を試行錯誤していきたいですね。
弊社が提供している マーケティングツール『b→dash』 は、マーケティングプロセス上に 存在する全てのビジネスデータを、ノーコードで、一元的に取得・統合・活用・分析することが可能なSaaS型データマーケティングプラットフォームであり、BtoC業界を中心に、様々な業種・業態のお客様にご導入頂いております。
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楢崎 雄太
BONX
共同創業者CTO/COO
東京大学大学院時代に音声信号処理の研究に従事したのち、ボストン・コンサルティング・グループにて多数の製造業クライアントの戦略プロジェクトに参画。同社で同僚だった宮坂と共に2014年に株式会社BONXを創業し、現在は“BONX”の開発・生産・オペレーションの統括、および業務用音声ソリューション“BONX for BUSINESS”の事業責任者を兼務。
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小林 達仁
BONX
早稲田大学 国際教養学部卒業後、株式会社電通入社。
営業部署でのプロジェクトマネジメント経験を経て、マーケティングとクリエーティブを統合したコミュニケーションプランナーとして従事。2016年にBONXへ参画し、ブランディング・戦略・広報・PR・企画・デジタル・デザイン等、幅広くマーケティング分野のディレクション及び実施を担当。肩書き難民中。