“E-commerce activities will be replaced with a total integration of online, offline, logistics and data across a single value chain.” – Jack Ma, founder of Alibaba
「ECの活動は、バリューチェーンを横断して、複数チャネルと物流、データの統一化に置き換わるだろう。」- Alibaba創設者 ジャック・マー

ジャック・マーの発言のように、オンラインで店舗を構えていればお客さんが勝手に購入してくれるという時代は終わりを迎えつつあります。現代のマーケティングにおいては、顧客と接点を持ち続け、継続購入へと導くことが必須とされています。あらゆる企業がオフライン/オンライン関係なく多数のプロモーションを展開している中で、顧客のロイヤリティを高めてLTVを向上させなければ、顧客はすぐに競合他社の製品やサービスに目移りし、結果的に乗り換えてしまうことにつながってしまうからです。

逆に、あらゆるチャネルで顧客と接点を持ち、ポジティブな印象を与え続けることができれば、簡単に他のサービスには乗り換えず、ロイヤリティの高い優良顧客を多く抱えることが可能です。さらに、そのような優良顧客は周囲にサービスを広めてくれる強力なインフルエンサーの役割を果たし、企業のブランディングに貢献します。

本記事では、オンラインとオフラインの複数のマーケティングチャネルを組み合わせることで、あらゆるチャネルから同じように商品を購入できる環境を実現することを「オムニチャネル」と定義します。オムニチャネルは、うまくいけば競合他社を出し抜く強力な武器になりますが、実現には様々な困難が存在します。Web上に存在する記事は、オムニチャネル戦略のメリットばかりをアピールしたり、事例紹介ばかりで「簡単に実現できるもの」と勘違いしてしまう方も多いのではないでしょうか。 今回は、単なる事例紹介にとどまらず、著名なマーケターの話や、海外の有名なメディアに記載されている記事を基に、オムニチャネル戦略に必要な5つのポイントについて解説します。実際のオムニチャネル戦略の進め方や、取り組む際のコツなども紹介していますのでぜひご一読ください!

<目次>
1.組織構造の最適化
2.データの統合
3.顧客中心主義
4.チャネル間の同期
5.消費者とブランドの接触

1.組織構造の最適化

“顧客の購買プロセスにおける課題に注目し、迅速に対処するブランドは、競合他社を出し抜き市場を勝ち抜いている” – Rob Beevers、Ebiquity

消費者はサービス全体を一つのブランドとして捉えています。だからこそ、消費者に最高の顧客体験を提供するためには、まず最初にブランドにおける共通言語となるビジョンを明確にし、組織内における部門間の垣根を取り払う必要があります。オムニチャネルは社内で一丸となって取り組まなければ実現することは不可能です。すべての部門が同じブランド、同じメッセージを発信し、消費者を最優先に考える必要があります。

また、顧客体験をあらゆるチャネルで可視化することで、消費者と企業との接点や、消費者が意思決定を行うタイミングなどのカスタマージャーニーを把握し、製品やサービスの購買意欲に影響を与えるボトルネックを特定することができます。そのためには、消費者の行動をどのようにトラッキングするのか、そしてそこで得た情報を他のチャネルでどのように活用するのかを組織横断で決めていく必要があります。

2.データの統合

“オーストラリアのCIOの83%が、2017年にハードウェア、ソフトウェア、サービスなどの大きなデータに投資する予定である” – Telsyte Australian Big Data&Analytics Market Study 2017

オムニチャネル戦略の要はデータの取得と分析です。データを分析することで消費者をより深く理解し、未開拓の市場を特定することに繋がり、最終的な意思決定にも役立ちます。また、消費者の行動をトラッキングし、一人一人に合わせた最適なコンテンツを提供することによって、消費者とのコミュニケーションを最適化することができます。

しかし、そのためには顧客データを一元管理出来るDWH(データウェアハウス)を構築する必要があります。複数のシステムでデータをバラバラに管理している場合、データ同士が繋がっていないので、一人一人に合わせた最適なマーケティングを実現することは不可能です。その場合は、オンラインおよびオフラインのデータを1つに統合できるシステムに置き換えることをおすすめします。
DWHを活用するにあたっては、まずは今、自社にどのようなデータが収集・集積されているかを把握する必要があります。次に、自社のマーケティング戦略に則ったDWHの設計図・要件を決定します。そして、新しいDWHの構築に必要なデータの管理方法を定義し、データを収集します。これによって消費者とのやりとりを俯瞰的に把握することができます。
上記の例として、店舗とECサイトを統合したAlibabaの「新しい小売り」モデル、および通信機能を備えた物流システムがあります。結果として、Alibabaは消費者と双方向のショッピング体験を実現し、小売店や店舗全体の在庫を正確に把握することができるようになりました。

【参考】データ統合するなら
プライベートDMP徹底比較 5選

3.顧客中心主義

“顧客中心主義とは、企業の長期的な財務価値を最大限に引き出すために、よりよい顧客体験を提供することを意味する。” – Esomar World Research

顧客中心主義を実現するためには、従来の画一的なマーケティングをやめ、各消費者と各チャネルの接点をコントロールするようなマーケティング施策を行う必要があります。そして、そのためには組織の体制を根本的に変え、企業戦略も全面的に変えなければなりません。そのためには、個々の顧客の行動に合わせてコミュニケーションを調整する必要があります。顧客の購買プロセスやそのプロセスにおける意思決定ポイントを想像し、デモグラフィック変数(年齢、性別等)やサイコグラフィック変数(価値観や性格など)を考慮し分析します。その上で消費者のさまざまな意思決定に合わせたコンテンツを作成します。

その際には、MA(マーケティングオートメーション)が重要な役割を果たします。MAを活用すれば、消費者の行動に応じて、最適なコンテンツを届けることが可能になります。これによって、顧客がまだ「見込み顧客」である段階から高いロイヤリティを保つことが可能になり、消費者との関係性をよりよくすることが出来ます。

4.チャネル間の同期

“84%の人が実店舗で買い物をするときスマートフォンを活用している” – Google Mobile In-Store Research

先述したように、各チャネルの役割を明確にし、チャネル同士が互いに相互作用することによって、消費者一人一人に最適化されたサービスと一貫したブランド体験の両方を提供することが可能になります。オムニチャネルにおける最終的なゴールは、各チャネルがお互いに良い影響を与え合うことです。そのためには、スマートフォン、アプリ、タブレット、ノートパソコン、デスクトップコンピュータなどのさまざまなデバイスをリンクさせるだけでなく、消費者との全ての接点において一貫したメッセージを発信することで、顧客との深い関係性を築く戦略が必要です。

例えば、自宅のパソコンでECサイトを閲覧し、ショッピングカートに商品を追加したのであれば、その情報はスマートフォンにおいても反映されていなければなりません。同様に、オンライン上での割引は、実店舗でも利用できなければなりません。

このように、テクノロジーを活用し、様々なチャネルにおける消費者の行動をトラッキングすることで、消費者が「どこで、どのように情報を見つけるか」、「どのデバイスを好むか」、「どのタイミングで製品やサービスを購入する可能性が高いか」を知ることができます。そしてその結果、シームレスな顧客体験を提供することが可能になります。 他にも、SNSを使ってテレビCMの影響を測定したり、イベントでハッシュタグキャンペーンを行ったりするといったように、チャネルの組み合わせによって実現できることは数多く存在します。

5.消費者とブランドの接触

“小売業者がデジタル時代に適応することで、リアルの商取引とデジタルの商取引の境界線はますます曖昧になりつつある” – BI Intelligence、The Future of Retail、2016

このように、顧客行動が多様化した現代において、消費者に自社ブランドのファンになってもらい、利益を生み出すためには、複数のチャネルを組み合わせたマーケティング戦略が必要不可欠です。

しかし、オムニチャネル戦略を考える際には注意すべきことがあります。消費者がチャネル間を移動することを念頭に置く必要があります。この移動の際に消費者にストレスを与えないように、各チャネルにおける消費者とのコミュニケーション設計を意識しなければなりません。また、もし消費者が最終的に商品を購入しないという決断を下した場合においても、優れたブランド体験を提供しておく必要があります。

また、オムニチャネルは実行するだけでなく、正しく分析をすることも重要です。データを分析することによって、ベストな戦略を決定することができるだけでなく、その効果を確かめることもできますし、消費者との接点を活用して、潜在顧客を見込み顧客に変え、新しい市場セグメントを特定し、消費者の購買プロセスを最適化することもできるようになります。

この記事では5つのヒントを紹介しました。オムニチャネル戦略を理解し、顧客を中心に据えたマーケティングを行うことで、これからの時代を勝ち抜くことができるはずです。

[参考記事]
オムニチャネルとは?

弊社が提供している マーケティングツール『b→dash』 は、マーケティングプロセス上に 存在する全てのビジネスデータを、ノーコードで、一元的に取得・統合・活用・分析することが可能なSaaS型データマーケティングプラットフォームであり、BtoC業界を中心に、様々な業種・業態のお客様にご導入頂いております。

Editor Profile

  • 福井 和典

    株式会社データX マーケティング管掌執行役員

    日本IBMにてシステムエンジニア、GREEにてCRM領域のオペレーション企画、PwCでの業務コンサルタントとしての経験を経て、2016年よりデータXに入社。データX入社後は、カスタマーサクセス部門に在籍し、小売/金融/アパレル/ECなど幅広い業種に対するb→dash導入支援を統括。
    その後は、主にb→dashのマーケティング/広報/PR活動や事業企画に従事。

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