近年、日本でも「マーケティングオートメーション(MA)」や「CCCM(クロスチャネル・キャンペーン・マネジメント)」といった言葉を耳にする機会が増えたのではないでしょうか?
マーケティングオートメーション(MA)とは、一言で言うと「マーケティング活動をテクノロジーによって自動化するツール」です。

とはいえ、MAツールを導入するだけで勝手に「マーケティング活動を自動化して成果を生み出す」といった夢のような事は起こりません。実際に、導入した多くの企業から 「使いこなせない」「成果が出ない」という声を良く聞きます。このようなMAツールの運用に失敗してしまうほとんどの原因は、導入前の準備に問題があります。

今回は、MAツールの導入を検討中のあなたに 『失敗しない、MAツール導入のための6つのステップ』をご紹介していきます。

目次
1. 目的・目標の明確化
2. 顧客分析
3. ペルソナ設定
4. シナリオ設計
5. 社内連携
6. ツール検討
7. まとめ

1.目的・目標の明確化

まずはじめに、MAツールの導入において最も重要なポイントは目的や目標を設定する事です。当たり前のことですが、MAツールを導入する目的を明確にしていなければ成果を創出する事はできません。なぜなら、目的によって選定するツールが変わってくるからです。 MAツールを使う目的は、BtoB企業とBtoC企業によって異なります。

BtoB企業では、主に「見込顧客の管理・育成(リードナーチャリング)」を行うためにMAツールを活用します。集めた見込顧客の「データ」をマーケティングオートメーションやCRM(顧客関係管理)で管理し、メールマガジンや個別メールの配信を行うことで、見込顧客の商品に対する理解度や購入意欲を高めていきます。一方、BtoC企業では、MAのことをCCCMとも呼びます。自社の持つ様々なチャネルを使って顧客とコミュニケーションを図り、顧客一人一人の属性や嗜好に合わせて情報を提供する「One to Oneマーケティング」の実現を目的としています。

また、目標設定は具体的に判定できるものでなければなりません。より具体的な目標を設定したほうが、それを達成するための指針が明確になり具体的な施策を打つことができるからです。「売上を上げる」や「LTVを向上させる」といった抽象度の高いものではなく、例えば「毎月開催する自社のセミナーに参加したリードの70%を案件に引き上げる」といったような、定量的な目標が良いでしょう。しかしながら、具体的な目標を設定をする為には、まずは自社の現状を見える化しなければなりません。上記の例でいうと、「自社のセミナーに参加したリード」というデータを「リード」というデータの中から正しく抽出しなければなりません。その際、リードのデータがバラバラに管理されていると抽出するのに無駄な工数がかかってしまいます。

例えば、セミナーに参加した顧客から入手した名刺や手入力したデータ、WebサイトやSNS上の顧客情報など、様々な方法でデータ収集を行なっている会社で考えてみます。集められた情報の中には、社名の表記が統一されていないことで同じ企業なのに別会社として登録されているなど、データの整合性が取れていないことがあります。他にも、利用するデバイスが異なる、データのファイル形式が違うといったことが原因で、データを一元管理するのが困難になっていることもあります。マーケティングオートメーションを効果的に活用するには、このようなデータをDWHやDMPを使って統合・整理をする必要があります。

関連記事:【あなたのデータは大丈夫!?】 MAツール導入の前に認識するべきデータの罠

2.顧客分析

具体的な目標設定をするためには、データの統合が必要だということは理解いただけましたでしょうか。では次に、DWHに格納したデータを基に、分析を始めていきます。収集したデータをセグメント毎に分析してみると、これまで自社の商品やサービスを利用した顧客がどのような層で、どのような購買行動だったのか、またどういったチャネルから来ているのかが明らかになります。以下、分析をするうえで必要となるセグメンテーションや基本的な分析方法をご紹介します。

2-1 セグメンテーション

地理的属性(ジオグラフィック属性):居住している国・地域、言語など。

人口動態属性(デモグラフィック属性):性別、年齢、職業、収入、学歴、家族構成など。

心理的属性(サイコグラフィック属性):価値観、嗜好、ライフスタイルなど。

行動属性:ページビュー、滞在時間、DL履歴、購入履歴、ユーザーの行動パターン、アクティビティなど。

2-2 顧客分析

RFM分析:顧客の購買行動をRecency (最新購買日)、Frequency (購入頻度)、Monetary (購買金額)の3つの指標で分類する方法。

デシル分析:全顧客を購買金額の多い順に10等分する分析方法。

CTB分析:Category(カテゴリ)、Taste(テイスト)、Brand(ブランド)の3つの指標で顧客を分類する方法。

LTV分析:Life Time Valueの略で「顧客生涯価値」と略されます。LTVは顧客がサービスを使う上で生涯合計でどのくらいの額を使うかの指標であり、長期間継続して購入 / 利用する顧客ほどLTVが高いというわけです。

3.ペルソナ設定

様々なセグメントや分析方法で顧客分析を行うことで、顧客のペルソナが浮かび上がってきました。ペルソナとは、ターゲットである見込顧客をより具体的に表現した架空の人物像のことです。氏名や年齢、性別などの定量的なデータに限らず、生い立ちから性格、ライフスタイルのような定性的データまで考え、実在するかのような人物像を設定します。 ペルソナ設定をきちんと行うことで、より質の高いコミュニケーションが可能になり、エンゲージメントを高めることができます。いかに適切なペルソナ設定をするかが、マーケティング活動を成功させるカギとなります。

[参考記事]
『4つのファクター』でターゲットのペルソナは作れる!
ペルソナ分析とは?分析方法やメリット・デメリット、企業の実践事例をご紹介

4.シナリオ設計

ペルソナ分析の次のステップはシナリオを設計することです。シナリオ設計とは、見込み客がどういうプロセスを経て自社製品を購買するのかを整理することです。どのような見込み顧客に対してどんな手段でメッセージ発信をし、どういう状態になってもらうか、という自社のマーケティング施策を整理していきます。ここまで行うことで顧客の購買行動と自社のマーケティングが一貫性をもって繋がってきます。

シナリオを設計する際には、「誰に」「いつ」「何を」「どのような経路(チャネル)で」を決めることが重要となってきます。この中の「誰に」についてはペルソナ分析で明らかにしました。ペルソナ分析で明らかになった見込顧客の「行動データ(Webサイト閲覧履歴データ/メール開封・クリックデータなど)」から、「いつ」「何を」「どのような経路で」購買に至るのかを考えてシナリオを設計してみましょう。このような、消費者が購買に至るまでの一連の行動を、旅に見立てて「カスタマージャーニー」と表現されることがあります。さらに、カスタマージャーニーマップに合わせて、マーケティング活動の段取りをしていくのがマーケティングシナリオです。このシナリオをどれだけ見込顧客に合わせた形で設計できるかが、見込み顧客のコンバージョン率を決定付けると言っても過言ではないでしょう。

多くの場合、シナリオ設計が最も効果を出しやすいのが、「過去獲得済の見込顧客へのコミュニケーション」です。過去獲得している見込顧客情報は、商談やセミナー参加など何かしら自社の製品やサービスに関心を持っている可能性が高いため、比較的容易にその顧客の課題を理解することができ、その課題に対して製品やサービスをどのように提案していくかを考えることができます。また、既に見込顧客情報として社内にコンタクトできる情報があるので、直接コミュニケーションを取ることができます。BtoBのマーケティングでは、まずこの仕組みを構築することが最も効果的です。なぜなら、その後獲得される見込顧客情報も「資産」になるからです。中長期で見込顧客のニーズが発生するタイミングを掴むためのシナリオを仕組みとして構築し、それに紐づくリード獲得の施策などを整理していくことをお勧めします。

5.社内での役割分担

次のステップは、社内で役割分担を明確にすることです。デジタルマーケティングの施策を考えるにあたっては、全社横断的な組織作りが不可欠です。メインで関わるのはマーケティング部門と営業部門ですが、他部門も合わせて全社で認識が一致していないとマーケティングオートメーションをせっかく導入しても効果的な運用は望めません。この認識のすり合わせは、設計時から必要になります。例えば「どのようなユーザーを有望な見込み顧客とするか」という認識が一致していないと、営業とマーケティングでずれた施策を打ってしまいます。もしくは、役割分担が明確になっておらず、マーケティング部門と営業部門でそれぞれ異なる見込み客リストを作成していたというような事態も起こりえます。このような事象を防ぎ効果的な施策を早く打つために、部門間の認識すり合わせは必須です。当然はじめの設計で上手くいかない場合もありますが、トライアンドエラーを繰り返しベストな設計に近づけていきましょう。

6.ツール検討

それでは最後に、自社に合ったツールを選定していきましょう。MAツールといっても国内外のものを合わせると数百ものツールが存在します。その中で、自社にとって最適なツール選定を行わなければなりません。自社にとって最適なツールとは、自社のビジネスモデルやリソース、目的によって異なってきます。それでは、マーケティングオートメーションの選定基準についてご紹介いたします。

6-1 自社のリソースに合っている

最も重要なのは、導入するMAツールを使いこなせるスキルを持った人材が社内にいるかどうかです。せっかくMAツールを導入しても使いこなせる人材がいなければ宝の持ち腐れです。最近では、マーケティングオートメーションの運用やコンサルティングに特化した企業もあるので、それらの外部の力を借りることも選択肢になります。

6-2 目的とツールの機能が合致している

A/BテストやSEOといった顧客獲得施策の支援機能を強化している、メルマガの配信やSFA/CRMとの連携が可能である等、MAツールによって強みは異なります。例えば、放置された見込み顧客情報を活性化し、売上につなげていくことを目的とすると、見込み顧客の育成機能が強化されたツールを選択するべきでしょう。また、BtoB向けなのか、EC向けなのかといった、ツールによって想定されている業態の違いも考慮しつつ自社に合ったツールを選択しましょう。

6-3 導入リスクが低い

マーケティングオートメーションの導入後、使いこなせずに投資した工数や費用が無駄になってしまっては元も子もありません。それを避けるためには、低いリスクで始め、実践しながらPDCAを回し、レベルアップしていくことをお勧めします。例えば「初期投資金額が低い」「サポートが充実していて、何かあれば相談できる体制がある」マーケティングオートメーションツールを選ぶことがポイントになります。

6-4 同じビジネスモデル・業種・規模の企業が導入している

自社同様のビジネスモデルや事業内容、規模の企業が導入しているかどうかは、ツール選定の良い指標になります。なぜなら、見込顧客の管理やマーケティング、営業に対して同じような課題や戦略を持っていることが多いからです。どんな企業が導入しているマーケティングオートメーションツールなのか選定の際のポイントとして参考に確認してみましょう。

関連記事:
【BtoC企業必見!】MAツール徹底比較 7選
【BtoB企業必見!】MAツール徹底比較 8選

7.まとめ

いかがでしたでしょうか?
マーケティングオートメーション導入前に行うべき6つのステップをご紹介しました。目的や目標の明確化、そして、自社のデータ分析、目的に沿ったシナリオ設計を行うことで、適切なマーケティングオートメーションを導入・運用することができるでしょう。MAツールを正しく使って成果を生むマーケティング活動を実現していきましょう。

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Editor Profile

  • 福井 和典

    株式会社データX マーケティング管掌執行役員

    日本IBMにてシステムエンジニア、GREEにてCRM領域のオペレーション企画、PwCでの業務コンサルタントとしての経験を経て、2016年よりデータXに入社。データX入社後は、カスタマーサクセス部門に在籍し、小売/金融/アパレル/ECなど幅広い業種に対するb→dash導入支援を統括。
    その後は、主にb→dashのマーケティング/広報/PR活動や事業企画に従事。

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