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2018.12.12

【前編】最新のエンターテイメント業界動向から紐解く
“体験価値”を高めるマーケティングとは

 「エンターテイメント」とは何か。人の感情を動かす産業、いわゆる感動産業を、本書ではエンターテイメントと定義します。例えば、テーマパーク、映画やスポーツ、コンサート等の興行もエンターテイメントに含まれています。実際に生活者がその場に足を運び、体験をするための対価としてお金を支払う、そういったビジネスと定義します。

 このエンターテイメント業界では、体験価値を高めるために様々な新しい取り組みが行われています。例えば、最近良く耳にするVR(バーチャルリアリティー)。この2,3年でようやく当たり前のように普及してきましたが、実は歴史をさかのぼるとかなり古いものです。技術としてはすでに1960年代に誕生をしており、その後90年代にテーマパークで使われるようになっています。当時はコストの問題等もあり、普及するには至りませんでしたが、この技術そのものは、エンターテイメントの業界では当たり前のように認知されている技術でした。

 このように、B2Cのビジネスにおいて、新しいテクノロジーはエンターテイメント業界から誕生することが非常に多いのです。

 本書では、最新のエンターテイメント業界の動向を紐解くことで、これからのビジネスやマーケティング領域で起こるであろう潮流を解説していきます。少しでも各企業様のマーケティングの参考になれば幸いです。

1.エンターテイメント業界(感情産業)での勝ち筋とは

 人々はどういった要素を求めて、エンターテイメントに対して対価を払うのでしょうか。

 まず、一つ目は、前述した「体験そのものの価値」です。例えば、

・その場でしか味わえない体験
・その場の参加者同士の一体感
・雰囲気など、5感で感じる空気感
・非日常性

こういったものがそれに該当します。

 人々は非日常の体験を求めて、エンターテイメントに投資をします。目的となるコンテンツそのものはもちろんのこと、それに至るまでの物販や制作物一つとっても、その体験価値を引き上げるために重要な要素となっています。

 もう一つは、生活者一人一人に対する特別感の醸成です。いわゆるOne to one マーケティングと呼ばれるものです。

・その人だけの特別なコンテンツ提供(名前入りのグッズの提供や握手会など)
・その場限りの限定商品の販売
・デジタルコンテンツの提供

 近年では、技術的な進歩もあり、イベント終了時までにお渡しができる受注製品であったり、アプリなどを活用したその人だけのコンテンツ提供であったりと、一人一人のニーズに合ったモノやサービスの提供が増えています。では、実際にはどのような取り組みがあるのでしょうか。次章で、具体的な事例を紹介していきます。

2.エンターテイメント業界での成功例

 前章では成功のパターンについてご紹介をしましたが、ここからは具体的な成功事例をいくつかご紹介していきます。

a)コンサート/アーティストなどの興行ビジネス

 これは読者の皆様もご存じかと思いますが、現状、音楽ソフト業界は全体的に厳しい状況に置かれています。CDは全く売れなくなり、かつては当たり前のようにあったミリオンセラーという言葉は、今ではほとんど聞かなくなりました。実際に数字を見ても、10年前と比べて市場規模自体も2/3程度になっていますし、オーディオレコード市場に至っては、半分程度まで縮小している状況です。

 対して、コンサート市場はどうでしょうか。コンサート市場の年間の売上は10年前と比べて約3倍以上になっています。数字から見ても、人々が改めて”体験すること”に価値を見出していることがわかります。では、コンサート市場では具体的にどのようなことが行われているのでしょうか。
(参考:http://www.acpc.or.jp/marketing/transition/)

 例えば、皆さんが良く知っているものだと、AKB48グループの握手会というイベントがあります。CDを購入した人がメンバーと握手をできるというイベントで、ファンの心理としては、まさに体験価値であり、そして自分だけにメッセージを発信してくれる非常に貴重な機会になっています。

 また、他にも有名なのはPerfumeが挙げられます。映像演出やファンとの一体感で大きな人気を博しています。まさに、その場限りの特別な体験や一体感を求めて、多くのファンが参加するイベントになっています。他にも安室奈美恵さんの引退ツアーなど、デジタル化が進む一方で、”聴く”だけでなく全身での”体験”が求められているのです。

b)テーマパークビジネス

 続いてはテーマパークビジネス。改めてこちらも市場の推移をご紹介します。

こちらも市場規模、来場者数ともに右肩上がりで伸びています。テーマパークビジネスと聞いて真っ先にみなさんが思い浮かべるのは、東京ディズニーリゾート(以下、TDL)ではないでしょうか。実は、TDRのパスポートの価格は2008年時点では5800円でした。しかし、現在では7400円となっており、実に1600円も値上がりしています。この流れは関西の雄、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(以下、USJ)でも同様で、2008年時点では5800円だった価格が2018年現在では7900円まで値上がりしています。
(参考:http://lkb6.com/theory/enjoy/marcket_20170721

 各社がこれほど値上がりを実施しているにも関わらず、なぜ売上を伸ばし続けているのでしょうか。両社の取り組みから紐解いていきます。

 まずはTDRでの取り組み。これはとても有名なので、ご存知の方も多いかと思いますが、キャストに誕生日であることを伝えると、「MY HAPPIEST BIRTHDAY」と書かれた可愛いシールに、名前を書き入れてプレゼントしてもらえます。シールに気付いたキャストが必ず「誕生日おめでとう! 」「ハッピーバースデー! 」と声をかけてくれます。また、パーク内のフォトスポットでは、カメラマンキャストが記念に写真を撮ってくれるサービスもあります。撮影前に誕生日であることを伝えると、ミッキー、ミニー、ドナルドがバースデーパーティーを楽しんでいる、スペシャルイラストのフォトサインも用意してもらえます。まさに一人一人がおもてなしされるような気持ちになります。

 USJでも同様のサービスは行われています。バースデーシールの配布を実施し、ショップスタッフやクルーにバースデーシールをもらうと「お誕生日おめでとう!」と声をかけられます。USJの場合はさらに、誕生月とその翌月はチケットが特別価格になるというサービスも展開されており、まさに一人一人に応じたコミュニケーションが実施されています。

 2つの例をご紹介しましたが、これはあくまでサービスの一環です。重要なのは、このようなサービスに限らず、パーク内では一人一人のゲストがキャストとの対話を楽しんでいます。「お姉ちゃん、どこからきたの?」「その帽子、とても似合ってるね!」というように、まさに一人一人に対するおもてなしの精神でコミュニケーションをしています。これこそ、テーマパークビジネスが活況を呈している一番の理由ではないでしょうか。

(ーー後編に続く)

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