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2017.09.27

【中編】
“オムニチャネル”の本当の意味、理解していますか?
国内外の最前線を知るオムニチャネルコンサルタント逸見氏が語る、オムニチャネルの本質とは

前編・中編・後編にわたって、オムニチャネルコンサルタントである逸見さんへのインタビューをお届けしています。今回は中編をお届けします。
前編を読んでいない方はコチラ

――極論、開発以外全て関わるということですね。

 そういうことです。これまで語られてきたオムニチャネルってかなり狭い話をしているように感じます。販売の”仕組み”の話をしていることがほとんどで、ネットで注文できて店で受け取れるとか、宅配も選べるとか、それだけでオムニチャネルだと言っている。

 企業活動そのものということになると、IT担当や商品担当だけの問題ではなく、商品を供給している取引先との繋がりや、彼らの倉庫や生産ラインつまりサプライチェーンの繋がり、新規/既存顧客へのそれぞれのアプローチ、内部的な話では、先ほどの評価の話も関わってきます。

 さらに、Amazon PayやApple Payのような新しいものが入って来ても、システム担当や会計担当が理解しなければ会計計上できないですよね。また、このような時間のかかる投資計画は5年先の話まで理解しておかないといけないので、社長は全部覚えておけません。そこは経営戦略がちゃんと理解していて、「それはこういう投資計画で話を聞いています。ただし、毎年ここまでの売上規模になったらですよね」とか「利益が出るようになったらですよね」というように正しく理解しておく必要があります。仕組みの話から経営の話までというのが、これからのオムニチャネルの考え方だと思います。でもおそらくオムニチャネルという言葉はなくなると思います。わかりにくいので(笑)。

 一方で、ネットやIT、AIを活用していく流れは絶対に変わらないと思います。もはや、それらを使わずに商売はできないですから。よくあるマーケティング論でも、マーケティングなのかデジタルマーケティングなのかという話もありますが、あくまでも「マーケティングのデジタル化」が正しい表現となってきています。デジタルマーケティングなんてツールに過ぎない話ですし、ツールはただの道具であって、仮説を立てるのは人間です。

 もちろん、AIがある程度仮説を立ててくれてもいいんですが、最終的に会社を回していくのは人間ですよね。作業が減っていくわけで、仕事がなくなるわけではないんです。今までは何時間もかけて顧客分析を手作業でやっていましたが、今ではツールを使えば仮説検証もできるし、手間がかからないようになっています。でも最終的に考えるのは人ですからね。

――データ集計やデータの名寄せなど、マーケターが余計なことに時間を使っているケースがとても多いですよね。

 私も昔はSQLを覚えて全部自分でやっていました(笑)。でないと仕事が回らないので。でも今は色んなツールが出てきていますから、うまく活用したほうが良いと思います。

――それができる時代になってきているからこそ、まずはボトムラインとしてそこを整えることが重要だと思っています。そのうえで、施策を作ったり、お客さんが喜んでもらうことを考えるのが大事ではないでしょうか。

 その時に、いわゆるBI化をする必要があると思っています。部署によって提出してくるデータがバラバラではダメで、社内でマーケティング戦略や販売促進策を考えるときに「顧客」を見るときのデータ項目を統一することが重要です。だから先ほどもお話した、マーケティングは売上利益にどう貢献するのかという話に繋がってくるんです。粒度の細かい指標を経営会議にかけてしまう企業が非常に多いのですが、経営陣は経営の財務諸表の話が一つも出てこなかったら、誰も関心持てないですからね。

――結局はお客さんに紐づく情報を1つに統合する基盤を作り上げていくことが非常に大事だと思います。あとはBI的にどのレイヤーで切っていくかだけの話ですからね。

 そう考えてみるとCMOの仕事って、仕組みを作るのではなく、自分たちが最終的に何を見たいのかを定義することだと思うんです。かつそれは、経営の要素も現場の要素も入ってなくてはなりません。そう考えると、商品とマーケは必ず繋がっていて、店舗運営においてもこういう棚に変えた方がいいとか、小売であれば夕方に働く人を集めるというように、それぞれを連動させることができないと人は動きません。どんなに良い方針を決めたとしても、結局現場が破綻しては意味がないですから。

 そこをITで武装してあげるのか、お金をかけて人を増やすのかを意思決定するために施策がちゃんと効果検証されていて、かつ誰かが一生懸命に手を動かさなくても見える化されていることが重要なんです。これが日本人が一番苦手なPDCAというものです。CAのやり方がちゃんと定義されていないので、ほとんどがPDのサイクルになってしまっています。中間指標や部分最適の指標で止まってしまうとCAにならないですから。

――やったことを経営的に意味のある指標でどれだけちゃんと見ることができているかという話ですね。

 企業をコンサルする際には、「そもそもあなたの会社の企業理念はなんでしたっけ?」と必ず聞くようにしています。大抵は企業理念に何をやりたいかが含まれているはずで、もしそれが違うのであれば企業理念を変えなければいけません。「企業理念に基づいてアクションを決めましょう」となった時に反対する人がいたらおかしいですからね。その中で、商品なのか、サービスなのか、顧客なのか、何を重視するかに合わせて何をしていくのかを考える。結局相手のことを考えるのがマーケティングですからね。

 そもそも世の中の困りごとを解決してお金をもらうのが企業活動です。そうなったときにオムニチャネルという形であらゆる接点を持っているのは非常に重要です。最近の生活者の行動に関しても、行き帰りの電車はスマホで色々な情報を見ていますが、家に帰ったら新聞を見ますし、DMが届いたらその開封率も高いわけです。それだけメディアを使い分けていますし、どこで購買するのかも金額や商品によって変わるわけです。

 最近面白い取り組みがありまして、ヨドバシカメラさんのECサイトを見ると「電話でエアコンの相談にのります」と書いてありました。実はカメラのキタムラ時代に、メンバーが次のような取り組みをしてくれました。スマホで商品を見ていると、高いカメラだと30万円くらいのものがあって、値段が値段だけに前の型番との違いやスペック表以上の話もちゃんと聞きたいじゃないですか。

 そう思った時にスマホ画面のカートボタンの下に「電話で相談」というボタンがあって、それを押すとコールセンターに繋がる仕組みです。ネットだけではなく電話へ、という落とし込み方は、キタムラもそうですがヨドバシカメラさんの客層を考えると非常に有効だと思います。当然これからビデオチャットやamazonエコーに変わっていく可能性もあると思いますが、結論インターフェースそのものの難しさを意識しなくても、電話をかける感覚で使えるようになっていくということですよね。だからこそ音声入力はとても注目しています。電話機の横にエコーを置いて、そこに話しかければ済むわけですから。

――実際にカメラのキタムラでは、リアルとECの接点での役割分担はあったんですか?

 組織上の業務分担はありましたが、店舗とECが協力する、店舗がECを活用するのが当たり前になってましたよ。お客さんからすれば、カメラのキタムラはカメラのキタムラでしかなくて、誰も”店舗の”キタムラよりも“EC”や”アプリの”キタムラが良いなんて言わないですから。でも、不思議と他の会社の中では別物として考えてしまうんですよね。

 これは他の会社でよくある事ですが、また、お客さんは単純にこの会社のサービスや商品を利用したいと思っているのに、なぜか部署をたらい回しにされることがありますが、これは働いている人がサボっているわけではなく、それぞれの人が決められた事業部、もしくは部署の指標を守って一生懸命頑張っているだけなのです。

 そうなるとこれを解決するのは結局経営の仕事で、部署間を横でつないで、キタムラの関与売上のように正しく評価をしてあげる必要があります。事業部制の大事なところはコストを見えやすくすることです。どの部署が利益を出そうと、最終的には全社の利益になるのです。そしてその利益はBtoBであれBtoCであれ、お客さんが生み出してくれるのです。商売をするうえではこの大前提を忘れてはいけないのです。

――お客さんの体験としてECと店舗での体験には違いがあると思いますが、カメラのキタムラの場合、それぞれどんな体験価値を提供したいとお考えだったのでしょうか。

 MAのような個別にアプローチするためのツールも増えてきていますが、結局お客さまは店でもネットでもキタムラで買い物をしたいと思っているだけなのです。ネットの場合はより細かいアプローチができるという考え方もありますが、一方で店頭に行ったら「◯◯さんいらっしゃい」というように、スタッフがお客さまを名前で呼ぶわけです。そこは正直、店舗もECもあまり変わらないと思うんですよ。結局は道具の使い分けなので、役割分担をするのが一番怖いんです。
 だからこそアプローチする際の情報がずれてはいけないですし、逆に情報さえ間違ってなければ、両方から必死にアプローチしたっていいんです。お客さんからすれば、どちらできっかけを持つかは自由ですから。それがまさにオムニチャネルだと思うのです。お客さんはあらゆる接点を自分の好きなタイミングで使いますから。

 一つ例をあげると、約6千億円の売上高があるイギリスの「John Lewis」という百貨店があります。彼らはひたすらネットを活用していて、イギリスの場合、消化仕入れではなく自社仕入れなので、すべての商品がネットに掲載されていて、在庫も納期も可視化されています。宅配で買ったらソファーがいつ届くかわかりますし、ソファーの生地を張り替えたら、どんな選択肢があって、いつ届くのかもわかります。一方で、毎年クリスマス動画に注力していて、約2か月半で2,500万視聴を叩き出したほどです。何故彼らがWeb動画に注力しているかというと、自分たちのお客さんがネットも店舗も当たり前に使うということがわかっているからです。

 毎年彼らが刊行しているRetail Report 2016にオムニチャネルについての記載があって、オムニチャネルの中でもお客さんの買い物の仕方、目的が変わってきており、大きく4パターンにわかれると記載されています。

 一つは”①とにかくすぐ欲しい”パターン。スマホで見て数分後にすぐ欲しいというものです。

 二つ目は”②私を楽しませて、インスパイアして”というパターンで、友達や家族と楽しみながら買い物したいというものです。

 三つ目は、”③アドバイスしてほしい”というパターンで、ネット上に情報があふれすぎているので、私に最適なものを信頼できる店員さんにアドバイスしてほしいというものです。

 最後は”④気まぐれに買い物する”というパターンです。67%のお客さんが日用品は事前に決めずに、店頭で見てその場で決めて買う言っています。何がいいたいかと言うと、大事なのは”典型的なお客さんは存在しない”ということです。店の役割、ECの役割のように分けて考えてしまいがちですが、お店に来るお客さんはこんなお客さんで、ネットを使う人はこんな人で全く別人です、ではなくて同じ人がこの4つを使い分けているんです。施策を決めるときにはECと店舗を分けて考えるのは良いんですが、我々のお客さんって誰だっけ?という話に戻っておかないと、施策が失敗したときになんで失敗したかわからなくなり、PDCAを回せなくなってしまいます。このお客さんがたまたま①のときに④の話をしていても全く意味がないですから。

 John Lewisは感覚ではなく、とにかく数字でお客さんを理解しようとしています。お客さんを理解しないと商売になりませんから。マーケティングの根本はそこにあると思っていて、どんな道具を使うかももちろん大事なんですが、お客さんを正しく理解して、それを説明できることが重要で、それが出来る人って意外と少ないんですよね。

 例えばキタムラでは、カメラを買うお客さんと、スタジオで七五三の写真を撮るお客さんと、スマートフォンを買うお客さんで来店頻度は違います。でも、その人たちは全く別の人ではないですよね。カメラを買った人がスマートフォンを買ったりもしますし、スマホを買った年配の方が、今度は孫の七五三だねという話をすることもあります。これってECに置き換えると、店舗で見えていることがデータで可視化されているだけなのですよね。これがマーケティングデータというもので、店舗からわかることとデータからわかることがずれているとしたら大変な話です。何かが間違っているのか、本当に見えていないかのどちらかです。でもそれは逆にチャンスでもあって、ギャップがあるのであれば、それを埋めていけばいいのです。

ーー後編に続く

Text by Yuuki Miyagawa


【プロフィール】
逸見 光次郎
オムニチャネルコンサルタント
株式会社三省堂書店、ソフトバンク株式会社、株式会社セブンネットショッピング、アマゾンジャパン合同会社ブックスMD、イオン株式会社 デジタルビジネス戦略担当、株式会社キタムラ 執行役員EC事業部長、株式会社ローソン マーケティング本部長補佐を経て、現在はオムニチャネルコンサルタント。店舗とネットを融合し、顧客満足を高める買い物の楽しさを追求し続けている。


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