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2018.07.26

人間の介在が必要ない世界へ
DMM.comが実現する「ライトタイムマーケティング」とは

合同会社DMM.comは、動画配信サービスやゲーム、太陽光発電、FX取引、オンライン英会話、3Dプリンタ、水族館の建設など40を超える事業を展開し、直近では仮想通貨事業への進出や、創業間もない現金化アプリCASHを開発したバンク社を買収する等、次々と新たな事業を仕掛けていくコングロマリッド型ベンチャー企業。今回は、DMMが推進するデータマーケティングについてDMMマーケティング本部、部長の高木氏にお話を伺った。
前編では、高木氏のキャリアやその経験から生まれた考え方をベースにDMMが構築するデータマネジメントの今と未来についてお話を伺う。

ーーまずは簡単に高木さんのキャリアについて教えて下さい。

 今では、企業のデジタライゼーションやデータドリブンマーケティングについていろいろな記事に載せてもらったり、イベントに登壇させてもらったりしていますが、はじめからマーケティングやデジタルに強かったわけではありません。恥ずかしながら大学に進学しておらず、高校を卒業してからはしばらく内装職人をしていました。ただ、その会社が倒産してしまったので、その後は、日雇いバイトや引っ越しバイトといった日銭稼ぎをしていましたね。その日雇い派遣の営業として20歳で就職し、この頃が社会人の駆け出しとなりました。

 その後デジタル系のベンチャー企業という言葉が流行り、当時、自分も若かったので、「かっこいいな」という思いだけで、デジタル系ベンチャー企業に入りました。そこでは、はじめはアフィリエイト広告中心に担当していましたが、アフィリエイト以外のウェブ広告にも興味を持つようになり、広く広告全般を担当するようになっていきました。また当時はクライアントに並走する様なスタイルで営業していましたので、セールス営業というより、完全に保守営業の極みの様な形でウェブ集客の相談に乗ったり、人を紹介したりとコンサルティングっぽいことをしていましたね。そのうちに、もっとダイレクトにビジネスとして関わりたいと思うようになり、その後は大手金融会社のハウスエージェンシーに移りました。その中で、広告代理店側は『CV1件をどれ位の費用対効果で獲れるか?』という閉じた世界でしかマーケティングを考えておらず、また事業会社側は、CV1件を獲ることによる事業収益へのインパクトや、マーケティングの意義や価値といったことを大企業になればなるほど求めていない状況でしたので、僕は事業会社のそういった背景を踏まえながら代理店側からコンサルティングをしていました。

 その後、現職のDMMに転職していますが、DMMを選んだ理由としては、自分の持っていたウェブマーケティングのノウハウを事業視点で試したいという想いがあったからです。今までの経験から、代理店側のノウハウと事業を拡大する上での広告・マーケティングの価値の両方をわかっている僕が、そのノウハウを事業会社で使えばもっとインパクトのあることができるんじゃないか、そんな風に思い、自分の創るマーケティング組織がどれだけマーケットに対して価値提供できるのか、試したくなったんです。

ーーとても一貫性のあるキャリアストーリーですね。DMM.comに入社されてからはどのようなご経験をされてきたのですか?

 実際に、DMMは企画から実行までさせてくれました。始めはマーケティングというより入り口の広告管理しかできていない状況だったので、まずは獲得したリードを育てていくためのシナリオを作成し、そのシナリオに必要なデータやメールやSMS、広告といったアウトプット先となるソリューションをポートフォリオとして取り入れていきました。こうやって、体制を整え、人も段々と増やしていくことで、マーケティング組織をスケールさせていきました。現在では、よりマーケティングを強化できる環境をつくるために、有識者の話を聞きに行くなど新しいマーケティングの手法やナレッジを吸収しています。そうすることで、よりマーケティングの意義をスケールさせ、新規事業や既存プロダクトをスケールさせていく、という動きに繋げているのが、現在ですね。

ーーそれでは今現在進行中のミッションは何なのでしょうか?

 そうですね・・・今はある程度、組織体制も整ってきたので、現在のミッションは、利用するソリューション含めて、どのようにマーケティング組織の価値を最大限の生産性を保ちながら収益に変えていくか、ということでしょうかね。先程キャリアの件でお話しした通り、マーケティングはビジネスインパクトを生むための行為であり、マーケティング組織の活動を、”CV獲得の費用対効果“などではなく、どれだけ”組織収益“につなげることができるかが、ずっと自分が追っている大きなテーマであり、現在すべきことと認識しています。

ーー組織体制が整ってきた、とのことですが、どのような体制を構築したのでしょうか?

 CDP(Customer Data Platform)を活用し、データマネジメントを最大限機能させ、収益に転換させることができる体制を現在は目指しています。データ活用基盤としての構想を1年半位前からスタートさせ、既に稼働開始のフェーズに入っています。今後はこのCDPをうまく活用することで、マーケティング部門の生産性を高い水準で実現させながら、事業の収益を最大化させていきたいです。

ーー“CDP”という概念は少し前からデジタルマーケティング領域のトレンドワードになっています。高木さんはどのように捉えていらっしゃいますか?

 CDPは今現在のテクノロジーで最大限可能な“マーケティングの自動化”を実現するデータ基盤です。その最大限自動化されたマーケティングを僕たちは“ライトタイムマーケティング”と呼んでいます。デジタルマーケティングの領域でしばしば“リアルタイムマーケティング”という言葉が使われたりしますが、それを更に進化させた概念です。とはいえ、統一的な定義があるわけではないので、我々なりの定義をまずリアルタイムマーケティングから説明したいと思います。“リアルタイムマーケティング”というのは、リアルタイムという言葉の通りタイムリーに情報を取得・活用するものではありません。過去蓄積されたデータを元に人間が介入してターゲットとアプローチを設定し、それを集客の領域で自動化するマーケティングを指します。収集したデータをどのようにアウトプットしていくのか、それが、「第三者配信サイト内のサーバーの広告枠」なのか、「メールマガジン」なのか、どんな人間をどのような状態にしたいから、どんなコンテンツをどのような方法で届けるのかを担当者が考え、それを機械的に行うことなのです。

ーーありがとうございます。人間が介入し、考えたものを集客の領域で自動化するのがリアルタイムマーケティングなんですね。では、対して「ライトタイムマーケティング」とはどういったものなのでしょうか?

 ライトタイムマーケティングは、データを収集するのと同時に、分析できる状態にデータが整理され、さらにその結果から、メール配信や広告、レコメンドといった最適なアウトプットが人の介入を要さず、自動で選定され、連携されるマーケティングを指します。リアルタイムマーケティングですと、人が考えてその結果を自動化していたのですが、ライトタイムマーケティングでは、人の考えを介さず次のアウトプットを広告にするのかレコメンドにするのか、メルマガにするのか、データを基に「収益につながるアウトプット」を自動化していくのです。ターゲットをユーザー属性ごとに分類し、その分類ごとに「収益化するロジック」を自動であてることで、購買行動へ繋げていきます。そのロジックをどう導くかというと、「どういったユーザーがどのようなサイト内行動をしているのか、どういった購買行動をしたのかを分析し、ユーザー属性との関係性を導いていき、その結果から、更にそのユーザーはどんな媒体でどんなコンテンツによってアプローチされると一番購買行動に繋がるのかを分析」することで、購買へ至る法則を導きます。この法則がロジックになります。ライトタイムマーケティングはこういったロジックをどんどん見つけて、人の考えなしにシナリオを形成、稼動させ、データの収集からアウトプットまでを一気通貫でオートメーション化して収益のボトムアップを図っていくことを目標にしています。“現代における究極のマーケティングオートメーションと言えるかもしれません。

ーー必要となる「ユーザーデータ」に違いがあるように思いますが、リアルタイムマーケティングとライトタイムマーケティングで使われるユーザーデータにおける取得方法や取得項目は異なるのでしょうか?

 そうですね、大きく異なります。リアルタイムマーケティングは広告の効果を上げるため、つまりWebマーケティングの狭い範囲をスコープとした概念になります。その為、事業側に関しては、2ndパーティー、3rdパーティーデータを管理するシステムの精度が高くないことも原因にはありますが、プライベートDMPなどで管理されているCookieデータやアクセスデータ、会員データなどの1stパーティーデータを活用することがほとんどで、結局Cookieや会員ID、メールアドレス単位でしかアプローチできていません。そうすると、ターゲットに対しコンテンツを当てた際の反応でしか効果を分析できず、過去の結果に対して改善のための仮説を当てることしかできません。これに対し、ライトタイムマーケティングですと、ユーザーデータの取得項目は、ユーザーのデモグラフィックデータや購買行動データと多岐に渡り、また取得方法も1stパーティーデータのみや3rdパーティーデータのみと限定しません。そして、その取得したデータを基に自動でシナリオが動くので、最新のデータを基にした最適なアプローチを自動で行うことができます。

ーーなるほど、違いがわかりました。改めてCDPを構築する目的をお伺いできますか?

 CDPの目的は、このライトタイムマーケティングを実現することであり、タイムリーなユーザー属性や行動を基に、シナリオを自動化する基盤となります。今までは、施策を打ってその結果を分析し、人が考えてから新たな施策を打っていましたが、この「人が考えて新たな施策を打つまでのタイムラグ」をなくす土台がCDPの理想の形になります。これらのシナリオの設計及び自動化は機械学習が行い、人間は施策の内容とルールを決めるのみなので、それらが決まれば人間のやることはありません。このようにライトタイムマーケティングを実現するためのデータを収集・分析し施策実行までを自動化するのが僕らの目指すデジタルマーケティングの形ですね。

――CDPの構想を実現されるために苦労されたことはあるのでしょうか?

 もちろんあります。システムの連携であったり、そもそもユーザーごとに細かな施策を打っていきますのでシナリオの数が膨大になったり、実際にそのシナリオを捌けるのかであったり・・・・。

――CDP構想の実現、ライトタイムマーケティングの実現のための課題は、やはりシステム的なところになるのでしょうか?

 いや、そんなことはないです。もちろん、システム的なところで苦労することもありますが、世の中にはたくさん良いソリューション、良いツールがありますので、だいたい解決できます。どちらかと言うと問題は、これらのソリューション・ツールを扱えて、なおかつビジネスの本質に則してアクションができる人材が少ないことだと思います。エンジニアなど開発側の人間、Webディレクターなどはこれらのツールを扱うことはできるのですが、収益化を軸としたビジネスとの距離が遠くなってしまっている傾向があるため、どのようにマーケティングに活かせばよいかがわかりません。

 逆も然りで日本のマーケターの最も弱いところはここですね。ビジネスインパクトを見据えながらマーケティングを推進し、その中でツールをビジネスツールとして扱える、パイロットとなるマーケターがいないんです。ですので、こういった人材が育てば、その企業においてライトタイムマーケティングの実現がぐっと近づくと思います。

 ただ一方で人材が揃ったからといって、CDPが広まっていくかというと、現状ではそうではないと思います。CDPは「何をもって成功なのか」の定義がしづらく、成功体験を持つ企業が少ないためです。これら成功体験がもっと世に広まること、そしてマーケターがKPIを眺めるのではなく、もっとクリエイティブにデータ業務に集中し、成果をだす事例が増えていけば、CDPが例となるようなデータドリブンの世界は一気に広まっていくと思います。

ーー後編に続く

Text by Mei Kajiya


【プロフィール】
高木 一輝
合同会社DMM.com マーケティング本部 部長

2007年より、WEB広告代理店で金融系大手クライアントを中心にWEBプロモーションプランニングを担当。2011年から大手金融グループのハウスエージェンシーに転職し、自HD金融サービスの総合プロモーションに携わる。2013年よりDMM.com運営会社である株式会社DMM.com Labo(2018年より合同会社DMM.comに社名変更)の、マーケティング本部 部長に就任。新規事業におけるマーケティングプロデューサー、マーケティング共通基盤のマネジメントに従事している。(https://www.dmm.com/


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