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2019.12.18

【MiXER Report】実践的 “キャズムの越え方”
~PairsとNewsPicksの”本当は教えたくない”データマーケティング~

11月20日、21日の2日間、ANAインターコンチネンタルホテル東京において、“マーケティングの未来を見に行く2日間”をテーマに、世界No.1サービスをリードするマーケターや、近未来のデファクトスタンダードの創造を目指すサービスクリエイター、更には人気芸能人まで、約70名に及ぶ各領域のトップランナーが登壇した『MiXER ~The Marketing Conference~』。
オープニング及びキーノートセッションに続き、株式会社エウレカ 取締役CPO/CMO 中村 裕一氏、株式会社ニューズピックス マーケティングユニット マネージャー 菊地 幸司氏、モデレーターにオイシックス・ラ・大地株式会社 CMT 西井敏恭氏によるセッションが開催された。
会員380万人を超えるソーシャル経済メディア『NewsPicks』と、会員数1,000万人を突破し、オンラインデーティングを定着させた『Pairs』。
0からサービスを立ち上げ、非常に速いスピードで多くの支持を集めた両サービス。そのキャズムを越えるためのマーケティングとデータの役割を伺った。

サービスの黎明期から今に至るまで

 セッションはそれぞれの自己紹介から始まった。

 エウレカが運営する『Pairs』は、日本、台湾、韓国でサービス展開し、ローンチから7年で1000万人の会員に成長している。2015年に米国のマッチグループの一員となっている。対象ユーザーとなる層での認知率は40~50%まで高まっている。中村氏はPairs運営におけるマーケティング責任者として急成長に貢献してきた。

 一方、420万人の会員ユーザー数を誇る“ソーシャル経済メディア”であるNewsPicksは、他メディアのニュース記事を読むだけでなく、自分の意見を投稿でき、他者の意見も見ることができるプラットフォームでありながら、自社作成のオリジナルコンテンツも多数展開している。さらにジャンルごとに計200名以上に及ぶ”プロピッカー”と呼ばれる著名人や専門家の各ニュースに対する感想や意見を併せて読むことで、多角的な視点からニュースを見ることができる。

 本セッションのテーマは「キャズムの越え方」。両サービスを黎明期、急成長期、現在という3つの時期に分けて、各フェーズにおける登壇者のナレッジが共有された。

黎明期 ~無名のサービスが市場の認知を得るために~

『Pairs』のケース ~Poolの拡大~

 まずはPairsの中村氏のナレッジが共有された。サービス開始当時、「オンラインデーティングサービス」はすでにいくつか存在していたが、「出会い系サイト」との差が認識されていなかった。このような市場環境において、いかに成長軌道に乗せたのか。

 「Pairsのローンチ初期は、Facebookファンページの運用に注力しました。ファンページの『いいね』の数をKPIに置き、ここをとにかく増やすことを目指しました。PairsはCtoCサービスなので、サービス初期であろうが、ユーザー数が多くいる必要がありました。そこで、単にマッチングだけではなく、facebookのファンページ内に『占い』など、『いいね』を押してもらう”仕掛け“を作り続けました。
 結果的に、数年で『いいね』数は800万にまで増えましたが、広告で獲得した数と同じ位を、お金をかけない仕組みづくりによって獲得しました。当時私たちはfacebookファンページを使いましたが、今ならインスタグラムなど、ユーザーと無料で関われるタッチポイントを徹底して強化してユーザーPoolを作る、ということは、サービス初期において、そしてコストを大きくかけられないスタートアップにとっては必要です」(中村氏)

『NewsPicks』のケース ~プロピッカーの獲得~

 続いて、NewsPicksの菊地氏がサービスの黎明期について語る。

 「私たちの黎明期は、2013年9月のローンチから2014年12月位までと考えているのですが、当時は『情報感度の高い方の利用を増やす』ことを目指していました。電話やメール、Twitterで一人ずつアポを取ってご説明させていただきましたね。例えば、弊社を創業した梅田は堀江貴文さんに3~4回アプローチしています。NewsPicksのコアコンピタンスの一つは『イノベーターや著名人のコメントを読める』という所にあるので、ここが重要でした。
 さらに、『拡散』という観点でいえば、こういった影響力のある方がSNSで伝搬してくれたのは非常に大きかったです。今もプロピッカーのリクルーティングは同じようにアポを取って進めています」(菊地氏)

 拡大という点では、Pairs、NewsPicksともに『SNSの活用』が共通点となっている。

成長期 ~いかにして市場を拡大させるか~

 『Pairs』のケース ~Testimonialキャンペーンとコラボイベント~

① Tetimonialキャンペーン
 「市場を拡大させるには“信頼性”が大切です。そしてもっとも信頼されるもの、それは“知り合いからの口コミ”です。しかし、Pairsというサービスの特性上、利用中の方や成功した方はサービスをやめてしまいます。したがって口コミが広がりにくいという課題がありました。
 そこで実施したのが『Testimonialキャンペーン』です。これは、Pairsを通して恋人を見つけた方や結婚された方に広告に出て頂く、というキャンペーンです。キャンペーン開始当初は数組の応募しかありませんでしたが、今では多くの方々から応募頂いております。このキャンペーンの中で、サプライズプロポーズしたい人をサポートするような企画も実施しました。
 『サービスを利用して恋人を見つけた、又は結婚したことを公表する』このキャンペーンは、日本社会で“オンラインデーティング”を文化として根付かせるために必要だと考えています。弊社だけではなく、競合他社も含めた多くの企業がこの施策に取り組み、日本社会において“オンラインデーティング文化”が醸成されたとき、本当の意味でキャズムを完全に超えた、と言えるのではないでしょうか。」(中村氏)

 本キャンペーンを始めたきっかけはダイレクトでの獲得に限界を感じたことが大きい。実際に、Testimonialキャンペーンを始めてから、Pairsは更なる成長曲線を描いた。

② コラボレーションイベント
 「もう一つの施策が、ユーザーの獲得のためのコラボレーションイベントです。これも“信頼性”の醸成が目的です。B-LEAGUE、FUERZA BRUTA、湘南ベルマーレ、Summer Sonic、キリンビール、PIERRE HERMÉ PARISなど色々なサービスや業界とコラボしました。同じようなサービスがある中でPairsを選んでいただくためにも、タッチポイントを増やしていくことは非常に大切です。」(中村氏)

『NewsPicks』のケース ~“シェア数増加” “プロピッカー制度” “動画コンテンツ”~

① シェア数増加のデータ活用
 「成長期の初期は“ソーシャルでのシェア”をいかにしてもらうか、をKPIとして考えていました。なぜなら、NewsPicksの成長には、コメントしてくれること、SNSでシェアしてもらうこと、そのシェアを見て流入頂くこと、この3つを早く大量に回すことが重要だと考えていたからです。そこで、コメントしやすい導線を設計するために、コメントをしてくれるユーザーについてデータを元に分析し、サービス内容をチューニングしていきました。」(菊地氏)

② 実名登録制・プロピッカー制度の導入による“コメントの質向上”
 「サービス開始当初は、自由にコメントできる状態でした。これは自由にコメントできる方が良いと思い、敢えてそうしていたのですが、2015年末ごろから、コメント欄が荒れるようになり、サービスの質、ユーザー体験という面が課題になっていきました。そこで、コミュニティガイドラインを設定し、実名登録制を導入することで健全な議論ができる環境を整えました。さらにプロピッカー制度を作ったことでコメントの質が向上しました。」(菊地氏)

 サービス開始当初はイノベーターの尖ったコメントが受け入れられてきたNewsPicksだが、マジョリティに広がっていく中で、プロピッカーによる、ある意味“綺麗なコメント”の増加は、多くのユーザーにサービスを受け入れてもらうために重要な役割を担った。実際にプロピッカーのコメントが勉強になった、というシェアが多くなり、更なる成長につながっていった。

③ 動画コンテンツ
 成長を続けていくNewsPicksが直面したのは、「そもそもニュースを読まない層が増えた」ことだった。
サービスをより開かれたものにするためには、多様なユーザーに対応する必要がある。そこでスタートしたのが『動画コンテンツ』だった。

 「2018年に株式会社NewsPicks Studiosを設立し、動画コンテンツの制作を強化いたしました。プレミアム会員(有料会員)に向けた動画配信から始まり、最近はYouTubeでも配信しています。有料コンテンツに関してYouTubeでコンテンツの一部を見られる様にしたところ、流入が大幅に増えました」(菊地氏)

 登壇者全員の共通認識として、サービスの開始から成長の各フェーズにおいて、ユーザーが多様化していき、その多様化するユーザーに対してサービスをスピーディーに変化させていくことが重要である、というナレッジが共有された。

現在 ~さらにサービスを市場に定着させるには~

 残り時間が5分を切る中、最後に、更にサービスを市場に定着させるために何をしていくのかが語られた。

『NewsPicks』のケース ~“音声” “NewsPicksという枠の外での広がり”~

 「NewsPicksを更に広げていくために、文章記事、動画コンテンツに続き、音声コンテンツもトライをしています。さらに、Twitterなどのソーシャルメディアに最適化したオリジナルコンテンツなど、NewsPicksの外でもコンテンツに触れてもらうことが大切だと考えています。」(菊地氏)

『Pairs』のケース ~“伝達媒体を変える”~

 「日本人は『結婚はしたいけど恋活(恋人探し)/婚活は面倒』と、矛盾している方が多いのが特徴的です。そのため、面倒だと感じるであろうポイントを除外していくことが重要です。例えば、NewsPicksさんのように“伝達媒体を変える”ことにより、さらにユーザーを増やせるのではないか、と考えてます。
 海外ではスマートスピーカーで「いい人探して!」と言うとレコメンドしてくれるそうです。今、Pairsでこれを採用することは難しいですが、ハードルを下げるために色々な方法を模索しています。」(中村氏)

 資金力に乏しいベンチャー企業の無名サービスがいかに市場で立ち上がり、そしてマジョリティ市場へ進出していくのか。具体的な施策とナレッジが語られる、貴重な45分間となった。

Text by Takuya Kuzumi

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