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2018.11.21

顧客データの統合で実現するBEAMS流 顧客体験論
“ヒトファースト”で考えるブランドとコンテンツの創り方とは

前編では、BEAMSがECサイトを中心にどのようにデジタルシフトを進めたのか、また、その際に発生した課題と解決方法についてお話を伺いました。後編では、ECで取得したデータの活用方法や、スタッフをコンテンツ化してファンを増やし続けるBEAMS流の顧客体験のあり方についてお話いただきます。

ーー自社のECサイトを立ち上げてから、一番の目的であった顧客データの活用はどのように取り組まれたのでしょうか?

 実は、初めの頃は全く活かせていませんでした。2008年に自社ECサイトを立ち上げる際、一つだけ実現できなかったことがありまして、それが既存のBEAMS CLUBの顧客データと自社ECの会員データの統合です。当時は、リアル店舗が圧倒的な力を持っていたのでやむを得なかったんですが、非常にもどかしい状況でした。自社ECサイト立ち上げ時から、店舗でのお客様の購買データの重要性は認識していたので、いずれデータを統合させることは目指しつつも、ひとまずは自社ECでの会員獲得に注力していきました。

 しかし、数年して売上が成長すると社内にも変化が起きはじめまして、ポイントサービスの相互利用ができる方向に議論が進み、2012年にサービス共通化のプロジェクトを開始しました。ポイントの相互利用が実現したのは2013年ですが、直後からお客様からの反響の高さを実感しましたし、データが明らかに変わりはじめました。

 こういった経緯があって、2015年にはCRM部門ができ、顧客IDや会員データを統合しようという動きが加速しました。今、お客様のデータを一元管理出来るようになってからは、マーケティングオートメーションツールなどを活用して、一人ひとり最適なコミュニケーションを実現することに取り組んでいます。

ーーやはり、バラバラなデータを統合することがこれからの時代に求められるのですね。話は変わりますが、BEAMSというと、ブランドサイトとECサイトが統合されていることが特徴的ですが、どういった背景でサイトの統合がなされたのでしょうか。

 そもそも業界的には、企業のオフィシャルサイトやブランド公式サイトと自社ECサイトは別物という認識が一般的でした。その理由は、ブランドサイトはブランディングをしたり、企業の色々な活動や情報を掲載していくもので、逆にECサイトは購買してもらうことがミッションなので、売上に直接繋がるようにデザインや機能を特化していくもの、と認識されていました。

 しかし、実際にはブランド公式サイトを訪れたお客様と、そのブランドの自社ECサイトに訪れたお客様はおそらく共通性が高いはずだと考えて、どういう関係かを調べようと思うと、非常に複雑だとがわかります。ドメインが分かれているので、サイト間の行動履歴を把握するのが難しいので、それなら、ブランドサイトとECサイトを統合して、ブランディングもしっかり実施して、なおかつ購買に繋がるECサイトを作ればいいのではないかと考えました。そうして、統合プランの基礎をイメージしていきました。

 単にブランド公式サイトとECサイトを統合させようと思っても、やはりお客様目線で考えることはとても重要で、統合した結果、お客様の利便性を損ねては元も子もありません。統合前は、ブランドサイトのトラフィックよりも、ECサイトのトラフィックの方が3倍以上多かったこともあって、やはり失敗しないかと悩みました。色々考えた結果、ブランディングとECとをつなぐ役割として、様々な新コンテンツを盛り込みました。

 その一つが、小売業の3要素と言われている「ヒト・モノ・ウツワ」に関するモノです。弊社でいうウツワはリアル店舗ということになりますし、そこには弊社のバイヤーが世界中から買い付けてきたモノがあります。ただ、店舗ではそれをヒトが接客してはじめて、お買い上げに至ります。それを考えた時、統合サイトの中にも「ヒト」が登場して、「モノやコトを紹介する」ことができたらお客様に楽しんでいただけるのではないかと思いました。ここのアイデアが繋がってからは、統合を本格化させようと社内を呼びかけ始めました。実際にプロジェクトを進めているときは、「ヒトの体温が感じられる公式サイトを目指そう」と言っていたほどです。

 こういった経緯で統合に進みましたが、シンプルにお客様が求めるカスタマージャーニーに対して答えようとすると、BEAMSのポータルサイトを作る必要があります。それこそYahoo!のポータルサイトに入ってからお客様がニュースやショッピング等好きなコンテンツを閲覧できるように、BEAMSにおいてもBEAMSポータルサイトに入ってから30あるレーベルから好きなコンテンツをお客様が選んでいただくことができるのが理想だと思っていました。

ーーYahoo!という言葉が出てきましたが、何かベンチマークしていたサイトはあったのでしょうか。

 当時、ファッションブランドではありませんが、NIKEサイトは定期的に確認していましたね。ナショナルブランドの目線で、”ブランディング”と”EC”を良いイメージを保ちながら融合させていた点に関しては、いろいろ参考にさせていただきました。

ーーブランドサイトとECサイトの統合はセレクトショップで実施しようとするとやはり難しいのでしょうか。

 まず、技術的には意外と難易度が高いと思います。在庫の正確さをどこまで実現するか、顧客サービスの店頭とのシームレス化やマイページ等のセキュリティ、コンテンツの管理・運営方法、EC機能の充実など、これでも一部ですけど、安定的なシステム運用が必要です。

 また、ブランドマネジメントの観点では、各社の特徴がありますから、一概には言えませんが、統合によるメリットがお客様にとってあるのであれば実施してもいいと思います。

ーー一方で、統合したことによるデメリットはあったのでしょうか。

 まず、各レーベルが運営していた独自サイトをBEAMS公式サイトに統合したので、その分階層が深まった、という意味ではデメリットです。ただ、今まで曖昧にカテゴライズされていた情報を整理整頓しましたし、お客様にパーソナライズするタイムライン機能を作るなど工夫を重ねています。その結果、今ではお客様の訪問するトラフィック量は数倍も増加しているので、デメリット以上にメリットの方が多いのではないかと思います。

 やはりポータル化したことで、さまざまな情報に触れる機会が増えていますので、各コンテンツそれぞれの目的に注力することにも繋がっていると思います。

ーーBEAMSというと、ショップスタッフを全面に押し出したコンテンツによりファンを増やしている印象がありますが、この施策はどういった背景で始まったのでしょうか?

 実は、弊社の代表がずいぶん前から「モノからコトへ」と言い続けていましたが、ここ数年は「コトからヒトへ」と言っています。人が中心になってコミュニケーションをとることで、お客様に喜んでもらえるサービスができる、と。なので、一人ひとり個性溢れるBEAMSスタッフを押し出して、お客様との繋がりを強くしていく。これがリアル店舗でのコミュニケーションでは1対1ですが、デジタルを活用すれば1対Nに拡散できるのではないかと思いました。

 ブランドサイトとECサイトを統合する企画書を書いていく中で、究極のメインコンテンツはヒトにあるのではないか、人を中心にしたサイトがあってもいいんじゃないか、と考えました。既に、自社ECサイトでは、スタッフのスタイリングを掲載していたのですが、スタイリング画像のある商品とそうでない商品では、売上に圧倒的な差が開いていたので、だったらスタイリングを含む、人を中心としたコンテンツを作っていき、社内インフルエンサーを増やそう、ということになりました。

ーーショップスタッフからEC担当に移られ、矢嶋さん自身のお客様との関わり方が変わっていますが、共通して気を付けていることなどはあるのでしょうか?

 そうですね。弊社はセレクトショップなので、BEAMSのフィルターを通った多種多様な商品を品揃えして、お客様に合わせたご提案をして、お買い物を楽しんでいただくことが本業です。なので、常に柔軟な思考でサービスを提供していかなければなりません。ショップスタッフ時代には、直接お客様とのコミュニケーションができましたが、間接部門に移ってからはメールや電話対応でも、お客様の課題解決を心がけていました。その後のEC事業では画面越しの接客を意識しましたが、視点を変えるとECもただのツールですから、現在行なっている店舗とECのオムニチャネル化にも軸として活かされていると思います。

ーーでは最後に、矢嶋さんが考える”未来のCMOに必要なもの”を一言でお願いします!

 「常に新しいモノ・コトに興味を持って、インプットとアウトプットを続けること」だと思います。それを続けている中から、お客様との関係において、その都度ベストな方法を選択できる出来るのではないでしょうか。

 店舗スタッフを公式サイト内でインフルエンサー化させたり、オフィシャルサイトと自社ECサイトの統合も、当時は誰もやっていなかったモノですが、固定概念にはとらわれずにチャレンジを続けました。どんどん変わっていく時代に対して、逆に自分から進んで変わっていく勇気みたいなものは、これからも必要なものだと思っています。

Text by Mei Kajiya


【プロフィール】
矢嶋 正明
株式会社ビームス 開発事業本部 EC統括部 部長
2000年ビームス入社。店舗での販売を経て、2005年にEC部門を立ち上げ。
各ECモールから自社ECサイトまで、横断的に全社のEC事業を推進。
2016年、全ての自社サイトを統合し、メディアコマースサイトを構築。
2017年、公式サイトを活用して、実店舗とECのオムニチャネル化を実現。
2018年、台湾で現地直営型ECサイトを立ち上げ、国内外のEC事業を推進中。


Marketer’s Compassでは、様々な業界のリーダーへの取材を通して、未来のCMOが知っておくべき情報をお届けしています。
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