2017.07.12

「データマーケター」×「個客マーケティング」の時代
カスタマージャーニー分析から見る、
これからの時代に求められる”データマーケター”の条件とは

前編では、数々の大企業を支援してきた内野氏だからこそわかる、データマーケティングを実現する前に知っておくべき3つのポイントについてお話いただきました。
後編では、これからの時代に重宝される、データマーケターの条件についてお伺いしました。

――これからの時代において、求められる人材面で大事なポイントを教えていただけますでしょうか。

 これがいつも描いているカスタマージャーニー分析の推進フローで、最初のグレーの部分が取得したデータを処理するフェーズです。そのあとの青い部分が、処理・蓄積されたデータを分析・可視化して「意味」に変えていく分析フェーズ。最後の黄色部分が一番大切で、「意味」に変わったデータを「価値化」・「仕組化」するフェーズです。ここでは分析された結果を実際の施策に落とし込んだり、それによる成果をもとに社内を巻き込んだり、仕組化したり、ツールの運用体制を作ったりと様々なスキルが求められます。

 この図のように、スキルセットでいうとグレー、青、黄色の三種類に分けることができ、グレーがデータエンジニア、青がデータサイエンティスト、黄色がいわゆるマーケター(プランナー、プロデューサー)と言った表現になります。今この中で一番足りていないのは黄色の部分の人材です。グレーの部分の人材はずっと前から存在していましたし、青い部分の人材は、10年ほど前はまだ少なかったですが、最近では増えてきています。“データ分析の結果を最大限に活かせる人”つまり黄色部分の人材が圧倒的に足りなくなってきていると実感しています。

 さらに、この図において重要なポイントは、三種類の領域がそれぞれ少しずつ重なりあっているということです。理想論をいえば一人が三種類のスキルの全範囲をカバーしているのが望ましいですが、そんな人材はなかなかいないので(笑)、それぞれの担当が重なりあうことが重要です。例えば、黄色のマーケターも自分自身でSQLを組んで、企画用のデータを抽出できたり、分析の結果の数値検証ができるようなことですね。実際にそのような教育のもと、実践して成果を生み出している企業も増えてきているようです。逆にこの重なり部分がないとデータマーケティングを成功させるのは難しいのかもしれません。この黄色の部分の人材がもっと上の領域まで視野を広げて、経験を持っていくことが企業において非常に重要になります。自分としては、こういった人材を「データマーケター」と表現しています。

――黄色のマーケターがシステムや分析のスキルを伸ばしていく考え方と、逆にグレーや青のエンジニア人材がプランニングのスキルを伸ばしていく考え方があると思いますが、どちらの方が現実的なのでしょうか。

 どちらも可能性はあると思いますが、正直今の感覚でいうと下から上、つまりマーケター系の人材がデータ処理や分析スキルを身につけるほうが近道だと思っています。10年ほど前はデータを扱うハードルがとても高かったのですが、今では簡単な言語もありますし、ツールも簡易的かつ安価になってきているので、マーケター自身がデータ処理や分析のスキルを身につけることは比較的容易になっています。

これは偏った意見かもしれないですが、システム出身の人は、比較的マーケティングの発想が弱かったりしますから。また、よくある話で、大学の博士課程などで統計を学んでいた人は、非常に高度な分析のスキルを持っているんですが、黄色の領域を理解しようとしないことが稀にあります。頭がいいので絶対に理解できるはずなんですが、そこは泥臭いから手を出さないという(笑)。

――ツールの側面についても教えてください。MAやBI等、最近とても話題になっていると思いますが、これから重要になるツールや機能はあるのでしょうか。

 これは先ほどの図に必要とされるツールを記載したものですが、最近色々な人と話をすると、データ処理フェーズのETL(Extract/Transform/Load)系のツールの重要性を唱えている人が多いと感じています。よく料理で例えるんですが、最高なシェフ(分析官、マーケター)がいて、最高の調理器具(分析ツール)があっても、素材の下ごしらえ(データの前処理)が出来ていないと最高の料理(マーケティングの成果)は出せないんですね。この例えでいうとETLは「下ごしらえ」に当たる部分ですね。

 何故今注目されているかというと、リアルやネット含めて色々なデータソースを活用しようという流れの中で、取得してきた不揃いなデータを個客軸に沿ったきれいな状態に加工する必要がでてきたんです。例えば広告データとアクセスデータと購買データがバラバラに管理されていては精緻なカスタマージャーニー分析はできないですよね。ETLの活用、つまりデータを臨機応変に統合するという部分はこれからますます重要になっていくと思います。

――ツールも多様化している分、今後データの統合は重要になってきますね。では組織の面ではどうでしょうか?日本においては組織の縦割り問題がよく話題になっていますが。

 おっしゃる通り部門間での連携ですね。よくあるのは情報システム部とマーケティング部の部門間の対立です。特にMAを使ってマーケティングをしようとするとこの手の話が絶対に起こるので、その時にマーケティング部がこの横連携を上手く調整することができるかどうかが成功の分岐点になります。

 しかし、その一方で情報システム部とマーケティング部のパワーバランスも徐々に変わりつつあります。昨今クラウド化の伸長によりサーバー代などのコストが下がってきていて、その分、情報システム部の予算に占めるマーケティング領域が増えてきている(増やしたい)という声も多く聞こえてきます。だからこそ、マーケティングをデジタル化していくうえでマーケティング部門と情報システム部門が上手く歩みよって一体化していくことがチャンスに繋がるともいえますね。

――最近ではマーケティング部の中にシステム部門の人材が常駐しているようなケースも良く聞きますよね。

 そうですね。それはとてもいい流れで、トップダウンでやっているケースもあれば、現場同士の話し合いでうまくやっているケースもあります。そのように一度籍を変えてしまえば、マーケティング部の人間になるんです。それは従来のやり方とは全然違っていて、情報システム部からすると、一定のルーティンワークがある状態でマーケティング部から緩いお題が来るのを一番嫌うわけです。でも籍を替えてしまえばもう味方ですから、一緒にやっていこうという感じになっていくわけです。組織におけるハードルを越えていくことが重要ですね。

――これからの時代、縦割りの組織では限界がありそうですね。では内野さんが考えるデータマーケティングの今後を教えていただけますでしょうか。

 みなさんが興味を持っているのはAIではないでしょうか。すべてのデータ分析が自動化されるのか、それとも今とほとんど変わらないのか、という議論がありますが私は中間に落ち着くと考えています。原始的な部分は自動化される一方で、人間が頭で考える部分は必ず残っていきますから。今後はより一層、その分業が進んでいくと思います。

 例えばMAにおけるAI化でいうと、自動的にセグメントが抽出されて、クリエイティブができて、タイミングがわかって、施策をうって、結果が出て、という話もありますが、そこまで実現するのはすぐには難しいと思います。セグメントを定義するような上流の部分は人間が作って、AIは細かい部分、例えば購入金額が一万円未満or以上のような人間が考えやすいしきい値ではなく、9,743円のようなしきい値を細かくチューニングをする部分を自動化していくのではないでしょうか。上位のお題を与えるのは人間だからこそ、人間が考えるべき領域を今のうちに鍛えておかないといけないと思います。

――AIの成長も見据えた上でキャリアを考える必要がありそうですね。それでは最後に、内野さんにとって未来のCMOに必要なものを一言でお願いします!

 先ほどのカスタマージャーニーの分析フローに戻るんですが、やはり黄色のマーケタースキルの部分がポイントで、マーケティングにおいて実際に組織・仕組みとして利益を生み出した経験があるうえで、グレー、青、黄色の領域を正しく理解できる、もしくは経験がある人がこれからのCMOに必要な資質だと思います。マーケターという職種は非常に経営センスを問われます。どう人を動かすのか、限られた予算をどう配分するか、攻める、捨てるの判断など多岐にわたります。

 例えばですが、大きなマーケティング予算を取りたいと考えた時に、いやらしい表現で言うと、テストマーケティングでは本当にやりたい施策をやるのではなく、まずは小さくても、ほぼ確実に成果が出るものから着手する、というような感覚です。高い確率で成果が出るような施策を、まずはテストマーケティングで成功させて、効果がでた、この先の見通しがつきますね、というように見せる訳ですね。そうなると会社としても、上手くいくのであればもっと予算をつぎ込もうとなるわけです。フリーランスとして一人で仕事をしている自分が偉そうに言う話ではないとは思いますが、組織においてはとても重要なスキルですよね。人たらし的な性格も必要だし、別の組織を巻き込んでいけることも必要だし、チームメンバーにモチベーションを持たせる必要もあるし。データマーケターの先にCMOがいる、と自分は考えています。

Text by Yuuki Miyagawa


【プロフィール】
内野 明彦
データマーケター
東京工業大学卒業後、ISID、電通、ネットイヤーグループ、ネットエイジなどで、数多くのIT/マーケティングプロジェクトに関わる。ウォルト・ディズニー・ジャパンにてEコマースの立ち上げに関わり、2006年よりオーリック・システムズの取締役としてアクセス解析の新規事業構築を担う。2009年にコンフォート・マーケティングを創業。2015年から個人で活動を開始し、データ活用からマーケティング改善を支援する「データマーケター」として多くの企業に対して戦略・分析・実行支援をおこなう。


Marketer’s Compassでは、様々な業界のリーダーへの取材を通して、未来のCMOが知っておくべき情報をお届けしています。
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