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2018.08.14

マーケター一人一人の専門性を事業横断で発揮するマーケティング組織
DMM.comの“シンポジウム組織論”とは

前編では高木氏のキャリアやその経験から生まれた考え方をベースにDMMが構築するデータマネジメントの今と未来についてお話頂きました。後編では、DMMが進めるデータドリブンマーケティングを行う上で、必要になる組織体制やデータ時代のマーケティング組織を活性化させるために重要となる人材育成・採用についてお話し頂きます。

ーーCDPの構築など、データドリブンでマーケティングを進めていく上で高木さんが必要と考える“組織の創り方”はどのようなものでしょうか?

 適切な組織創りは会社それぞれだと思いますので、とりたてて必要な組織の形というものはないと思います。ただ、僕は”シンポジウム組織構造”を大事にしています。シンポジウムとは、辞書的には「研究発表会」や「討論会」という意味があり、シンポジウムでは各研究者の発表に対して、他の専門家が異なる視点で指摘をします。この多分野の専門家が一つの事象について異なる視点でアドバイスや示唆を与える、という部分を組織において重視しています。互いの専門的知識を以って協働していく、この創り方をイメージしていなければCDPの構想は頭になかったと思いますし、そもそもCDPの構築には、シンポジウム的考えがないと成功に繋げることは難しいかと思います。

ーーその”シンポジウム組織”というのは具体的にどのような体制のことを指すのでしょうか?

 シンポジウム組織というのは、事業・サービスの専門知識を持つ人や、プロモーションやアナリティクスといったマーケティングの専門知識を持つ人たちが互いの専門性を活かし協働していく組織のことを指します。事業横断型で、あらゆるマーケティング施策の視点から目標の経営指標を追っていくことで、本質的な課題解決・成果に繋げることができます。

ーーなるほど。では、なぜ「CDPの構築には、シンポジウム組織が必要」なのでしょうか?
 「CDPの構築はシンポジウム組織でないとできない」と申し上げたのは、組織がマーケティング活動の本質的ゴールである事業収益を追う視界を持たなければ、CDPの目的を理解して運用することができないからです。日本の多くの企業は、事業ごとに縦割りで、それぞれが独自の目標を追っているため、それらの事業を優劣を問わない一部の人間がまとめるトップダウンの組織になっています。そうすると、その中にいる優秀な人間に企画やディレクション、プロデュース等すべての仕事が集まり、かえって効率が悪くなります。また、縦割りの事業のマーケターはその事業で扱う商品・サービスに限定されたマーケットしか向き合えなくなりますので、その事業やマーケットが縮小した際、そのナレッジが使い物にならなくなりますし、そもそもユーザーはサービスに捉われず、自分の欲しいモノ・サービスを個々のライフスタイルに向き合って求めるので、事業ごとに分断されたマーケティングは今後一層いらなくなるでしょう。

 これは事業面だけでなく、マーケティング施策においても同じことが言えます。広告やメルマガ、分析といったそれぞれの専門分野による側面でしかマーケティングの価値を捉えられないと、CPA、CVといった目の前の数値を追うだけのKPI管理になってしまいます。また、各施策単位で成果を求めて、ある施策で成果を出そうとすると、他の施策では成果が上がらず、最終的な目標達成ができなくなってしまうといった事態が起こるため、事業を含め、マーケティング、マーケットをスケールさせることはできません。

 なので、それぞれ専門性を持つプロフェッショナルがそれぞれの立場から同じゴールを見て協働することで、単なる目前の数字改善ではなく、本質的な課題解決に向けて最適な施策を行うといったマーケティングが可能になります。

ーーその体制を機能させるために、高木さんが意識しているマネジメントの仕方はどのようなものになるのでしょうか?

 今はあまり現場に介入しないようにしています。僕が入ってしまうと、各人がプロフェッショナルとしての意見ではなく、トップの意見で動くようになってしまいますから。僕が質問したことが決定事項になってしまう、トップの意見で動くようになってしまうということがないように、僕はあんまり介入しないようにしています。そうすることで、それぞれの専門性から議論し、それらを活かしたプロフェッショナルなマーケティングを行うことができ、DMM全体をスケールさせることができると思っています。

ーーでは、どうすればそのようなプロフェッショナルな組織のメンバーを育成できるのでしょうか?育成方法や採用の際に気を付けていることを教えて下さい。

 育成の観点でいうと、単一サービスしか売れないような人間にならないように「論理的思考力」、「プロジェクト推進力」等の基礎となるビジネススキルを持った人を育てることでしょうか。

 採用の観点としては、“DMMのマーケティング思想”や“シンポジウム的な考え方”がマッチするかを見ており、単にスキルが有るからといって採用しないようにしています。結局、スキルのみで人を採用してしまうと、組織スケールに対する価値観や考え方の違いから齟齬が生じ、早い段階で組織を離れてしまう場合が多いですからね。他にも、自身が行うマーケティングに対してプライドを持った人を採用するようにしています。DMMのマーケティング組織をプロフェッショナル集団にしていくためには、その素養として自分自身のマーケティングに対して何かしらのプライドを持っている必要があると思っているからです。プライドを持って仕事ができなければ、現状をより良くし、収益を最大化させるためのミッションに責任を持てませんからね。マーケティング組織をプロフェッショナル集団にするために、僕自身は部門統括者として、各メンバーの専門性を育て、成長させていけるように環境を整えることで、メンバーの動ける範囲を広げるようにしています。

ーーデジタルマーケティングを進めるマーケターが身につけるべき力は「論理的思考力」「プロジェクト推進力」の他に何があるのでしょうか?

 育成のところで話した「プライド」と、あとは「想像力」と「企画力」と「実行力」ですね。ユーザーが自社サービスを使っている際の心情や環境、サービスを使うことによる心情の変化といった、ストーリーを想像して、想像したことに対し、どうすればそのストーリーを実現できるのか具体的に落とし込む力が必要だと思います。今の世の中は、ユーザーを基軸にビジネスが回っているので、どうすればユーザーが自社のサービスを使って喜んでくれるかを細部までイメージできなければなりません。そして、そのイメージを実現できるよう、サイトのデザインだったり、ボタンの位置だったり、見せ方だったり、そういったディティールにまで拘って具体的に企画していける力、そして、この企画したものを関係するメンバーに実現させていく力が今は求められています。なので、この「想像力」と「企画力」、そして「実行力」はマーケターにとって、とても重要な力になっています。

ーー高木さんご自身がその想像力や企画力を高めるために取り組まれていることはありますか?

 やっぱり、新しいモノ・コトに多く触れるようにしています。それこそ、アドレナリンを出すために、毎日小さなことでも新しいことにチャレンジしていますね。これは、例えば今まで食べたことない新商品を食べてみる、といったように小さなことでいいと思っています。とにかく新しいこと。今までやったことのないことに触れてみる、それこそ新しい場所に出かけるとか、新しく何かを始めてみるとか。本当に何でもいいんです。新しいことに本気で触れていくことで、アドレナリンが出て、常にフレッシュな気持ちを忘れないでいることができます。脳が常にそのような状態であることが、新たなイノベーションやアイディアを生むのに必要な条件だと思っています。

ーーありがとうございます。では、これからのマーケティング本部のミッションは何になるのでしょうか?

 そうですね、DMMが今までやってこなかった領域に力を入れていきたいです。広告以外の部分も含め、DMMマーケティング組織のあらゆるバリュー、リソースを活用した総合的なデジタルマーケティングのプランニングを行っていきたいです。DMMの持つブランドやサービス、広告力を使って新たな価値を世に創造していく、その際にデジタルありきのプランニングをしていく、それが僕らマーケティング本部のミッションだと思います。

ーー最後に、未来のCMOに必要なものを教えて下さい。

 「ロマンチストとリアリストの融合」ですかね。マーケティング組織をスケールさせ、事業を拡大させていくためには、“ロマンチスト”のように壮大な夢を描けなければなりません。それこそ、ユーザーの誰もがワクワクするようなサービスやソリューションを考えられなければなりません。でも、ただただ夢物語を語っているだけでは、結局何も実現できません。それが本当に物理的に実現可能なのかを冷静に考え、時にはその夢物語を具体的なサービスや施策にまで落とし込めるような“リアリスト”的側面が必要です。これは、どちらかが欠けても駄目なんです。“リアリスト”の側面だけ持ち合わせてしまうと、ユーザーの心に響かない、つまらないサービスや施策しかできませんから。「ロマンチストとリアリストの融合」、これが未来のCMOに求められる素養だと思います。

Text by Kento Mineoka


【プロフィール】
高木 一輝
合同会社DMM.com マーケティング本部 部長

2007年より、WEB広告代理店で金融系大手クライアントを中心にWEBプロモーションプランニングを担当。2011年から大手金融グループのハウスエージェンシーに転職し、自HD金融サービスの総合プロモーションに携わる。2013年よりDMM.com運営会社である株式会社DMM.com Labo(2018年より合同会社DMM.comに社名変更)の、マーケティング本部 部長に就任。新規事業におけるマーケティングプロデューサー、マーケティング共通基盤のマネジメントに従事している。(https://www.dmm.com/


Marketer’s Compassでは、様々な業界のリーダーへの取材を通して、未来のCMOが知っておくべき情報をお届けしています。
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