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2019.12.12

【MiXER Report】Incredible Hit !! -驚異のスーパーヒットをひも解く-
『モンスターストライク』の市場を動かすマーケティング論

11月20日、21日の2日間、ANAインターコンチネンタルホテル東京において、“マーケティングの未来を見に行く2日間”をテーマに、世界No1サービスをリードするマーケターや、近未来のデファクトスタンダードの創造を目指すサービスクリエイター、更には人気芸能人まで、約70名に及ぶ各領域のトップランナーが登壇した『MiXER ~The Marketing Conference~』。
MiXER Day1の最後のセッションを飾ったのは、株式会社ミクシィ執行役員 根本悠子氏とモデレーターの柴田陽子事務所CSO 長瀬次英氏だ。
2013年のリリース以降、爆発的な成長を実現し、群雄割拠のアプリゲーム市場において異例とも言えるロングヒットを続ける『モンスターストライク』。
この大ヒットにおけるマーケティングの役割に迫る。

『 モンスターストライク』とは

 2013年10月にローンチされ、現在では世界累計5,200万人のユーザーに支持される『モンスターストライク』。日本での認知度も非常に高い本アプリだが、まずはサービスについて紹介がされた。

 モンスターストライクは「4人で遊べる」という、SNSの『mixi』を運営する同社だからこそのコンセプトを持ったゲームだ。一人で隙間時間に遊ぶ、というそれまでのモバイルゲームの在り方を「みんなで楽しむ」というものに変えた点が画期的だった。

 2015年には世界No.1の収益を上げるゲームアプリ※1となり、2018年、2019年も国内No1の収益※2を誇るサービスとしてロングヒットしている。
※1:参照)App Annie2015年9月
※2:参照)参照:ファミ通モバイルゲーム白書2019年

 本セッションでは、モンストのマーケティングを、

 『2015年ごろの急拡大期』
 『急成長のあとに訪れた安定期』
 『6周年を迎えた現在』

 という3つの時期に分けてそれぞれお話頂いた。

急拡大期におけるマーケティング

『モンスト』のマーケティングKPI

 市場でも類を見ないスピードと規模で成長したモンスト。セッションではまず、KPIの確認から始まった。

 モンスターストライクは「インストール数」、「MAU」、「DAU」、「プレイUU」、「マルチプレイUU」、「招待率」といったKPIを追っている。その中でも特に、「招待率」をサービスグロースのセンターピンと捉え、招待をしたユーザーはゲーム内でも有利になるよう設計されている。

爆発的成長を支えたバイラルマーケティング

 ローンチ当時はソーシャル・ネットワーキングサービスの『mixi』を主力サービスとして展開していた同社。新規サービスである『モンスト』を一気に拡大するのであれば、mixiのユーザープールからも利用者を増加させることができたはずだ。しかし、あえてmixiという名前は隠し、かつ広告も大きくは展開せず、「静かに」施策展開を進めた。

 「私たちマーケティングサイドの狙いは、『モンスト』がゲームそれ自体で好評となり、単体で成長していくことでした。そして、成長のためには、コアとなるヘビーユーザーを増やしたいと考えていました。このやり方は、mixiでも同じでした。コアとなるファンを生み出し、そして招待制をとって招待された人だけがユーザーになることができる。これにより、『招待された』という特別感をもってサービスを使ってくれます。この仕組みは非常に当たりました。この初期フェーズに登録してくれた方や招待してもらった方は継続率も高いです。」(根本氏)

 ファンからの口コミを広げるバイラルマーケティングによって成長していくモンストも、2014年にはテレビCMを実施。一気にユーザー数を拡大させていった。

安定期においてマーケティングが果たしたブレークスルーとは

重要視されていたKPI

 3周年を迎えたモンスト。この3年の間に世界No.1の収益を上げるゲームアプリとなるなど市場を席捲した後に、“安定期”を迎えた本アプリは、インストール数の伸び率も、継続率も逓減しつつあった。

 「市場を詳細にリサーチすると、まだ『モンストをやっていない』層が存在しました。認知度自体は70%に達していて『みんなでやるゲーム』として知られてはいても、『自分には関係ない』と考えている潜在層がまだまだ多かったですね。」(根本氏)

 そこで実施したのが、モンストを更なる成長とロングヒットに導くことになる、「3周年キャンペーン」だった。

3周年「モンストやるなよ!」キャンペーン

 “知ってるけど自分には関係ない” 層を動かすために実施したのが『モンスト、絶対やるなよ!』という有名なフレーズのキャンペーンだった。

 「本当はとにかくゲームをやってほしい。ですが、『やってください』というコミュニケーションはこれまでやりつくしていました。それは私たちだけじゃなく、他のゲーム会社さんもやっていたことです。したがって、前例のないキャンペーンが必要だと感じていました。」(根本氏)

 社内外から反対意見が出た企画だったが、『前例のないキャンペーンを行う』という意識でテレビ、SNS、デジタルマーケなど全方位的に推し進めた結果、あらゆるKPIが全て爆発的に上昇し、大成功を収めることになった。

「十二支再競争」キャンペーン

 「モンストやるなよ!」キャンペーンだけでは掘り起こせない『潜在層』はまだいた。その層を動かすために企画したのが、翌年6月に実施した「リアル版 超・獣神祭 十二支再競争」キャンペーンだった。

 「単にゲームを宣伝するのではなく、日本中を盛り上げて、わくわくさせる企画をやりたいと思っていました。それが結果的にモンストにとっての潜在層の掘り起こしにつながると考えました。やはりここでも、これまで他の会社がやっていたような企画や予想がつくものでは絶対に不十分だと考えました。そこで、キャンペーンを盛り上げる要素として必要と考えたのが、“投票”や“競争”の要素です。」(根本氏)

 十二支再競争キャンペーンは、日本の干支の順番を決めた12支の競争の昔話をリアルに再現し、どの動物が優勝するか、を予想してもらう企画で、実際に12支(+猫)の動物たちがレースを行う様子をYoutubeでオンライン生中継する、というものだった。

 実現可能性含め、社内はもとより広告代理店含めあらゆる人が反対する中で、『日本中を盛り上げる』というために企画は実施された。

 「本キャンペーンによってTVCMの実施と同じ位のリーチができました。特にソーシャルの反応は注視していましたね。ネガティブでもポジティブでもエゴサーチをするなど、いわゆるソーシャルリスニングを頻繁に行いました。
 色んな人に反対された企画でしたが、結果的にはバイラルでの盛り上がりを生み、頭打ちになりかけていたユーザー数を押し上げてくれました。とても工数がかかるキャンペーンだったので非効率と言われても仕方ないかもしれないですが、当時の私たちの状況では、このキャンペーンをやるべきでしたし、やってよかったと思います。ADFESTというアジアの広告祭でも賞を授賞できました。審査員に『クレイジー』と言われましたが。笑」(根本氏)

6周年キャンペーン

 今年10月に6周年を迎えた『モンスト』。周年キャンペーンとして打ち出したのが「モンストプリズン」という世界観を打ち出した新企画だ。この企画によって解決したいと考えた課題は、「人の飽き、マンネリ」だ。

 このキャンペーンで特徴的だったのは、囚人と所長との対立構造だ。これはユーザーと運営(モンスト)を模している。

 「6周年を迎えたモンストですが、ここまで長く続けているとユーザーには飽きやマンネリが生まれてきますし、不満もでてきます。不満をすべて解消することはできませんが、ユーザーが抱えているかもしれない不満を代弁するCMによって、『モンストが変わるのかも?』という期待を煽れるのでは?と考えました」(根本氏)

 10月の周年に合わせて、7~9月にティザー的な企画を実施したほか、ゲーム内でもユーザーにメリットが生まれるキャンペーンを多数実行することで大きな盛り上がりを作ることに成功した。

根本氏の考えるマーケティングの極意

ユーザーサプライズファースト

 「モンストプリズンもそうですが、ミクシィでは、『ユーザーサプライズファースト』というステートメント(理念)があります。あらゆる企画・キャンペーンの決定判断には、顧客体験としてどうなのか?を重視します。同じことの繰り返しは顧客体験としては良くないものと考えています。
 もちろんソーシャルリスニングなども行ってユーザーの声を直接聞き、そこでユーザーのニーズも把握します。しかし、あえて裏切るサプライズを設計することは、誰も予想しない大きな成長を実現するために必要なことだと考えています」(根本氏)

たくさん打席に立つこと

 「企画の成功確率を高めるには、たくさん打席に立つことも大切です。今日は成功した事例を持ってきていますが、それ以上にたくさん失敗もしています。たくさん打席に立つにはスピードが必要です。なのでPDCAだと遅すぎると思って、OODAループ(Observe、Orient、Decide、Actの略)のような感覚で判断と実行を早くしています。
 もちろん、プロモーションだけ盛り上がってプロダクトがおろそかになってもいけないので、そこはバランスを見ながら進める必要もあります。ただ、『やらないで落ちるより、やって落ちた方がいい』、こういった考え方も大切かなと考えています」(根本氏)

 モバイルゲーム史上最大規模のヒット作『モンスターストライク』。この大成功を支えたのは、業界の常識や前例を越える企画の数々であり、その企画をうみだした「ユーザーサプライズファースト」という同社のDNAだった。

 飛躍的な成長をもたらす企画を作りたいと願うあらゆるマーケターにとって刺激的なセッションが幕を閉じ、MiXER Day1が終了した。

Text by Takuya Kuzumi

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