日本最大級の不動産・住宅情報サイトを運営するLIFULL。現在、他にもインテリア、引っ越し、オフィス業務受託等、多岐に渡る事業展開を行っている。そんなLIFULLで事業横断でのコミュニケーションを担うマーケティング戦略部 MAユニット長の菅野氏に事業間でのシナジーの創出方法やデータ活用のポイントについてお伺いした。

菅野さんのこれまでの経歴を教えてください。

2008年に新卒として株式会社ネクスト(現・株式会社LIFULL)に入社しました。入社以来マーケティングに携わり、主に顧客一人ひとりのニーズに応じて施策を自動で行う、マーケティングオートメーション(以下、MA)に取り組んできました。マーケティング組織は事業部門と事業横断部門の2つに分かれており、私は最初の2年間事業部門のマーケティングに携わり、その後の8年間は横断部門にてマーケティングに関わっています。

新卒からずっとLIFULLにいらっしゃるのですね。LIFULLで今どのようなことをやっているのでしょうか?

現在は、全社のMAを推進する「MAユニット」を統括しています。LIFULLは、中期的なスローガンとして「100社以上の子会社を設立し、100か国以上で事業展開することを掲げています。それに伴い、多くの新規事業を立ち上げていますが、スピードを優先して事業立ち上げをしているため、グループ会社や各事業部がデータをそれぞれ別々のツールで運用しており、データ管理・活用が煩雑化しています。そのような状態を解消し、データをいつでも活用できるよう、顧客データ基盤の統合を目指しています。

顧客データ基盤の統合を行おうと思ったきっかけはありますか?

大きく2つあります。1つは、事業部間のシナジーを生むことです。例えば、賃貸事業では市場においてトップシェアに近いポジションにいますが、引越し事業は業界4番手に位置していました。また、「LIFULL HOME’S」の利用者の方のほとんどが、引越し見積もりサービスを併用していないことがわかりました。

賃貸物件を借りた人のほとんどが、その後引越しをすることを考えると、賃貸事業 → 引越し事業の導線が設計されていないことは、私たちにとって大きな機会損失です。この導線を強化するための施策を打ち、同時にインテリアなどの周辺サービスも充実させていくためには、データ基盤を統合していく必要がありました。

2つ目についてもお聞かせください。

2つ目のきっかけは、WEBサービスだけでなく、現実世界(リアル)でもサービスを開始したことです。私たちはWEBを中心にビジネスを展開していますが、最近、リアルでも顧客との接点を持つためのサービス・サポートを充実させています。

約3年前からコールセンターを増やし、約1年前には実店舗をオープンしています。WEBだけでなく、電話・対面といった3つのチャネルで顧客と接点を持っています。それにより、各チャネルに特有の顧客情報に触れる機会も増えています。

オンラインだけでなくオフラインでも情報を得られるようになったことで、顧客にとってより最適なコミュニケーションを設計することが可能になり、オンラインだけでは実現しえない、立体的な顧客体験を提供できるようになります。そのためには、顧客データを統合しなければなりません。これが2つ目のきっかけです。

事業が多岐に渡り、顧客接点のチャネルが増えてくると、多くのデータや指標を管理することが難しくなってくると思います。KPIはどのように設定しているのでしょうか?

KPIについてはいろいろ試行錯誤を繰り返し、今でもブラッシュアップし続けています。基本となるのは「売上」への貢献です。それをベースとして、チャネル横断的に設定をしています。今の状態が理想の状態ではなく、今後取得できるデータが増えていったタイミングで、顧客ロイヤルティを指標としたKPIを設定したいと思っています。

リピート率や一人当たりのサービス併用利用状況など、それぞれの顧客接点ごとに、顧客一人ひとりの満足度を最大化していくことが可能となる指標を設定したいと考えています。

そのほか、課題に感じていることや他に取り組んでいることはありますか?

顧客のシナリオを細かくパターン化することに限界を感じています。例えば、先ほど賃貸契約から引越しというユーザーストーリーのお話をしましたが、ここだけ見ても複数の動機があります。さらには周辺のサービスもあるので、その動機、サービスの組み合わせをパターン化するのは非常に難しいです。細かくしようと思えば際限なくできますが、それが正しいのかどうかは誰にもわかりません。

より細かいユーザー情報を取得することができれば、こうした課題も解決できるようになります。顧客のニーズの輪郭を今よりも明確化することで、それぞれのユーザーに合ったサービスをレコメンドしていくために、AIの利用も積極的に考えています。

AIの活用について、菅野さんが考えられている導入ステップを教えてください。

当然ですが、AIの活用はデータがなければ何も始まらないので、まずはデータの取得からです。データの中でも、誰でも手に入れられるデータでは意味がありませんし、ユーザーの利用体験をより良くしていく前提に立って、そのために必要なデータでなければいけません。

他のプレイヤーが手に入れられないデータの例として、我々が日々、ユーザーと向き合って蓄積されていっている、電話応対のログや対面における相談内容など、ユーザーとの深い繋がりの中で得られるデータがあります。

他にも、例えば、VRを装着して住宅展示場を仮想的に歩いてもらうことで、どのような物件だと滞在時間が長いのか、どういう部分に視点が向きやすいのか、といった我々しか持ちえないデータも今後取得していくことができます。

ユーザー体験をより良くしていくために、どんなデータが必要なのか、それをどのように活用していくのか、そのグランドデザインがAIの利用に一番重要だと考えています。

他にも、カスタマーサポート時の会話ログを言語解析することは既に行っています。今後はチャットのような、ライトなコミュニケーションをどんどん広げていきたいです。対面によるサポートの一段階手前のデータを集めていくことで、もっと顧客の状態を予測しやすくなり、対面や電話でのコミュニケーションの質が上がると考えています。

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Editor Profile

  • 福井 和典

    株式会社データX マーケティング管掌執行役員

    日本IBMにてシステムエンジニア、GREEにてCRM領域のオペレーション企画、PwCでの業務コンサルタントとしての経験を経て、2016年よりデータXに入社。データX入社後は、カスタマーサクセス部門に在籍し、小売/金融/アパレル/ECなど幅広い業種に対するb→dash導入支援を統括。
    その後は、主にb→dashのマーケティング/広報/PR活動や事業企画に従事。

Speaker Profile

  • 菅野 勇太

    LIFULL

    マーケティング戦略部 MAユニット長

    2008年新卒で入社し10年間同社のマーケティングに携わっている。その間、国内でいち早くマーケティングオートメーションの導入を進めたり、AIの活用を推進するなどテクノロジーを積極的に活用したマーケティングを実施している。また社内でのマーケティング人材のスキルセットの整理などマネジメント領域においても活躍中。

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