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2020.03.03

【MiXER Report】データがフードビジネスとつながるとき “The Data of Food Service”
〜業界シェアNo.1トレタ×V字回復の丸亀製麺に聞く“外食産業のデータファースト経営”〜

市場規模25兆円に上る外食産業。他業界に比べれば『積極的なデータ活用に基づいたマーケティング』は「まだこれから」である。
そんな外食産業において、「認知~再来店」に至る各ファネルのデータを活用し、大きな成果を上げた丸亀製麺を運営するトリドールジャパン。そして、外食産業のデータ活用を支援する飲食業界向けツールシェアNo.1のトレタをお迎えし、この巨大市場において第一線のトップマーケターが『データ』を扱うことでどう変革を実現しているかに迫った。
登壇は、株式会社トリドールジャパンの神谷 亮介氏、元株式会社トレタの萩原 静厳氏(現在、株式会社FUTURE VALUES INTELLIGENCE 代表取締役社長)、そしてモデレーターとして株式会社コメ兵の藤原 義昭氏の3名。
フードビジネスの支援側と事業社側の両サイドによる、データファースト経営について深掘っていった。

見えないデータを可視化することが飲食業界の経営に与えるインパクト

 まず初めに、「外食産業におけるデータのインパクト」について、コンサルタントとして飲食業界をサポートする立場として元トレタの萩原氏にお話頂いた。

 「トレタ」は、飲食店のスタッフが電話での予約情報を入力する為の予約の台帳サービスを行なっている。これまでの飲食産業では、予約情報を紙媒体に書き込み、予約の変更もそこで行なっていたため、「オーバーブック」や「時間が違う」といった問題が多く発生していた。
 トレタはこのような課題を解決するために生まれた、予約台帳から顧客管理まで完結できるサービスだ。現在、12,000もの飲食店がこのサービスを利用している。萩原氏は、トレタが持つ膨大な飲食データをもとに、新規事業立案や既存事業の効率化と収益拡大の企画立案を行っている。

 「データから言える明らかなことは、当然のことではありますが、来店回数が増えれば増えるほど、『定期的に通い続けて頂ける確率(定着率)』が高まるということです。もう少し細かく見れば、1回だけ来店されたお客様の再来店率は10%程度。しかし3回来店してくださると、次回来店率は50%になります。『3回来店させる』こと、これが飲食業界におけるKPIになるとデータ上で明らかになりました。」(萩原氏)

 多くの飲食店が持つ課題は、収益が不安定であること。しかし、「3回来店させる」というKPIを設定し、顧客一人一人を管理してそのKPIを達成させれば、収益は安定する。外食産業は、売上の30%がレイバーコスト(従業員)、30%が材料コストに割り当てられる。その他の経費を考えると、集客に当てられる費用は少ない。『常連客の増加』による収益安定は、集客投資額増加につながり、更なるお客様獲得を望めるようになる。つまり、いかに常連を増やし、集客コストを上手くチューニングできるかは飲食店経営におけるポイントである。

 また、トレタでは予約データや来店/接客データ、POSデータなどを扱っている為、来店/需要予測やシフト/仕入れの管理、喫食やそこから商圏や顧客の分析などもできるようになる。

 「例えば飲食店の場合、『今日のおすすめ』のように、メニューに料理名を登録せずにPOSデータを取得しているためコード化・一律化されておらず、分析が進まないということがよくあります。しかし、我々のAIを活用すれば、例えば「イカのサクサクフリッター」のようなメニューであれば、「魚介料理」「イカ」「揚げ物」のようにラベリングをする事で、店舗の中でメニュー単体の分析だけでなく、カテゴリーごとの分析ができるようになります。カテゴリーで分けることができれば、売れる組み合わせも可視化され、メニュー開発やマーケティングなどに活かすことが可能になります。」(萩原氏)

 このように、見えないデータを可視化することによって、目指すべきKPIや売上の傾向が明らかになり、売上の向上、そして収益の安定化を実現することができ、企業経営に大きなインパクトを与える。

“アプリ起点”のデータマーケティングでCPA136%、来店率102%に

 続いて、事業社サイドではどのようにデータを活用しているのかをトリドールジャパンの神谷氏に伺った。

 現在、神谷氏はトリドールにおいて、店頭の顧客体験の改善、つまりCXM(Customer Experience Management)を担当している。トリドールでは、全社として「データとマーケティングで勝ちにいく」という組織体制を創り、顧客の購買ファネルにおける、認知から興味・比較検討・来店・継続来店・推奨行動までのあらゆるデータの可視化を推進している。

 「丸亀製麺はセルフサービスなので、入店から、メニュー選択、商品受取、購買、薬味、着席、食事までのカスタマージャーニーが、他のファミレスなどの飲食店に比べると少し長くなっています。これだけ多くのお客様の行動がある中で、実際に可視化されているデータは会計時に取得するPOSデータのみで、会計前後のデータが全く取れていない状況でした。しかし、それらのデータを取得できれば、来店してポップが見られているか、席に着くまで何分かかるか、なども可視化する事ができ、売上・収益に大きく影響を与える事ができると考えました。そこで、それらのデータを取得する為に始めたのが、アプリなんです。」(神谷氏)

 アプリは丸亀製麺におけるデータ活用の主軸と考えられている。アプリの機能は現在、クーポンの配信、レジでのクーポンスキャン、来店スタンプといった、来店促進を目的とした単純な機能に限定している。このアプリで収集出来るデータにPOSデータを紐づける事で、あらゆるデータを可視化している。

 「弊社では、オンラインとオフラインの目的を明確に区別しています。オンラインは、何を食べるかを検討する目的で画面を見ていただく。オフラインは、実際に店頭に来ていただいてクーポンやレシートを使って頂くことを目的にしています。これによって、すべてのデータが紐づいていきます。QRコードをかざすので、端末と購入した商品が紐づきます。つまり、クーポンをフックにしてデータが繋がっていくことになります。」(神谷氏)

 また、アプリのDL数を増やすためのデジタル広告運用もデータドリブンだ。アプリで売上データまで紐づけられるため、広告の投資対効果も計測することが出来る。広告では、例えば、媒体×クリエイティブの掛け合わせで、どれくらい売上に貢献したのかという数値も可視化している。単純に一回の売上、来店数、インストール数ではなく、来店頻度や単価、期間売上まで、実際にデータを紐づけることでお客様の見える化を図っている。

 「一般的に、アプリの広告運用の場合、CPI(Cost Per Install: 1インストールあたりの広告コスト)の運用という事になりますが、弊社ではCPIの運用ではなく、代理店さんに売上データを渡して、売上にコミットしてもらうという“売上貢献度”による広告運用をしています。また、媒体別のROIの推移を見ることで、投資すべき媒体を選んでいます。」(神谷氏)

 藤原氏は「データを取るところと販売促進がごちゃ混ぜになると、クーポンで売れたのか、媒体で売れたのか、よくわからなくなってしまうので、“アプリを起点にデータを集める”という意思がはっきりしているという事がすごく大事ですね。」と同社のデータ活用への感想を述べた。

 「アプリですので、データを取得する為にはお客様にQRコードを読み取って頂く必要があります。そこで、お客様にはクーポンを渡すなどのメリットを提供しながらデータを集めるようにしています。」(神谷氏)

 「QRコードを読み取る」という顧客の行動が1つ増えることで、店舗でのオペレーションも設計する必要がある。同社では、店頭のオペレーションや店頭の機器の大きさや場所、メーカーの選定も含めて、全てマーケティングチームが入って設計している。特に、同社のような飲食店の場合、来店から食事までの“スピード”が非常に重要である為、神谷氏も実際に現場に踏み込んで、そのサプライチェーンにおける、あらゆるボトルネックの改善に努めているという。

 「この1年でアプリによる売上への影響が大きくなりました。広告運用はもちろんですが、データをもとに様々な改善ができたのが非常に大きいと思います。結果として、CPAは136%、来店率は102%の改善を実現する事ができました。」(神谷氏)

 「神谷さんがかなり現場にコミットされているんだなと言う印象を受けました。我が社はツールベンダーなので、よくチェーン店さんと『どうやってお客さんにバリューを提供するのか?』ということを話すのですが、やはりオペレーションの問題を聞くことが多いですね。」(萩原氏)

飲食業界においてデータ活用に失敗する企業と成功する企業

 続いて、飲食業界におけるデータ活用の失敗と成功例の話題に移った。

 「失敗するのは、既存のやり方から完全にシフトできなかったパターンです。もともと予約を紙で管理していた飲食店がトレタを導入しようとなった際に、Webのデータは自動的に入ってきますが、 電話で受けた情報を管理できないという問題が発生します。ツールと従来のやり方の併用になった瞬間に、全ての運用がうまくいかなくなります。なので、弊社のカスタマーサクセスは、必ず3ヶ月以内に既存のオペレーションを切り離してもらうために、伴走するようにしています。」(萩原氏)

 また、萩原氏は「データ活用に成功する企業」についても言及した。

 「成功している企業には『共通点』があります。それは、必ず顧客管理(CRM)まで行っているということです。接客した情報もしっかり管理していて、電話番号またはメールアドレスをベースに、何回目の来店者で、その人たちに関する個人情報や喫食の情報などをちゃんと記録して管理しているお客様は収益を改善させていますね。」(萩原氏)

データ活用のポイントは、「目の前の課題を可視化すること」、「目的を明確にすること」

 最後に、お二人から「これからデータを活用する方にアドバイス」をお伺いした。

 「うちは、バックエンド、つまりオペレーションを担当している会社なので、オペレーションサイドのアドバイスになりますが、“目の前の課題を可視化する”ことが第一歩だと思います。いきなりAI等の飛び道具を考えたり、こんなことをしたい!と思っていきなりツールを導入しても、 そのツールでできること以上のことは出来ません。なので、今感じている課題や思っていることをデータで可視化するところから始めて、日々そのデータを見ながらぐるぐるPDCAを回していく方が、進化のスピードが結果的には早いと思います。 」(萩原氏)

 「実は私も目の前のことから始めましょう、という基本的なことを大事にしているのですが、なかでも誰かに決裁をとる時には、一貫して同じ”目的”を言い続けることが大切だと思います。どうしても自分がやりたい!という”思い”だけが強すぎると、目的が相手に伝わりにくいので、まずは“目的”を考えて、それを言い続けるということが重要だと思います。」(神谷氏)

 飲食業界をデータで支えるトレタとデータを活用して飛躍的成長を続けるトリドール。今後の外食産業のデータ活用を牽引していく2社によるセッションが幕を閉じた。

Text by Takuya Kuzumi

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