earth music&ecologyなど、主に女性を対象にした様々なブランドを抱えるストライプインターナショナル。中国への進出やインフルエンサーの活用など、次々とチャレンジングな取り組みを仕掛けている同社は、今後、さらに攻勢をかけるべく体制を強化している途中だと執行役員の寺岡氏は話す。これまで様々な企業で経営企画やEC領域に携わってきた寺岡氏に、体制づくりにおいて意識すべきポイントや、これから取り組んでいくことについてお話を伺った。

まず簡単に寺岡さんの今までのご経歴を教えてください。

これまで7つの会社に所属していましたが、メディア事業に長らく関わっていました。「goo」、「Infoseek」といったポータルサイトや「リクナビNEXT」、「フロムエーナビ」といった求人サイト、「前略プロフィール」というコミュニティサイトにも携わっていました。EC領域については前職のGDO(ゴルフダイジェスト・オンライン)から5年程携わっています。EC事業責任者として、物流を含むサプライチェーンの改善BPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)、バイイング体制の見直し、MD計画推進などで業績を上げてきました。

例えば前職のGDOは小売り業態で、バイヤーが買ってきたモノをECサイトで売るというビジネスモデルでした。しかし、1カテゴリーに対してバイヤーが複数名いたため、それぞれの営業責任が不明確になってしまっているという課題がありました。そこで、1カテゴリー1バイヤーとするなど、個々のメンバーの責任範囲を明確にすることで、成果に繋がったような経験もあります。

一方で失敗経験に関しては、在庫調整の部分です。「どの商品がどのくらい売れるのか」という見極めは難しい部分があり、単純に世の中のトレンドを把握しているだけではダメで、ECと店での売れ方の違いなども考慮する必要があります。そういった顧客動向の見極めや分析を細かく行いつつ、商品の選択や在庫量に反映させることは苦労しましたね。

現職のストライプインターナショナルには1月に入社したばかりで、現時点では大きな成果と呼べるものは少ないところもありますが、今重点的に取り組んでいることは、体制構築の部分です。弊社はアパレルメーカーなので、もともとECやIT領域にバックグラウンドを持つ人は多くはありません。そこで、マーケティングサイド、テクノロジーサイド両面での人員増強に注力しています。

ストライプインターナショナルでは、現在どのような領域をご担当されているのでしょうか?

EC事業として、メチャカリ、ストライプクラブ、ZOZOTOWN等の外部ECサイトの3チームを主に管轄しています。その他に、中国と台湾にあるグローバルECサイトのサポートも担当しています。

過去にメディア事業に携わっていたとのことですが、ECも比較的メディアと近いように思います。今の業務には活きているのでしょうか

活きていますね。私自身、今までデザイナーやディレクターのような職種ではなく、事業企画や事業開発に長く関わってきたので、現状を分析して、いかに上手くビジネスを回していくか考え、推進していくという根本はあまり変わっていないように感じます。

体制構築というのは、優秀な人員を補強するという部分以外にも、例えば、そもそも事業部の構造や体制を変えるという部分も含まれると思うのですが、その辺りはいかがでしょうか。

実は先月くらいから新しい横串の業務を担当するチームを作りました。これまで横串の業務を推進するチームは存在しておらず、ストライプクラブ事業の下にあるCS担当が、メチャカリ事業のCS業務も担当している状況でした。

そこで、各事業の共通機能や体制を集約して、横断的な業務を推進するチームとして新しくWeb推進部を立ち上げました。もともとあったWebマーケティング、CS業務に加えて、ITディレクション、CRMにも力を入れていきたいと考えているので、そのような役割もWeb推進部で担っていく予定です。

今後MAツールの導入を予定しているので、「ユーザーの行動データをベースにしたサイト作り」は大きなテーマになると思います。我々の店舗とECサービスの会員IDは共通化されているので、店舗をはじめとして、ストライプクラブやメチャカリ間でも上手くシナジーを生んでいきたいと思っています。

体制面の強化以外に何か注力されていることがあれば教えてください。

世の中的にも話題になっていますが、「在庫のマネジメント」ですね。「どういうシステムで最適配分を管理していくか」という部分です。現状は、店舗の在庫管理とECの在庫管理が分かれているので、それをどう連携させるかもそうですし、まだ人力で管理している部分も多いので、いかにシステム化できるかを検討しています。もちろんシステム化や自動化をするだけでは駄目で、トレンドにあわせて売れる商品の出し分けができるようなサイト構築をしていく必要があります。時代とともにマーケット状況も変わってくるので、そういったチューニングの部分は今後も注力しないといけないと思います。

店舗とECの在庫情報をまとめて管理して、ECでも店舗でも何がどのくらいあるかがすぐにわかるようにすることが最終的なゴールなのでしょうか?

そうですね。頻繁に複数のシステムを参照するなど力技では可能ですが、もっと簡単に、1つのツールを開いただけでリアルタイムにわかるくらいになっていないと、素早い意思決定は出来ないと思います。

今までのご経験から在庫管理のポイントはなにかあるのでしょうか。

販売予測の精度向上とプライシングではないでしょうか。どれくらいの量の在庫を積んでいて、消化数がどう推移しているから、どのようにプライシングをするのか、という部分は数式化しやすく経験を活かしやすいのですぐにでも取り組むべきだと思います。あとは、過去に経験のない在庫管理に直面した時に、いかに知恵を絞れるかが重要です。インフルエンサーのような新しい施策を仕掛けると、過去に経験のない在庫管理に直面する、という表裏一体な部分はありますが、今はいろんな仕組みにチャレンジするようにしています。

現状はどのような消費者のデータを取得しているのですか?

全社注力テーマとしてデータ取得基盤の構築が進んでいます。現状ではPOSの購買データとEC上での購買データが中心になっています。もちろん会員情報や属性情報といった基礎データはありますが、例えばAとBという商品があったときに「AではなくてBという商品を買いました」といった詳細な行動データを紐付けて管理するレベルまではできていない状況です。

今後はそれらのデータを上手く統合しながら、One to Oneマーケティングを実現していくということですね。新規顧客の獲得と既存顧客の育成という観点でいくと、それぞれどのようなことをやっているのでしょうか?

新規顧客獲得に関しては、店舗での会員獲得をかなり意識しています。多くの店舗を持っていることは我々の強みなので、全ての店舗に協力していただきながら推進しています。今後はLINEを活用して会員獲得できるような仕組みの導入なども併せて検討しています。
既存顧客の育成に関してはまだ分析をしている最中ですが、「ロイヤリティプログラム」という年間の購買額が高ければ高いほど割引率が高くなるというプログラムがあります。このプログラムに関しても、これからさらにブラッシュアップする必要があると思っています。

直近の取り組みについても教えてください。最近Instagram等でインフルエンサーを活用したマーケティングも実施されていると思います。詳細について教えていただけますでしょうか。

インフルエンサーマーケティングの仕掛けの部分はブランド担当とEC担当で協力しつつ進めています。概要としては、ゆうこす(菅本裕子)さんに「自分が作った服をストライプクラブ(当社ECサイト)上で販売します」と自身のSNSで告知頂いて、その記事のいいね数に応じて生産・販売するという仕掛けです。販売に際しては、ゆうこすさん自身にTwitterやInstagramで告知をしてもらったこともあり、かなり反響が大きく、最初のロットは30分くらいで売り切れてしまいました。インフルエンサーを起用したマーケティングや販売促進は、今後も注力する必要があると改めて感じましたね。

社内でもInstagramやインフルエンサーの重要性を提唱する声があがったことが実施の背景なのでしょうか?

そうですね。加えて、自分の洋服を作りたいと言ってくださるインフルエンサーの方がいらっしゃったので、双方のニーズが合致したという形です。そういった意味でも、今回は良い取り組みができたと思っています。インフルエンサーの他にも、最近では著名人に関連したオリジナルアイテムを販売する新プロジェクト「STRIPE CLUB pop up store」を立ち上げました。第一弾として、乃木坂46さんの衣装をモチーフにしたアイテムを販売させていただきました。このようなコラボレーション系の商品は、今後も増やしていきたいと思っています。

インフルエンサー施策で課題として感じていることは、ファンの方々に一度購入いただいた後、2回目以降の購買に繋げることが難しいケースもあるというところです。メチャカリでYou Tuberの方にメチャカリを紹介してもらう施策をやっているのですが、初回は皆さん登録してくれましたが、2回目以降の効果が思うように出ませんでした。広告であれば、徐々に効果が落ちてくると思うのですが、You Tuber施策の場合、効果が一気に落ちてしまう場合があるので、そこは工夫する必要があると思っています。

インフルエンサーの活用は、今後どの企業においても課題となりそうですね。最近では海外展開も話題になっていますが、これもご担当なのでしょうか?

そうですね。中国にグループ会社があるので、そちらがメインで担当していますが、中国現地法人にECに明るい人が多くいる訳ではないので、日本側からもサポートしています。

中国市場含めて、海外戦略については何か考えているのでしょうか?

今はECを中心にさらに売上拡大していきたいと考えています。その際に中心となってくる施策がKOL(Key Opinion Leader)ですね。そこをどれだけ活用できるかが重要だと考えています。あとは、タオバオ(淘宝)※1が自社で保有している大量のユーザーデータの商用提供を開始するという話を聞いたので、そのようなマーケティングデータを使ってユーザーのニーズを汲み取った商品開発ができればと思っています。我々が得意な領域とマーケティングデータを組み合わせることで勝っていく方法を模索しているところです。

店舗としても、earth music&ecology TOKYOという、300坪くらいの大型セレクトショップを今年の秋に出店する予定です。このセレクトショップの形態でTmall※2 にも参入しようという動きもあるので、我々としても大きな取り組みになると思います。

※1 タオバオ:中国最大のCtoCマーケットプレイス。会員数は5億人以上で、8億点以上の商品が掲載されている。
※2 Tmall:BtoCのオンラインショッピングモール。現在、約5万店が出店し、約7万点の国内外ブランド品を販売している。

弊社が提供している マーケティングツール『b→dash』 は、マーケティングプロセス上に 存在する全てのビジネスデータを、ノーコードで、一元的に取得・統合・活用・分析することが可能なSaaS型データマーケティングプラットフォームであり、BtoC業界を中心に、様々な業種・業態のお客様にご導入頂いております。

Editor Profile

  • 福井 和典

    株式会社データX マーケティング管掌執行役員

    日本IBMにてシステムエンジニア、GREEにてCRM領域のオペレーション企画、PwCでの業務コンサルタントとしての経験を経て、2016年よりデータXに入社。データX入社後は、カスタマーサクセス部門に在籍し、小売/金融/アパレル/ECなど幅広い業種に対するb→dash導入支援を統括。
    その後は、主にb→dashのマーケティング/広報/PR活動や事業企画に従事。

Speaker Profile

  • 寺岡 良浩

    ストライプインターナショナル

    執行役員 グローバルファッションEC本部長

    大手ポータルサイト、求人メディアなどでマーケティング戦略、商品企画、事業開発に従事後、ゴルフダイジェスト・オンラインのEC責任者を経て、2017年1月より現職。自社ECサイト「ストライプクラブ」、洋服レンタルサービス「メチャカリ」、外部ECサイトでの販売、海外ECサポートなどを管轄している。ストライプインターナショナルのEC売上拡大に向けて顧客マーケティング、体制構築などを推進。

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