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2018.11.07

【b→academy#5】『NewsPicksのデータマーケティング』
―成長し続ける会員サービスを支える新規顧客獲得戦略とPDCA文化―

2018年3月にスタートした定期開催のデータマーケティングスクール、「b→academy」。10月23日、東京・五反田にて第5回目の講義が開催された。企画責任者を務めるチェアマンとして、オイシックス・ラ・大地株式会社のCMT(チーフマーケティングテクノロジスト)兼 株式会社フロムスクラッチCIO(チーフイノベーションオフィサー)西井 敏恭が開講の挨拶をした後、株式会社ニューズピックス マーケティングユニットを率いる菊地 幸司 氏よりお話をいただいた。「b→academy」では、「データやテクノロジーを活用したマーケティングを当たり前にする」というミッションを掲げ、最先端マーケティングに関する知や事例のシェア、マーケター同士の交流を行っている。今回も約85名のデジタルやデータに携わるマーケティングリーダーが集まった。

ビジネスパーソンに愛される経済メディアNewsPicksとは

 ビジネスパーソンの多くが日常的に愛用し、世界的にも注目されているソーシャル経済メディアであるNewsPicks。オリジナル記事や動画、NewsPicks Book、NewsPicksアカデミアなど、オンラインから書籍の出版、リアルイベントまで、多様な企画を次々と打ち出しながら4年で73,570人*の有料会員を有するサービスとして、その魅力的なコンテンツや施策により急成長を果たしてきた。今回のb→academyではなかなか語られることのない人気サービスの成長の裏側に潜むリアルなマーケターの試行錯誤に迫った。同サービスは2013年にローンチし今では無料会員数300万人を超えるサービスへと成長している。菊地氏が率いるマーケティングユニットの1つのKPIである有料会員数は、NewsPicksが作成・配信する独自記事を月額1500円で購読することができる会員である。*2018年6月末時点

NewsPicksを支えるサービスの強さの秘密

 NewsPicksはこれまで企画の強さ、サービスそのものの強さで伸びてきたという菊地氏。

 講義の冒頭、その強さの秘密である「いかに質の高いメディアを担保しているのか?」という西井氏からの質問からセッションはスタートした。そもそもNewsPicksは記事を作るのに3つのチームが存在しているという。1つ目は、編集部というNewsPicksの課金制を支えるオリジナル記事を作成する部署。2つ目は編成部。これはキュレーションした他社記事、自社作成のオリジナル記事関係なく“読者が読むべき”と思う一押しの良質な記事を判断しプッシュする部隊。3つ目は、コミュニティチーム。NewsPicksのサービスの特徴は、記事を読めるということだけでなく、記事に投稿される経営者やマーケター等、有識者のコメントを読めるということが大きなメリットでもある。このコメントの質を担保するための地道なフォローアップを行っている。①は想像に難くないが②や③のチームがあるからこそ、顧客にとって最善のメディアとして質を担保できていると言えよう。

マジョリティ層への認知度向上に貢献した話題の広告の裏側

 次に、セッションは最近波紋を呼んだ同社の広告施策に話題は移った。「さよなら、おっさん」という広告を知っているか?という菊地氏の問いかけに参加者の多くの手が上がった。

 NewsPicksのメイン顧客層は現在、デジタルマーケティング業界関係者や、ベンチャー企業の方が多いと言う。アーリーアダプターにはリーチできているがまだまだ大企業に属する人には認知されてないというのが菊地氏の認識だ。そこで、日経新聞の広告に以下の広告を掲載。本来は「学ばなくなった人や既得権益にさよならする」という意味を込め「おっさん」という表現を使用したところ、SNSでネガティブな反応が多かった。

 「一方データで結果をひも解くと、施策前に比べ認知率は大きく向上。Google trendでは広告掲載前の2倍の反応があり、サイトの非会員層のトラフィックも伸びた。当初課題であったこれまでリーチできていないマジョリティ層への認知度向上には大きく貢献した施策だった。」(菊地氏)

将来LTVをみこして実施した学割施策

 菊地氏はNewsPicksがトライした多くの施策のうち新規有料会員獲得に成功した施策を次々と紹介した。中でも盛り上がったのは学生をターゲットとした施策である。

 NewsPicksの会員の年齢層は25〜44歳までが7割だそうだ。モデレーターの西井氏は意外と若い印象だと語ったが、「そもそも会員とともにメディアが老化してはいけない。若い世代が入ってこないメディアに将来性はないのでは?」と課題感をもったことが始まりだと菊地は当時を振り返る。実際、特別安い価格でサービス提供したとしても若い世代に会員になってもらえれば生涯LTVは高い。

 セッションでは同社が実際に行った、大学生会員を獲得した施策を発表する前に会場の参加者間でのディスカッションタイムが設けられた。

<参加者からの意見やアイディア>
・月額500円だとしても年間6000円。大学生には高いので就活生の親をターゲットとした施策はどうか?

・東京大、京都大、早稲田大、慶応大、といった一部の高学歴層にターゲットを絞り実際に大学を訪問してキャンペーンへの呼び込みを行う。

・そもそも大学生ってNewsPicksのサービスを認知しているのか? NewsPicksを使えば就職活動の面接シーンでどのように役立ったのかを訴求できるような大学生にとってわかりやすいメリットがわかるコミュニケーションを行う。

 その後、菊地氏が実際に行った施策について解説した。

 同社の強みは有識者と多くの繋がりがありそのリソースを活用できることである。そこで、2018年3月に実施した就活キャンペーンでは大学生向けのリアルイベントを企画し、堀江貴文氏や落合陽一氏といったゲストの講演を行い、そのイベントへの参加をインセンティブに学割の申し込み促進を図った。

 実際にイベントへの呼び込みで活用したプロモーションチャネルが興味深い。もともと大学生はLINEやtwitterのコミュニケーションチャネルが多く使われるというリサーチデータをよく目にするがイベント予約にはあまり繋がらず、意外なメディアから獲得出来たそうだ。この経験から菊地氏は、失敗もあったが常識にとらわれず、まずやってみることの重要性を認識したという。

正しいデータで判断することの重要性

 NewsPicksの文化として菊地氏が何度も繰り返したのは、同じようなビジネスモデルのベンチマークがいない中で、ユーザーにとっての理想を追い求めるところからアイディアを生み、迷ったらまずは挑戦するというNewsPicksの社風とも言える点だ。スピード重視で施策をトライしてみて、実施後に”正しい数字で結果をふりかえる”ことが重要だと強調した。「数字を独り歩きしないよう、データを見る・構成する担当を作り全社で1つのデータを正しく共有して正しく意思決定できる組織作りを進めている。」と会を締めくくった。

Marketing Leader’s Review

 参加者の方に講義に参加したご感想や、今回のインプットのポイントについてお伺いした。

先入観で判断せず顧客志向・データ重視で意思決定

 3回目の参加となりました。いつも良い機会を提供して頂きありがとうございます。NewsPicksのマーケティングって何をしてるのだろうか?と興味があり参加させて頂きました。さよなら、おっさん。の広告コピーの反響の話に始まり、会員獲得がマーケティング部の一つの目標とのこと。その中で、実際に行った、大学生獲得向け施策を披露。披露前に、参加者間でのディスカッションをしてから、答え合わせをするやり方は臨場感があり、楽しかったです。私はアットホームの方と浦和レッズの方と色んなアイデアを話合いました!答え合わせは、実際、一番大学生が一番時間を使っているLINEやtwitterでの広告効果よりも、社会人と繋がる目的での活用をし始めるFacebookの効果が良かったのはマーケターとして考えさせられる内容でした。お話を聞いていて、感じたことは、あまり先入観を持たず愚直にトライして結果を見て、学び、次を考える、ある意味PDCAを回すことを意識して、基本をしっかりとやられてるんだな〜と感心しました!

 西井さんとスピーカーの菊地さんは昔、こういう勉強会での知り合いとのこと。やはり人脈は大切。そういう意味でも、勉強会の後、そのまま会場で懇親会に移り参加者と名刺交換して交流出来る、この会は有意義に感じました!また、参加させてください!
(カラビナハート株式会社 森 洋平 氏)

次回、当アカデミーは12月5日(水)に開催予定で、11月26日(月)正午までWebサイトにて申込みを受け付けている。
https://bdash-marketing.com/seminar/b-academy

Text by 岡上杏瑠


【プロフィール】
菊地 幸司
株式会社ニューズピックス マーケティングユニット マネージャー
web制作会社でwebディレクター、モバイルコンテンツ運営 会社にて新規事業開発を担当。インタラクティブエージェンシーに合併後、Eコマース事業を立ち上げ、 データドリブンマーケティングにより黒字化。 その後大手国産自動車メーカーにてグローバルでのデジタルマーケティング戦略立案、輸入車メーカーのデジタルエージェンシーとして、デジタルマーケティング全般を支援。 2017年12月より現職。


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