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2019.08.05

定量×定性での徹底的な顧客理解が一番の差別化になる
日本で一番若者を理解するSHIBUYA109が語る、新・顧客理解論

若者の街、渋谷にて圧倒的な存在感を放つSHIBUYA109。今年で開業から40周年を迎える同館は、著名動画クリエイターとのタイアップやロゴリニューアルなどで常に話題を集め、今も昔も変わらず若者を魅了し続けている。「若者を惹きつけるカギは、若者のインサイトを把握し、リアルとデジタルをシームレスに繋ぎ、融合することである。」そう語る、SHIBUYA109を運営管理する㈱SHIBUYA109エンタテイメント(以下「109E」)でオムニチャネル事業部MDプランニング部長であり、SHIBUYA109総支配人、MAGNET by SHIBUYA109総支配人を務める澤邊氏に、詳しくお話を伺った。

── まず初めに、澤邊さんのキャリアを教えて下さい。

 2002年から現109Eに至るまで、東急グループに入社してから約20年経ちます。109Eは以前私が所属していた東急沿線を中心に20以上の商業施設を運営管理している㈱東急モールズデベロップメント(以下「TMD」)の一事業部から2007年に分社化をしました。TMD時代には、とあるモールの担当になり、そのモールの運営業務に8年ほど携わりました。その後はTMDの本社に移り、プロモーションの統括や投資・信託不動産の運用を経験しました。2013年の1月にSHIBUYA109の公式通販担当としてSHIBUA109のEC部門に移り、そこからデジタルにも関わるようになりました。

 当時はSHIBUYA109のEC部門は独立しており、かつECの運営専門のメンバーがほとんどだったので、全社的に見るとEC人材が育っておらず、リテラシーは底上げされていませんでした。世間的にもECの市場が爆発的に伸びているタイミングだったので、弊社もここに注力しようということで私がジョインすることになりました。ただ、それまでプロモーションには携わってはいましたが、ECのことは全くわからなかったので、一から勉強しましたし、社内外問わず色々な人にとにかく話を聞きにいきました。

 その後はECだけではなく、オウンドメディア「109ニュースシブヤ編集部」の立ち上げやSHIBUYA109公式サイトのリニューアル、リアル店舗とECの部署の組織再編など、様々なことに関わり、今に至ります。

── ありがとうございます。SHIBUYA109といえば今も昔も若者の聖地ですが、若者を惹きつけるために何か工夫されていることはあるのでしょうか?

 109Eでは”Making You SHINE!”という企業理念を掲げ、「若者の味方・理解者として彼ら/彼女らのの今を輝かせ、夢や願望を叶える事業」を目指しています。ターゲットもアラウンド20(15~24歳の男女)に特化しており、若者に対してファッションだけではなく、様々なコミュニケーションを通じて、ブランドステートメントを確立していこうとしています。

 マーケティング的な観点ですと、若者のことを理解出来なければ、「夢や願望を叶える事業」は出来ないので、彼ら/彼女らのことを知るために「SHIBUYA109 lab.(以下「lab.」」というものを立ち上げました。それまでは年に1回来館者調査は実施していましたが、「どんな情報経路で来館したのか」というような情報しか得られず、若者を理解するという点ではあまり意味を成していませんでした。より若者を知るために定量的な調査はもちろん、定性的な情報も組み合わせることで若者のことを真剣に理解するという取り組みをしているのがこのlab.です。今でもSHIBUYA109が若者の聖地であり、彼ら/彼女らを引きつけることが出来ているのは、この取り組みに相当力を入れていることが一つの要因だと思いますね。

── SHIBUYA109 lab.を作られたのは最近だと思いますが、それまではどのような取り組みをされていたのでしょうか?

 lab.を作る前までは、”プロモーション”や”テナント”という観点から若者を取り込もうとしていました。そうすると行き着く先は”ファッション”なんですよね。「SHIBUYA109=ファッションの聖地」と言われるようになったのは、以前は若者の個性は全てファッションで表現できていたからなんです。そういった時代の流れもあったので我々もファッションを軸に事業を展開していました。

 また、当時は若者の世界の中で新しいファッションをどんどん取り入れたことで、結果的に若者を取り込むきっかけになっていましたが、今の時代、ファッションだけでなく、かなり細分化された中で様々な趣味嗜好があり、いろんなやりたいことがあって、いろんな夢があって、という時代です。ファッションだけでは限界があるので、エンタテイメントの会社として改めてミッションを設定し、lab.を通じて若者世代を理解し、彼ら/彼女らの夢や願望に沿えるように色々な施策や戦略を進めています。

── 実際にSHIBUYA109 lab.ではどのような活動をされているのでしょうか?

 様々な取り組みを行なっていますが、毎月地道にやっていることは、来館しているお客様100~200人に対してlab.のメンバーが直接インタビューをしたり、アンケートを取ったりしています。「何を買ったか」というよりは、好きなブランドや好きなアーティストといった趣味趣向を定点的に聞き、その時々のトピックやシーズンならではの質問をして、最終的にはメンバーがレポートとして社内に共有します。

 また、一部のお客様にはlab.専用のLINEグループに入っていただき、別途毎週開催しているグループインタビューに参加してもらっています。例えばアニメ好きな女子とか、韓国好きな女子とか、テーマを決めて毎週深掘りしています。あとは産学連携も進めていて、市場調査やレポートの発表を様々な学校と一緒に実施しています。

── 若者の流行を知るという観点で、「これだけは絶対にしておくべき質問」はあったりするのでしょうか?

 好きなブランドと、好きな有名人/アーティストですかね。ブランドは言わずもがなですが、有名人やアーティストに関しては、我々の場合エンタテイメント系のタイアップ施策が多いので、若者が好きな有名人を抑えておくのは必須です。ただ、その時点で有名になりすぎている方だとその後の発展性がないので、先を見越してキャスティングすることもあります。若者のトレンドの移り変わりは早いですから。

 先日も、40周年企画の一環でSHIBUYA109の全館で動画クリエイターとタイアップさせていただきましたが、他の商業施設では出来ないような先進的かつ攻めの施策を打てるのは、トレンドをしっかり把握している我々ならではだと思います。それこそがSHIBUYA109の強みですし、逆にこういった取り組みが無ければ我々の存在価値は無いに等しいので、若者を知ることは徹底的にやっていますね。

 ただ、だからといって若者が「これがいい!」と言うものを鵜呑みにしてそのまま取り入れるようでは上手くいきません。館内やLINEグループでのインタビューの目的は若者の感覚や視点を持ちながら、正常な判断・意思決定をするための材料収集です。最終的に戦略や施策を決めるのは我々なので、そこは履き違えないようにしています。

── 若者の間で流行っているものを鵜呑みにするのではなくて、マーケティングの観点で「何でこれが流行ったのか?」、「次はこれが流行るのでは?」という仮説を立てて実行することが大事ということですね。ちなみに、テナントの観点で若者を取り込むために工夫されていることはあるのでしょうか?

 そうですね、マーケティングの観点ではテナントの選定は非常に大事です。先程お話したとおり、インタビューやアンケートでは好きなブランドを必ず聞くようにしているため、そのブランドを常に把握しています。ちなみに、好きなブランド1位ってどこだと思いますか?

── なんでしょう…少し前だとCECIL McBEEのイメージがありましたが…。

 残念、違います。実は、好きなブランド1位って、無いんですよ。「無い」が圧倒的に1位なんです。今の若者ってあまりブランドに固執しないんですね。どこで買ったかも分かっていないケースもありますから。「このブランドでこの服買おう!」ではなくて、例えば、「白いワンピが欲しいからインスタで検索して、かわいい商品を見つけて、似たものがあれば買う」というような行動が一般的になっているんです。

 でもこの感覚、みなさんあまりわからないですよね。ただ、より深堀りをしていけば、どんなテイストが好きなのかもわかってきます。この深堀りから、どんなブランドにテナントとして入っていただこうとか、既に入って頂いているブランドにも、我々が得たインサイトを伝えて改善してもらうようにしています。

── ちなみに、SHIBUYA109ならではの”施設における工夫”はあるのでしょうか?

 お客さまの購買傾向に合わせてテイストや雰囲気を変えてはいますが、百貨店のように明確にフロアで分けてはいません。一般的に百貨店やモールは1階が一番売れるものですが、SHIBUYA109の場合、そうではなくて各フロア平均的に売上をあげています。

 また、滞在時間を長くしてもらう、という観点では、これまでファッション一辺倒でしたが、今では”食”や”エンタテイメント”の要素を入れるようにしています。アーティストやアニメ、映画など、僕らは「360°エンタテイメント」と言っていますが、色々なモノとコラボレーションして、「新しくて感動できる体験」をしてもらえるように様々な仕掛けをしています。”若者 × エンタテイメント”というのは一つのポイントかもしれません。

 また、どこの企業も、“ベンチマークしている企業“というのは存在すると思いますが、SHIBUYA109はそれがないのも特徴です。もちろんこれは、ベンチマークすべき企業がないというわけではありません。同じ商業施設であれば、ルミネさんやパルコさんは若者層をターゲットにしているので参考にする部分も非常に多いです。ですが、ルミネさんやパルコさんといった商業施設と決定的に違うのは、我々はエンタメ企業である、ということです。

 そして、「若者の夢や願いを叶える」ことをミッションとしていますので、商業施設的な役割だけをしていてはダメで、若者の願いを叶えられるような、最先端のエンタテイメントを提供し続けなければなりません。そのための工夫をしている、という意味でもSHIBUYA109ならではのポイントではないかなと思います。

――後編に続く

Text by Mei Kajiya


【プロフィール】
澤邊 亮
株式会社SHIBUYA109エンタテイメント
オムニチャネル事業部 MDプランニング部長 兼 SHIBUYA109総支配人 兼 MAGNET by SHIBUYA109総支配人
SCの現場運営、新規SCの開発、本社部門に携わった後、2013年よりSHIBUYA109の公式通販の運営、109ニュースシブヤ編集部の立ち上げ、サイトリニューアルなどを実施。
施設運営、EC運営、オムニチャネルの推進とSNSやオウンドメディア、マーケティング全般を担い、2019年7月1日より現職。


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